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12歳と薔薇色の…
お城
しおりを挟む似たような絵姿にとうとう辟易したマリアンヌは、城にある植物園のひとつへと気分転換のため転移門を使って散歩に赴いていた。
城は全て散策しようとすると、最低でも数か月はかかるのではといわれるほどの広さであるため、似たような区画は他にも数多く存在していた。
――これを覚えて初めて部屋の外へ出られるため、幼き日々は必死に城について勉強したものである。
城の隠し通路を含めた細かな地図は、母直々に説明されたが、脳内ですぐ城の地図を思い浮かべられるようになるまでに覚えるのは骨が折れるよりつらいものがあった。
まるで前世の受験勉強のように鬼気迫るものがあったのだが、それも今はいい思い出である。
なぜそうまでして覚えないといけないかというと、単純にいずれ夫を後宮に入れる際、転移門で直接現地に案内するのは妻の役目であるからである。
後宮の部屋はそれぞれが独立しており、陸の孤島になっているためだ。
――と、世界には伝えているが。
実際には陸ではなく、空に浮く島であると知るのは女王らのみであった。しかし周囲を囲まれて空しか見えなければ勘違いも仕方ないというもの。
真実は別に伝える必要がないし、勘違いされていたほうが都合がいいというのが歴代女王たちの考えであり、マリアンヌら母娘も同様の考えであった。
区画ごとに転移門があり城で働く者達はそれを利用しているが、誰も実際の広さを把握していなかった。……外観の城の大きさと内部の広さのギャップは七不思議のように脈々と囁かれていたが。
空に浮かんでいるとは露程も考えていないだろう侍女や近衛を背にマリアンヌは可笑しそうにくすりと笑い、思考より散策を再開させたのだった。
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