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8.聞いてもらいたいこと
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ランチタイムから少し外れていることもあり、ファミレスは比較的好いていた。ボクたちは、街路樹が見えるまどぎわの席を選んだ。咲恵はさりげなく椅子の位置を変えて、ボクの車椅子の入るスペースを空けてくれた。場慣れしているなと思ってしまう。そういう関係の職種でもなく、大学とかでボランティアとかしていたのだろうか。
「ありがとう」
ボクが礼を言っても、微笑みを返しただけで自分も席に着いた。咲恵はメニューを二人で見える位置で開き静かに言った。
「何を食べましょうか?」
「お昼だから、軽いもので。咲恵さんはお腹すいてますか?」
「うーん。まあまあってところでしょうか。あっ、でも少し喉が渇いてます。ドキドキしてたので」
「じゃあ、先に飲み物を頼みましょうか」
「そうですね」
二人は相談して、アイスティをオーダーした。
「どうして、ドキドキしてたのですか」
「えっ、メールでいろいろお話はして、瑞樹さんに会ってみたいって思えるようにはなったんですけど」
「ええ」
「やっぱり、実際会ってみたら全然イメージと違う人だったらどうしようと思ってたんです」
「で、実際会ってみてどうですか。イメージしてたのとは違いましたか?」
「いえ、想像していた通りの人で安心してるんですよ」
「そうですか。よかった」
「真面目で誠実そうな方だったので、瑞樹さんならって思ってます」
「ボクなら?」
「はい。最初の頃、瑞樹さんが車椅子だと聞いて、私を救ってくれるんじゃないかと期待してしまったんです」
「それは、普通、期待外れって思われることが多いと思いますよ。実際、車椅子だと言えば露骨にイヤな感想を吐いてくる人がほとんどですから」
「そうですかぁ。そうなんですね」
「それに、車椅子だからといって、真面目で誠実とは限らないですし。結果的に出会い系サイトであなたと知り合ったわけですし、ボクがいかがわしい動機で探してるかもしれないです」
「わたし、それは覚悟してます」
「えっ?」
「男性って,そういうものでしょ?だって、健常者だとか障害者だとか、そんなもの関係ないでしょ?」
「それはそうですけど。それでも、ボクが咲恵さんを救えるとは思えないですよ」
「わたし、聞いてもらいたいことがあるんです。ずっと誰にも言えなくて。でも瑞樹さんなら、聞いてもらえそうな気がするんです」
「はぁ」
「もしよかったら、この後、二人きりになれるところで、話を聞いてもらいたいのです」
「でも」
「もちろん、瑞樹さんが望むなら、わたしは、何をされても構いません」
咲恵は、こちらをまっすぐに見つめて真剣な眼差しを向けていた。思いもかけない展開に瑞樹は困惑していた。
「ありがとう」
ボクが礼を言っても、微笑みを返しただけで自分も席に着いた。咲恵はメニューを二人で見える位置で開き静かに言った。
「何を食べましょうか?」
「お昼だから、軽いもので。咲恵さんはお腹すいてますか?」
「うーん。まあまあってところでしょうか。あっ、でも少し喉が渇いてます。ドキドキしてたので」
「じゃあ、先に飲み物を頼みましょうか」
「そうですね」
二人は相談して、アイスティをオーダーした。
「どうして、ドキドキしてたのですか」
「えっ、メールでいろいろお話はして、瑞樹さんに会ってみたいって思えるようにはなったんですけど」
「ええ」
「やっぱり、実際会ってみたら全然イメージと違う人だったらどうしようと思ってたんです」
「で、実際会ってみてどうですか。イメージしてたのとは違いましたか?」
「いえ、想像していた通りの人で安心してるんですよ」
「そうですか。よかった」
「真面目で誠実そうな方だったので、瑞樹さんならって思ってます」
「ボクなら?」
「はい。最初の頃、瑞樹さんが車椅子だと聞いて、私を救ってくれるんじゃないかと期待してしまったんです」
「それは、普通、期待外れって思われることが多いと思いますよ。実際、車椅子だと言えば露骨にイヤな感想を吐いてくる人がほとんどですから」
「そうですかぁ。そうなんですね」
「それに、車椅子だからといって、真面目で誠実とは限らないですし。結果的に出会い系サイトであなたと知り合ったわけですし、ボクがいかがわしい動機で探してるかもしれないです」
「わたし、それは覚悟してます」
「えっ?」
「男性って,そういうものでしょ?だって、健常者だとか障害者だとか、そんなもの関係ないでしょ?」
「それはそうですけど。それでも、ボクが咲恵さんを救えるとは思えないですよ」
「わたし、聞いてもらいたいことがあるんです。ずっと誰にも言えなくて。でも瑞樹さんなら、聞いてもらえそうな気がするんです」
「はぁ」
「もしよかったら、この後、二人きりになれるところで、話を聞いてもらいたいのです」
「でも」
「もちろん、瑞樹さんが望むなら、わたしは、何をされても構いません」
咲恵は、こちらをまっすぐに見つめて真剣な眼差しを向けていた。思いもかけない展開に瑞樹は困惑していた。
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