不自由と快楽の狭間で

Anthony-Blue

文字の大きさ
上 下
8 / 119

8.聞いてもらいたいこと

しおりを挟む
 ランチタイムから少し外れていることもあり、ファミレスは比較的好いていた。ボクたちは、街路樹が見えるまどぎわの席を選んだ。咲恵はさりげなく椅子の位置を変えて、ボクの車椅子の入るスペースを空けてくれた。場慣れしているなと思ってしまう。そういう関係の職種でもなく、大学とかでボランティアとかしていたのだろうか。

「ありがとう」

 ボクが礼を言っても、微笑みを返しただけで自分も席に着いた。咲恵はメニューを二人で見える位置で開き静かに言った。

「何を食べましょうか?」

「お昼だから、軽いもので。咲恵さんはお腹すいてますか?」

「うーん。まあまあってところでしょうか。あっ、でも少し喉が渇いてます。ドキドキしてたので」

「じゃあ、先に飲み物を頼みましょうか」

「そうですね」

 二人は相談して、アイスティをオーダーした。

「どうして、ドキドキしてたのですか」

「えっ、メールでいろいろお話はして、瑞樹さんに会ってみたいって思えるようにはなったんですけど」

「ええ」

「やっぱり、実際会ってみたら全然イメージと違う人だったらどうしようと思ってたんです」

「で、実際会ってみてどうですか。イメージしてたのとは違いましたか?」

「いえ、想像していた通りの人で安心してるんですよ」

「そうですか。よかった」

「真面目で誠実そうな方だったので、瑞樹さんならって思ってます」

「ボクなら?」

「はい。最初の頃、瑞樹さんが車椅子だと聞いて、私を救ってくれるんじゃないかと期待してしまったんです」

「それは、普通、期待外れって思われることが多いと思いますよ。実際、車椅子だと言えば露骨にイヤな感想を吐いてくる人がほとんどですから」

「そうですかぁ。そうなんですね」

「それに、車椅子だからといって、真面目で誠実とは限らないですし。結果的に出会い系サイトであなたと知り合ったわけですし、ボクがいかがわしい動機で探してるかもしれないです」

「わたし、それは覚悟してます」

「えっ?」

「男性って,そういうものでしょ?だって、健常者だとか障害者だとか、そんなもの関係ないでしょ?」

「それはそうですけど。それでも、ボクが咲恵さんを救えるとは思えないですよ」

「わたし、聞いてもらいたいことがあるんです。ずっと誰にも言えなくて。でも瑞樹さんなら、聞いてもらえそうな気がするんです」

「はぁ」

「もしよかったら、この後、二人きりになれるところで、話を聞いてもらいたいのです」

「でも」

「もちろん、瑞樹さんが望むなら、わたしは、何をされても構いません」

 咲恵は、こちらをまっすぐに見つめて真剣な眼差しを向けていた。思いもかけない展開に瑞樹は困惑していた。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

友達の母親が俺の目の前で下着姿に…

じゅ〜ん
エッセイ・ノンフィクション
とあるオッサンの青春実話です

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

淫らに、咲き乱れる

あるまん
恋愛
軽蔑してた、筈なのに。

セーラー服美人女子高生 ライバル同士の一騎討ち

ヒロワークス
ライト文芸
女子高の2年生まで校内一の美女でスポーツも万能だった立花美帆。しかし、3年生になってすぐ、同じ学年に、美帆と並ぶほどの美女でスポーツも万能な逢沢真凛が転校してきた。 クラスは、隣りだったが、春のスポーツ大会と夏の水泳大会でライバル関係が芽生える。 それに加えて、美帆と真凛は、隣りの男子校の俊介に恋をし、どちらが俊介と付き合えるかを競う恋敵でもあった。 そして、秋の体育祭では、美帆と真凛が走り高跳びや100メートル走、騎馬戦で対決! その結果、放課後の体育館で一騎討ちをすることに。

ナースコール

wawabubu
青春
腹膜炎で緊急手術になったおれ。若い看護師さんに剃毛されるが…

久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…

しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。 高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。 数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。 そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

処理中です...