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166話 ミドリムシの罠
しおりを挟む「あれ? なんで?」「なんで私達が?」
そう言ったのは村長の家まで案内した子供達の中で唯一残った2人。その2人は自分達の体が思った通りに動かない事に驚きを隠せずにいた。
2人が驚きを隠せずに呟いた言葉に腐緑が反応する。
「あ~ 今の私達はしばらくの間、毒は効かないから」
「はっ?」「なにそれっ!?」
思わず少年少女が声を上げると先ほどまでの子供らしい笑顔から一変して腐緑達を怨敵がごとく睨みつける。そんな視線すらも嬉しそうに腐緑が話はじめる。
「いや~ ここまで上手く事が運ぶとうれしくなるね。いつも相手を騙していたみたいだけど、自分が騙されるとは思ってなかったみだね。全然警戒してないんだもん」
腐緑の言葉に少年少女の顔は驚きに染まる。
「なんだと!? お前達はこの村の罠に気づいていたのか?」
「いや、村の中に入るまでは、まだ疑うってところだったけど……ここに来る道中で確信したかな♪」
腐緑の言葉に少年が思わず尋ねる。
「村に入ってからだと? 何故だ!?」
「洗濯物だよ、今日みたいな晴れた日に大人の洗濯物が全く無いと言うのはおかしくないかい?」
その言葉に驚きの声を上げたのは3姫だった。
「確かに、子供の洗濯物しかなかったのう……」
「言われてみれば子供の洗濯物しかなかったような……」
「言われてみればすっごく不思議です!」
そんな3姫の言葉にニヤリと笑い腐緑が眼鏡をかけて話始める。
「3人共、この蟲人達はきっと背丈が大きくならない種族なんだと思うよ。正確に言うと僕達が大人と子供を区別できない背丈って言うのが正解かな?」
そういって少年少女を見る腐緑。
「きっと2人共大人で少年が村長で少女がその奥さんかな?」
腐緑の言葉に思わず少年が言葉をこぼす。
「なぜわかったんだ……」
思わず村長の少年にしか見えない男が尋ねると自身満々の腐緑が答える。
「2人の息がぴったり過ぎたんだ、小さな少年と少女のなのに長年連れ添った夫婦のようにね」
腐緑の言葉に思わず村長は視線をそらし悔しそうな顔をする。
「それじゃあ、なぜ毒が効かなかったかな説明がつかないわ!」
村長の奥さんと言われた少女が腐緑の説明が終わったと思い、思わず声を上げると3姫が言葉をこぼす。
「あー、確かにそう思うわなー」
「毒を盛った方人……と言うか蟲人はすっごく不思議に思いますね」
「確かにのう、それは運が悪かったとしか言いようがないのう……」
3姫の言葉の後に腐緑の眼鏡がキラリと光り、位置を調整するためにクイッと眼鏡を上げると笑い始める。
「腐腐腐腐、何を隠そう私は毒のエキスパートで【超ミドリムシ】解毒なんてお茶の子さいさいなのさ! というか騙す相手に鑑定持ちが居た時の事をかんがえてなかったのかな?」
「こんな戦場から離れた村に鑑定スキルを持った奴を送る偉い奴なんかいないだろう」
腐緑の言葉に思わず村長が声を上げる。
「まぁ確かにそうなんだけど僕達には鑑定スキルを持っている者が多くてね」
緑の家族では、鑑定のスキルを【水野 緑】全員が持っている。緑、魔緑、腐緑だけであれば、ただ珍しいで終わるかもしれないが干支緑達11人全員が鑑定スキルを持っていると話は変わってくる。
今回の様に家族を分けて行動する際、【水野 緑】は支援側にまわり、分けたグループに1人は居る形にわけられる。
そして、知らない者や物がでてくるともれなくスキルを使う。本来そんな事をすれば魔力がすぐに枯渇してしまうが使う者は【水野 緑】で光りと空気と水があればほぼ無限と言っても良い魔力を生み出す規格外。
そんな、事を知らない村長が覆わず声を上げるのも仕方がなかった。
腐緑が自分達の仲間に鑑定スキルをもつ者が多いことを話すと、村長が不適に笑う。
「ふふふふ、俺達はお前達を騙す事は出来なかったが小さな子供だけは騙す事ができたよな……」
そう言って動けない体にも関わらず村長が勝ち誇るが腐緑達は、そう言えばと話はじめる。
「あ……もしかして……ノームの事を言っているのかな……」
思い出したかの様に腐緑がこぼすと3姫達も気の毒そうな顔になり言葉をこぼす。
「もしかして、人質にするつもりなのかのう?」
「きっとそうやで何も知らなかったら、ただの子供と思うやろ?」
「ですね、ノームさんもすっごく頑張って演技をしていましたもんね」
3姫が思い思い言葉を口にした後に申し訳なさそうに腐緑が種明かしをする。
「あ~ 私達が貴方達を騙したなかで最大級の嘘がノームなんだけどね……」
そう言って腐緑が言うと突然、腐緑達が居た広い部屋の壁がメキメキと音を立てて崩れる。
その崩れた先には小さな少年の姿をしたノームが立っていた。
「腐緑よそちらも終わったようだな」
「うん、ノームもお疲れ様。みんな捕まえれた?」
「ああ、問題なくな。今は外に村の外に待機していたヒカリ、クウ、レイの子供達が見てくれている」
先ほどのまでの口調と違うノームに、何度目か分からない驚きの顔をした少年と少女が腐緑より上位の者として喋るノームを見つめるのであった。
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