不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

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16.浸る

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「ごめん。大丈夫?」

 床に崩れ落ちた咲恵に、ボクは手を差し出した。

「瑞樹さんって、結構意地悪なんですね」

 ボクを見上げる形で、少し怒ったように咲恵はボクの差し出した手を取り立ち上がりながら言った。

「意地悪なんて、そんなぁ」

「まぁ、脱がしっこしようと提案したのはわたしですから、仕方ないんですけどね」

 もう諦めたのか、咲恵は桜貝のようなきれいな乳首も、下腹部の茂みも隠そうとはせずにボクの前に立っている。

「咲恵さん、ほんとうにきれいだね。そんなきれいなカラダを隠そうとするなんてもったいないよ」

「あっ、そんなこと言ったら恥ずかしくなるじゃないですか。でも、褒めてもらえるのはうれしいです」

 そう言うと咲恵は、ボクに優しく抱きついた。

「こうすれば、見えないでしょ」

「うん、だけどお尻はよく見えるようになったね」

「ほら、やっぱり意地悪なことを言う」

「だって、お尻もきれいなんだもの」

「ありがとうございます」

 うれしそうに笑顔を見せた咲恵の唇に、ボクの唇を重ねた。

「ねぇ、ちょっと胸を触っていいかな」

 唇を離しても笑顔だった咲恵に、当然了解が得られるものだと思っていたボクは

「ダメです」

 という予想外の咲恵の言葉にボクは驚く。なぜという言葉にならない顔をしたら

「まず、お風呂に入りましょ。きれいにしてからならいいかも・・・」

自分で言って恥ずかしくなったのか、語尾は聞き取れないくらい弱々しくなっていた。

「わかった。お預けには従うけど、後で触っていいっていう約束は忘れないからね」

「やっぱり意地悪」

 咲恵はボクの車椅子を押してバスルームに行く。バリアフリールームだけあって、浴槽のすぐ横までフルフラットで行ける。浴槽の横には縁と同じ高さのお尻を置けるスペースがあり、そこから浴槽に入れるようになっている。

「カラダを支えましょうか」

「う~ん、大丈夫そうだけど、せっかくだから胸を貸してもらおうかな」

「肩なら貸しますよ」

「じゃ仕方ない、肩を貸してください」

 バスルームに笑い声が満たされて、二人で浴槽に浸かった。バスルームはベッドルームより照明が明るく互いのカラダもよく見える状態になった。たぶん、照明の明るさも落とせるのだろうけれど、咲恵はそんなことは知るよしもないはずだ。実際の女性の体に疎いボクでも、咲恵のスタイルの良さはわかる。バストはスレンダーなスタイルにかかわらず、小さすぎずかといって重力に負けて垂れるわけでもない張りのあるお椀型をしている。座っている姿勢でもお腹は極端に出ているわけでもない。足も太ももにはちゃんと肉がついていて、足先に進むにつれ細くなっていて足首は締まっている。

「ほんとうにきれいなカラダしてるよね」

「いや、そんなに観察しないでください。って、ここ照明が明るすぎません」

「ん?安全のためじゃないのかなぁ」

「なんか、あやしい」

「そっ、そんなことないよ」

「ふ~ん」

「別に咲恵さんだけが、よく見えてるわけじゃなくて。ボクだって見えてるでしょ」

「まぁ、そうですけどね・・・。さっ、カラダを洗いましょう。上がって、そこに座ってください」

「洗ってくれるんですか」

「手の届かないところは手伝いますよ」

 と言うと咲恵は浴槽から出て、スポンジにボディーソープをつけて泡立てだした。

「背中は洗ってあげますね」

「前は?」

「自分でどうぞ」

 と言い、背中を洗ったスポンジをボクに手渡した。ボクを先に洗って、泡をシャワーで流して浴槽に入るように促した後、咲恵は自分も体を洗い出した。

「ボクが洗ってあげたいんですけど、だめですか」

「ダメです」

 即答が咲恵から返ってきた後、さらに

「ちょっとだけ、あっちを向いておいていただけませんか」

「なぜに?」

「いいから。色々と事情があるんです。女の子には」

「男の子にも事情はあったんですけど・・・」

「いいから!」

「はーい」

 また、怒らせてはいけないのでここは素直に従うことにする。後ろでシャワーの音がして、浴槽に咲恵が入ってきた。ボクは、咲恵の腕をつかんで引き寄せ抱きしめた。咲恵の濡れた髪から、シャンプーの香りがした。ボクは咲恵の耳元で囁く。

「もう、いいんだよね」

 と。
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