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134話 ミドリムシの最速の家族

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 魔緑達を見送った緑達は会議室で王都より離れた街や村の事に頭を悩ませていた。

「普通に考えるならヒカリにダンジョンコアを持って飛んでもらうのがすぐに思いつく方法なんだけど…… 正直、この病の性質を考えては、地雷の様に足止めをして離れた街や村に向かう高速で飛行するヒカリを狙う気がするんだよね……」

 緑にはここまでの事が全て計算されつくした上で、自分達を倒すために練られた計画にしか思えなかった。そんな緑の様子を見て王が口を開く。

「緑よこれは、獣人の国の事だお前の家族に危険が及ぶような事があってはならぬ! この後の決断は王の務めだ」

 その言葉を聞いた緑はさらに悩む、王の言葉は明確に口には出さないが遠くの街や村を見捨てると決断をするという事であった。緑の旅は幸せのお裾分けをするためのもので、王にその決断をさせてしまってはならないと悩む。

 そんな時、緑に声をかける者がいた。

「緑よ、ここは我等が遠方に向かう」

 その言葉を聞いた王は緑に尋ねる。

「緑よこの者は?」

 緑に声をかけたのは2人の子供の姿をした龍種であった。今まですっかり忘れていたと気づき緑は2人に尋ねる。

「2人で遠方の街や村を周ってくれる?」

 その質問に2人の子供は黙って頷く。2人の頷きを見た緑はノームにお願いする。今緑達が居るのは獣人の国の王城で1番大きな会議室その大きさは緑達の家族が入り、獣人の国の重鎮が集まってもまだ広さに余裕がある場所であった。

 そのため、緑は王にお願いする。

「ここに居る方達にお願いがあります。今からの事をしばらく他言無用でお願いしたいのですが……」

 その言葉に獣人の国の者達は顔を見合わせる。今まで緑達に驚かせられる事はあったがどれも他言無用な事を緑は言ったことが無い、そのために今まで以上の事を知らさせると思い息をのむ。

「ここの居る者達に絶対に話を広めるような事はさせない!」

 その言葉は王が叫んだものであった。その王の言葉を聞いた会議室に居る獣人達も力強く頷く。

「ノーム本当の姿を皆さんに見せてくれる?」

「問題ない! 我等は緑に付き従うと宣言した、我らの命は緑のものだ。それをどう扱おうが緑に委ねる!」

 そう言うとノームは姿を変異させる。ノームは本来の姿全長3mほどの龍になる。

 その姿を見た獣人達は頭を傾げる。ノームの姿を見た獣人達は小さな竜種と思った。そのために緑の仲間に竜種が居たとしても誰も驚くことはしなかった。

「ふむ、ただの子供ではないと思っていたが竜種であったか…… だがそれであれ「我をそんな小僧共と一緒にするな!」」

 王がノームを勘違いし竜種と思い話すとノームが声を上げる。声を上げると同時にノームの怒気を浴びた王達が硬直する。そんなやり取りを見た緑が口を開く。

「ノーム落ち着いて、皆想像もしてなかったんだと思う。今から話すから少しだけ待ってくれるかな?」

 緑がノームに申し訳なさそうに話しかけた後、王達に向き直った緑が事実を伝える。

「彼の名はノームと言います。先日の同時に起こったスタンピードで人族の国に向かったです」

 緑の言葉を聞いた王達は慌ててノームに頭を下げる。

「「申し訳ありません!!」」

 人族の国に向かった龍種と聞いたにも関わらず、王達はノームに向かって頭を下げる。

「今、人族の国に向かった龍種と言ったんですが……」

 ノームに対して態度に疑問を持った緑は思わず尋ねた。

「緑達がスタンピードを全て治めた事は聞いた、その上で倒した龍種を自分達の家族として迎え入れた事は国をつかさどる者の立場から考えると納得できるものだ。龍種は賢く誇りを持った種族なのは我々も知っている。その龍種が緑に気を使った行動を取っているという事からその関係を理解できた」

 今の少しのやり取りで自分達の関係を全員が予想した事に緑は驚くも、緑は話を進めようと龍種の紹介をする。

「今いる2人はノームとサラマンダーと言います。今、本当の姿に変異したノームは龍種でありながらその体は小さいですが、本来の龍種の力を凝縮したような存在で僕がこの世界で見た者の中で最速の存在です」

「「おお!」」

 緑の言葉に思わず王達は声を上げる。それは、遠方にある街や村などを見捨てる決断しなくて良いかもしれないと思ったためであった。緑の言葉からスタンピードの最大戦力であったのは予想され、その最大戦力が味方であることに王達は喜ばずにいられない。

 自分達の国の危機に信用があり、能力的に世界最高峰の者が助けてくれる。国を司る者達はそれ以前の事は、緑達の信頼で掻き消えるのであった。

「じゃあ、ノームにダンジョンのコアを渡すけどヒカリも他の遠方の街に飛んでもらっても良いかな?」

「もちろんです!」

 それまで黙っていたヒカリは緑に頼みごとをされると思わず声が大きくなる。だが緑の言葉に王達は疑問が生まれ思わず尋ねる。

「緑よ、なぜヒカリにも遠方にむかってもらうのだ?」

 その質問に緑が答える。

「仮に敵がいるなら、情報をどこまで知っているかを見極めたいからです。仮にこの病が同時スタンピードのとどめとして立てられた作戦なのか、スタンピードをギリギリ耐え忍んだ僕達への作戦なのか、3人の龍種が僕達の家族になった事を知っての作戦なのか……です」

 その緑の言葉にその場にいた全員が考え込む。そんな状態で緑が話始める。

「今回は全部に対応できるように考えたいと思います」

 そう言って緑は話始めるのであった。
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