不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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30.魔力を振るう者

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 ボクは、特にフェミニストというわけではない。しかし、人をぞんざいに扱うことは極力避けて生きてきたと思っている。特に女性に対しては、暴力を振るったり暴言を吐いたりしたことはない。だが、今日のボクはなんだろう。相手のことも考えず、自分の興味と欲求を通している。理性という鍵が壊れてしまったのじゃないかと思えるほど自分が怖くなっていた。

 美貴は、自分のアナルに差し込まれていたボクの中指を丁寧にシャワーで洗い、カラダの泡も流してボクを先に浴槽に導いた。自分は、ボディーソープの付いたスポンジを拾って、改めて全身を洗い始めた。ボクに責められたアナルもしっかりと洗い、ボクと向かい合わせになるように浴槽に入ってきた。

「わたし、入っても大丈夫ですよね」

「余裕ですよ」

 美貴が入って、浴槽から溢れ出したお湯が、洗い場の泡を押し流してゆく。さっきまでの痴態を演じていたボクたちは、気まずそうに肩までお湯に浸かりしばらくの静寂の時を過ごした。

「お金が必要なんですか」

 沈黙に間が持てなくなり、ボクが口を開く。

「ええ、娘を大学に入れてやりたくて」

「さっき、元のご主人のことを言ってましたけど、離婚されたのですか」

「はい。別れました」

「今は」

「娘と二人だけです」

「元のご主人に、援助とか頼めないのですか」

「主人は、結婚してからも浮気癖が治らなくて、おまけにギャンブルにはまって借金を抱えてました。それで別れることになったので、今でも借金取りから逃げ回ってるらしいです」

「それじゃあ、お金は出してもらえませんよね」

「はい。今さら連絡したら、こちらがお金を要求されそうです」

「そうですか」

「私も働いてはいるのですが、生活費にほとんど消えていって」

「それで、出会い系に」

「はい。でも、なんか若い女の子が多くて、私みたいなおばさんには、なかなか相手も見つからなくて」

「見つかっても、ろくなヤツがいない」

「そうですね」

「ボクみたいな変なヤツがやって来るだけだと」

「あっ、いえ、そういうわけではないんです。あなたは、ちゃんと約束通り、お金もいただきましたし」

「ははは。自分でもいい客とは思ってませんよ。ただ、年上の女性と会うのは初めてだし」

「いいんですよ、どうせ使い古しのおばさんですから。主人だった人も、高校の同級生だったんです」

「そうだったんですね」

「若いって怖いですね。一度、体を許してしまうともう獣のように毎日私の体にむしゃぶりついて。やりたい放題でしたよ。放課後の理科教室でやったり、公園のトイレでもやりました」

「はぁ」

「主人は、高校時代はイケメンでモテたんです。だから彼女になれたことがうれしくて、なにをされても従ってました。文句を言ったらフラれると思って、その方が怖かったですね。若いってこともあったんでしょうけど、彼は性欲が強くて、いろんなことをさせられてました。あそこにいろいろなモノを入れて楽しんだり、もちろんアナルセックスなんて、初体験の次の日からやられました。だから、さっきあなたがしたことなんて当たり前のことだったんですよ」

「そうですか」

「彼は変態でしたね。私に飽きてきた頃には、同級生の女の子を家に連れ込んで三人でやったり、彼とつるんでた男友達からお金を取って、目の前で犯されたりしました」

 美貴は、両手で浴槽のお湯をすくって顔を覆った。

「友達にやれれて、まだ精液が垂れてる私のアソコに自分のモノを入れることもありました。これが興奮するんだと、後ろから腰を振りながら私にそう言うんです。私も悪魔の魔法にかけられてたように感じて体を震わせていってました。バカですよね。彼を変態呼ばわりしましたが、私も変態だったんですよね。そのうち子供が出来てしまって、私は退学、彼はそのまま高校を卒業しました。親もバカだったんですけど、高校を卒業したら結婚することを彼の親に約束させたんです。そんな無茶苦茶な彼とは結婚なんてしたくはなかったんですが、子供は中絶出来ない時期に来てて、しょうがなく子供のためだと思って結婚しました。後から聞いた話ですが、私が退学した後、彼は私と一緒にやった同級生と関係を持っていたらしいです。もう、ほんとにクズとしか言いようがない人でしたね」

 バスルームの空気が一気に重くなり、浴槽のお湯にプツプツと音を立てて溶け込んでいくようだった。
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