人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
764 / 807
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

743 不毛で不明な地 10 管理神は元……

しおりを挟む
 カズ君がチャラ神と呼んでいる管理神は、魔族の王として国を統治していた。
 しかし父親である前魔王も、その前も前も前も前の魔王も好戦的な性格をしており、隣接していた魔族以外の種族領土に攻め込み、支配して領土を拡大した。
 チャラ神管理神が世襲で魔族の王となったが、先代や先々代に仕えていた官僚や側近達が、魔力の扱いに長けている魔族が、自分達よりも格下相手の種族に話し合いで済ませようとは、微塵も思っていなかった。
 魔族の領土を拡大しようとせず、支配下の入っている種族や奴隷に恩情をかけていた。
 そんな魔王に周囲の者達は呆れ返り、腑抜けだのと陰口を叩かれ、次々と離れていった。
 次第に魔王は孤立する事なり、官僚達の企てて世襲制度が廃止され、先代の魔王達とこころざしを同じくする若い官僚を新たな魔王とたてまつり、権力を持つ官僚達が国を動かすようになった。
 偉大なる魔族の歴史の恥になるとして、ありもしない汚名を着せられ、チャラ神管理神は処刑された。

 当時管理神をしていた女神が哀れに思い、処刑された魔王を心優しき者として、自分の補佐をする管理者として、世界を監視させた。
 大きな問題事が起きそうなら、それを小さな出来事として処理をさせる役目を与えた。
 それを百年、二百年、三百年と続けさせ、二百年以上前の大戦後に、前管理神の女神が眠りにつかなければならなくなり、眠りが覚めるまでの代理として、世界の管理を任せる管理神のとした。

「『本人から聞いた事ゆえ、全てが真実とは限らないが、全てが嘘というわけではなかろう』」

 大戦を起こしたのだから、魔族の上層部は好戦的なんだろう。

「『にわかには信じられないが、それを確かめる手段もないことだし、話半分に聞いておく』(チャラ神っていい奴なのか?)」

 カズは巨大な生物コラプサーの話を聞き、少しだけ管理神チャラ神を見直した。

「『それで良かろう』」

「『地上に戻る方法を知ってるって聞いたけど、本当か?』」

「『これより先、六里程の場所に裂け目があり、そこに何かがあると言っていた』」

「『何かって、なに?』」

「『あれがそう言っただけだ。そこに何があるかは、行けばわかる。結界の近くだろう』」

「『あのチャラ神め。知ってるんじゃなくて、適当に教えたの間違いじゃないか! 無かったら結界ぶっ壊して出てやる。どうせ困るのはチャラ神だ!』」

 管理神チャラ神を見直したのも束の間、カズの評価は急降下して元通り。

「『今のぬしなら出来るだろう。結界が消えたら、我もどこかに行くとするか』」

「『いいんじゃないの。ダメならチャラ神が話しかけてくるだろ。そうそう、俺の魔力なんだけど、どうやって抑えたらいいと思う?』」

「『ぬし自身の事だ。自分でせい』」

「『だよな。ダメ元で聞いてみただけ。さすがにこの魔力を制御できずに、地上に戻るのはまずいよな』」

「『突然その状態のぬしが現れたら、侵略者だとみなされるのは確実だろうに』」

「『あんたには言われたかない。名前はコラプサーだっけ?』」

「『あれが嫌味を込めて、勝手にそう呼んでいるだけだ。名など、どうでもよい。我は我だ』」

「『そうか。とりあえず魔力の制御方法を探しながら、この先にあるとかいう裂け目に向かってみるよ』」

「『無事戻れるといいな』」

「『ここに戻って来なければ、地上に行けたと思ってくれ。色々と世話になった』」

「『気まぐれだ。ようやく静かになり、眠りにつける』」

「『何十年でも何百年でも、好きなだけ寝てくれ。ありがとう』」

「『もう戻って来るな』」

 巨大な生物コラプサーから聞いた方向に、カズは移動を始める。
 クレーターを抜けると、ステータス画面を表示させ、魔法かスキルで魔力を制御出来る方法があるかを探しながら歩を進める。
 管理神チャラ神との念話で、魔力をかなり消費した事で、ダダ漏れていた魔力がすっかり消えていた。
 魔力を内に留めるようにするだけで、暫くは隠蔽を使わずともよさそう。
 だが隠蔽は解除してないので、そのまま継続させておくことにした。

 レベルが以前よりも遥かに上昇した事で、高重力の中での移動が苦ではなくなっていた。
 ステータスの数値が、何処かの国の宝くじの一等かと思える桁になっている。
 運だけは少し上がった程度なのは、三桁にはならないということだろう。
 運の要素は幸運と不運のバランスで成り立ってる。
 運が100なんて事になったら、不運な方向に運が向いたら、死亡が確定するような出来事が起きる事だろう。
 それを考えると、運50が一番良いステータスの数値なのかも知れない、と考えた。

 地上に戻れる希望がこの先にあると、足取り軽く移動して裂け目を探しに行く。
 巨大な生物コラプサーづてでの管理神チャラ神からの情報なので、どんな裂け目なのか気になる。
 隕石のような大岩に裂け目があるのか?
 はたまた地面に底が見えないくらい深い裂け目があるのか? 
 行けば分かる程度の情報しか寄越さないのだから、管理神チャラ神に対して嫌悪感を抱かずにはいられない。

 隕石と巨大な生物が鎮座するクレーターから、二十キロは移動してきたが、裂け目がありそうな大岩も、地面に変化も現れない。
 もしかして数センチ程度割れ目を、裂け目とか言ったんじゃないだろうか? と、情報元からするとあり得る。
 裂け目を探し回るのを見て、冗談だよと笑う管理神チャラ神の喜ぶ表情な目に浮かびイラッとする。

 巨大な生物コラプサーが六里程先、約二十四キロと言っていたのを思い出し、結界付近だと言っていた様な気がしたので、引き続き言われた方向に移動して行く。
 何故六里なのかは管理神チャラ神の悪ふざけだろう。
 魔力を制御するスキルや魔法が見付からなかったので、アイテムボックス内のトレーディングカードトレカで使えるものがないかと物色してみたが、分かるのは弱体化させる装備品があるだけ。
 あとは使ってみなければ、元の効果がどう変化するかは分からないので保留にして、地道に魔力を抑え込み維持して、それが継続出来るように訓練する。

 この世界が成り立つ要因の一つに必要な魔力、それを制御するのなら、スキルや魔法に頼ることをせず、魔力の流れを感じ操れる様になる基礎訓練が一番自然で良い事だと初心に返る。
 魔力を開放しては抑える訓練を、冒険者になりたての頃のように、移動しながら何度も繰り返す。
 せめて魔力の八割は制御出来るようにして、あとの二割は何かしらのスキルや魔法か、魔道具アイテムに頼ろうかと、持ってもない魔道具アイテムのことを考える。

 例え地上に戻れる手段が見付かって戻れたとしても、今のままでは魔力の暴走だと思われ『抑え込めなければ殺す他ない』なんて言われてはたまらない。
 ましてやどの様な場所か不明な魔族領で、人族嫌いの魔族に遭遇でもしたら、問答無用で攻撃される可能性も大いにある。
 イリュージョンの魔法で姿を変えた方が良いのか、素のままでいた方が良いのか少し悩むとこだ。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

スキルが【アイテムボックス】だけってどうなのよ?

山ノ内虎之助
ファンタジー
高校生宮原幸也は転生者である。 2度目の人生を目立たぬよう生きてきた幸也だが、ある日クラスメイト15人と一緒に異世界に転移されてしまう。 異世界で与えられたスキルは【アイテムボックス】のみ。 唯一のスキルを創意工夫しながら異世界を生き抜いていく。

獣人将軍のヒモ

kouta
BL
巻き込まれて異世界移転した高校生が異世界でお金持ちの獣人に飼われて幸せになるお話 ※ムーンライトノベルにも投稿しています

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

クラス転移で神様に?

空見 大
ファンタジー
空想の中で自由を謳歌していた少年、晴人は、ある日突然現実と夢の境界を越えたような事態に巻き込まれる。 目覚めると彼は真っ白な空間にいた。 動揺するクラスメイト達、状況を掴めない彼の前に現れたのは「神」を名乗る怪しげな存在。彼はいままさにこのクラス全員が異世界へと送り込まれていると告げる。 神は異世界で生き抜く力を身に付けるため、自分に合った能力を自らの手で選び取れと告げる。クラスメイトが興奮と恐怖の狭間で動き出す中、自分の能力欄に違和感を覚えた晴人は手が進むままに動かすと他の者にはない力が自分の能力獲得欄にある事に気がついた。 龍神、邪神、魔神、妖精神、鍛治神、盗神。 六つの神の称号を手に入れ有頂天になる晴人だったが、クラスメイト達が続々と異世界に向かう中ただ一人取り残される。 神と二人っきりでなんとも言えない感覚を味わっていると、突如として鳴り響いた警告音と共に異世界に転生するという不穏な言葉を耳にする。 気が付けばクラスメイト達が転移してくる10年前の世界に転生した彼は、名前をエルピスに変え異世界で生きていくことになる──これは、夢見る少年が家族と運命の為に戦う物語。

処理中です...