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63話 ミドリムシと世界樹
しおりを挟む「「生の魚をたべるのか!?」」
「はい、美味しいので是非食べてください」
もと日本人の緑にとって魚を生で食べることに抵抗はない。ただそれがこの世界の人達に当てはまるかは別の話であり、特に森で生活をしているエルフ達には馴染みがなかった。
「しかもこの真っ黒な醤油と言ったか? これに付けて食べるなど・・・・」
緑は王都で買い物をする際に日本にあった調味料を価格相場が崩れない程度に大量に買い込んでいた。
しかし、まだそれらの調味料が世間に受け入れられるには時間がかかっていたようだ。誰もが食べるのを迷っている中、王がそれを食べた。
「あ! また王様は毒見もさせずに食べられて! 緑さん達が気づかない毒や寄生虫がいたらどうするですか!?」
「寄生虫や毒に関しては僕の【鑑定】のスキルで確認したから大丈夫ですよ」
「「鑑定のスキル!?」」
「あれ? 珍しいのでしたっけ?」
そんな緑にピエールが答える。
「まぁ、確かに珍しいスキルではあるが国ごとにお抱えがいるはずだ」
「ああ、確かにこのエルフの国にも【鑑定】のスキルを使える者は数名いるのだが今我らが一番調べたいものが彼らのスキルを使っても鑑定できなかったのだ・・・・」
「その鑑定したいものってなんなんですか?」
「「世界樹様だ」」
「緑は世界樹様に近い存在だからもしかすると鑑定できるのかもしれないな」
王が呟き何やら考え始める。しばらくすると王は緑に顔を向ける。
「なぁ、緑よそなた規格外な能力に頼めないか? 明日にでもいいから世界樹様を鑑定してくれ、もし世界樹様を鑑定できたら褒美もだす」
「王様、鑑定できるかはわかりませんがやってみます」
「緑よ感謝する。話は変わるが緑よここには美味いワインがあるそうだな」
緑が王の情報源と思われるピエールを見ると苦笑いし拝むポーズを取っていた。
「はい、ピエールさんのお墨付きです。どうぞお試しください」
そう言って厨房からワインを持ってくる。
「これがそのワインです」
緑がグラスに注ぎ王に手渡す。
「ふむ、香りも申し分ないな」
王がそのグラスに口を付ける。
「・・・・美味い。美味すぎるぞ緑これはボトルでなく樽で数個わけてくれんか? その変わりは金でも物でもなんでも言うがいい」
「な!? 樽で数個ですと私も1日に飲む量を制限されているのにずるいですよ、王様!」
王の言葉を聞きピエールが慌てて王に詰め寄る。
「そんなに気にいってもらえるのはうれしいですね、では樽をいくつかお出ししますね」
「緑ずるいぞ!」
必死なピエールをみて緑が笑いながら答える。
「ピエールさんはうちのダンジョンに入ってからずっと褒めてくれていたので気遣いから褒めてくれてるのではないかと思って心配してたんです。本当に気に入ってくれていたんだったらピエールさんの制限もなくしますんで。皆さん今日は心行くまでお楽しみください」
そう言って緑がいくつかの樽を出すと宴会は夜遅くまで行われたのであった。
翌日、謁見の間に行くと二日酔いで顔色が悪い王を見て緑は状態回復の実を緑が渡す。
実を食べるとたちどころに二日酔いが治り他の者達の分も欲しがる王に実を渡す。
王が他の者達に実を渡すのを見ていたピエールはその実が重篤な病気をも治す効果を持っていることを伝える。すると誰も口にしようとしなかった。
「ピエールそれは本当か?」
「 知り合いの冒険者が長年、嫁のために探していた治療法が緑の実で解決しました」
それを聞いた緑はシャークの事だと気づく。
「余分にいくつかご用意しますので気にせず食べてください」
「「本当か!?」」
緑がそういうと全員が実を食べる。
「「おお!? 一瞬にして二日酔いが治った!」」
その様子を見て王が尋ねる。
「だれか身内に重篤な病にかかっている者はいないか!?」
「たしか、文官の娘で現状治療法が見つかっていない病にかかっている者が!」
「すぐに実を持っていけ!」
王にそう言われて1人のエルフが走っていく。
「完全に治るか分からないので過度の期待はしないでくださいね・・・・」
緑がそう言うと王が答える。
「緑よ我々エルフは寿命が長い分子供に恵まれない事が多々ある。そんな中病気になってしまい治療法がない場合広がると一気に人数がへってしまう、もし緑の実が効果の高い物であればそれはエルフ全体を救う事に繋がる・・・・」
そんな真剣な王の言葉に緑は嫌な汗をかき始める。
「そのため、緑の実の効果を確かめたいのだ」
ダーン!
大きな音を立てて謁見の間の扉が開く。
「王様! 治りました!」
「うちの娘を救ってくださった方に合わせてください!」
実を持って行ったエルフと病気にかかっていた娘の父親と思われるエルフが謁見の間に入ってくる。
「そこにいる緑という名の少年が実を提供してくれたのだ」
それを聞いたエルフが緑の元に駆け寄ると跪き涙を流す。
「本当にほんと・・・うに・・・あり・・がとう・・ございました」
嗚咽しながらそのエルフは緑に感謝を伝えるのであった。
「治って良かったです・・・・ 無駄に期待をさせて治らなかったらどうしよかと思いました。どうぞこれをもって娘さんのところに戻ってあげてください・・・・ 病病気で落ちた体力を回復する実です」
「ああ・・・ありが・・とう・ございます」
その者は緑に感謝を何度も感謝伝え謁見の間から出ていくのであった。
「緑よエルフの王として心から感謝する」
「ここに来てから感謝ばかりで困りますよ。どうか気にしないでください。僕は僕の能力で助けれる人は全て助けたいと思っているので」
「「感謝する!」」
そう言って緑の言葉を聞いたエルフ全員が緑にたいして深い礼をするのであった。
その後、王がピエールの方を向き口を開く。
「ピエールよ・・・・よく緑を連れて来てくれた感謝する」
「私は私の国の事を思って動いただけですよ・・・・」
そう言ってピエールは苦笑いし頬をかくのであった。
そんなやり取りをした後王が緑に顔を向ける。
「では緑よ、昨日話をした世界樹様の鑑定をお願いしてもいいだろうか?」
「はい、成功するかわかりませんが鑑定してみます」
「それでは世界樹様まで案内する。
緑達は、謁見の間を出て世界樹の元に移動するのであった。
「近くで見るとさらに大きくみえますね」
エルフの国は森の中にあった。その森も普通の森と比べると遥かに広く、1本1本の木が大きい。
普通の森では1本ほどしか見かけることないような大きな木がこのエルフの国には無数に生えている。
だが、城とこの世界樹のまわりだけは木が1本も生えていない。その木の生えていない部分が世界樹の影に入るほどの世界樹は大きいのであった。
「緑よ鑑定してみてくれるか・・・・」
「はい・・・・ 鑑定・・・・ これは・・・・」
「何かわかったのか?」
「世界樹様は何かに寄生されて弱っています」
「そうであったか・・・・」
「理由はわかっていたんですか?」
「いや、理由はわかっていなかったが世界樹様が弱っていたことは知っていた」
「やっと俺の言葉を信じやがったか」
そう言って巨大な狼に乗った魔緑が姿を現す。
「魔緑か!?」
「そう警戒するな、ここまでわかったのなら暴れたりしねぇよ」
緑は王と魔緑のやり取りを聞き首を傾げる。
「あの~ どうゆう事か説明してもらえますか?」
そう言って緑は王と魔緑の顔を交互にみて尋ねるのであった。
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