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78話 ミドリムシの遊園地
しおりを挟む「いやっほー!」「ご機嫌だぜ!」「いけー!」
今一緒に旅をしている冒険者達はご機嫌だった。
緑のダンジョンより出てきた子供達の一部が冒険者達を乗せたいと緑に言ったのでその事を冒険者達に伝えると彼らは二つ返事で申し出を受ける。
「え? 俺らなんかを乗せてくれるんですか?」
「むしろこっちが恐ろしくて頼めない事を言ってもらえるとは……」
「何かお支払いした方がいいのでしょうか?」
冒険者達は緑に恐縮しながらも乗ってみたいために強く断らない。
「はい、子供達はダンジョンに来た孤児達と遊ぶ時に背中に乗せている者達もいるので」
「それならのりたいです!」「お子さん達がいいなら!」「「俺も俺も!」」
1人の冒険者が乗りたい事を伝えると他の冒険者も乗りたいと一斉に言い始めたので、冒険者も子供達も乗る側と乗られる側でそれぞれ順番をきめるのであった。
今、冒険者達の馬車も緑達で御者をしていた。結局順番が待てなかった冒険者達。
冒険者達は皆が1人ごとに1匹の緑の子供に乗っていた。さすがは冒険者で攻撃を受けないと分かれば好奇心を抑えきれず乗ったとたん大騒ぎをし始める。
乗られる側の子供達は今はホレストアントだけであった。子供達はそれぞれ体の大きさが違うが小さい者は遊園地のゴーカート、大きい者は車の様な乗り心地であった。
特に小さいもの達でも冒険者1人をのせても普段となんら変わらいない機動力を見せ冒険者達を喜ばす。
変異種で体の大きなもの達も冒険者を乗せて車の様に颯爽と風を切る。
「皆さーんそろそろ休憩にしますよー」
子供達が冒険者をのせて走り続ける。しばらくして緑は次の休憩を取る事を伝える。
「あ、はい……」「了解です……」「また、乗せてくれるか……?」
「はい、皆さんそんな落ち込まないでください! 休憩のあと子供達の中から別の乗せたい子を集めますので」
そう言って緑達は休憩をとるのであった。
休憩の際の食事は緑が作る。それを食べた冒険者達は驚きの声を上げる。
「うめぇ!」「最後の晩餐は緑さんの作る飯だ!」「うーまーいーぞー!」
冒険者達は緑の作った食事を食べ思い思いの感想を述べる。
「わざわざお前が作る必要があったのか?」
魔緑が緑ん尋ねる。
「旅は道ずれっていうからいいんじゃない?」
お気楽な緑の返事に魔緑はそれ以上言葉を続けない。
「ああ、そうだな……」
緑の言葉に魔緑はただ一言小声で返事をする。
昼食も終わり、緑達はドワーフの国を目指す。
「ゴードンさんドワーフの国には後どのくらいで着きます?」
緑がゴードンに尋ねる。
「う~む、このままのペースで行くとまだ少し日数はかかるの」
「冒険者達の馬車にスピードを合わせるとどうしても普通の日程になってしまうからのう」
「なるほど、確かにそうですね」
「緑様、私が先に飛んでダンジョンの扉を設置してきましょうか?」
2人の会話を聞いていたヒカリが緑に尋ねる。
「ありがとうヒカリ。でも、皆での旅を楽しもう。ヒカリだけ先にむかってもらうのは嫌だよ」
緑はそう言ってヒカリの頭をなでる。
なでなでなで
緑がひとしきりヒカリをなでたので手を離すと。ヒカリが無言で悲しそうな顔をしたため緑は再びなで始める。それを見ていた他の蟲人が声を上げる。
「クウもなでてほしいです♪」「私もお願いします~」「みどりしゃま~」「た、大将俺も!」
「わかったよ、みんな順番だね」
「すげー人気だな・・・・」
蟲人達が自分もなでて欲しいと言い始めたのをきき魔緑がぼそりと呟くと何か考え事をし始める。
「まーちゃんもなでて欲しいのか?」「うちがなでたろか~?」「私もなでたいです」
「だー! ちげぇよ!」
「なんだ、なでられたいと思ったのでのう」「うちもおもたわー」「すっごい残念です~」
「だからちがうんだよ! あ~くそ!」
緑はそう言うと琉璃、凛、珊瑚の頭をなで始める。なでられた3人は驚きの声を上げる。
「ほう?」「ほえ?」「あらら?」
「普段から感謝しているんだが、あいつらを見て思っているだけじゃだめだと思ってな」
「のう、まーちゃんもう一度じゃ」「うちもうちも!」「いっぱいなでてください」
なでなでなで なでなでなで なでなでなで
がし! がし! がし!
魔緑はさらにしばらく3人の頭をのなでるが、頭をなでられよろこんだ3人に抱き着かれる。
「だー はなせー」
「よいではないか、よいではないか」
「うちらも思っているだけじゃあかんし」
「すっごくうれしかったです!」
そんな様子をみていたゴードンがニヤリと笑い口を開く。
「魔緑、お前も大変だな」
「ふん! 大変じゃあねぇよ……」
ゴードンの言葉に小さな声で魔緑が答える。
「「でれた(のう)」」
魔緑の言葉を聞き取った3人が口をそろえる。
「うるせー!」
「「うらやましい……」」
そんな緑や魔緑を見てうらやましがる冒険者であった。
食事を含めた休憩も終わり、緑がダンジョンの扉を開けると今度はキラービー達が出てくる。
「「おお! もしかして空をとべのか!?」」
扉から出てきたキラービー達を見ると冒険者達は興奮を抑えきれなかった。
冒険者達が横に間隔をあけ立つとその背中側からキラービー達が冒険者達の胴体を一斉に掴む。そのままキラービー達が一斉に飛び立つ。
「「おおおおおおお!!」」
そこからキラービー達は綺麗にそろって飛び始める。高位の魔法使いや従魔がいなければ普通の人間は一度も空を飛ばずに一生を終える。
そんな貴重な体験をする幸運に恵まれた冒険者達はホレストアントの時と同じように大騒ぎする。
ただ今回は先ほどとちがってキラービー達に運ばれるような形で空を飛んでいるため体はうごかさない。
キラービー達は冒険者が徐々になれるとアクロバットな飛行を入れ始める。冒険者達は緑の子供達を信用しているために純粋に楽しんでいた。
緑達も道を進みながらそんな冒険者達とキラービーの様子を見ている。
「あ」
その時、某冒険者ちキラービー達の遊覧飛行を見ていた緑達は思わず声を漏らす。
何故ならキラービー達が一斉に冒険者達を放したからであった。
「「ぎゃああああああ!!」」
突然の事に冒険者達は叫び声を上げる。急降下していく冒険者達は叫び続ける者、気絶するもの、色々たれながすもの、死を覚悟するものなどにわかれた。
冒険者達が地面まであと少しのところで再びキラービー達が冒険者を掴む。その後、色々たれながしたもの以外は再び空の遊覧飛行を楽しむのであった。
ちなみに色々垂れ流したもの達は緑に桶と水を借りにくるのであった。
その後、貴重な体験をした冒険者達は緑に礼を言い自分達の馬車に乗り込む。冒険者達が自分達の馬車に戻ると再び全員でゆっくりとドワーフの国を目指すのであった。
数日後、緑が今まで見た中で一番大きな城壁が見えてくる。
「おい、緑あれがドワーフの国の城壁だ」
「うわー! すごいですね! かっこいい!」
「うむ、そうだろう。ドワーフの国の城壁が一番かっこよくて頑丈なんだ」
緑が城壁をみた反応に喜ぶゴードン。
「それと緑、以前お前達がゴランの街に来るときに振っていた旗を出してくれるか。
「あ! あれですね」
そう言って緑は一瞬で髪を編み込むと大きな旗にして振り始める。
「そんな大量に髪をのばしてハゲないのか?」
「ハゲ・・・・ いや、魔力で伸ばしてるか・・ら・大丈夫じゃ・・・・今度女神様にきいてみよう」
そんな会話をしていると突然、緑と魔緑に女神の声が聞こえる。
『大丈夫、ハゲません』
それを聞いた魔緑が緑に尋ねる。
「聞こえたか?」
「うん・・・・」
「剥げなくてよかったな」
魔緑がそう言い2人で苦笑いをするのであった。
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