128 / 178
128話 ミドリムシの朝風呂
しおりを挟む「く~この外で入る熱めの風呂はいいな~」「昨日の晩、風呂に入りながら飲んだ酒もうまかったな~」
翌朝、冒険者達は朝風呂に入っていた。
「皆さん、お風呂から上がったら朝食ができてますからね~」
緑はそう言って先に上がっていく。
「昨日、他の冒険者に言われたことがわかったな……」
「リーダー何か言われたんですか?」
「ああ、旅の途中で緑達と会い、同行できることは運がいいと…… 俺も忘れそうになるが今、俺達は王都に向かってる途中という事をな」
「あっ…… 完全に忘れていた……」
「俺もだ…… 俺達は護衛の途中で本来なら気を緩めることができないはずなのに……」
チームの仲間の言葉に自分に言い聞かせるように口を開く。
「ここで気持ちが緩めきってはだめだ、後で気を引き締めないとな……」
そうリーダーの男が口にするがこの後、リーダーの意志とは別に冒険者達の心を引き締める事が起こる。
食事を取り出発の準備をし冒険者達は食堂前に集まる。そこにはすでに緑達が集まっていた。
「あれ? 今日は子供達はお留守番なの?」
「今日はあの子達は学校で勉強なんです」
「なるほどね~ ここでは子供達は勉強もできるのね」
「はい、子供達が勉強していろんな仕事をできるようにしてます」
「良いことだわ。孤児ではなく緑達に拾われた方がよっぽど幸せかもね」
「そんな事ないですよ、子供は父母といるのがいいですよ」
そう言った緑の目には涙が溢れ始める。それを見た冒険者達はぎょっとするが魔緑がヤレヤレと冒険者達に告げる。
「うちのリーダーは泣き虫なんだ、気にしないでくれ」
「まーちゃんだって一緒でしょ…… ぐすぐす……」
「俺は人前でそんなに泣かねぇよ、じゃあリーダーが泣いてるが出発するか、子供達もまっているしな」
「子供達は勉強しているんじゃないの?」
「ああ、今言ったのはヒカリ、クウ、レイの子供達の事だ昨日の扉の前に行けばわかる」
「「?」」
冒険者達は疑問を表情にだすが扉の前に行けばわかると言われたので黙ってついていく。途中預けた馬達を返してもらい扉に向かうが途中から様子がおかしいことに気づく。
「うん? 昨日は暗くて足元が見えなかったがこの道って黒かったか?」
1人の冒険者が自分が進む道が遠くの方で黒くなっていることに気づき呟く。すると1番目が良い斥候の冒険者が声を上げる。
「ひっ!」
斥候の冒険者は声を上げるとその場に尻もちをついてしまい動けずにいた。その様子がおかしいことに気づいた他の冒険者が心配する。
「どうしたんですか?」「どうした?」「何か見えたんですか?」
あまりの様子にリーダーも心配するが反応が返ってこない。その時、安心させるためかゆっくりと魔緑が話かける。
「俺達が【軍団】と呼ばれる理由がわかってくれたか? 大丈夫だ安心してくれ子供達はけっしてあんた達に危害を加えない」
斥候の冒険者は青い顔をして魔緑の方に首だけ向けると壊れた人形のように頭を振り頷く。
「大丈夫ですか?」「失礼しますね♪」
冒険者のそばにヒカリとクウが歩みより声をかけるとクウが斥候の冒険者の背中と膝の下に腕を回し抱き上げる。
「ではいきますね♪」
クウがそう言うと先頭を歩き始める。抱き上げた冒険者より小柄なクウが楽々と歩く姿をみて冒険者達は最初こそ驚くものの自分達より小さく若い者でもとてつもない強さが居る事を思います。
冒険者達もその後に続くが道の黒くなっている部分が近づくにつれて、先ほどの斥候の冒険者の様に声を上げその場に尻もちをつき動けなくなるものがではじめる。
それを見てクウが声を上げる。
「みんな、この人たちを運んでください♪」
クウがそう言うと道の先の黒くなっている部分がちぎれた様に見え、こちらに向かってくる。動けなくなっていない冒険者達は自分達の目をこすりそれを凝視しているとそれがホレストアントの集団なのが見えてくる。
ホレストアントに気づいた冒険者達が同時に声を上げる。
「「えっ!?」」
「「ま、まさか……」」
冒険者達が驚いている間に荷車を引きながらホレストアント達がやってくる、そこに冒険者達を乗せるとヒカリとクウを先頭にして全員ですすむ。
扉の前に来た時、緑達と一緒に歩いていたのはリーダーの男だけであった。
「なんという数だ…… だから【軍団】か…… しかし、昨日俺達があった時、子供達が居なかったのはなぜだ?」
「子供達には悪いんですが、毎日ダンジョンから出してるわけではないので……」
「なるほどな、子供達をみて勘違いする者達がいれば事件になるか……」
「確かに、これだけの子供達を見ればスタンピードと勘違いする者もいるな、しかもそれがギルドにでも報告させれれば…… くくくく、あははははは!」
「リーダー……」
普段の物静かなリーダーが大きな声を上げて笑う姿に仲間達が驚く。
「緑よ、ありがとうこれで全員の気が引き締まった。昨日の待遇で全員気が緩んでいたからな…… それを見越してくれたんだな」
「あははは、気づきましたか」
「おい! お前達もいつまで腰を抜かしてるんだ! 安全なのはわかっただろう! このまま運んでもらうつもりか!?」
そう言われて冒険者達も立ち上がる。
それを見た緑がニコリと笑う。
「では、いきましょうか!」
そう言うと昨日入ってきた門に緑が手をあて魔力を流すと昨日の大きさからさらに大きくなり、開きはじめる。
「皆でていいよー」
緑の声を聞き子供達は喜んで一斉に門から飛び出していく。
「「ぎゃあああああああああ!!」」
「「ヒヒーん!」」
ガシャーン
門の外から複数の悲鳴と馬の泣き声、更には物が倒れる音がし緑と魔緑は顔を見あわせる。
「「やばい!」」
緑と魔緑の2人は声をあせた後、大急ぎで門の外に走るのであった。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。
【完結】捨てられた双子のセカンドライフ
mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】
王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。
父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。
やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。
これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。
冒険あり商売あり。
さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。
(話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)
【完結】悪役令息の従者に転職しました
*
BL
暗殺者なのに無様な失敗で死にそうになった俺をたすけてくれたのは、BLゲームで、どのルートでも殺されて悲惨な最期を迎える悪役令息でした。
依頼人には死んだことにして、悪役令息の従者に転職しました。
皆でしあわせになるために、あるじと一緒にがんばるよ!
本編完結しました!
時々おまけのお話を更新しています。
『もふもふ獣人転生』に遊びにゆく、舞踏会編、はじめましたー!
本当の仲間ではないと勇者パーティから追放されたので、銀髪ケモミミ美少女と異世界でスローライフします。
なつめ猫
ファンタジー
田中一馬は、40歳のIT会社の社員として働いていた。
しかし、異世界ガルドランドに魔王を倒す勇者として召喚されてしまい容姿が17歳まで若返ってしまう。
探しにきた兵士に連れられ王城で、同郷の人間とパーティを組むことになる。
だが【勇者】の称号を持っていなかった一馬は、お荷物扱いにされてしまう。
――ただアイテムボックスのスキルを持っていた事もあり勇者パーティの荷物持ちでパーティに参加することになるが……。
Sランク冒険者となった事で、田中一馬は仲間に殺されかける。
Sランク冒険者に与えられるアイテムボックスの袋。
それを手に入れるまで田中一馬は利用されていたのだった。
失意の内に意識を失った一馬の脳裏に
――チュートリアルが完了しました。
と、いうシステムメッセージが流れる。
それは、田中一馬が40歳まで独身のまま人生の半分を注ぎこんで鍛え上げたアルドガルド・オンラインの最強セーブデータを手に入れた瞬間であった!

アワセワザ! ~異世界乳幼女と父は、二人で強く生きていく~
eggy
ファンタジー
もと魔狩人《まかりびと》ライナルトは大雪の中、乳飲み子を抱いて村に入った。
村では魔獣や獣に被害を受けることが多く、村人たちが生活と育児に協力する代わりとして、害獣狩りを依頼される。
ライナルトは村人たちの威力の低い攻撃魔法と協力して大剣を振るうことで、害獣狩りに挑む。
しかし年々増加、凶暴化してくる害獣に、低威力の魔法では対処しきれなくなってくる。
まだ赤ん坊の娘イェッタは何処からか降りてくる『知識』に従い、魔法の威力増加、複数合わせた使用法を工夫して、父親を援助しようと考えた。
幼い娘と父親が力を合わせて害獣や強敵に挑む、冒険ファンタジー。
「カクヨム」「小説家になろう」にも掲載しています。

私は、忠告を致しましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私マリエスは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢ロマーヌ様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
ロマーヌ様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は常に最愛の方に護っていただいているので、貴方様には悪意があると気付けるのですよ。
ロマーヌ様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
異世界へ誤召喚されちゃいました~女神の加護でほのぼのスローライフ送ります~
モーリー
ファンタジー
⭐︎第4回次世代ファンタジーカップ16位⭐︎
飛行機事故で両親が他界してしまい、社会人の長男、高校生の長女、幼稚園児の次女で生きることになった御剣家。
保険金目当てで寄ってくる奴らに嫌気がさしながらも、3人で支え合いながら生活を送る日々。
そんな矢先に、3人揃って異世界に召喚されてしまった。
召喚特典として女神たちが加護やチート能力を与え、異世界でも生き抜けるようにしてくれた。
強制的に放り込まれた異世界。
知らない土地、知らない人、知らない世界。
不安をはねのけながら、時に怖い目に遭いながら、3人で異世界を生き抜き、平穏なスローライフを送る。
そんなほのぼのとした物語。

異世界立志伝
小狐丸
ファンタジー
ごく普通の独身アラフォーサラリーマンが、目覚めると知らない場所へ来ていた。しかも身体が縮んで子供に戻っている。
さらにその場は、陸の孤島。そこで出逢った親切なアンデッドに鍛えられ、人の居る場所への脱出を目指す。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる