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146話 ミドリムシは追いかける

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 ノームとサラマンダーが獣人の国で病が発生した町で1番離れた町に向かう途中、2人を追っている者達が居た。

「こちらの大陸に着いたはいいが大きな町を目指しているなか龍種を見つけることになるとは……」

「だが私達が戦っていた龍種の邪念が感じられない…… 敵の仲間とは違うのか?」

「だとしたら私達の力になってくれないか交渉のするか?」

「しかし、早いな…… 他の者達とはぐれてしまった」

「それは、後で合流すればいい。今はとにかくあの2匹と交渉するぞっ! えぇぇぇっ!?」

 話していた者が突然声を上げ、そのあとに続いて2人を追っていた他の者達もその理由に気づき思わず声を上げる。

「「あっ!!」」

 彼らがノームとサラマンダーの後を追いつつ、いかに2人に交渉をしようか話しているなか、突然にスピードを上げた2人にあっさりと距離をあけられ声を上げる。

「なんてスピードだ!?」

「どうする!? 急いで追うか!?」

「はやく追わないと完全に追いつけなくなるぞ!」

「もうあんなところに!? 今までのスピードはなんだったんだ!」

 2人の後をつけていた彼らは突然スピードを上げた2人を見失いそうになり慌て始める。

「お前達落ち着け! ……残念だが2人がこの先さらにスピードを上げないとも限らない、交渉はあきらめて、予定を当初の通りに戻し獣人の国の王都に向かう」

 リーダーと思われる男が慌てはじめた仲間に落ち着く様に言い聞かせ、2人の後を追いどこかで交渉することをあきらめるという。

 リーダーの言葉にせっかく見つけた龍種と交渉できたらと思った彼等は意気消沈する。そんな彼等をみ見てリーダーの男が声をかける。

「気を取り直せ。当初の予定通り獣人の国の王都にむかうぞ。気合を入れろ!」

「「はいっ!」」

 気を取り直し彼らは振り返り王都に向かって進み始める。

「あっ! すすみ始めた♪ くふふふふ。ばれないように♪ ばれないように♪」

 彼らは自分達がノームとサラマンダーを追っていたにもかかわらず、自分達は追われるような事を全く考える事もせずに獣人の国の王都を目指すのあった。

 彼らは、休憩をはさみつつ走り続ける。

「しかし、獣人の身体能力はすごいな。俺達が陸を走るのが苦手なせいもあるが、聞かされていた日数では王都につくことができないんだろうな……」

 彼らの1人がこれまでの移動距離と獣人の町で聞いた王都までの道のりにかかる時間を照らし合わせて思わずもらす。

「たしかに海を渡らないとだめだからな…… 俺達以外に適任はいなかった。そのために貴重な道具や食料を貰えたんだ。絶対に任務を成功させるぞ!」

「「はいっ!」」



「今日は、進むのはこれくらいにして野営の準備にはいるぞ」

 ノームとサラマンダーに気づき追いかけていた彼らは、振り切られる前のスピードにも付いていけなかった者達とその後に合流し。王都を目指していた。

 リーダーの言葉で彼らは野営の準備を始める。彼らの数人は野営地の周りに散って行き、食料やまきを集めた。順調に野営の準備も進み食事をとり、後は寝るだけとなるがここで問題が起こる。

「じゃあ、今の順番で順に睡眠を取るぞ」

「「はいっ!」」

 ここまで何度も野営を繰り返してきた彼等は簡単に夜の見張りの順番を決めると、一部の者を火の周りにのこし他のものがテントの中に入ろうとする。

「誰だ!?」

 テントの入り口を開き掛けた時、リーダーと思われる男が叫ぶ。

 そのリーダーの言葉で彼らの緊張が一気に高まり、彼らは一瞬で戦闘態勢をとる。全員リーダーが見つめる方向に視線を集める。

 がさがさ がさがさ

 彼らが視線を集めた先から草むらをかき分けて小さな男の子が出てくる。その姿を見たリーダー以外の者達は緊張を解く。

「なんだ? 小さな子供? 全身緑色をしているがゴブリンか?」

「いや、全身緑色をしているが綺麗な顔をしている。ドライアドか?」

 緊張を解いた者達をしかりつけるようにリーダーが叫ぶ。

「お前達! 気を抜くな!」

 リーダーの男の言葉に再び全員に緊張が走る。

「子供の姿に気を緩めるな! ここの近くに人の住む場所は無いはずだ! だから俺達はここで野営をしている! それにそいつのかっこを見てみろ! ここは街道の直ぐそばとは言えそんなかっこをしている子供が1人でいると思うか!?」

 リーダーの言葉通りかわいらしい顔をしてい少年が着ている服は、普段町の中で生活をしている子供のものであった。その異様さに気づき彼らは言いようもない不安にかられる。しばらくの沈黙が続き、だれかがゴクリの息をのむ。

「こんばんわ~」

 彼らに注目されている少年はニコリと笑うと挨拶をする。

 異様な雰囲気を持っていた少年の笑顔と挨拶に緊張を解きそうになる彼等であったが鋭いを視線を少年に向け続ける。

「何者だお前は!?」

 そんな中、唯一少年の異常性に気づいたリーダーの男が尋ねる。

「僕は【超ミドリムシ】の【水野 酉緑】です!」

「ここには何をしに来た!?」

「皆さんを迎えに?」

 リーダーの男の質問に、こてんと首を傾げ疑問形で酉緑が答える。

 酉緑がそう答えると。周りの草むらが一斉にいごきだす。

ガサガサ ガサガサ ガサガサ ガサガサ ガサガサ

 その音に周りの草むらにも注意を向ける彼等であったがその後に出てきた者を見ると恐怖に包まれる。

 なぜなら、草むらから出てきたのは、ほぼ同じ姿をしている子供達。その半分ほどが少女であったが全員が瓜二つというおまけつきであった。

 いよいよ彼らは自分達が何かの魔法で幻術にかけられているのではと疑い始める。

「な、なんだこいつ等!? 同じ顔の子供こんなにいるわねぇ! 幻術かなんかか!?」

「同じ顔でニコニコしてて気味がわりぃ……」

「リーダーどうします!? リーダー!?」

 尋ねられたリーダーが返事をしない事に異変を感じた者達がリーダーに視線を向けると確かにそこにリーダーは居たが様子がおかしいことに気づく。

「無理だ…… 化け物だ…… 」

 他の者達と比べリーダーは歳をとった外見の通りに他の者達と比べ歳をとっており、幾つもの修羅場をくぐり抜け今の部隊をまとめる地位にいる。

 リーダーは気配や罠、危険を感知する感覚が特に高かった。その今まで命をつないできた能力が悲鳴を上げた様に警報を鳴らしていた。

「俺達は全面的に降伏する! お前達に害意を加える意思はない! 頼む! 頼む話を聞いてくれ!」

 リーダーが悲痛に叫んだ言葉に他の者達はギョッとする。彼らは歳は若いがエリートであった。そんな彼らをまとめるリーダーの事を彼らは尊敬していた。彼らの中でも幾人かは尊敬という言葉では足りずにもはや崇拝と言わせるほどであった。

 崇拝の対象のリーダーが青い顔をしたうえで全面降伏を伝え、なんとか自分達の話を聞いて欲しいと懇願しはじめる。

 彼らは一瞬で自分達が途方もない危険な状態だという事に気づく。その時、彼等の思考は驚くべきことにある行動を起こすことに一致した。

「「隊長逃げてください!!」」

 彼らが起こした行動は隊長に逃げるように叫ぶ事であった。

「隊長! 自分が時間を稼ぎます! その間に逃げてください!」

「そうです! 自分達がなんとしても隊長が逃げる時間を稼ぎます!」

「任務を! 任務を必ず成功させてください!」

「自分達は隊長と共に任務に就いたことを幸せに感じていました! どんな困難な任務でも必ず成功をおさめ帰還する英雄の隊長と!」

「任務を達成させて国を! 家族を! 守ってください!」

「「逃げてください! 隊長!!」」

 彼らは自分達に与えられた任務をなんとしても成功に収めるため、隊長が逃げれさえすれば1人になったとしても必ず自分達の任務達成されると信じ叫ぶのであった。

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