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29.武術大会④
しおりを挟む一回戦目を勝ち上がったアイラは、特にケガもないのでそのまま次の試合を観戦することに決めた。
デレクとエドマンドの元へ戻ると、またエドマンドに両手を握られる。
「すごいです、アイラさん!女性ならではの軽い身のこなしに、凛とした表情…!ああ、“戦場の天使”と例えられるのが分かります…!」
「せ、戦場の天使??」
耳慣れない言葉が聞こえ、アイラは瞬きを繰り返す。戦場に出た覚えも、天使になった覚えもないのだ。
うっとりとした表情のエドマンドの隣を見ると、デレクが困ったように頬を掻いていた。
「……あー…、騎士の一部でそう呼ばれてるんだよな、アイラが」
「な、なぜ…?」
「アイラさんが可愛らしい方だからですよ!姉さんもよく言っていますから」
カレンにそう言ってもらえるのは嬉しいが、アイラはなんだか複雑だった。
騎士団の中で、自分の変なイメージが独り歩きしていると感じたからだ。
闘技場から、また歓声がワッと響く。どうやら、全ての対戦が終わったようだ。
次はデレクの番だったが、難なく相手を倒していた。
デレクは独学で剣術を学んだ部分が多いので、規格外の動きをして相手を翻弄させるのが上手い。
エドマンドが感嘆の声を漏らしていた。
「へぇ~。大雑把かと思えば、意外と繊細な動きが上手いんですね、デレクさん」
「ふふ、デレクは強いのよ」
アイラが笑うと、エドマンドはたちまちムッと口を尖らせる。こういう仕草が、まだ幼く思えた。
「俺だって、強いですよ。あの姉さんに鍛えられていますから」
「……そういえば私まだ、カレンの戦いを見たことないわ」
「あれ、そうなんですか?……まぁ、姉さんの戦い方はちょっと独特なので…」
もごもごと口を動かしながら、だんだんと声が小さくなっていくエドマンドの言葉に、アイラは興味を惹かれた。
あのカレンが戦う姿は、それは美しいものだろうとアイラ思っていたのだが、独特という言い回しがとても気になる。
今度訓練を見学でもしたいなぁ、などとアイラは呑気に思った。
デレクが颯爽と戻ってくると、次はエドマンドの番だった。この組が最後である。
アイラは何度もエドマンドに「目を離さないでくださいね!」と念を押された。
そして試合開始早々、会場が沸いた。
理由はすぐに分かった。まだ数秒しか経たないうちに、勝敗が決まったからだ。
「おい、もう勝ったやつがいるのか?」
「嘘だろ?早すぎないか?」
「余程弱いやつがいるのか、逆に強いやつがいるのか…」
参加者もざわつく中、アイラの視線は一点に奪われていた。
まだ周囲が試合を行っている中、勝った人物がゆっくりと歩きながら戻って来る。
「……あの人…アイラが受付でぶつかった、態度悪いヤツだよな?」
「………そうね」
デレクの言葉に、アイラは小さく頷いた。その男性は、誰とも目を合わせずに一番端の席に座る。
その態度に、周りの参加者たちは眉をひそめていた。デレクも同じだった。
「きっと強いんだろうけど…本当に態度悪いな」
「……あ、エドくんが勝ったみたいだわ」
いつの間にか、エドマンドの相手が地面に倒れていた。
エドマンドは大げさに手を振りながら、アイラたちの元へ笑顔で戻って来る。
「さくっと勝ちましたよ~!アイラさん、見ててくれました!?」
アイラはどう答えるか迷った挙げ句、正直に打ち明けることにした。
「ええと…ごめんねエドくん。実は…」
「俺たち、エドより先にさくっと勝ったヤツを見てたんだよ」
「………!?」
ショックを受けたように一瞬固まったエドマンドは、すぐに他の参加者を見渡した。
「誰です、アイラさんの視線を奪った野郎は!」
「エ、エドくん…」
「あの端っこに座ってる、顔がほとんど見えない怪しい男だよ。そういえばお前、さっき知ってそうな反応してなかったか?」
デレクの言葉に、エドマンドはキッと男性を睨んだ。
そのまま男性に向かって歩いて行こうとするので、アイラが慌てて腕を掴んで引き止める。
「エドくん、何するつもり?」
「……その華奢で綺麗な手を、放してくださいアイラさん…!あと潤んだ瞳で見つめないでください…!」
「おいエド、お前ちょっと気持ち悪いぞ」
デレクが若干引き気味にエドマンドを見ている。アイラはエドマンドをその場に留めることに必死だった。
ここでいざこざを起こせば、失格になってしまうかもしれない。そうなれば、どこかで応援しているはずのカレンも悲しむ。
エドマンドの腕にぎゅうっと抱きつくと、息を飲む音が聞えた。
「ああああアイラさんそれはちょっと嬉しいですがまだ早いと言いますか」
「何言ってんだお前は!アイラ、俺が代わる!」
デレクがエドマンドの首元を掴み、勢い良く引っ張って椅子に座らせた。
不思議なことに、エドマンドは顔を真っ赤にして大人しくなっていた。
「……では、第二試合を始めます!番号一~三十二までの勝者の方、闘技場に出てください」
準備が整ったようで、大会関係者から声が掛かった。アイラとデレクの番号は、呼ばれた中に入っている。
エドマンドを一人残して行くことに不安が残るが、デレクがアイラの背中を押した。
「今のうちだ、アイラ。さっさと勝って、エドが大人しい間に戻ろう」
「……そうね。行ってくるわね、エドくん」
アイラが声を掛けても、エドマンドはこくこくと頷くだけだった。アイラは不思議に思いながらも闘技場へ足を進める。
「エドくん、急にどうしたのかしら?」
「……まあ、理由は分かる。アイラが腕に抱きついたからだな」
「えっ?あれは抱きついたというか、引き止めたかっただけよ」
「それが効果を発揮したってことだな。……羨ましい」
最後にポツリとデレクが呟いた言葉は、アイラには聞き取れなかった。
闘技場に出ると、各方向から声援が飛んできた。友人や家族が応援に来ている人も多いのだろう。
アイラは先ほどクライドが立っていた方を見た。
クライドはまだそこにいて、アイラと目が合うと優しく微笑んでくれる。近くにいた女性の観客が、何人か虜になっていた。
アイラはその様子にふふっと笑うと、次の対戦相手と向かい合う。
最初の相手よりは体格は細身だが、背が高く腕も長い。
腕が長ければ、剣の届く範囲が広がるため、間合いを読み間違えれば終わってしまう。
開始の合図で、相手が先に斬り掛かってきた。それを避け、今の間合いを頭に叩き込み、アイラは剣を振るう。
リーチの差はあれど、相手は一般からの参加で騎士ではないため、勝敗は簡単に決まった。
アイラが相手の剣を弾き飛ばすと、最初より大きな歓声が上がる。
互いに礼をし、席に戻る途中でデレクを探した。
ちょうど相手を薙ぎ倒し、目の前で剣の切っ先をピタリと止めていたところだった。
相手が両手を挙げ降参の意を示し、デレクが肩で息を吐いたのが分かる。
アイラはホッと胸を撫で下ろし、駆け足でエドマンドの所へ戻った。
エドマンドは元の自分を取り戻したようで、アイラを見ると笑顔で椅子から立ち上がる。
「アイラさん!楽勝でしたね!」
「エドくん、良かった。あの…大人しくしていた?大丈夫?」
アイラはちらっと例の男性に視線を向けた。腕と足を組み、まだ続いている試合を眺めている。
「あ、えっと…ちゃんと座ってました。さっきはすみません。でももう大丈夫です!次の試合で俺が勝ちますから!」
「え?あの人が相手なの?」
「俺の計算によるとそうです!」
ぐっと拳を握るエドマンドには申し訳ないが、アイラは心配になった。そこへデレクが駆け足で戻って来る。
「よっしゃ、勝ったぜ!アイラもだよな?」
「うん。……次はエドくんが、あの人と対戦するみたい」
「へー、そうなのか?お前がどんだけ強いのか知らないけど、まぁ頑張れ!」
デレクはケラケラと笑ってエドマンドの背中を何度も叩いた。結構な勢いだが、きちんと体幹が鍛えられているのか、エドマンドはびくともせず「痛いです!」と抗議している。
「……あ、準備が整ったみたいですね。行っています!」
「エドくん、頑張ってね。ケガに気をつけて」
「アイラさんにそう言われたら、無傷で勝つしかありませんねっ!」
キラキラとした笑顔を浮かべ、エドマンドが闘技場へ向かった。同時に、女性の甲高い歓声が聞こえてくる。
カレンの「くぉらエド、みっともない試合したらぶっとばすからね!?」という大声が聞えた気がしたが、アイラは気のせいだと思うことにした。
エドマンドと向かい合う男性は、口元を覆う布を外していた。帽子は外していないが、装飾品は禁止のはずだ。
何か理由があって、特別な許可が出ているのだろうかとアイラは疑問に思った。
試合開始の合図のあと、勝敗はすぐに決まった。
エドマンドの体さばきは上手く、流れるような剣の振るい方も綺麗で力強かった。すぐにでも騎士になれるとアイラは思う。
けれど、それよりも相手の方が速かった。
瞬き一つでもすれば、見事な剣さばきを見逃してしまうところだ。
男性の一太刀がエドマンドに入り、どさっと地面に倒れる。
すぐに体を起こそうとしたエドマンドが、痛みからか顔をしかめて動きを止めた。どうやら、立ち上がれないようだ。
すると、男性がエドマンドに近寄り、右手を差し出した。
その紳士的な行動に、アイラは驚く。
エドマンドも目を丸くしたあと、男性の手を掴み―――ぐっと引き寄せ、帽子を取った。
帽子の下から、燃えるような赤毛が現れる。
「―――…」
アイラが息を飲むと同時に、闘技場が沸いた。
参加者たちにもどよめきが広がり、眉をひそめたデレクが騎士団の先輩に声を掛ける。
「すみません、あの男の髪を見た瞬間、どうしてこんな騒がしくなるんですか?」
先輩騎士も、驚いたように赤毛の男性に視線を送っていた。
「あの人は、きっと…前回の剣術の部の優勝者だ」
「え!?」
「表彰式の前に忽然と姿を消した、謎の赤毛の男…。それならあの強さも納得だな」
デレクはそれを聞き、「あいつが…」と呟いて男性を見ていた。
アイラも、前回の優勝者だと分かり驚いてはいるが、それよりも驚いたことがあった。
アイラは、あの赤毛の男性を知っていた。
知っているどころか、会話したことさえある。
―――うちで開いたガーデンパーティーで、私を助けてくれた人だわ。
あれは確か、魔術学校に合格する前だから…やり直しで十四歳に戻る少し前のこと。
それならばあの人も、私のことは知っているはずなのに―――…。
それなのに、受付では無視されてしまった。以前会話したときの印象は、とても優しそうだったのに、とアイラは思いながらも、一つの可能性に行き当たる。
―――きっと、私が魔術学校に行かずに騎士になっているから、驚いたのかも。それか、ガッカリさせてしまったのかも…。
周囲が未だに沸いている中、赤毛の男性は帽子を手に持ってゆっくりと戻って来た。
エドマンドは医者に引き渡されたようだ。
「おい、戻って来たぞ」
「どうする?声掛けてみるか?」
「やめとけよ。見るからに不機嫌そうじゃねぇか」
参加者たちがヒソヒソと囁き合っている。
確かに、男性は思い切り眉を寄せて不機嫌そうな顔をしていた。
エドマンドに帽子を取られ、正体が露呈してしまったからかもしれない。
アイラは男性をから目を逸らせず、じっと見つめていた。
名前は何だったかと記憶を探ったが、教えてもらえなかったはずだ。
茶色の瞳が、ふとアイラに向けられる。
けれど、男性は話し掛けてくれることはなかった。視線を足元へ落とし、先程座っていた椅子へと一直線に歩みを進めた。
他の参加者は、声を掛けることは止めたようで、遠巻きに男性をじろじろと見ている。
「…………」
「もしかして俺、次あたりあの男と当たるんじゃ…?っていうか、エドは大丈夫かな」
「…………」
「アイラ?」
目の前でデレクが手を振り、アイラはハッと我に返った。
素通りされたことが、何故か悲しくて胸がズキズキと痛む。
アイラが口を開くより先に、第三試合の準備ができたとの声が掛かり、アイラはふらりと闘技場へ向かおうとした。
すると、デレクに腕を掴まれる。
「……デレク?」
「アイラ…大丈夫か?」
その揺れる瞳から、本気でアイラを心配していることが分かる。デレクはアイラの様子がおかしいと、いつもすぐに気付いてくれていた。
そしてその心配してくれている気持ちが、アイラの心をふっと軽くしてくれるのだ。
「……うん。目指すは優勝…でしょう?」
笑顔を返すと、デレクはまだ心配そうにしていたが、ぐっと言葉を飲み込んだようだ。
代わりに拳を作り、アイラの前に「ん」と言って突き出す。アイラはそこに自身の拳をコツンと合わせた。
―――もし、失望させてしまったのだとしたら、挽回するのは今だわ。
アイラは表情を引き締めると、前を見据えて闘技場へと足を踏み出した。
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