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105話 ミドリムシの家族はエルフの国を守る2

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 琉璃、凛、珊瑚は1列になり黒い魔物達が集まっている場所でも比較的数の少ない部分を突っ切ろうと走る。

 3人はお互いをフォローできるように細心の注意を払い黒い魔物の間を走り抜ける。

「「え!?」」

 3人は思わず驚きの声を上げる。てっきり黒い魔物から攻撃を受けると思っていた3人だが、黒い魔物の群れは一切攻撃してくることもなく簡単に走り抜ける事ができた。

「なんで攻撃されへんかったんや?」

「すっごく嫌な話、もしかして魔物のむれと合流するつもりなのかも……」

「それは1番困る話だのう……」

 そう言うと3人は振り返り黒い魔物の群れと距離をとりいつでも自分達の防衛地点に向かって走れるようにしたうえで、自分達を追ってきた魔物達と黒い魔物の群れがどう動くか注意深く観察する。

 3人が見守る中、さらに黒い魔物達は3人の予想外の行動をとる。

「なんでや? うちらを追ってきた魔物を襲い始めたで?」

「すっごく嬉しい誤算ですね」

「たしかに嬉しい誤算だが状況がわからない…… う~む、仕方がないどちらにせよこの事も報告しにもどるかのう」

 3人はその場を後にし、この情報を伝えるために急いで自分達の防衛地点に走るのであった。



 3人が黒い魔物達と遭遇したころ防衛地点でも黒い魔物達が現れる。それにいち早く気づいたエルフの者達が叫び冒険者達に警告していた。

「気を付けろ! あの黒いもやのような者達は以前世界樹様に寄生していた奴らだ! 魔緑も致命傷を負わされたくらい強いぞ!」

 その言葉を聞いたフェン、グリン、ヒューイのチームのメンバーは驚愕する。

「あの魔緑に致命傷!?」「ほんまか!?」「魔緑に致命傷を負わせるなんて!? すっごく強いのか!?」

 エルフの者達はその致命傷で魔緑が龍種に変異する力を得たことをしらず、s級チームのメンバーは魔緑が変異する力を得る以前の話だという事を知らなかった。

 今まで連携を取らずにいたエルフの指揮官とフェン達3人はその会話を聞きさらなる危機感を覚え、連携を取らざる得ないと考える。

 すぐに3人は動き出しエルフの指揮官を探しはじめる。

「おい! エルフの指揮官はどこだ!?」

「ここだ! お前は冒険者のリーダーか!?」

 フェン達3人と同じようにエルフの指揮官も危機感からすぐに3人を探しに来て声を上げる。

「「時間がおしい! 一気に陣形を変えるぞ」」

 エルフと指揮官と3人が瞬時に陣形を練りそれを大声で伝達していく。それを聞いたエルフ達と冒険者達は、それまで連携を取らずにいたのが嘘のようにスムーズに連携とり陣形を再構築していく。その間もエルフも冒険者も黒いもやに細心の注意をはらいながら。

「危ない!」

 エルフの騎士が冒険者に叫びそれを聞いた冒険者が間一髪で攻撃を避け魔物を倒す。

「助かった! エルフの騎士と一緒に戦うなど思っていもいなかった」

「それは私達もだ」

 エルフの者達と冒険者が連携をとりより高い防衛力を発揮する中、黒いもやのような魔物が動き出すと倒された虫型の魔物に覆いかぶさる。

「おい! あいつら死んだ魔物にかぶさったぞ!」

「何をしでかすかわからん! 全員気を付けろ!」 

 しばらくして黒いもやが晴れるとそこには傷が無くなり黒い色をした魔物がいた。

「どうなってんだ! 真っ二つだった魔物が綺麗にくっつきやがった!」

「こっちのは魔法でぺしゃんこにされた奴が綺麗にもどったぞ!」

 あちこちで黒いもやが倒された虫型の魔物に覆いかぶさると復活したという連絡が入る。

 それを聞いたエルフと冒険者達の警戒心とは裏腹にその復活した黒い魔物達は、エルフや冒険者達には一切目をくれず魔物に襲い掛かり始める。



 黒い魔物達の連絡が位の高い者へ伝えられ最後に世界樹の近くにいる総指揮官のエルフとフェン、グリン、ヒューイの耳に入り、4人は考え込んでいた。

『黒いもやのような魔物は敵なのだろうか』

 そんな考えが4人の脳裏によぎる。考え込む4人のそばに人が降ってくる。

 彼らは世界樹の枝より降りてきたのであった。

「だれだ!」

 すぐさまエルフの騎士は叫びその者達を確認すると絶句する。

 同じようにフェン、グリン、ヒューイの3人もその者達が突然自分達の索敵範囲に現れた事に驚くがさらに3人はその者達の姿が自分達が良く知る知り合いに似ていたため驚愕する。

「「魔緑!?」」

 4人が思わず叫ぶが叫んでからすぐさま黙り込む。その理由は自分達が知る者よりも幼くしかも複数人いたからだ。

 そんな警戒する4人と魔緑に似た幼い子供達の間に突然神々しい光が出現する。4人は驚き注意深くその光を見つめる。4人が見つめる中、光は徐々におさまり始め人の形を成す。その人を見ていたエルフは思わずこぼす。

「こ、この気配は世界樹様なのですか?」

 その言葉にフェン、グリン、ヒューイの3人は驚くが一切視線を外すことはなかった。すると1人の美しい女性に変わった光は話し始める。


「はい、私は世界樹です。 くわしい話をしている時間がありませんので簡潔にいうと子の達は味方です。 安心してください。 各所で発生した黒いもやとそれによって復活した魔物はこの子達の能力です。エルフと冒険者の皆さんは黒い魔物達のバックアップに回ってください」

 そう世界樹が説明するがフェン達は3人は迷う。ただでさえ不確定な事が起こっているうえで世界樹と言われてもそれを信じていいかもわからない。今ある情報だけで判断できずにいた.

 3人がどうしたものか頭を悩ませていると娘達がその場所に到着する。

「おとん、けったいな事がおこってるわ」

「わかってる、こいつらの事やろ」

 凜の言葉にグリンが返事をし指さすのを見て凜たちも指された方向を見る。

「「え!?」」

 魔緑に似た小さな子供達を見て3人はこぼす。

「ごっつかわええな~ でもまーちゃんに続いてるつながりににたもんがこの子達も繋がってるような気がするわ」

「ふむ、この子達もまーちゃんやみーちゃんの兄弟姉妹なのかもしれんのう」

「すっごく似ていますね~」

「のう琉璃よお前達3人が戻ってきた説明をしてくれるか? こっちも状況を説明する」

 そういってそこに居た者達は状況のすり合わせをする。



「なるほどのう以前戦った寄生した者達自身も緑や魔緑の兄弟姉妹だったと……」

「しかも世界樹様自身がその子達をかくまっててんな」

「すっごく不思議なのはなんで世界樹様がその子達をかくしたかですね」

 3人の言葉にその場に居た者達の視線が世界樹の向くと世界樹は呟く。

「だって…… 可愛かったんですもん……」

 その言葉に一同は驚愕のあまり絶句するがエルフの総指揮官が慌ててフォローする。

「世界樹様は純粋なのだ!」

「でも、まーちゃん死にかけてんで……」

「確かに兜が龍種の魔石を持っていなかったら危なかったのう」

「すっごく危険でした」

 世界樹は魔緑の3人の嫁から詰め寄られると下を向いてうなだれながら答えるのであった。

「もし、龍種の魔石がなかったら私が彼を直すつもりだったのです……」

 そんなやり取りをみてフェンが会話が続くのに待ったをかける。

「まぁ、その話は一旦置いといて今はスタンピードをどうするかだのう」

 世界樹と娘達の様子を見ていたフェンが話をもとに戻す。

「先ほど世界樹様がおっしゃられたように子供達が操る黒い魔物達を前に出し、それを我らエルフと冒険者達でバックアップすれば良いだろう」

「せやな、数が多いから時間がかかるかもしれへんけど娘達の話を聞くと黒い魔物は強くて連携もとれるんやろう? これだけの戦力がそろったんやスタンピードも殲滅できるだろう。

 フェンとグリンの会話で今後の戦略が決まるのであった。
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