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五章 テクサイス帝国番外編 3.5 魔族領一人旅
755 一ヶ月振りの延縄漁
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なんとも八つ当たりノットの掛け声で、二艘の船を持ち上げて海に浮かべ、それぞれ船に乗り込む。
カズも船を持ち上げて運んだ二号船に乗り、中央に座って沖合へと向かう。
カズが乗った二号船には予備の玉網と大きな魚を引き上げるための鉤棒。
一号船には延縄と餌と、目印となる大きな木製の浮きが四組積んである。
曇っていて月や星が見えないので、離れて行く島の影を見ながら、ノットが乗る一号船を先頭にカズが乗る二号船が続く。
二人ずつ櫂を持ち、タイミングを合わせて同時に漕ぎ、二艘の船はぐんぐん進む。
陸から離れて十数分移動して最初の延縄を仕掛け、木製の大きな目印を投げて浮かべる。
それから十数分移動して次の仕掛けと、計四組の延縄を仕掛け終え、近くの陸に移動する。
仕掛けを上げるのは夜が明けてからだと、それまで陸に上がり休憩。
一号船が延縄を仕掛けてる間に二号船の村人二人が、仕掛けを上げるまでの休憩に食べる魚を釣っていた。
沖合に仕掛けた延縄で釣れる魚と比べ、比較できない程小さいが、それでも大きいのは30センチくらいはある。
陸に上がると釣った魚を捌き、それを焼いて食べ夜明けを待つ。
カズも一匹貰い食べるも、味付けは無し。
若干の塩気を感じるも、それは捌いた村人の手に付着した海水、もしくは村人の汗……と考えるのを、すぐに放棄して無心で食べた。(実際は捌いた魚の血合い等を洗い流す際に使った海水)
最初の延縄を仕掛けてから約二時間半、曇り空が次第に薄明るくなって来ると、焚き火に海水を掛けて消し、村人達はノットの合図で船に乗り込み、仕掛けた延縄を上げに向かう。
船に乗り込んで十数分、最初に仕掛けた延縄が付いた木製の目印を船に引き上げ、縄を手繰り寄せていく。
計十五本ある針を引き上げ、一本目二本目三本目と空振り。
四本目に40センチ程の魚を釣り上げるも、毒魚らしく針を外すと海に投げ返した。
陸から一番近い仕掛けには、残念な事に釣果は無かった。
「釣れないのは根城にしているビッグマウスの影響なんですか?」
カズは同じ二号船の乗っている村人に、釣果の成果を聞いた。
「ビッグマウスの影響もあるだろうが、島から近いこの辺りはこんなものだ。針も大きなのを使ってるからな」
「月が見えれば、もう少し仕掛けを入れる場所を選べるんだけど」
「仕方ないさ。月明かりがあると、海中から船がハッキリみえちまう」
「だから曇ってる今日に!」
曇っていて月明かりの無い海上では視界が悪いのに、何故漁に出たか少し不思議に思っていたカズだったが、同船している村人の話でその理由が分かった。
もっと早くに延縄を仕掛け、明るく前に上げれば、ビッグマウス・シャークに襲われる可能性は低いのではと考えたが、夜明け前後が一日で一番釣れる時間だと、乗船した村人から聞いた。
話を聞いてる間に、次の延縄を仕掛けた場所に着き、引き上げが始まる。
最初の仕掛けと同じ様に、一本目二本目と空振り。
しかし三本目から八本目まで続けて釣れ、二組目の仕掛けには30センチから50センチ、九匹の釣果があった。
ビッグマウス・シャークが襲って来る気配は、今のところない。
三組目の仕掛けを上げるも、二組目より少なく釣果は三匹だけで、しかも30センチと小さい。
ビッグマウス・シャークに襲われなくとも、この程度の釣果では陸から一日掛けて釣るとの大差ない。
陸から一番遠い沖合に仕掛けた四組目の延縄に期待を込めて向かう。
波や潮の流れで仕掛けが移動するのは珍しくないが、約500メートルとかなり移動していた。
その理由は仕掛けに繋がった木製の目印を見て分かった。
少しずつ目印に付けた木製の浮きが、現在進行形で移動しているのが見て取れた。
かなりの大物が仕掛けに掛かってると、村人達は久々の漁に興奮気味。
釣り針から外れる前に引き上げようと、一号船の村人は興奮するノットの合図で、仕掛けの縄を力一杯引く。
一本目には80センチ弱、二本目には60センチ強の丸々とした魚が上がった。
三本目から十本目までは釣果ないが、凄く強い引きは続いてる。
十一本目を引き上げてる途中で、カズが視界の端に表示させてあるマップにモンスターの反応が現れた。
「それ以上はやめろ! 掛かってるそれは、おそらくビッグマウスだ!」
一号船に乗る村人達に、カズは仕掛けを上げるなと叫ぶ。
「何言ってやがる。ビッグマウスは仕掛けになんか食いつかね」
ビッグマウス・シャークが仕掛けの餌に食い付かなくても、仕掛けに掛かった魚に食い付いた可能性があるとは思わないのか。
ノットは仕掛けの縄を、グイグイ引き寄せる。
無意識でやっているのか分からないが、魔力が全身を覆い仕掛けを引く際に、腕と踏ん張る足の部分だけ魔力を増大していた。
他の村人はノット程魔力を扱う事ができないらしく、ほぼ筋力だけで仕掛けを上げていた。
掛かっているモンスターに引き負けして、引き寄せられなければノットを説得して考え直させられるのだが、聞く耳持たない。
そして十一本目の針に掛かる魚影が見えてきてしまった。
強く引いていた仕掛けの縄が急に弛み、魚影が海面に上がって来た。
針は80センチから1メートルくらいの魚が掛かっており、それを2メートル程のビッグマウス・シャークが、尻尾から頭に掛けてくわえ込んでいた。
バキバキと魚の頭を砕き、そのまま飲み込むと、海面から飛び上がって一号船に襲い掛かる。
「よくも大物を横取りしやがったな! こちとら腕っぷしが自慢の連中が集まった傭兵団にいたんだ。デカい口の鮫なんて怖くねぇんだ!」
ノットはそう意気込むと、飛び掛かって来たビッグマウス・シャークの正面を拳で殴り、一号船を守った。
「分かったかカズ! おれにかかればビッグマウスなんて、こんなもんよ!」
「おお! さすがノットだ」
ノットがビッグマウス・シャークを殴り飛ばした事で、一号船と二号船の村人は歓声を上げた。
確かに一体二体なら、同じ船に乗っているの村人を守れそうだが、それでは何の解決にもなってない。
ビッグマウスを追っ払ったのはいいが、大きな獲物を食われては、なんにもならない。
そもそもビッグマウス・シャークを全てこの海域から追っ払うか、倒してしまわなければ、何時まで経っても大物を釣り上げる事はできない。
結局最後の仕掛けは、ビッグマウス・シャークが掛かっていた事で、釣果は80センチと60センチの魚が二匹だけで、仕掛けも十一本目から先は切られてしまって無い。
仕掛けに付いた目印の木製の浮きを上げて、二艘の船を置いていた陸に戻ろうと櫂を持った時に、海中からビッグマウス・シャークが複数海面に上がって来た。
仕掛けに掛かっていた魚に食い付いた、ビッグマウス・シャークを殴り飛ばしたノットが乗る一号船が狙い。
2メートルから3メートルのビッグマウス・シャーク六体が、一号船の周りをグルグルと泳ぎ様子を伺っていた。
さっきの勢いは何処へやら、思わぬ数のビッグマウス・シャークに、ノットは黙って一号船に身を屈めて静かになる。
他の村人も同じ様にして、生唾を飲み込みビッグマウス・シャークの動きに警戒する。
カズも船を持ち上げて運んだ二号船に乗り、中央に座って沖合へと向かう。
カズが乗った二号船には予備の玉網と大きな魚を引き上げるための鉤棒。
一号船には延縄と餌と、目印となる大きな木製の浮きが四組積んである。
曇っていて月や星が見えないので、離れて行く島の影を見ながら、ノットが乗る一号船を先頭にカズが乗る二号船が続く。
二人ずつ櫂を持ち、タイミングを合わせて同時に漕ぎ、二艘の船はぐんぐん進む。
陸から離れて十数分移動して最初の延縄を仕掛け、木製の大きな目印を投げて浮かべる。
それから十数分移動して次の仕掛けと、計四組の延縄を仕掛け終え、近くの陸に移動する。
仕掛けを上げるのは夜が明けてからだと、それまで陸に上がり休憩。
一号船が延縄を仕掛けてる間に二号船の村人二人が、仕掛けを上げるまでの休憩に食べる魚を釣っていた。
沖合に仕掛けた延縄で釣れる魚と比べ、比較できない程小さいが、それでも大きいのは30センチくらいはある。
陸に上がると釣った魚を捌き、それを焼いて食べ夜明けを待つ。
カズも一匹貰い食べるも、味付けは無し。
若干の塩気を感じるも、それは捌いた村人の手に付着した海水、もしくは村人の汗……と考えるのを、すぐに放棄して無心で食べた。(実際は捌いた魚の血合い等を洗い流す際に使った海水)
最初の延縄を仕掛けてから約二時間半、曇り空が次第に薄明るくなって来ると、焚き火に海水を掛けて消し、村人達はノットの合図で船に乗り込み、仕掛けた延縄を上げに向かう。
船に乗り込んで十数分、最初に仕掛けた延縄が付いた木製の目印を船に引き上げ、縄を手繰り寄せていく。
計十五本ある針を引き上げ、一本目二本目三本目と空振り。
四本目に40センチ程の魚を釣り上げるも、毒魚らしく針を外すと海に投げ返した。
陸から一番近い仕掛けには、残念な事に釣果は無かった。
「釣れないのは根城にしているビッグマウスの影響なんですか?」
カズは同じ二号船の乗っている村人に、釣果の成果を聞いた。
「ビッグマウスの影響もあるだろうが、島から近いこの辺りはこんなものだ。針も大きなのを使ってるからな」
「月が見えれば、もう少し仕掛けを入れる場所を選べるんだけど」
「仕方ないさ。月明かりがあると、海中から船がハッキリみえちまう」
「だから曇ってる今日に!」
曇っていて月明かりの無い海上では視界が悪いのに、何故漁に出たか少し不思議に思っていたカズだったが、同船している村人の話でその理由が分かった。
もっと早くに延縄を仕掛け、明るく前に上げれば、ビッグマウス・シャークに襲われる可能性は低いのではと考えたが、夜明け前後が一日で一番釣れる時間だと、乗船した村人から聞いた。
話を聞いてる間に、次の延縄を仕掛けた場所に着き、引き上げが始まる。
最初の仕掛けと同じ様に、一本目二本目と空振り。
しかし三本目から八本目まで続けて釣れ、二組目の仕掛けには30センチから50センチ、九匹の釣果があった。
ビッグマウス・シャークが襲って来る気配は、今のところない。
三組目の仕掛けを上げるも、二組目より少なく釣果は三匹だけで、しかも30センチと小さい。
ビッグマウス・シャークに襲われなくとも、この程度の釣果では陸から一日掛けて釣るとの大差ない。
陸から一番遠い沖合に仕掛けた四組目の延縄に期待を込めて向かう。
波や潮の流れで仕掛けが移動するのは珍しくないが、約500メートルとかなり移動していた。
その理由は仕掛けに繋がった木製の目印を見て分かった。
少しずつ目印に付けた木製の浮きが、現在進行形で移動しているのが見て取れた。
かなりの大物が仕掛けに掛かってると、村人達は久々の漁に興奮気味。
釣り針から外れる前に引き上げようと、一号船の村人は興奮するノットの合図で、仕掛けの縄を力一杯引く。
一本目には80センチ弱、二本目には60センチ強の丸々とした魚が上がった。
三本目から十本目までは釣果ないが、凄く強い引きは続いてる。
十一本目を引き上げてる途中で、カズが視界の端に表示させてあるマップにモンスターの反応が現れた。
「それ以上はやめろ! 掛かってるそれは、おそらくビッグマウスだ!」
一号船に乗る村人達に、カズは仕掛けを上げるなと叫ぶ。
「何言ってやがる。ビッグマウスは仕掛けになんか食いつかね」
ビッグマウス・シャークが仕掛けの餌に食い付かなくても、仕掛けに掛かった魚に食い付いた可能性があるとは思わないのか。
ノットは仕掛けの縄を、グイグイ引き寄せる。
無意識でやっているのか分からないが、魔力が全身を覆い仕掛けを引く際に、腕と踏ん張る足の部分だけ魔力を増大していた。
他の村人はノット程魔力を扱う事ができないらしく、ほぼ筋力だけで仕掛けを上げていた。
掛かっているモンスターに引き負けして、引き寄せられなければノットを説得して考え直させられるのだが、聞く耳持たない。
そして十一本目の針に掛かる魚影が見えてきてしまった。
強く引いていた仕掛けの縄が急に弛み、魚影が海面に上がって来た。
針は80センチから1メートルくらいの魚が掛かっており、それを2メートル程のビッグマウス・シャークが、尻尾から頭に掛けてくわえ込んでいた。
バキバキと魚の頭を砕き、そのまま飲み込むと、海面から飛び上がって一号船に襲い掛かる。
「よくも大物を横取りしやがったな! こちとら腕っぷしが自慢の連中が集まった傭兵団にいたんだ。デカい口の鮫なんて怖くねぇんだ!」
ノットはそう意気込むと、飛び掛かって来たビッグマウス・シャークの正面を拳で殴り、一号船を守った。
「分かったかカズ! おれにかかればビッグマウスなんて、こんなもんよ!」
「おお! さすがノットだ」
ノットがビッグマウス・シャークを殴り飛ばした事で、一号船と二号船の村人は歓声を上げた。
確かに一体二体なら、同じ船に乗っているの村人を守れそうだが、それでは何の解決にもなってない。
ビッグマウスを追っ払ったのはいいが、大きな獲物を食われては、なんにもならない。
そもそもビッグマウス・シャークを全てこの海域から追っ払うか、倒してしまわなければ、何時まで経っても大物を釣り上げる事はできない。
結局最後の仕掛けは、ビッグマウス・シャークが掛かっていた事で、釣果は80センチと60センチの魚が二匹だけで、仕掛けも十一本目から先は切られてしまって無い。
仕掛けに付いた目印の木製の浮きを上げて、二艘の船を置いていた陸に戻ろうと櫂を持った時に、海中からビッグマウス・シャークが複数海面に上がって来た。
仕掛けに掛かっていた魚に食い付いた、ビッグマウス・シャークを殴り飛ばしたノットが乗る一号船が狙い。
2メートルから3メートルのビッグマウス・シャーク六体が、一号船の周りをグルグルと泳ぎ様子を伺っていた。
さっきの勢いは何処へやら、思わぬ数のビッグマウス・シャークに、ノットは黙って一号船に身を屈めて静かになる。
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