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12歳と薔薇色の…
誠実と不誠実
しおりを挟む「――私はノエルの妻、決してノエルを蔑視しないし、常に味方となって守ると誓うわ」
ぴくぴくと反応するノエルの耳へとマリアンヌはゆっくり手を伸ばす。ふにふにした成果か、特に嫌がられることも無く撫でることが出来た。
感触を楽しむように緩やかに撫でていると、それなりに気持ちいいのか、ノエルが目を細めた。
「――そしてノエルは私の夫、これはもう誰がなんと言おうと変わらない誓いよ」
安心させるように、優しく言い聞かせるようにマリアンヌはノエルに語り掛けた。気持ちよさそうに目を細めたノエルは尻尾をゆったりとぱたぱた動かしている。リラックスしているようで何よりである。
だが、勢いよく夫にしたはいいものの、マリアンヌは肝要なことを何もノエルに伝えていない。既にノエルはマリアンヌから逃げられない状況だが、何も伝えないのは不誠実というもの。
「――けれど、私はウテナ神女帝国次期女王」
気持ちよさそうにされるがままになっていたノエルがピクリ、とマリアンヌの言葉に反応して固まった。どうやらノエルはマリアンヌの出自や身分に気付いていなかったらしいが、ウテナ神女帝国の名は知っていたようだ。あからさまに固まったノエルにマリアンヌは前世では考えられなかった続きの内容を聞かせた。
「この先の未来永劫、ノエルだけのものではいられないのよ」
『…………』
完全に目も耳も尻尾も臥せってしまったノエルは、心なしか落胆や諦めともとれる雰囲気を醸し出していた。
「次期女王を産むまでは毎年必ず夫を迎えなければならないのだから、年月が経つほど、夫が増えるほどにノエルとの時間も無くなっていくのは必然だわ」
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