140 / 178
140話 ミドリムシの最速の家族2
しおりを挟む「さ~ みなさ~ん そろそろ王都に向かってくださ~い」
青い顔をしてヒカリの子供達の空襲を見て震えていた冒険者達にレイが声をかける。
「あ、ああ…… そうだな……」
声をかけられた冒険者達は我に返り自分達が今、魔物達から逃げるように王都に向かっていたことを思い出す。
「あ、あの~ 盗賊はたおせましたか?」
その時、商隊のなかに1つだけあった豪華な馬車の扉が開き中から商人と思われる一家がでてきた。
盗賊が襲ってきたときに商人の一家は護衛の冒険者達に決して馬車から出ないように言われ、一家は言われたとおりに馬車の中で護衛達が盗賊に勝つように祈りながら待っていた。
盗賊達と戦っていると思われる音がある時を境になくなり、馬車の外が静かになったために決着がついたと思った一家であったが、護衛の冒険者がいつまでたっても戦いが終わったことを言いに来ないためにおそるおそる馬車の外に出て確認をする。
「そうだった…… すまないね、私達も今まで起こったことが大きすぎて連絡をわすれちまってた。レイすまないがもう少しだけ時間をくれ!」
そう言ってリーダーの女冒険者が商人の一家に事情を説明する。
商人の一家は父親、母親、息子、娘の4人家族で護衛達から現状の説明をうけ驚いていた。あらためて商人の一家は自分達の周りを見渡し、自分達の商隊がデッドマンティスに守られている事に驚愕する。
「いや、しかし本当にデッドマンティス達が私達を守ってくれているとは……」
商人の父親はこんな事は生まれてからはじめての経験だと少しばかり興奮し、本来なら近寄ることもできないデッドマンティス達を眺めていた。
「父様、その【軍団】の方にお礼を言わなければならないのでは?」
父親は息子にそう言われて、お礼を言う事をを忘れていたことに気づき、慌ててレイを探す。レイはリーダーの冒険者達が商人と話している間に商隊の者達に状態異常回復の実を配っていた。商人は慌ててレイの元に駆け寄り口を開く。
「お礼が遅くなり申し訳ありません。このたびは我々商隊を助けていただきありがとうございました」
そう言ってレイに礼を言った商人は冒険者達に向きなおる。
「皆さんも全員無事で良かった。今回は非常事態だったのでしょう。よくぞ全員生き残ってくれました。次の護衛もよろしくお願いします」
商人は危機におちいった冒険者達が逃げ出さずに最後まで自分達の事を守ろうとしていたことに礼を言い、次のも護衛の依頼を頼むことを伝える。
「皆さん良い信頼関係をきずいているんですね~ いい事です~」
冒険者と商人の信頼関係に思わず言葉をこぼしていたレイの前に商人の息子が近づいてくる。
「はじめまして、この度は助けていただきありがとうございました」
子供にもかかわらず礼儀正しくあいさつする商人の息子にレイはおもわず頭をなでる。
「礼儀正しいですね~ 私は礼儀正しくて賢い子が大好きです~」
「あ、あ、そんなになでないでください」
レイはニコニコしながら商人の息子の頭ををなでていた。
「あ、あの」
しばらくなでられ続けた少年は思わず声を上げる。
「ふふふ 充電できました! そろそろ私は行くとします」
レイは少年にそう言って商人やリーダーの冒険者達の元に向かう。
「では皆さ~ん、王都に入る前にこの実を食べておいてください。その実を食べたら王都にむかってくださ~い、私も出発しようかと思います~」
「おう! あんたも気を付けてな! 今度はこっちがあんたの力になるよ!」
「本当にありがとうございました。レイさんもお気をつけて」
「では~ 失礼しま~す」
そう挨拶するとレイはゆっくりと走り出す。冒険者達がその様子を見ているとその後を追って大量のデッドマンティス達が一糸乱れずその後ろを付いていく。
「気をつけろなんて言ったがいらぬ世話だったな」
「どんなに強い人でも心配する気持ちを伝える事は大事だと思います」
「父様の言う通りだと思います」
そう言ってうるんだ目でレイの姿を見る息子を見て苦笑いする商人であった。
クウ、兜、レイが王都の周りで魔物達に襲われている者達を守っていたころ2匹の龍種は猛スピードで王都から離れた街に向かっていた。
「むう、ついてきてるかサラマンダー?」
「ああ、ついてきているな」
「で、強さはどんなものだ?」
「我らはもちろんの事、緑達や家族の蟲人達にも遠く及ばん…… だが気になることがある」
「気になる事?」
「ああ、今追ってきているものが今回の首謀者とすると邪念が皆無なのだ」
「ふむ気になるな…… だが今は先に目的地に着くことを優先する。予定通り酉の坊主に任せるとしよう」
「そうだのう、では合図を送るとするか」
そう言ってサラマンダーは小さな子供の姿のまま口を大きく開くと空に向かって1発の火の玉をはく。その火の玉は空に向かって上がっていくと爆発すると大きな火の花となる。
ドーン!
その様子をみた酉緑つぶやく。
「ノームとサラマンダーのおじちゃんの合図だ♪ むむむむ…… いた♪ あの人達にばれないように見張らないと」
酉緑は空の上からノームとサラマンダーの後を着ける者達を見つけると合図を送る。
「ふむ、見つけたようだな私達の後を着いてきていた酉緑の魔物が離れていったな…… ならとばすぞ。サラマンダー振り落とされるなよ」
「わかっている」
それまでノームとサラマンダーの後を酉緑が操る魔物が付いてきていたがそれが離れていく。それが取り決めていた合図でノームが本気で走り始める。
「「!?」」
そのあまりの速さに2人を追っていた者達が見失うのにそう時間がかからないのであった。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説


【完結】あなたに知られたくなかった
ここ
ファンタジー
セレナの幸せな生活はあっという間に消え去った。新しい継母と異母妹によって。
5歳まで令嬢として生きてきたセレナは6歳の今は、小さな手足で必死に下女見習いをしている。もう自分が令嬢だということは忘れていた。
そんなセレナに起きた奇跡とは?


悪役貴族の四男に転生した俺は、怠惰で自由な生活がしたいので、自由気ままな冒険者生活(スローライフ)を始めたかった。
SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
俺は何もしてないのに兄達のせいで悪役貴族扱いされているんだが……
アーノルドは名門貴族クローリー家の四男に転生した。家の掲げる独立独行の家訓のため、剣技に魔術果ては鍛冶師の技術を身に着けた。
そして15歳となった現在。アーノルドは、魔剣士を育成する教育機関に入学するのだが、親戚や上の兄達のせいで悪役扱いをされ、付いた渾名は【悪役公子】。
実家ではやりたくもない【付与魔術】をやらされ、学園に通っていても心の無い言葉を投げかけられる日々に嫌気がさした俺は、自由を求めて冒険者になる事にした。
剣術ではなく刀を打ち刀を使う彼は、憧れの自由と、美味いメシとスローライフを求めて、時に戦い。時にメシを食らい、時に剣を打つ。
アーノルドの第二の人生が幕を開ける。しかし、同級生で仲の悪いメイザース家の娘ミナに学園での態度が演技だと知られてしまい。アーノルドの理想の生活は、ハチャメチャなものになって行く。

今さら言われても・・・私は趣味に生きてますので
sherry
ファンタジー
ある日森に置き去りにされた少女はひょんな事から自分が前世の記憶を持ち、この世界に生まれ変わったことを思い出す。
早々に今世の家族に見切りをつけた少女は色んな出会いもあり、周りに呆れられながらも成長していく。
なのに・・・今更そんなこと言われても・・・出来ればそのまま放置しといてくれません?私は私で気楽にやってますので。
※魔法と剣の世界です。
※所々ご都合設定かもしれません。初ジャンルなので、暖かく見守っていただけたら幸いです。

転生した体のスペックがチート
モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。
目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい
このサイトでは10話まで投稿しています。
続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

強制力がなくなった世界に残されたものは
りりん
ファンタジー
一人の令嬢が処刑によってこの世を去った
令嬢を虐げていた者達、処刑に狂喜乱舞した者達、そして最愛の娘であったはずの令嬢を冷たく切り捨てた家族達
世界の強制力が解けたその瞬間、その世界はどうなるのか
その世界を狂わせたものは
うっかり女神さまからもらった『レベル9999』は使い切れないので、『譲渡』スキルで仲間を強化して最強パーティーを作ることにしました
akairo
ファンタジー
「ごめんなさい!貴方が死んだのは私のクシャミのせいなんです!」
帰宅途中に工事現場の足台が直撃して死んだ、早良 悠月(さわら ゆずき)が目覚めた目の前には女神さまが土下座待機をして待っていた。
謝る女神さまの手によって『ユズキ』として転生することになったが、その直後またもや女神さまの手違いによって、『レベル9999』と職業『譲渡士』という謎の職業を付与されてしまう。
しかし、女神さまの世界の最大レベルは99。
勇者や魔王よりも強いレベルのまま転生することになったユズキの、使い切ることもできないレベルの使い道は仲間に譲渡することだった──!?
転生先で出会ったエルフと魔族の少女。スローライフを掲げるユズキだったが、二人と共に世界を回ることで国を巻き込む争いへと巻き込まれていく。
※9月16日
タイトル変更致しました。
前タイトルは『レベル9999は転生した世界で使い切れないので、仲間にあげることにしました』になります。
仲間を強くして無双していく話です。
『小説家になろう』様でも公開しています。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる