59 / 79
59.戦いの始まり④
しおりを挟む 帝国の第五皇子、十九歳のエドゥアルトは本日、皇帝の名代として友好国ベイゼルンの王宮で開かれている、第三王子マシューの成人祝賀パーティーに出席している。
側用人ハンスと護衛役のラウルを伴い、薬師ティーナは王宮の豪華な客室にて悠々自適の待機中だ。
ラウルはそんなティーナがうらやましくてたまらない。彼女は貴人達が催すこういったパーティーでの警護任務が非常に苦手なのだった。
何故なら、出席者は老若男女問わず強い香りを身に付けていて、鋭い嗅覚を持つ狼犬族の彼女としてはまずそれが辛い。
パーティーは立食形式で会場には見た目にも華やかな最高級の料理が燦然と並べられるが、職務中は決してそれを口にすることが出来ないのがまた、食いしん坊のラウルとしては口惜しい。どうせ余るのだからといつもエドゥアルトがラウルの分を取り置いてくれるのだが、いただく頃にはどうしても冷めてしまっているので、せっかくの料理を一番美味しい状態で食べることが出来ないというジレンマがある。
ちなみに要人の警護役はパーティーが始まる前に握り飯やサンドイッチといった手軽に食せるもので小腹を満たし、水分も必要最小限だけを摂るようにする場合が多い。万が一に備え、俊敏に動ける状態を維持する為と、トイレで任務に支障をきたさないようにするためだ。
憂鬱なラウルの視線の先で、皇族の正装に身を包んだエドゥアルトはにこやかな表情を湛え、入れ替わり立ち替わりやってくる他国の要人達と挨拶を交わして、皇帝の名代としての役割をそつなくこなしていた。彼の傍らにはいつもより改まった装いのハンスが控えていて、必要に応じさり気なく主をサポートをしている。
普段は香水の類を身に付けないエドゥアルトもこういった場面ではたしなみ程度に香りを纏うので、それもあってラウルはパーティーの警護が嫌いだった。
ただでさえ会場には強い香りが溢れているというのに、エドゥアルトの匂いがいつもと違うことでやりにくくて仕方がないのだ。
あ~あ、早く終わらないかなぁ……。
会場ではダンスが始まり、贅を尽くした衣装を纏った高貴な身分の男女が何組も手を取り合って、きらびやかなシャンデリアの下で管弦楽団の音色に合わせ、くるくると華麗に舞っていた。
主役のマシュー王子のほど近くで、エドゥアルトもどこかの国の御息女と踊っている。運動神経抜群の彼はダンスも得意で、端整な容姿と帝国の皇子という身分も相まり、こういった席で彼にダンスを申し込みたがる相手は後を絶たなかった。今日この後もそれこそひっきりなしに声がかかり、踊り続けることになるのだろう。
それを延々見ていなければならない立場のラウルとしては溜め息をつきたくなる。身体を動かすのが大好きな彼女は踊り続けるのは得意だが、それを見ているだけという側はどうにも不得手だった。
そんなこんなで、退屈で窮屈でやたら拘束時間が長く、強い香りに満ち満ちた場で食事も娯楽も見せつけられるだけというパーティーの警護任務は、ラウルにとって敬遠したい仕事となってしまうのだ。
そんな不満をくすぶらせつつ、会場の片隅からそれとなくエドゥアルトの周辺に気を配っている彼女に、やおら声をかけてきた人物がいた。
「―――ラウル……か?」
そちらに視線をやった彼女は、意外な人物をそこに見出して青灰色の瞳を見開いた。
相手はラウルと同じ狼犬族の青年だった。日焼けした大柄な体格で背はラウルより頭半分ほど高い。銀色の短髪に深い青色の瞳をして、髪と同色の獣耳は片方の先が欠損していた。
記憶にある顔よりだいぶ年輪を重ねてはいるが、面影はそのままだ。
「ティーガ……?」
ラウルは久々に彼の名を呼んだ。彼は、彼女のほろ苦い初恋の相手だった。
「やっぱりラウル……久し振りだな。まさか、こんなところでお前に会うなんて」
ティーガはどこか遠慮がちにそう言った。
四つ年上の彼は当時十二歳のラウルに面前試合で敗れた後しばらくして、剣を片手に故郷を離れていた。武者修行をしながら世界を回るというような話を人づてに聞いたが、それっきり彼に会うこともなく、二人の仲はあの時のままで止まっている。
再会したティーガはきちんとした身なりをしていて、腰に立派な長剣を帯びていた。今は、どこかの貴人の下で仕えているのだろうか。
ラウルは思わぬ再会に驚きつつも、意識的に口角を上げて彼に応じた。
「それはこっちの台詞……驚いた。久し振りだね。ここへはどなたかの付き添いで?」
「ああ。オレは今、この国でアラン伯爵という方に仕えているんだ。護衛長の役を仰せつかっていて、ここへは伯の警護役として来ている」
ティーガは気持ち胸を張ってそう言った。
アラン伯爵という名は聞いた覚えがある。確かこの国でそこそこの要職に就いている人物だ。
「お前は? ラウル。オレと似たような立場でここへ来ているんだろう?」
彼女の身なりを眺めながら尋ねるティーガにラウルは頷いた。
あれからおそらく一度も里帰りしていない彼は、ラウルが現在帝国で第五皇子に仕えていることを知らないのだろう。もっともラウル自身も長らく里帰りをしていない身ではあるのだが。
「うん、そうなんだ。私は今、あそこにいる―――」
会場にいるエドゥアルトを示そうとしたラウルは、今しがたまでダンスを踊っていたはずの主の姿が消えているのに気が付いて、「あれ?」と瞳を瞬かせた。
先程までとは曲が変わり、会場では新しいペアによるダンスが始まっている。
てっきり次も相手を変えて踊るものだと思っていたのに、どこへ行ったんだろう? トイレ?
「ラウル」
会場を注視していたラウルは、探していたエドゥアルト自身に後ろから声をかけられ、慌てて背後を振り返った。
「エドゥアルト様! 急に見えなくなったと思ったら―――、どうしたんですか」
「人は急には消えない。それはお前の注意不足だ。油を売っていないできちんと職務を全うしろ」
不機嫌な面持ちでそう諫められ、言葉どおりで反論出来ないラウルはぐっと詰まった。
「うぐ……すみません」
「この男は?」
ティーガにじろりと視線をくれる主にラウルは昔馴染みを紹介した。
「同郷のティーガです。ここで偶然再会しまして……彼は今こちらの国のアラン伯爵という方に護衛長として仕えていて、本日は伯の警護役として来ているそうです」
「ほう……」
「ティーガと申します。どうぞ以後お見知り置きを。ラウルが貴方様に仕えているとは存じず、その務めを妨害してしまったこと、ここに深くお詫び申し上げます」
丁重に謝罪と礼を取るティーガにひとつ頷いて、エドゥアルトはラウルに向き直った。
「暇に再会を喜ぶも雑談をするも結構だが、職務に支障をきたさない程度にしろ。お前の一番はこの僕だ、そこを違えるな」
外では従者の顔を重んじるラウルは、自らの非を素直に主に詫びた。
「はい。以後、肝に銘じます。申し訳ありませんでした」
「分かればいい」
殊勝な態度を取るラウルに許しを与えるように彼女の二の腕辺りに軽く触れたエドゥアルトは、ティーガに鋭い視線を向けると、無言の圧をくれてからゆっくりとその手を引き上げた。
「エドゥアルト様、そろそろお戻りならないと―――次の曲が始まってしまいます。皆様がお待ちかねです」
「ああ。今戻る」
主の後を追ってきていたハンスに短くそう返すと、エドゥアルトは何事もなかったかのように会場へと戻っていった。
―――うん? ところであの人はいったい何をしにここへ来たワケ?
心の中で小首を傾げるラウルに、改まった態度を解いたティーガが憮然とした面持ちで吐き捨てた。
「ちっ、何を見せられてんだ、オレは」
「え?」
「ラウル、お前―――帝国の皇子に仕えていたんだな」
「そうだけど……」
「くそっ……またオレの上を行くのかよ、いけ好かねぇ……」
苛立たし気にそう独り言ちると、ティーガは背を翻した。
「ちょっ、ティーガ?」
「行くわ。帝国の皇子に目を付けられてもかなわねぇし」
戸惑うラウルにそう言い置いて、ティーガは足早に去っていった。彼を追うわけにもいかず、ラウルは伸ばしかけた手を握り込み、会場へと戻り再び皆に囲まれるエドゥアルトへ注意を戻した。
ティーガとの再会は気まずさも覚えたが、互いに大人になって、これをきっかけに表面上障りのない関係に戻れるのかと思いきや、何とも後味のよろしくない展開になってしまったものだ。
ラウルがティーガに勝利した、彼女にとっては当時の自分の全てを出し尽くして勝ち得た珠玉の成果が、彼の中では今も変わらず苦い思い出のままで、あのまま消化も昇華もなされず、彼自身に何の変化ももたらしていないのだと―――そう感じられてしまったことが何より、彼女の心に陰鬱な影を落としていた。
側用人ハンスと護衛役のラウルを伴い、薬師ティーナは王宮の豪華な客室にて悠々自適の待機中だ。
ラウルはそんなティーナがうらやましくてたまらない。彼女は貴人達が催すこういったパーティーでの警護任務が非常に苦手なのだった。
何故なら、出席者は老若男女問わず強い香りを身に付けていて、鋭い嗅覚を持つ狼犬族の彼女としてはまずそれが辛い。
パーティーは立食形式で会場には見た目にも華やかな最高級の料理が燦然と並べられるが、職務中は決してそれを口にすることが出来ないのがまた、食いしん坊のラウルとしては口惜しい。どうせ余るのだからといつもエドゥアルトがラウルの分を取り置いてくれるのだが、いただく頃にはどうしても冷めてしまっているので、せっかくの料理を一番美味しい状態で食べることが出来ないというジレンマがある。
ちなみに要人の警護役はパーティーが始まる前に握り飯やサンドイッチといった手軽に食せるもので小腹を満たし、水分も必要最小限だけを摂るようにする場合が多い。万が一に備え、俊敏に動ける状態を維持する為と、トイレで任務に支障をきたさないようにするためだ。
憂鬱なラウルの視線の先で、皇族の正装に身を包んだエドゥアルトはにこやかな表情を湛え、入れ替わり立ち替わりやってくる他国の要人達と挨拶を交わして、皇帝の名代としての役割をそつなくこなしていた。彼の傍らにはいつもより改まった装いのハンスが控えていて、必要に応じさり気なく主をサポートをしている。
普段は香水の類を身に付けないエドゥアルトもこういった場面ではたしなみ程度に香りを纏うので、それもあってラウルはパーティーの警護が嫌いだった。
ただでさえ会場には強い香りが溢れているというのに、エドゥアルトの匂いがいつもと違うことでやりにくくて仕方がないのだ。
あ~あ、早く終わらないかなぁ……。
会場ではダンスが始まり、贅を尽くした衣装を纏った高貴な身分の男女が何組も手を取り合って、きらびやかなシャンデリアの下で管弦楽団の音色に合わせ、くるくると華麗に舞っていた。
主役のマシュー王子のほど近くで、エドゥアルトもどこかの国の御息女と踊っている。運動神経抜群の彼はダンスも得意で、端整な容姿と帝国の皇子という身分も相まり、こういった席で彼にダンスを申し込みたがる相手は後を絶たなかった。今日この後もそれこそひっきりなしに声がかかり、踊り続けることになるのだろう。
それを延々見ていなければならない立場のラウルとしては溜め息をつきたくなる。身体を動かすのが大好きな彼女は踊り続けるのは得意だが、それを見ているだけという側はどうにも不得手だった。
そんなこんなで、退屈で窮屈でやたら拘束時間が長く、強い香りに満ち満ちた場で食事も娯楽も見せつけられるだけというパーティーの警護任務は、ラウルにとって敬遠したい仕事となってしまうのだ。
そんな不満をくすぶらせつつ、会場の片隅からそれとなくエドゥアルトの周辺に気を配っている彼女に、やおら声をかけてきた人物がいた。
「―――ラウル……か?」
そちらに視線をやった彼女は、意外な人物をそこに見出して青灰色の瞳を見開いた。
相手はラウルと同じ狼犬族の青年だった。日焼けした大柄な体格で背はラウルより頭半分ほど高い。銀色の短髪に深い青色の瞳をして、髪と同色の獣耳は片方の先が欠損していた。
記憶にある顔よりだいぶ年輪を重ねてはいるが、面影はそのままだ。
「ティーガ……?」
ラウルは久々に彼の名を呼んだ。彼は、彼女のほろ苦い初恋の相手だった。
「やっぱりラウル……久し振りだな。まさか、こんなところでお前に会うなんて」
ティーガはどこか遠慮がちにそう言った。
四つ年上の彼は当時十二歳のラウルに面前試合で敗れた後しばらくして、剣を片手に故郷を離れていた。武者修行をしながら世界を回るというような話を人づてに聞いたが、それっきり彼に会うこともなく、二人の仲はあの時のままで止まっている。
再会したティーガはきちんとした身なりをしていて、腰に立派な長剣を帯びていた。今は、どこかの貴人の下で仕えているのだろうか。
ラウルは思わぬ再会に驚きつつも、意識的に口角を上げて彼に応じた。
「それはこっちの台詞……驚いた。久し振りだね。ここへはどなたかの付き添いで?」
「ああ。オレは今、この国でアラン伯爵という方に仕えているんだ。護衛長の役を仰せつかっていて、ここへは伯の警護役として来ている」
ティーガは気持ち胸を張ってそう言った。
アラン伯爵という名は聞いた覚えがある。確かこの国でそこそこの要職に就いている人物だ。
「お前は? ラウル。オレと似たような立場でここへ来ているんだろう?」
彼女の身なりを眺めながら尋ねるティーガにラウルは頷いた。
あれからおそらく一度も里帰りしていない彼は、ラウルが現在帝国で第五皇子に仕えていることを知らないのだろう。もっともラウル自身も長らく里帰りをしていない身ではあるのだが。
「うん、そうなんだ。私は今、あそこにいる―――」
会場にいるエドゥアルトを示そうとしたラウルは、今しがたまでダンスを踊っていたはずの主の姿が消えているのに気が付いて、「あれ?」と瞳を瞬かせた。
先程までとは曲が変わり、会場では新しいペアによるダンスが始まっている。
てっきり次も相手を変えて踊るものだと思っていたのに、どこへ行ったんだろう? トイレ?
「ラウル」
会場を注視していたラウルは、探していたエドゥアルト自身に後ろから声をかけられ、慌てて背後を振り返った。
「エドゥアルト様! 急に見えなくなったと思ったら―――、どうしたんですか」
「人は急には消えない。それはお前の注意不足だ。油を売っていないできちんと職務を全うしろ」
不機嫌な面持ちでそう諫められ、言葉どおりで反論出来ないラウルはぐっと詰まった。
「うぐ……すみません」
「この男は?」
ティーガにじろりと視線をくれる主にラウルは昔馴染みを紹介した。
「同郷のティーガです。ここで偶然再会しまして……彼は今こちらの国のアラン伯爵という方に護衛長として仕えていて、本日は伯の警護役として来ているそうです」
「ほう……」
「ティーガと申します。どうぞ以後お見知り置きを。ラウルが貴方様に仕えているとは存じず、その務めを妨害してしまったこと、ここに深くお詫び申し上げます」
丁重に謝罪と礼を取るティーガにひとつ頷いて、エドゥアルトはラウルに向き直った。
「暇に再会を喜ぶも雑談をするも結構だが、職務に支障をきたさない程度にしろ。お前の一番はこの僕だ、そこを違えるな」
外では従者の顔を重んじるラウルは、自らの非を素直に主に詫びた。
「はい。以後、肝に銘じます。申し訳ありませんでした」
「分かればいい」
殊勝な態度を取るラウルに許しを与えるように彼女の二の腕辺りに軽く触れたエドゥアルトは、ティーガに鋭い視線を向けると、無言の圧をくれてからゆっくりとその手を引き上げた。
「エドゥアルト様、そろそろお戻りならないと―――次の曲が始まってしまいます。皆様がお待ちかねです」
「ああ。今戻る」
主の後を追ってきていたハンスに短くそう返すと、エドゥアルトは何事もなかったかのように会場へと戻っていった。
―――うん? ところであの人はいったい何をしにここへ来たワケ?
心の中で小首を傾げるラウルに、改まった態度を解いたティーガが憮然とした面持ちで吐き捨てた。
「ちっ、何を見せられてんだ、オレは」
「え?」
「ラウル、お前―――帝国の皇子に仕えていたんだな」
「そうだけど……」
「くそっ……またオレの上を行くのかよ、いけ好かねぇ……」
苛立たし気にそう独り言ちると、ティーガは背を翻した。
「ちょっ、ティーガ?」
「行くわ。帝国の皇子に目を付けられてもかなわねぇし」
戸惑うラウルにそう言い置いて、ティーガは足早に去っていった。彼を追うわけにもいかず、ラウルは伸ばしかけた手を握り込み、会場へと戻り再び皆に囲まれるエドゥアルトへ注意を戻した。
ティーガとの再会は気まずさも覚えたが、互いに大人になって、これをきっかけに表面上障りのない関係に戻れるのかと思いきや、何とも後味のよろしくない展開になってしまったものだ。
ラウルがティーガに勝利した、彼女にとっては当時の自分の全てを出し尽くして勝ち得た珠玉の成果が、彼の中では今も変わらず苦い思い出のままで、あのまま消化も昇華もなされず、彼自身に何の変化ももたらしていないのだと―――そう感じられてしまったことが何より、彼女の心に陰鬱な影を落としていた。
87
お気に入りに追加
540
あなたにおすすめの小説

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
旦那様、前世の記憶を取り戻したので離縁させて頂きます
結城芙由奈@コミカライズ発売中
恋愛
【前世の記憶が戻ったので、貴方はもう用済みです】
ある日突然私は前世の記憶を取り戻し、今自分が置かれている結婚生活がとても理不尽な事に気が付いた。こんな夫ならもういらない。前世の知識を活用すれば、この世界でもきっと女1人で生きていけるはず。そして私はクズ夫に離婚届を突きつけた―。
王子を身籠りました
青の雀
恋愛
婚約者である王太子から、毒を盛って殺そうとした冤罪をかけられ収監されるが、その時すでに王太子の子供を身籠っていたセレンティー。
王太子に黙って、出産するも子供の容姿が王家特有の金髪金眼だった。
再び、王太子が毒を盛られ、死にかけた時、我が子と対面するが…というお話。
傲慢令嬢は、猫かぶりをやめてみた。お好きなように呼んでくださいませ。愛しいひとが私のことをわかってくださるなら、それで十分ですもの。
石河 翠
恋愛
高飛車で傲慢な令嬢として有名だった侯爵令嬢のダイアナは、婚約者から婚約を破棄される直前、階段から落ちて頭を打ち、記憶喪失になった上、体が不自由になってしまう。
そのまま修道院に身を寄せることになったダイアナだが、彼女はその暮らしを嬉々として受け入れる。妾の子であり、貴族暮らしに馴染めなかったダイアナには、修道院での暮らしこそ理想だったのだ。
新しい婚約者とうまくいかない元婚約者がダイアナに接触してくるが、彼女は突き放す。身勝手な言い分の元婚約者に対し、彼女は怒りを露にし……。
初恋のひとのために貴族教育を頑張っていたヒロインと、健気なヒロインを見守ってきたヒーローの恋物語。
ハッピーエンドです。
この作品は、別サイトにも投稿しております。
表紙絵は写真ACよりチョコラテさまの作品をお借りしております。

【完結】殿下、自由にさせていただきます。
なか
恋愛
「出て行ってくれリルレット。王宮に君が住む必要はなくなった」
その言葉と同時に私の五年間に及ぶ初恋は終わりを告げた。
アルフレッド殿下の妃候補として選ばれ、心の底から喜んでいた私はもういない。
髪を綺麗だと言ってくれた口からは、私を貶める言葉しか出てこない。
見惚れてしまう程の笑みは、もう見せてもくれない。
私………貴方に嫌われた理由が分からないよ。
初夜を私一人だけにしたあの日から、貴方はどうして変わってしまったの?
恋心は砕かれた私は死さえ考えたが、過去に見知らぬ男性から渡された本をきっかけに騎士を目指す。
しかし、正騎士団は女人禁制。
故に私は男性と性別を偽って生きていく事を決めたのに……。
晴れて騎士となった私を待っていたのは、全てを見抜いて笑う副団長であった。
身分を明かせない私は、全てを知っている彼と秘密の恋をする事になる。
そして、騎士として王宮内で起きた変死事件やアルフレッドの奇行に大きく関わり、やがて王宮に蔓延る謎と対峙する。
これは、私の初恋が終わり。
僕として新たな人生を歩みだした話。

絶対に間違えないから
mahiro
恋愛
あれは事故だった。
けれど、その場には彼女と仲の悪かった私がおり、日頃の行いの悪さのせいで彼女を階段から突き落とした犯人は私だと誰もが思ったーーー私の初恋であった貴方さえも。
だから、貴方は彼女を失うことになった私を許さず、私を死へ追いやった………はずだった。
何故か私はあのときの記憶を持ったまま6歳の頃の私に戻ってきたのだ。
どうして戻ってこれたのか分からないが、このチャンスを逃すわけにはいかない。
私はもう彼らとは出会わず、日頃の行いの悪さを見直し、平穏な生活を目指す!そう決めたはずなのに...……。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる