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23.恋と夜会③
しおりを挟むアイラは渡り廊下の壁から少し顔を出し、フィンを確認する。
どのタイミングで飛んでくるか分からない弓矢を、その場から動かずに見事に捌いていた。
―――相手の矢の残り数は分からない。あまり長引くと、副団長の集中力が落ちてくるかもしれないわ…。
フィンは、恐らく矢の飛んでくる方向を見極めているはずだ。
アイラも大体の方向は分かったが、確実に把握するには魔術を使って探るしかない。けれど、魔術を使えば相手に気付かれる恐れもある。
一緒に戦えればいいのだが、そうすればバージルを一人残すことになってしまう。
そもそも、今のアイラはドレス姿なので、いつも腰に携えている長剣は無い。
「バージルさま、剣を持っていたりしませんか?」
「持っているわけないだろう」
アイラは一応訊いてみただけなのだが、思ったより呆れた視線を向けられてしまった。
「では、ここから屋内に逃げる道は、すぐそこの扉から入る以外にありますか?」
「……あるにはあるが…」
バージルはそこで口を閉じる。アイラがそのまま続きをじっと待っていると、観念したようにため息を吐き出した。
「あるが、屋内に逃げ込みたくはない」
「それは…もしかして、周りを巻き込まないためですか?」
「違う。他の人間がいたら、誰が俺を狙っているのか分かりづらくなるからだ」
バージルはそう言っているが、アイラは自分の予想は外れていないと思った。
わざと外側の警備を薄くし、夜会を早々と切り上げて邸宅内を一人でうろついていたバージル。
アイラが庭園を見たいと言ったとき、さり気なく行かせないような返事をしてきたのは、こうなることを予想していたのかもしれない。
フィンが合流したことで、彼がいれば大丈夫だと思ったのか、それともアイラがいれば襲われないと思ったのか……どちらにせよ、バージルは誰かに狙われている。
そして、出来れば誰も巻き込まず、この場で対処したいと思っているのだ。
「………」
「何だその目は」
不器用で優しい人だ、とアイラは思った。
同時に、今まで抱いていたバージルに対する印象が変わる。
「……バージルさまの覚悟は、良く分かりました。なので、少し協力してください」
「何をするつもりだ?」
「いいですか。決して暴れたりしないでくださいね」
アイラはそう言うと、素早く魔術を唱える。思い切り眉を寄せているバージルを、そのまま横に抱き上げた。
「……はあ!?」
「騒がないでください。行きますよ」
アイラはバージルを抱えたまま、補助魔術をかけた脚で駆け出した。
フィンに向かっていた矢が、途端に狙いを変えて放たれる。けれど、大体の場所を把握していたアイラは素早く躱していく。
「フィン副団長!」
呆気に取られていたフィンが、アイラに名前を呼ばれて我に返った。
矢が飛んできていた茂みに一気に距離を縮め、その剣を振るうと、「ぐあっ」と短い悲鳴が上がる。
アイラはバージルを抱え走りながら、敵の居場所を確認する。
一、二、三…あと五人はいそうだ。矢が飛んでくる速さが落ちているため、残りが少ないのかもしれない。
ぐっと脚に力を込め、木を伝って渡り廊下の屋根に飛び移る。そこでバージルを降ろした。
「ここなら、矢の飛距離からして届かないと思います。念のため、身を低くしていてください」
「……お、お前…」
「では、不届き者を捕らえてまいりますね」
口をパクパクとさせているバージルを置いて、アイラは屋根から飛び降りた。ドレスの裾がふわりと舞う。
裾を結べば少しは動きやすくなったかも、と思いながら、アイラは先程目星を付けた場所へ向かう。
背の高い生け垣に隠れるように、フードを被った人物が弓を構えていた。
「……、く、来るなっ…!」
その弓矢が放たれる前に、アイラは身を低くして地面を蹴る。一瞬で相手の懐へ近付くと、腕で弓を弾き飛ばした。
フードの隙間から、相手の驚きで見開かれた瞳が見える。
アイラはそのまま肘を使って、下から顎を突き上げた。敵が地面に倒れ、拘束用の縄を取り出そうとしたアイラだったが、今は身につけていないことに気付く。
「………」
少し動きを止め、アイラはドレスのリボンの部分を使おうという考えに至る。
心の中で両親に謝り、リボンに手を掛けようとしたところで、背後で気配がした。
「こらこら、待ちなさい」
「……副団長!」
フィンは団服から魔術具を取り出すと、魔力を込める。飛び出した縄が、気絶していた敵を捕縛した。
騎士団では、団長と副団長のみ、普段から魔術具の携帯と使用が許されている。
「もう終わったのですか?」
「どこかの誰かさんが、バージル姫を守ってくれたおかげでね」
「ひめ…」
「あの横抱きは、どう見てもアイラが王子でバージルが姫だったでしょう」
呆れたように肩を竦めたフィンに、アイラは苦笑いを返した。
「それで、姫はどこへ?」
「あそこです。屋根の上で待っていてもらっています」
「それはそれはまた……」
フィンはくすりと笑うと、アイラの頭を撫でる。
「ありがとうアイラ。俺にも補助魔術をかけてくれただろう?」
「……お役に立てましたか?」
「もちろん。さすが俺の弟子、状況判断と行動が的確だね。ドレス姿で戦うご令嬢なんて、アイラくらいだろうなー」
アイラは自身の姿を見下ろすと、ドレスの裾が所々ほつれたり、枝に引っかかったのか破れているところが目に入った。
「今日のために、両親が用意してくれたのですけど…申し訳ないことをしてしまいました」
しょんぼりと項垂れたアイラの肩を、フィンが優しく叩く。
「俺の任務を手伝ってくれたせいだから、弁償させてよ」
「いえ、そんな…」
「アイラのドレス姿、また見たいしね。…俺が見られる機会はあんまりなさそうだけど」
そう言って、フィンがじっとアイラに視線を注いだ。アイラは思わず身じろぎする。
「……まじまじと見ないでください。ただでさえこの格好、落ち着かないのですから」
「どうして?とても似合ってるのに。綺麗だよ」
サラリと褒め言葉を口にする辺り、フィンは女性の扱いに慣れているな、とアイラは思った。
月明かりに照らされて、銀髪がきらきらと輝いている。儚げに見える整った容貌は、城で働く女性に大人気だ。
アイラは城内を移動中、使用人に囲まれるフィンを何度も目撃したことがある。
笑顔を振りまき、リップサービスを添えて、女性たちをきゃあきゃあ言わせていた。
「……フィンさま。私にお世辞は結構ですからね
」
「はは、そう言うと思った。ちなみに、他の女性だったら頰を染めて視線を逸らすところね」
「大変勉強になります」
「こら、ちょっと面倒くさそうな顔しない。……それにしても、久しぶりに聞いたね。アイラの“フィンさま”」
フィンは少し嬉しそうに言うと、アイラの髪に手を伸ばした。
纏めていた髪は緩み、一房ほど顔の横に垂れている。それが気になったのかと思えば、フィンの手はアイラの髪を完全に解いてしまった。
「な…、」
「ご令嬢のアイラも、弟子のアイラも好きだけど……俺はこの、“騎士のアイラ”が一番好きだな」
それは、妖艶な笑みだった。
フィンが時折見せる、逃したくない獲物を見るような、ぞくりとするほどの綺麗な笑みだ。
アイラが射すくめられたようにその場に立ち尽くしていると、フィンが一歩近付いてくる。
その時だった。
「―――おい」
突然暗闇に響いた大きな声に、肩がびくっと震える。
フィンの後ろからズカズカと歩いてきたのは、バージルだった。
「俺を放置しておいて、なーに恋愛ごっこを始めようとしてるんだ?」
「おやバージル姫さま。ご無事で良かった」
「はあ?………」
最初、姫と呼ばれたバージルは訳が分からないと言ったように眉を寄せ、少しの沈黙のあと、今度は眉が大きくつり上がった。
「……っ、あれは、こいつが勝手に!」
びしっと指差されたアイラは、ぱちぱちと瞬きを繰り返した。……あれ、とは。
「バージルさまを横抱きしたことですか?私は補助魔術が使えるので、腕力を強化して抱えて移動したほうが早いと判断したのですが…」
「そういうことじゃない!」
「えっ?おんぶの方が良かったですか?」
アイラが大真面目でそう訊くと、フィンが耐えきれずに吹き出した。
「あっははは!本当に、変なとこで抜けてるよねアイラは…あー面白い」
「……もういい。この話はやめだ、やめ。フィン、連中はどうなった?」
バージルが片手で頭を抱え、アイラの近くで縛られて転がっている人物を見た。
「全員気絶させて、縛ってあるよ。あっちにまとめてある」
「そうか。助かった」
フィンの答えに頷くと、バージルはアイラに視線を移す。そして、少し躊躇いがちに口を開いた。
「……お前も、巻き込んで悪かったな。助かった、ありがとう」
まさか謝罪とお礼を言われるとは思っていなかったアイラは、まじまじとバージルを見てしまう。
ばつが悪そうに視線を逸らしたバージルの肩を、フィンはニヤニヤしながら小突いた。
「いやぁ~妙に素直だな、バージル姫さま?」
「………そろそろ殴っても良いか?」
「おや怖い。アイラ聞いた?」
「ええと…」
アイラは二人の顔を交互に見ると、ずっと疑問だったことを口にした。
「お二人は、どうしてそんなに親しげなのですか?」
◇◇◇
夜会がお開きとなったのは、それから数十分後の出来事だった。
バージルはまず両親を呼び出し、捕らえた者たちを見せた。
母親はまたくらりと意識を失い、父親は真っ青な顔をしていた。
捕らえた者たちは、フィンの指示でウェルバー侯爵家の衛兵たちが城へと連れて行ったらしい。
その間、アイラはすぐに使用人に連れられて別室に案内されていた。
応接室だろうか。立派な家具に囲まれた部屋の中央で、ふかふかのソファに座っていると、廊下からバタバタと足音が近付いてくる。
「―――アイラ!!」
扉から勢い良く部屋に入ってきたのは、取り乱した様子のクライドだった。
立ち上がったアイラは、そのままクライドに抱きしめられる。
「アイラ、良かった…!」
「お兄さま……あの、私は平気です」
「本当だな?どこにもケガはないな?」
体を離したクライドは、アイラの無事をじろじろと視線で確かめた。そして、汚れたドレスに気付いて顔をしかめる。
「アイラ……どうしてドレスがボロボロに?」
「それはですね、ええと…」
「俺を守ってくれたからだ、タルコット家のご令息」
バージルがそう言って部屋に入ってきた。後ろにはフィンもいる。
アイラとクライドの向かい側にあるソファにドカッと腰掛けると、バージルは深い溜め息を吐いた。とても疲れた顔をしている。
「……守ってくれたとは、どういうことですか?アイラが、貴方を守ったと?一体何から?」
クライドが噛みつくように質問し、アイラはそれをハラハラと見ていた。
「とりあえず座ってくれ。ちゃんと順を追っ説明する」
バージルが指でソファを指すと、クライドはアイラを先に座らせ、自身も渋々と腰掛けた。
バージルの座るソファの少し後ろに立っていたフィンが、最初に口を開く。
「アイラ。さっき君は、俺とバージルの関係性について質問したよね?」
「あ、はい…」
「俺とバージルは、異母兄弟なんだよ」
サラリと告げられた言葉に、アイラは息を飲んだ。隣のクライドも目を丸くしている。
異母兄弟ということは、父親が同じということだ。
……つまり、フィンも侯爵家の人間ということになる。
「……でも、私…ウェルバー侯爵家の子どもはバージルさましかいないと教えられました」
アイラは小さい頃、ウェルバー侯爵家のお茶会に一度だけ参加したことがある。
その時も、侯爵から息子だと紹介されたのはバージルだけであった。
アイラの言葉に、フィンは苦笑する。
「それはそうだよ。ウェルバー侯爵は、俺が息子だとは思ってもいないから。そもそも、他に息子がいることも知らないんだから」
「え…」
「俺の母親は、踊り子でね。ウェルバー侯爵に目を付けられ、俺を身籠った。けれど母親は侯爵には妻がいて、さらに同じように身籠っていることを知った。……だから、侯爵には何も告げずに姿を消し、一人で俺を生んだんだ」
初めて聞くフィンの身の上話に、アイラはどんな言葉を口にすればいいのか分からなかった。
フィンは他人事のように話を続ける。
「この髪と瞳は、母親から譲り受けたものだ。だからバージルとは全然似てないだろう?母親は、俺が十二になるころ病気で亡くなった。それで俺は、話に聞いていた父親の情報を頼りに、ウェルバー侯爵家を…バージルを見つけた」
そこでバージルは、ソファにもたれかかりながらフィンを見た。
「その昔話、まだ続けるのか?」
「いいや。……というわけでアイラ、俺たちが仲良しな理由は分かったかな?」
「……はい。分かりました」
二人の関係性は分かったが、何のわだかまりもなく親しくできるものだろうか。
アイラは不思議に思ったが、深く追求しないことにした。いずれ、話したいときに話してくれるだろうと思ったからだ。
「それで、俺とフィンは定期的に連絡を取り合っていた。今回の夜会に呼んだ目的は、俺の護衛だった」
「そう。俺の任務は、バージルの命を狙う不届き者から、彼を守ることだった。この困った兄は、自分の命が狙われる状況を、わざと作るつもりでいたからね」
やはり、アイラの予想は当たっていたようだ。
中庭で狙われた先程の状況は、バージルが作り出したものだった。
「両親が俺のために夜会を開くだなんて言って、馬鹿げた紹介状を勝手にそこら中に送る数日前に、俺の元へ一通の手紙が届いた」
そう言うと、バージルが上着の内ポケットからくしゃくしゃに折りたたまれた手紙を取り出した。
アイラはそれを受け取り、クライドと一緒に中身に目を通す。
「……税を下げろ、無駄に私腹を肥やすな、さもなくばお前らの息子の命を狙ってやる…」
「これが、ウェルバー侯爵ではなくバージルさまの元へ?」
内容からして、ウェルバー侯爵に宛てた手紙のようだ。それなのに、何故バージルの元へ届いたのか。
アイラの疑問に、バージルは肩を竦める。
「別に、不思議なことじゃない。実質、ここの当主は俺のようなものだ。ほぼ全ての仕事を俺がやっているからな」
「え?」
「だから、手紙などの書類は全部俺に回ってくることになっている。この手紙を書いたやつは、それを知らなかったらしいな」
バージルはアイラの手から手紙をスッと抜くと、ぐしゃりと握りつぶして机の上に投げた。
アイラはその行動より、ウェルバー侯爵家の事実に衝撃を受けている。
「その…お仕事は、バージルさまが自主的に全て自分でなさっているのですか…?」
「そう思うか?俺はそんなお人好しじゃない」
両腕を組んだバージルの後ろで、フィンが「お人好し代表でしょ」と口を挟んだ。
「侯爵は、上っ面は良いけど裏では結構あくどい事に手を出してたんだ。それこそ、昔はもっと高い税をいろんなところで課していたし。それに気付いたバージルが、少しずつ仕事を手伝うふりをして正してきた。それに腹を立てた侯爵が丸投げして…って感じだね」
「俺がすぐに音を上げると思ったんだろうな。だが、俺は財政を立て直した。自分にもちゃんと金は入ってるから、文句も言えないみたいだな」
黙って話を聞いていたクライドが、静かに口を開く。
「……バージルさまが、噂と違いとても良識的で才能のある方だとは分かりました。それで、本当に命を狙われたバージルさまを、何故アイラが守ることになったのですか?」
「お兄さま。それは私が」
アイラはスッと片手を上げると、会場から離れたあとに何があったかをクライドに話した。
ちなみに、どこぞの令嬢たちに嫌味を言われたことは伏せておく。
話を聞き終えたクライドは、額に手を当てて唸っていた。
「アイラ……俺は何から言えばいい?ドレスで戦うな?無茶をするな?」
「お兄さま、私は騎士ですから。当然の行動をとったまでです。ドレスのことは…帰ってからきちんと謝ります」
「分かってる。お前は騎士だけど、今日は令嬢としての参加で…というか、バージルさまのご両親は、何故そこまで嫁探しに必死なのですか?」
ふと疑問に思ったのか、クライドがバージルに視線を向けた。途端に、バージルの顔が不快そうに歪む。
「知らん。俺が仕事を乗っ取り始めた頃から慌てて探し出したから、婚姻を結べば俺が女の方に流されるとでも思ったんじゃないか?」
は、と乾いた笑いを漏らしたバージルは、「あの男の恋愛脳と一緒にしないでもらいたいな」と吐き捨てた。
自分の父親を“あの男”と呼ぶ辺り、良く思っていないことが伝わってくる。
「それで…バージルさまを狙っていたのは誰だったのですか?」
「あの男と昔繋がっていた連中だった。俺が介入したことで仕事がなくなり、切り捨てられた恨みを晴らそうとしたってところだな」
知っていた人物だからこそ、侵入者を捕らえたとバージルが両親の前に突き出したとき、父親は顔を真っ青にしていたのだろう。
過去に悪事を働いていたなら、牢でバラされるのではと心配になるはずだ。
ウェルバー侯爵が、今後どのような扱いを受けるのかはまだ分からない。
けれど、バージルは悪事を働いていた父親を告発するわけではなく、代わりに自分が根本から正そうと動いたのだ。
それはきっと、これからも変わらないだろうと、アイラは自信を持って思った。
「……おい、どうして生暖かい目で俺を見る?」
「気のせいです」
「じゃあどうして笑ってるんだ」
むすっとした顔のバージルを見ても、もう嫌だなとは感じない。
アイラは再び「気のせいです」と言って笑った。
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