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36話 ミドリムシの家族はドラゴンと戦う

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 兜がドラゴンが居たという伝令をうけその場所に近づくにつれ【ドラゴンスレイヤー】のチームのメンバーが浮足立っている事が感じられた。



 その理由は、竜種と思われたドラゴンが龍種だったとの声が聞こえてくる。竜種と龍種では生物として全く違う事が兜が声を聞くことで理解する。



 龍種は竜種とは隔絶した戦闘能力を持っており、竜種は一般モンスターの延長線上にいるモンスターでありただ本能のままに暴れまわる存在であるが龍種は違う。



 人語や戦術を理解し、人以上に賢く魔力や肉体的な強度も竜種のそれを遥かに上回る。



 先ほどまで兜が自分達と一緒に行動を喜んでいたレッドの表情にもあせりの色が浮かぶのを兜は感じていた。



「まずいな・・・・・今回の依頼は撤退・・・・いや逃げる事を念頭に置かなきゃなんねぇ・・・・」



「そんなに違うのか?」



 兜は思わず尋ねる。兜の質問にたいしてレッドは悔しい顔をし答える。



「ああ、正直いま俺達だけで龍種に挑むのは無謀としか言えない・・・・」



 その言葉に兜は驚きと喜びの心情があることに気づく。兜は絶対的に崇拝する緑とその家族の自分達には敵は居ないのかと考えたことがある。



 それは、兜が緑と出会う前はレイとモンスターながらに強い敵と戦うために旅をする生活を送っていたが緑と出会い、緑を崇拝するヒカリとクウに敗れ自分もその傘下に入る形になり、緑より力を授かる事になるが以前の様に強者に挑むことがなくなった。



 それは、緑より授かった力が大きすぎた弊害であった。兜は緑が軽く見られたり蔑まれるたびに自分が矢面に立ち模擬戦という形でその評価を覆してきた。



 先日の緑をゴブリン呼ばわりした冒険者には今まで感じたことがない怒りを覚えたがその冒険者を叩き潰さなかったのは緑の立場を考えてであった。



 正直兜は緑が人間の国のルールに縛られることに疑問を持っていた。緑の事を考えるとそれこそ今いる国と事を構えても兜は互角化かそれ以上だと考えていた。



 そんな中、兜が緑の行動に黙って従っていたのは緑の家族になり知った絆のためであった。兜はそれまで自分は強い者に挑戦し続けて最後は自分よりも強い者と戦い敗れるものであると考えていた。



 しかし、緑の家族になり緑、ヒカリ、クウ、レイ、胡蝶と家族が増えるたびに自分はこの家族の一番前を歩き家族に降りかかる、全ての害するものから家族を守りたいという思いが芽生えた。



 そんな思いが生まれた後、兜はさらに守りたい存在が現れる。



 それは、一番新しい模擬戦で兜と戦った冒険者達のリーダであった。



 そのリーダーは自分が被る汚名やその後の事を全て知っていながら兜と真摯に向き合いその力を認め、自分の死をかけて兜に勝つために死力を尽くした相手であった。



 そんな相手の家族を守らなければと兜に覚悟させるのは龍種のアンデットであった。



 ただでさえ強靭な肉体を持つ龍種であるにも関わらずそのアンデットは生きてるものと違いその体のリミッターがなく、自分の動きと共に体が壊れ動けなくなるまで戦い続ける。



『大将すいません、俺はこんな依頼で大将と2度と会えなくなるかもしれません』



 そう心の中でつぶやく兜であった・・・・・。



 兜とレッドが現場に着くとそれは撤退戦になっていた。前衛の盾になる冒険者と後ろに控えた回復職達が必死にドラゴンの攻撃から耐えていた。



 兜はそれを見た瞬間頭の中が真っ白になる。それは、自分が守りたいと思ったものの家族が傷つき、その家族たちが多くを生かすために家族を切り捨てる判断をし後退をしてる光景を見たからであった。



 そんな光景をみた兜はすぐさま自分が持っていた傷や体力、魔量を回復させる実をレッドに投げつける。



「痛てぇ! なにするんだ! 」



 そんなレッドの言葉を無視し兜は龍種に体当たりをする。しかし、龍種の全長は20mに達するため大したダメージはおろか龍種を押し返す事するらできなかった。



 兜は焦るそれは、緑と出会ったときクウと戦った時以上に敗北感を感じる。そんな自分の体が軽くなり痛みが引いていく。



「今回の盾役は兜だ! ありったけの補助魔法をかけろ! いつもの盾役は兜以外のチームメンバーを守れ! 回復職は倒れているメンバーを回復しろ! 魔力が切れたものは報告して兜より貰った実で回復しろ! 」



 兜が盾役をした事により周りの被害が兜に集中する。それを見越してレッドが支援の魔法を兜に集中し回復を兜と倒れた仲間に集中させる。



 兜が龍種に突撃し他の者達に被害が行かない様にすると後ろの状況は安定し始める。兜が支援魔法によっていつも以上にその能力を発揮しようとする中うめき声が兜の耳に入る。



「我を殺せ! 我は恥かしい事に生への未練を残してしまった! 龍種の誇りをけがしてしまった! 」



 兜の耳に届いた声は対峙している龍種の悲しい嘆き。



 それは、知能も誇りも高い龍種が後悔と未練によりこの世に残ってしまい対峙する相手に自らを滅ぼす様に懇願する声であった。







 兜がその巨体をいかし相手の行動を抑え込むには、今回ばかりは分が悪かった。相手の龍種は尻尾を含めると全長30mほど兜と目線の高さは一緒であるが体の大きさが【巨人ジャイアント】の二つ名をもつ兜よりも巨大なものだった。



 本来であれば龍種自身の強化魔法などが備わっているがアンデットには魔法は使えない。



 しかし、生きてるものにかかるリミッターが無いためどちらが力強いか決めれない状況ではあった。



 相手取る兜は周りからありったけの補助魔法を受けたうえでも力負けしていた。



 そんな中兜に後方から声がかかる。







「兜! 今から魔法攻撃職全員で魔法を撃つお前は合図があったら一旦距離を取り土の魔法で壁を構築してさけろ! 」



「この前の魔法だな! 合図をたのむぜ! 」



 そう言って兜とレッド達はチャンスをうかがいながら戦う。そんな中、決定的なチャンスが訪れる。兜の攻撃に合わせて後方の魔法攻撃職の魔法が龍種の人間で言うところの肘膝に炸裂する。



 四つん這で行動する龍種にとって行動を止められ打ち合わせの合図が出される。それは龍種の顔に向かっての攻撃魔法であった。



「 今だ! 」



 レッドの声と共に兜は両手を地面に付き魔法を使う。



 それは以前模擬戦で使ったものとは違い自分とその後ろの方向だけを守る壁である。兜が壁をつくる直後に巨大な火の玉が龍種に真上から落ちる。



 火の玉が龍種を焼き続ける間も兜は壁を厚くし続ける。火の玉を押し返そうとする龍種であったが不意に火の玉が急激に小さくなる。



 火の玉が急激に小さくなったことでバランスを崩す龍種を爆発が襲う。その爆発は中心地からおよそ100mほどを吹き飛ばす。



 その爆発の中心地から100m以内で残ったものは、兜がつくった壁から後ろの物だけであった。


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