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12話 ミドリムシの魔法のお勉強

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 宿屋に泊まった次の日緑達は、今日もギルドの講習を受けるためにギルドに向かう。

 緑達は講習がはじまる少し前に着き、時間になるまでの間に昨日の復習をする。開始の時間になるとギルド職員が広間に現れはじまりの挨拶をする。

「では本日は2回目の魔法の講習を始めます!」

 ギルド職員が挨拶をすると昨日と同じように冒険者達が扇状に集まる。

「今日はまず初めに魔法の属性の話です。魔法はいくつか種類がありまして、火水風土に加え聖と闇の6属性があります。今日は皆さん得意な魔力の操作をしましょう。自分の手のひらに魔力を集めて圧縮し得意な魔法を発現させましょう!」

 その言葉を聞いて講習を受けていた者たちが自分の手に魔力を集めて得意な魔法を発現させる。そもそもこの講習を受けるものは魔力はあるが使い方がわからない者たちが受ける講習である。故に魔力の操作をも拙く圧縮もほとんどできない者たちばかりであったが緑達は違う。そんな3人の様子を見つけたギルド職員は青ざめる。

 緑は魔法を使うこと自体が初めてなこともあり言われた通り魔力を圧縮し水を作り出しているだけであったが、魔法をもともと使える魔物だったヒカリとクウの操作と圧縮は上級者と同じくらいに高い。

 クウの手から大量の土砂に交じって所々に金属片が混じりながらあふれ出している。金属を発生させる魔法を使うものは少ないながらもいるが問題はその量であった。

 今もなお大量の土砂に交じって所々に希少価値の高い貴金属と思われる物が見られる。

「ストップ!ストップ!そこの貴方!魔力をそれ以上!」

「やめるのですね?」

 それに返事をしたのはクウではなくヒカリであった。

 残念な事にギルド職員が指さした方には緑達3人がいたがその言葉に反応するヒカリ。

 さらに、ギルド職員に気づかれずにヒカリはかなりの魔力を圧縮していた。それは、一見風の小さな球に見えたが中ではもの凄い暴風が吹き荒れていた。それをヒカリは、ギルド職員の言い放った言葉通りのだった。

 その瞬間ヒカリの魔法が圧縮から解放される。不幸なことはそばにクウが魔法で作り出した大量の土砂と金属片があったことで、解放された暴風が土砂と金属片を吹き飛ばす。

「「ぎゃあああああああ!」」

 ヒカリの言葉を聞き緑が咄嗟に髪を球状に編み込み、その土砂と金属片が周りに飛び散らないように封じ込めようとしたがそれでも少量の土砂に加え小さな金属は隙間を抜け周りにいた同じ講習を受けていた他の冒険者達に当たる。重傷者こそいなかったが結構な数の怪我人が出るのであった。

 その後、緑とヒカリとクウはケガを負った冒険者やギルド職員1人1人に謝罪をし、緑が回復の実を配る。

 それが終わると職員に広場の清掃を命じられる。

 緑が片づけを始めようとした時ヒカリとクウがダンジョンの入り口を開けて子供たちに手伝わせようと提案したためダンジョンを開ける。扉を通り子供たちがゾロゾロと出てくるのを見たギルド職員がそれを見て悲鳴をあげて気絶をする。

 さらにその悲鳴を聞きつけた他の職員や冒険者があつまり始め、ヒカリとクウの子供たちを見ると大慌てで戦闘態勢を取り始める。

 そんな姿を見てあわてて緑が叫ぶ。

「すいません! 待ってください! この子たちは人を襲うモンスターではありあせん!皆さん落ち着いてください!」

 そう言い放ち大慌てでダンジョンに戻るよう子供達に言い聞かせる。

 しかし、その子供たちを見た冒険者の疑いの目は晴れず、緑、ヒカリ、クウを職員や冒険者が取り囲み一触即発の状況になる。そんな時、聞き覚えのある声が聞こえ近づいてくる。

「すまないが通してくれるかな?」

「お前らどいた!どいた!」

 そこに現れたのはシャークとアランだった。シャークは緑達を見るなり笑い始める。

「がはははは、緑今度は何をやらかしたんだ?ホールまで悲鳴が聞こえたぞ」

「シャーク笑い事じゃない・・・・・」

 2人の顔は正反対でアランはしかめっ面で逆にシャークは大笑いしている。

 アランとシャークは周りの冒険者やギルド職員に安全を伝え職員は持ち場に戻るように言い。

 冒険者達には気にしないように言い聞かす。

 その後、緑はアランによく考えて行動するように言われ反省する。



 次の日、緑は周りに迷惑をかけないよう考え行動しようと心に誓い、3日目の講習に臨むのであった。

 そして、3日目の講習が始まるなり昨日気絶したギルド職員が緑達に向かって歩いてくる。

「ギルドマスターから聞きました。あなた達はギルド始まって以来のイレギュラーな冒険者だと。さらに、初心者ではあるが膨大な魔力をある程度操れることも・・・・ 昨日は取り乱しましたが今日は、昨日の様にはいきませんが貴方たちも気を付けてください。使う魔力の量は少しに抑えてくださいね」

 緑達は使う魔力を抑えながら講習を受けようと心に決め頷く。

「では、今日は得意な属性だけではなく他の属性の魔法も使ってみましょう」

 緑は昨日は水の魔法を練習していたが、今日は聖属性の魔法を使ってみようと思い魔力を圧縮しはじめる。

 緑が聖なるイメージをしながら魔力を圧縮すると神聖な気配が満ち始めるのであった。その気配を感じて1人大慌てする人物がいた。

 「これは小さいながら世界樹様の気配! なぜ突然この近くに!」

 そう叫ぶと勢いよく自分の部屋を飛び出し気配の先、つまるところ緑のもとに走り始め、緑達が講習を受けている場所に到着すると周りも気にせず叫ぶ。

「世界樹様!」

 その叫び声を聞き冒険者達が叫び声をあげた人物の方に視線を向けると、そこには息を荒げたギルドマスターが居た。ギルドマスターを視界にとらえた冒険者達はその剣幕に凍り付く。ただし緑達3人を除いて。

「緑君は何か話さないといけない事があるんじゃないか?」

「話さないといけない事ですか?」

 緑はまじめに魔法の練習をして居ただけで他の冒険者やギルド職員達もその気配が世界樹の気配に似ているなど知りようもないため不思議そうな顔をしている。

「まぁ、ここではなんだ。私の部屋に行こうか・・・・」

 緑はただ真面目に魔法の勉強をしていたつもりが今度はギルドマスターの地雷を踏み抜いたのだとこめかみに青筋を浮かべるギルドマスターをみて感じ取り、今現在までの状況を伝えるために講習をしている広場から3人でギルドマスターの部屋に向かうのであった。

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