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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

732 不毛で不明な地 4 未知の生物との戦闘

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 撲滅の因子で受けた呪いの解呪方法を聞きたいのに、現状それを聞くには呪いが完遂され、生存しなければならない。
 巨大な生物の言葉が本当なら、生き延びた者はいる。
 しかしそれが嘘で、死んだ後に喰らおうとでもしてる事だってあり得る。
 今、殺して喰らおうとしないのは、継続中の呪いの影響を、そのまま受けてしまうのではとも考えられた。
 これを聞いたところで、正直に答えようとはしないだろう。
 このまま行動しなければ、あと五日程でレベルは0になる。
 そこでレベルに変化したのならと考え、試してみる価値はあると行動に移る。

「『今の俺が倒せそうなのはいるか?』」

「『最後は戦って死ぬか? それもいいだろう。何と戦うかは、ぬし自ら探せ』」

「『だろうと思った』(隠蔽と隠密を解除すれば、何かしら襲って来るだろ。ただしこのデカい奴から離れないと、近付いても来ないだろがな)」

 腰を上げて巨大な生物と隕石から離れ、クレーターから出た所で隠蔽と隠密を解除する。
 魔力感知が殆ど役に立たないので、気配と僅かな視界と音で判断するしかない。
 警戒しながらクレーターから遠ざかる。
 十分経ち二十分が過ぎても、何もやって来ない。
 そして一時間が経とうとしたところに、バサバサと上空からおとが聞こえてきた。
 音のする方向に視線を向けるが、姿はハッキリと分からない。
 上空を飛ぶ生物の影で星の光が隠れたのを見て、ワイバーンの様な生物かと予測する。
 幸いな事に近付いて来たのは一体だけ。
 接近してくる前に〈身体強化〉を使い【アイテムボックス】から武器を取り出そうとする。
 以前に使用したトレカの火燐刀かりんとうを掴み、アイテムボックス内の空間から手を出すも何も持ってない。
 何度やっても結果は同じで、取り出す事ができない。
 実体化しままの物なら大丈夫かと思ったが、そう上手くはいかない。

 なら上空を飛ぶ生物に向けて魔法を放とうと狙いを定めていたら、ドロリとした液体が落ちて来た。
 撃ち落としうとせずに避ける。
 その判断は正解だった。
 地上に転がる石ころ落ちた液体は、ジュッと音を立てると、石は半分溶けた。
 厄介な事に強酸の液体を攻撃に用いる。
 暗闇から強酸を落とされてはたまらないと、狙いを定めて〈ファイヤーボール〉を放つ。
 ある程度魔力を込めたが、レベルが低下している事で、威力は思っていたよりも低く、飛んで行く速度も遅い。
 暗い夜空い火の玉が周囲を照らしなが上昇する。

 上空を飛ぶ生物には避けられて当たりはしなかったが、その姿を見る事が出来た。
 灰色をした胴体から長い首と一対の翼、短い尾と短い脚が四本。
 2メートルはあろうかという長い首の中程から先にかけて縦に割れる。
 ドロリとした液体が充満し、鋸のような細かな歯が無数に生えている。
 ギュイギュイと不快な鳴き声を上げ、火の玉を放った地上にいる者に向かい降下を始めた。
 放ったファイヤーボールが照らし、生物の姿が目視出来たところで《分析》を使い、その生物の正体を調べる。
 しかし文字化けしたように表示され、ステータスが読み取れなかった。
 魔力には限りがあり、魔力の回復もままならないので、手探りで有効な攻撃を探すしかない。

 地面に降りた生物は、長い首の半分まである口を開き、ギュイギュイと喚きながら、ドロリとした強酸の液体を垂らし近付いて来る。
 しかし地上に降りて短い脚での移動は、実に鈍足。
 何故飛ぶのをやめて、不得意な地上に降りたのか不明。
 巨大な生物と違い、知能は低いのだろう。
 だからと不明な食おうと口を開けて迫る生物に、不用意に接近したりはしない。
 目視出来る距離を保ちながら、各属性の魔法を放ち当てる。
 火属性の〈ファイヤーボール〉水属性の〈ウォーターボール〉風属性の〈エアースラッシュ〉土属性の〈ストーンブレッド〉を試す。

 風属性と土属性は効果ない。
 火属性は威力を上げれば効果はありそう。
 だがそれよりも、この生物には水属性の方が有効なのが分かった。
 拳大の水玉が当たっただけで「ギュッイー! ギュイ!」と喚き散らし、濡れた部分の水を落とそうと短い脚で地団駄を踏む。
 確かにここに飛ばされて来てから、少なくとも通って来た周囲に水気は無く、常に乾燥している。
 地面は乾いており、あるのは石や岩だけで水の匂いは一切しない。
 つまりここの生物は、水が弱点になっている可能性があると考えられた。
 巨大な生物にも効果があるかは不明だが、今は取り敢えず目の前の生物に集中する。

 水を払い落とすと、変わらずにギュイギュイと喚き散らしながら大きく口を開き、ドロリとした強酸の液体を垂れ流し、怒り狂って迫り来る。
 飛んでいなければ移動速度は遅いため、一定の距離を保ったまま水属性の魔法で攻撃する。
 飛び散る強酸の液体に気を付けながら〈ウォーターカッター〉で長い首の切断に挑む。
 レベル差からだろう、バシュっと首元近くに当たるも、かすり傷程度で切断すには程遠い。
 それでも今のレベルで、傷を負わせる事が出来ると分かっただけでも勝機はある。

 同じ首元を狙おうと、再度威力を上げたウォーターカッターを放とうとした時に、ギュイギュイと不快な鳴き声を上げる生物が首を大きく動かし、強酸の液体をばら撒く。
 これでは傷を負わせた首元を狙えない上に、ばら撒かれてる強酸の液体に触れないよう距離を取らざるを得ない。
 疲れで動きが落ち着くか様子を伺ってると、縦に割れた口の奥から四本のチューブがニョロニョロと出て来た。
 2メートル程で止まると、チューブの先から強酸の液体を撃ち出す。

 強酸の液体はすぐ横を掠め、連続で撃ち出し、射程距離は約50メートル。
 撃ち出す際にチューブがうねり、狙いが定まらず命中率が悪いのが救いだった。
 射程外まで離れると、暗さで姿を視界に捉えられない。
 ギリギリ肉眼で姿を捉えられる距離まで下がり、飛んで来る強酸の液体は土属性の〈ストーンウォール〉で防ぐ。
 30センチ程度の石壁では、勢いのある強酸の液体は貫通してくる。
 これだけでもなんとか耐えられそうだが、強酸の液体が直撃してからでは遅い。
 そこで倍以上の石壁を作り防御壁にして、隙を見て反撃する。

 水が苦手なら大きな水玉を作り、全身を濡らしてしまえば弱体化するだろうと行動に移す。
 厚い石壁に身を隠して、飛んで来る強酸の液体を防ぎ〈ウォーターボール〉で大きな水玉を作り出して当てる隙を伺う。
 何時まで続くのか、強酸の液体を四本のチューブから飛ばしながら近寄って来る。
 ストーンウォールで作り出した厚い石壁もかなり溶かされ、もう少ししたらまた貫通されてしまう。
 飛んで来る強酸の液体が止む前に、石壁が溶かされるのは確実。
 そこで石壁から真っ直ぐ後方に下がり、ウォーターボールで作り出した大きな水玉を放ち、石壁をこちらから破壊して、接近して来る生物にぶつける。

 吹き飛ばす事はできないが、狙い通りずぶ濡れにさせる事は出来た。
 予想通り濡れるのが嫌な様で「ギュイ! ギューイ!」と不快な鳴き声を上げて、全身を震わせ水を払おうとする。
 首の奥から出ていたチューブが引っ込み、大きく開いていた口を半分まで閉じた。
 仕留めに掛かるならこのタイミングしかないと、使用する魔力量を一気に増やし、高圧力の〈ウォーターカッター〉を放つ。
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