125 / 178
125話 ミドリムシと龍
しおりを挟む双眼鏡を除いていた冒険者達が見たものは、小さな子供が習得できるはずもない高度な武術を使い狼の魔物を次々と倒していく光景であった。
冒険者達も自分の持つ武器が無かった時のために武術をおさめる者が多い。そのため3人の子供が使う武術のレベルの高さに驚く。
だが、それだけでは先ほどのような驚きの声は上がらない。冒険者達が驚きの声を上げた理由は魔物達が3人に襲いかかると、体の1部が消失し倒れていくからであった。
「むぅ、討伐部位を残す様に言われたが消し飛んでしまったな」
「私達の力じゃ簡単に魔物の体なんてバラバラになってしまうわね」
「むぅ、どうしたものか」
冒険者達が驚きの声を上げているころ3人は悩んでいた。
「確か毛皮も売れるとはずだな」
「私、半分吹き飛ばしちゃったわ……」
「我もだな……」
そんな時ノームと言われた子供がぽんと手を叩く。
「そうだ、確かこうか?」
そう言って繰り出したのは手刀であった。ノームに飛び掛かった魔物が空中に飛び上がった瞬間、側面に回り込み、その首に手刀をはなつ。
魔物はそのままの体制で地面に着地もせず倒れこむと頭が落ちる。
「なるほどな」「そうすればいいわね」
そういってサラマンダーとウンディーネもノームを見習うように手刀で次々に魔物の首を落としていく。
3人が残りの魔物を手刀で1匹1匹丁寧に魔物を倒したため全滅させるのに思った以上に時間がかかってしまうのであった。
「ふむ思った以上に時間がかかってしまった」
「しかたないわよ、綺麗に倒した方が緑達が喜ぶんですもの」
「そうだな、しかしこの死体はどうやって運ぼうか……」
3人は倒した魔物の素材をどうやって運ぼうかと話していると干支緑達がやってくる。
「みんなー おわったー?」
「おお、干支緑達よ丁度良い魔物の素材を緑の元まで運ぶのを手伝ってくれ」
「「はーい」」
そうノームがいうと干支緑達がそれぞれ魔物の死体を髪で持ち上げる。
「では、みんな戻りましょう」
ウンディーネの声で干支緑と3人は緑の元に歩き出す。
「ば、化け物だ……」「あんな小さい子が……」
「緑色の子供達もあれは魔法か何かか? どう見ても魔物の死体が浮いてるように見える……」
3人が魔物を倒す光景と干支緑達がその倒した魔物を運んでくるのを見て冒険者達は思わずこぼす。
冒険者達はその後、干支緑達と3人が戻って来るまで声を発せずにいた。
それは、近くにいた緑が原因であった。得体のしれない子供達を温かい目で見る緑の姿に冒険者達が徐々に恐怖を覚えていった。
「みんな、おかえりー ケガはない?」
「「なーい♪」」「「あるはずがなかろう」」
「心配はしてなかったけど、いちおうね」
そう言って緑はニコリと笑う。
「じゃあ倒した魔物を預かろうか」
緑がそう言うと3人が申し訳なさそうに話始める。
「緑よ、すまぬ。いくつか潰してしまった魔物がある」
「ごめんねー 私もー」
「我もそうだ」
あやまる3人に驚いて目を丸くする緑であったがすぐさまニコリと笑い話始める。
「ごめんね。3人とも魔物の死体は残ったら他の魔物を集めちゃうから持っていくだけで、無理にきれいにのこさなくてよかったんだ」
「だが売れるのであろう?」
「私達はごはんが無くても生きていけるけど緑のダンジョンのご飯はおいしいから食べたいし」
「ああ、その食費分くらいは稼がないとな」
「お金の事は気にしなくてもいいのに…… でも、ありがとう! 3人共できればでいいからね。それで3人が危なくなったら…… ってそんな事はないか! じゃ魔物の死体は僕が預かるから」
そう言って緑は魔物の死体をアイテムボックスに入れていく。それを見た冒険者達は驚くがその恐怖から声も上げる事ができづにいた。
「すごいな…… アイテムボックス持ちか」「ほんとうね」
だがリーダーと斥候の冒険者だけは驚きの声を上げる。
その声を聞き緑が1番状態の良い魔物の死体を運びながら冒険者達に話しかける。
「譲ってもらったお礼に1番状態の良い物をさしあげます」
「そうか…… ありがたく頂戴する」
そう言ってリーダーの男が緑より魔物の死体を預かると他のメンバーに預ける。
「あ、そうかどうせなら解体してからお渡しすればよかったですね。すいません」
「いや、ただで貰ったようなものだ気にしないでくれ」
緑が話していると干支緑が緑の周りに集まる。
「おにいちゃん、おなかすいたー」「僕もー」「私もー」
「そうだねお昼にしようか。そうだ、皆さんも一緒に食べませんか?」
「お言葉にあまえよう」「そうねさっきからとってもいい匂いがするもの」
リーダーと斥候の冒険者の言葉に他の仲間は顔見合わせる。
「お前達、そろそろビビるのをやめろ」
「そうよもし彼らがその気なら騙すような事なんかせず全員がすでに死んでるわ」
「「たしかに……」」
そんな会話を聞いた緑は苦笑いしながら頬をかきながら呟いた。
「こんな怖がられるのは初めてだ……」
そんな会話をしている緑達に近づいて来るものがいた。
「おーい、緑飯にするぞー」
魔物の討伐が終わってから長々と緑達が話していたために魔緑が呼びに来る。
「あ、まーちゃん。こちらの人達の分のごはんも頼んでもらえる?」
「ああ、それは大丈夫だろう」
「皆さんもどうぞこちらに」
冒険者達は緑に言われるままに自分達の馬車を緑達が止めた馬車の近くに動かすのであった。
「みんな今日のご飯はカレーだよー」
「「わーい♪」」
緑がその場の全員にカレーを配っていく。全員にカレーが配られると緑が声を上げる。
「では、いただきまーす!」「「いただきまーす!」
「「おいしー♪」」
「「美味い!!」」
緑に食事に誘われた冒険者達もカレーを一口食べると思わず叫ぶ。
冒険者達は先ほどまで緑達に怯えていたのも忘れ一心不乱にカレーを食べ続けるのであった。
0
お気に入りに追加
91
あなたにおすすめの小説

元おっさんの俺、公爵家嫡男に転生~普通にしてるだけなのに、次々と問題が降りかかってくる~
おとら@ 書籍発売中
ファンタジー
アルカディア王国の公爵家嫡男であるアレク(十六歳)はある日突然、前触れもなく前世の記憶を蘇らせる。
どうやら、それまでの自分はグータラ生活を送っていて、ろくでもない評判のようだ。
そんな中、アラフォー社畜だった前世の記憶が蘇り混乱しつつも、今の生活に慣れようとするが……。
その行動は以前とは違く見え、色々と勘違いをされる羽目に。
その結果、様々な女性に迫られることになる。
元婚約者にしてツンデレ王女、専属メイドのお調子者エルフ、決闘を仕掛けてくるクーデレ竜人姫、世話をすることなったドジっ子犬耳娘など……。
「ハーレムは嫌だァァァァ! どうしてこうなった!?」
今日も、そんな彼の悲鳴が響き渡る。

スキルを極めろ!
アルテミス
ファンタジー
第12回ファンタジー大賞 奨励賞受賞作
何処にでもいる大学生が異世界に召喚されて、スキルを極める!
神様からはスキルレベルの限界を調査して欲しいと言われ、思わず乗ってしまった。
不老で時間制限のないlv上げ。果たしてどこまでやれるのか。
異世界でジンとして生きていく。
虚弱高校生が世界最強となるまでの異世界武者修行日誌
力水
ファンタジー
楠恭弥は優秀な兄の凍夜、お転婆だが体が弱い妹の沙耶、寡黙な父の利徳と何気ない日常を送ってきたが、兄の婚約者であり幼馴染の倖月朱花に裏切られ、兄は失踪し、父は心労で急死する。
妹の沙耶と共にひっそり暮そうとするが、倖月朱花の父、竜弦の戯れである条件を飲まされる。それは竜弦が理事長を務める高校で卒業までに首席をとること。
倖月家は世界でも有数の財閥であり、日本では圧倒的な権勢を誇る。沙耶の将来の件まで仄めかされれば断ることなどできようもない。
こうして学園生活が始まるが日常的に生徒、教師から過激ないびりにあう。
ついに《体術》の実習の参加の拒否を宣告され途方に暮れていたところ、自宅の地下にある門を発見する。その門は異世界アリウスと地球とをつなぐ門だった。
恭弥はこの異世界アリウスで鍛錬することを決意し冒険の門をくぐる。
主人公は高い技術の地球と資源の豊富な異世界アリウスを往来し力と資本を蓄えて世界一を目指します。
不幸のどん底にある人達を仲間に引き入れて世界でも最強クラスの存在にしたり、会社を立ち上げて地球で荒稼ぎしたりする内政パートが結構出てきます。ハーレム話も大好きなので頑張って書きたいと思います。また最強タグはマジなので嫌いな人はご注意を!
書籍化のため1~19話に該当する箇所は試し読みに差し換えております。ご了承いただければ幸いです。
一人でも読んでいただければ嬉しいです。
もう私、好きなようにさせていただきますね? 〜とりあえず、元婚約者はコテンパン〜
野菜ばたけ@既刊5冊📚好評発売中!
ファンタジー
「婚約破棄ですね、はいどうぞ」
婚約者から、婚約破棄を言い渡されたので、そういう対応を致しました。
もう面倒だし、食い下がる事も辞めたのですが、まぁ家族が許してくれたから全ては大団円ですね。
……え? いまさら何ですか? 殿下。
そんな虫のいいお話に、まさか私が「はい分かりました」と頷くとは思っていませんよね?
もう私の、使い潰されるだけの生活からは解放されたのです。
だって私はもう貴方の婚約者ではありませんから。
これはそうやって、自らが得た自由の為に戦う令嬢の物語。
※本作はそれぞれ違うタイプのざまぁをお届けする、『野菜の夏休みざまぁ』作品、4作の内の1作です。
他作品は検索画面で『野菜の夏休みざまぁ』と打つとヒット致します。
小型オンリーテイマーの辺境開拓スローライフ 小さいからって何もできないわけじゃない!
渡琉兎
ファンタジー
◆『第4回次世代ファンタジーカップ』にて優秀賞受賞!
◇2025年02月18日頃に1巻出荷予定!
◆05/22 18:00 ~ 05/28 09:00 HOTランキングで1位になりました!5日間と15時間の維持、皆様の応援のおかげです!ありがとうございます!!
誰もが神から授かったスキルを活かして生活する世界。
スキルを尊重する、という教えなのだが、年々その教えは損なわれていき、いつしかスキルの強弱でその人を判断する者が多くなってきた。
テイマー一家のリドル・ブリードに転生した元日本人の六井吾郎(むついごろう)は、領主として名を馳せているブリード家の嫡男だった。
リドルもブリード家の例に漏れることなくテイマーのスキルを授かったのだが、その特性に問題があった。
小型オンリーテイム。
大型の魔獣が強い、役に立つと言われる時代となり、小型魔獣しかテイムできないリドルは、家族からも、領民からも、侮られる存在になってしまう。
嫡男でありながら次期当主にはなれないと宣言されたリドルは、それだけではなくブリード家の領地の中でも開拓が進んでいない辺境の地を開拓するよう言い渡されてしまう。
しかしリドルに不安はなかった。
「いこうか。レオ、ルナ」
「ガウ!」
「ミー!」
アイスフェンリルの赤ちゃん、レオ。
フレイムパンサーの赤ちゃん、ルナ。
実は伝説級の存在である二匹の赤ちゃん魔獣と共に、リドルは様々な小型魔獣と、前世で得た知識を駆使して、辺境の地を開拓していく!

転生貴族の異世界無双生活
guju
ファンタジー
神の手違いで死んでしまったと、突如知らされる主人公。
彼は、神から貰った力で生きていくものの、そうそう幸せは続かない。
その世界でできる色々な出来事が、主人公をどう変えて行くのか!
ハーレム弱めです。

元34才独身営業マンの転生日記 〜もらい物のチートスキルと鍛え抜いた処世術が大いに役立ちそうです〜
ちゃぶ台
ファンタジー
彼女いない歴=年齢=34年の近藤涼介は、プライベートでは超奥手だが、ビジネスの世界では無類の強さを発揮するスーパーセールスマンだった。
社内の人間からも取引先の人間からも一目置かれる彼だったが、不運な事故に巻き込まれあっけなく死亡してしまう。
せめて「男」になって死にたかった……
そんなあまりに不憫な近藤に神様らしき男が手を差し伸べ、近藤は異世界にて人生をやり直すことになった!
もらい物のチートスキルと持ち前のビジネスセンスで仲間を増やし、今度こそ彼女を作って幸せな人生を送ることを目指した一人の男の挑戦の日々を綴ったお話です!

ソロ冒険者のぶらり旅~悠々自適とは無縁な日々~
にくなまず
ファンタジー
今年から冒険者生活を開始した主人公で【ソロ】と言う適正のノア(15才)。
その適正の為、戦闘・日々の行動を基本的に1人で行わなければなりません。
そこで元上級冒険者の両親と猛特訓を行い、チート級の戦闘力と数々のスキルを持つ事になります。
『悠々自適にぶらり旅』
を目指す″つもり″の彼でしたが、開始早々から波乱に満ちた冒険者生活が待っていました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる