新訳 白雪姫

白横町ねる

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 ある国に、白雪姫と、おきさき様がいました。

 ふたりはとても美しく、仲がよいことで、大変有名だったのです。

 それほど美しいものですから、隣の国の王子様は、たびたび、白雪姫に会いに来ました。けれど、白雪姫は、王子様のことが、好きではなかったのです。そんな気持ちを知ってか知らずか、王子様は、なんとか白雪姫と結婚しようと、頭をうんうん悩ませました。

「そうだ、いいことを思いついたぞ。鏡を使えばいいじゃないか」

 鏡とは、おきさき様が持っている、不思議な鏡のことです。おきさき様は鏡に向かって「鏡よ鏡、この世で一番美しいのはだぁれ?」と毎日話しかけていました。すると鏡は「それはあなたです、おきさき様」と答えてくれるのでした。鏡は、この世の真実を知る、魔法の鏡だったのです。

 王子様は、こっそり、おきさき様の部屋に入って、鏡に呼びかけました。

「鏡よ鏡、鏡さん。どうか、ボクのお願いを聞いてはくれないかい」鏡は答えました。「どうしましたか、王子様」王子様は続けました。「どうにかして、白雪姫に、毒リンゴを食べさせたいんだ。そうしたら、ココロがなくなって、なんでもボクの言うことを聞くはずだ。きっと、結婚だってしてくれるさ」

 鏡は、王子様の言うことを、親切に聞いてあげることにしました。

 ある日のことです。なんと、おきさき様のスープの中に、虫が入っていたのです。

 それは、ナベをぐつぐつ煮込んでいるときに、ぐうぜん飛びこんできた虫でした。

 おきさき様は、腹が立って「鏡よ鏡、わたしのスープに虫をいれたのは、だぁれ?」と鏡に問いかけました。

 鏡はもちろん本当のことを知っていました。けれど、こう言ったのです。「それはです、おきさき様」と。

 鏡がウソを言うとは夢にも思いません。ですから、おきさき様は、もうかんかん。

 おきさき様は、鏡から毒リンゴの作り方を親切に教えてもらうと、さっそく白雪姫に食べさせました。

 白雪姫は、おきさき様が大好きでした。そんな人からの贈り物ですから、白雪姫は、喜んで毒リンゴを食べたのです。けれど、それっきり、なにもわからなくなって、ついに人形のようになってしまいました。

 そこに王子様がやってきて、白雪姫に言いました。

「どうか、ボクと結婚してくれないだろうか」

 白雪姫は、なにがなんだかわからないまま、こくんとうなずきました。

 そうして、王子様と白雪姫は結婚して、幸せに暮らしたということです。
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