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117話 ミドリムシの弟と妹2
しおりを挟む「それは仕方がありませんね」「はい♪ 仕方がないです♪」「しょうがないっす」
「しょうがありませんね~」「みんな、かわいい~」
小さな緑達があまりに可愛いため隠していた世界樹の話を聞き蟲人達は納得してしまう。
「それは、わかった…… これからこいつ達はどうする?」
「どうするとはどういう事でしょうか?」
1人冷静な魔緑が世界樹に尋ねる。
「今まであんたが、こいつ達を保護してくれてたんだろう? こいつ達が俺達と一緒にエルフの国から外に行きたいと言ったらどうするんだ?」
「……」
魔緑の質問に世界樹は下を向き黙り込む。
「……あの」
黙り込む世界樹に緑が声をかけようとした時、世界樹が顔を上げ笑顔を見せる。
「この子達の思うままに」
そう言った世界樹の目尻には涙が見られる。
「そうか……」
世界樹の返事に魔緑は黙り込む。それを見た緑が小さな緑達に尋ねる。
「みんなはどうしたい?」
「「う~ん」」
尋ねられた小さな緑達は考え込む。
「おにいちゃんたちといっしょにおそといきたいけど……せかいじゅのママともいっしょにいたいよ~」
それを聞いた緑はニコリと微笑む。
「なら大丈夫! 毎日ダンジョンを通って帰ってくれば良いよ!」
それを聞いた小さな緑達は喜び騒ぐ。
「やった!」「ママとまいにちあえる!」「おにいちゃんともいっしょにいける!」
「「わーい!」」
「良かった…… 本当に良かった…… ぐすぐす……」
小さな緑達は喜び、その姿を見た世界樹は安心したために先ほど目尻に貯めていた涙を流していた。
「世界樹様がこの子達を自由にしてくれてよかった・・・・」
「ああ、もしも世界樹がこいつ達を放したくないと言ったにもかかわらず、俺達と一緒に外の国に行きたいと言っていたら悩んでいたところだ」
緑と魔緑は世界樹が小さな緑達を束縛しなかったことに安心する。
「まーちゃん、僕達はこれからどうしようか?」
緑に尋ねられ魔緑が少しだけ考え返事をする。
「まだ行ってない獣人の王都に行くってのはどうだ?」
それを聞いた緑がポンと手を叩き納得する。
「そうだね! いきなり忙しくなったから忘れていたけど人族以外の国を周っているところだった! 明日以降は手伝いをお願いされなければ数日休みを取って獣人の国の王都を目指そうか」
魔緑の言葉に緑はここまでに自分達がしていたことを思い出す。
「「もふもふのおねぇちゃんの国に行くの!?」」
緑と魔緑が話す中、2人の会話を聞いていた小さな緑が尋ねる。その言葉を聞いた緑は【もふもふのお姉ちゃん】とは琉璃、凛、珊瑚の事を言っていると推測し返事をする。
「そうだよ~ もふもふのお姉ちゃん達の国に行くんだよ~」
「「わーい、おいしいものがたべれる~!!」」
緑の言葉に思わず小さな緑達が漏らした言葉を聞いた魔緑は思わず頭を抱える。
「あいつら、子供を食べ物で釣ろうとしたのか…… これは、お仕置きが必要だな……」
緑は気づかなかったが魔緑は自分の嫁達が美味しい食べ物で小さな子供達を釣ろうとしていた事に気づきお仕置きを考えるのであった。
世界樹と話した数日後のダンジョン内
「こら! お前達! 俺達以外の人と遊ぶ時は加減をしろと言っただろうが!」
「「にげろ~! おにいちゃんがおこった~!」」
魔緑が怒り、小さな緑達が喜んで逃げる。魔緑は真剣に怒っているのだが怒る加減が分からず小さな緑達は鬼ごっこをする様な気持ちで魔緑から逃げる。
「はぁ、はぁ、はぁ、ちくしょう。あいつら逃げ足だけは早い、はぁ、はぁ、はぁ」
小さな緑達と一緒に生活する様になってからもっぱら怒る役は魔緑になっていた。それは、緑が怒る基準が高すぎるせいもあり、ダンジョンにアランやシャークなどの他【赤い依頼】をこなしたチームが来て小さな緑達を見て遊びに加わった者達が疲労困憊になるためであった。
小さな子供達が遊んでいるのを見てダンジョンに来た冒険者の中でも子供が好きな者達は我慢できず遊びに参加する。
「「よし! お兄さん、お姉さん達が一緒に遊んであげるよ!」」
そう言って子供好きな冒険者達が小さな緑達の輪に入る。
「「わ~い! おにいちゃん、おねぇちゃんがあそんでくれる~!」」
「よし! じゃあお兄さんとお姉さん達がオーガの役をするよ!」
そう言って冒険者は一緒に遊び始めるが時間が経つと絶望し始める。
なぜなら【オーガごっこ】緑の以前居た世界なら【鬼ごっこ】になるが冒険者が鬼になり、いざ遊び始めると小さな緑達は冒険者の目の前から忽然と姿を消す。
「「みんなにげるよ~!!」」
しゅん!
「「え!?」」
突然目の前から子供達が消えパニックを起こす冒険者達。
「突然目の前から消えたぞ!?」「魔法で姿を消したのかしら!?」
小さな緑達は自分達だけで遊ぶ時は、身体能力が一緒なので本気で動きまわらないが、初めて遊ぶ冒険者達の時は全員が全力でその身体能力を使って遊ぶ。そのため高ランクの冒険者達以外は遊びが始まった瞬間に小さな緑達が突然目の前から消える現象を見る事になりだいたいの者達がパニックをおこす。
「「おにいちゃん、おねぇちゃんこっちだよ!」」
突然、目の前から小さな緑達が消え焦っている冒険者に遠くの方から子供達が声をかける。それを見た冒険者達が唖然とする。
それでも冒険者のプライドのためか小さな緑達を見つけた冒険者達は追いかけ始める。
「にがさないぞ~」「まってなさ~い」
「わ~! 来た~!」「逃げろ~!」「皆逃げるよ~!」
冒険者達が自分達の方に向かってくると喜んで逃げる小さな緑達。だがそれも悲しいことに逃げられてしまいしばらくすると、冒険者達はいよいよ本気になり遊びに加わっていないチームの仲間に支援魔法を貰い始める。
「おい! すまんが支援魔法をくれ! 特に速度が上がるやつを!」「お願い! ありったけ頂戴!」
支援魔法を求められたチームのメンバーは必死の仲間の願いに答え支援魔法をかける。すると支援を貰った仲間がすかさず走り始める。そんな様子を見た小さな緑達は喜んで逃げ始める。
「「わ! はや~い!」」
「つかまえちゃうぞ~!!」「逃がさないわよ~!!」
そう言って冒険者達は余裕があるように話かけ、走り出すが捕まえきれず体力が尽きるのであった。
「はぁ、はぁ、どうなんてるんだ!?」「ちょっとあの子達、早すぎない!?」
冒険者達は体力が尽き小さな緑達を捕まえれなかった事にぼやき始める。
「おい、お前達本気で逃げ回るな! 遊んでくれた人達に失礼だそうが!?」
様子を見ていた魔緑が冒険者達と遊ぶ時は手加減をしろと怒るのであったが、その言葉は容赦なく冒険者達のプライドを引き裂き魔緑も加わり冒険者の心の傷を増やしていた。
そんな魔緑や小さな緑達はをよそに珍しく緑は今悩んでいた。それは、小さな緑達が常識をどうやって習得すればいいか悩んでいたのであった。
「う~ん、どうしよう……」
11人いる小さな緑達の常識は、自分達11人が基本となる。しかし、この世界に緑や魔緑を含め彼等、彼女等しかいない【超ミドリムシ】の種族としてのスペックは驚くほど高い。【超ミドリムシ】は【超光合成】で産み出すエネルギーのおかげで、身体能力は獣人を、魔力の量と適正による扱いはエルフを、それぞれの得意とする種族を超えていた。
緑や魔緑は以前の世界の記憶を多く受け継ぎ、こちらの世界に来てからは周りの人達の情報を元にすり合わせをし、自分達の能力の高さを自覚していた。
そんな能力の高さを自覚することを小さな緑達に要求するのは酷であるこ事も認識していた。
なぜなら、小さな緑達の知識量は緑や魔緑と比べ本来の水野 緑の知識より少ないためであった。
「ねぇ、まーちゃん。どうすればいいと思う?」
「ああ、どうすればいいんだろうな…… それこそ、小学校でもつくるか?」
皮肉交じりで言った魔緑の言葉に緑はなるほどと手を打つ。
「そうだ! 以前言ってた冒険者や技術者をダンジョンに集め、学校の様な物を作る話をしていたけどそれこそ小学校をつくればいいんだ!」
小さな緑達にこの世界に慣れてもらう事とダンジョンでこの世界の技術を発展させるにはもってこいとだと緑は思う。緑がそんな事を思いついてから数日後、スタンピードが起こった、人族、エルフ、ドワーフの国からそれぞれ使者が緑の元を訪れ、今回の褒賞を相談したいというのであった。
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