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71話 ミドリムシはエルフの国を出発する
しおりを挟む次の日、緑と魔緑は昨日の話をするために城に行く。
城の訓練所に出た緑は騎士の待機場所に行き王様に会いたいことを伝える。
緑の話を聞いた騎士はすぐさま部屋を出て緑達が報告に来たことを伝えに行くのであった。
「なあ、少し待つ間体を動かさないか?」
緑達は、本来なら朝の鍛錬の時間に城に来ていたため、魔緑が訓練所にいることもあり少し鍛錬をしようと提案する。
「そうだね、直ぐに会えるかわからないし少しだけ体を動かそうか」
そう言ってニコリと笑うのであった。
「じゃあ、行くぜ」
そう言って仕掛けたの魔緑であった。
魔緑の能力は探索能力に特化していた。動物の可能性で様々な能力をもち情報収集能力を持っている。
これは、攻撃能力を持っていないからと言って馬鹿にできない。
魔法適正の100%の火の魔法と動物の探査能力をフルに使うと、相手がどこに防御の重視をおいているか、体温上昇から考えられる残りの体力など様々な状況を把握することが出来る。
さらには、髪での物理攻撃を絡める。
髪による圧倒的な手数と高い攻撃力を持つ火の魔法での攻撃を防御の薄い場所に集中させる。
一方緑は、水を凍らせいくつもの盾を自分の周りに設置する。それを髪で操り敵からの攻撃を受け流す。
魔緑と違い緑は魔法を防御にまわす。さらに自分の体の周りに水を作り出す事で日の当たる場所であれば無尽蔵にエネルギーを作り出せるため防御能力や魔力量、体力により戦闘可能な時間が長く高い防御録を持っている。
今は訓練所のために魔法に関しては全て城や周りに被害が出ないと思われる方向に流すためにいつもより厳しい物になる。
そんな緑と魔緑の模擬線が始まると訓練をしていたエルフ達がその様子を見学するために周りに集まっていた。
2人の髪がぶつかることで弾かれた互いの髪が地面を打つそれが緑と魔緑の周りの地面をえぐり、訓練の場として作られた場所が荒れていく。
「「おおお!」」
周りで見ていたエルフ達がどよめく。忙しなく動く2人にあわせて地面が荒れていく。訓練により踏み固められた地面が種まきを迎える田畑の様に耕されていく。
「その辺りで終わってもらえないか?」
その言葉に2人はぴたりと動きを止め声を発した人物に顔を向ける。
「すいません、ピエールさんつい夢中になってしまって。もしかしてお待たせしてしまったでしょうか?」
「すまない、ついついいつもの癖で長引いてしまった」
「いや、大丈夫だ。だが王を待たせたくはないのでな・・・・ 付いてきてくれ」
ピエールがそう言って3人は謁見の間に向かうのであった。
「緑よ報告があるとの事だが」
王の言葉により緑は昨日の女神との事を王に説明する。
「ふむ、お前達に明確な目標ができたか」
「はい、他の僕達を探します」
「そうか・・・・ 我らの国で緑に関係するような事があればすぐに連絡をいれる」
「ありがとうございます」「助かる」
王の言葉に感謝をする2人。
「お前達も定期的に連絡をするがよい。緑、そのさいには、いつものワインも頼むぞ」
「それが目的じゃねぇか・・・・」
王のワインの催促に魔緑があきれる。
「これは口実じゃ! 緑が気兼ねなく来れるように言ったのじゃ!」
「王様ありがとうございます!」
緑が感激した様子で王に感謝を伝える。
「うろたえすぎだろう・・・・ おい、騙されるな。絶対にワイン目当てだ・・・・」
「そうなんですかピエールさん」
「・・・・」
そう言ってピエールを見る緑であったがピエールはただ真直ぐに前を向いて真面目な顔をしているだけで何も答えない。
自分の飲む分が少なくなるかもしれない事と王への忠誠心から否定も肯定も選べないピエールが出したこたえ、それが沈黙であった。
「・・・・」
それを察した緑がジト目でピエールを見る。緑もピエールの心情と立場を理解したが少しだけ不服な感情を伝えるために無言でピエールを見つめる。
見つめられたピエールは視線を感じ無表情で前を向き緑と視線を合わずにいたが大量に汗をかいていた。
「エルフ達はお前のワインに首ったけだな・・・・」
魔緑はやれやれと言った態度でつぶやく。
その後、緑達は謁見の間を後にする。
「こんにちわ」
「「こんにちわ~」」
城を出て向かった先はエルとアルの家であった。
2人が家の前で遊んでいたので緑が挨拶をする。
「もう俺よりなつかれているな」
以前の態度と違い緑にきちんと挨拶をする2人をみて魔緑が呟く。
「あ、にせものがすねてる」「ほんとだ、ほんとだ」
「おい! いつから俺が偽物になった!?」
「「きゃー」」
魔緑が2人を捕まえようとすると2人は喜びながら逃げていく。
「あら、こんにちわ」「どうりで賑やかだとおもった」
2人の両親がでてきて緑に挨拶をする。
「こんにちわー」
「「うえ~ん、いっちゃやだ~」」
緑と魔緑が4人にこれからの事を話すとエルとアルの2人が泣き出してしまった。
「泣かないで2人共またすぐにあえるから・・・・ ぐす・・・・ううう」
「お前まで泣いてどうする!」
2人が泣くのを止めようとする緑が泣き出しそうになり魔緑がヤレヤレとため息をつく。
「うううう・・・・ 2人とはなれたくないよ」
「お前は子供か!」
2人と離れたくないと言い始める緑を魔緑がしかる。
「まーちゃんは寂しくないの?」
涙目で緑が魔緑に尋ねる。
「お前がダンジョンの入り口を各街に置いている理由はなんだ?」
「いつでも行き来できるようにするため・・・・」
「そうだな、寂しい理由が思い当たらないんだが?」
「でも、ここは入り口がお城にあるから・・・・ そうだ、お城以外にも入り口作っちゃお」
「それでいいんじゃねぇか? 他の街だと孤児院においてるんだろう?」
「そうだね」
そう言うと緑は家の外にでると土魔法で祠の様なものを作り出しそこに扉を設置する。
「うわ~ すご~い」「まほうだ、まほうだ」
2人は緑の手際を見て驚く。
「本当にすごいわね」「ああ。一瞬で立派な祠ができてしまった」
「ほら、これでいつでも遊びにこれる」
緑がそう言って扉を開けると2人が中を覗く。
「ほんとだ」「いつでも緑と会える」
2人はダンジョンにいつでも入れることを確認すると喜ぶのであった。
「「バイバーイ」」
その後、緑と魔緑はエルとアルの家を出てエルフの国の入り口まで来るとダンジョンの扉を開ける。
「みんな準備はいい?」
緑が確認すると全員が返事をする。
「じゃあ、イリスさんお願いします」
「はい、ご案内します」
そう言ってイリスは先頭を歩き緑達の案内をする。
しばらく歩くと周りの木々が少しづつ小さくなる。
「ここまで来れば大丈夫でしょう」
「ありがとうございます。では僕達はいきますね」
そう言うと緑はダンジョンの扉を開ける。
ダンジョンの扉を開けると中から馬車を引いた大きなホレストアントが2匹出てくる。
「私たちの国に来る際に乗っいた馬車ですね。馬車と言う呼び名が正しいのかはわかりませんが」
「はい、呼び名は正しくは蟻車と呼びそうですが呼び名れた馬車ってよんでます」
「はははは、そうなんですね。っといつまでも話していると出発できませんね。それではいってらっしゃませ」
「いってらっしゃませ?」
「はい、私達は緑さん達のお帰りをいつでも歓迎します」
「そうですか・・・・ ぐす・・うう」
「おい、泣くなよ。出発するぞ」
「うう、そうだね。出発しようか・・・・ イリスさん行ってきます」
「「いってらっしゃませ!」」
イリスを筆頭に他の警備の者達も緑達を送り出すのであった。
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