人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

文字の大きさ
上 下
747 / 807
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

726 守護騎士の後悔

しおりを挟む
 どれだけ後悔しても、レオラの失った左腕の肘から先は元に戻らない。
 一番レオラを慕ってるガザニアがこれを見たら、怒り狂い後悔して、周囲に八つ当たりをしかねない。
 それはレオラも分かっているので、ガザニアと顔を合わせたら、その直後の動きに注意しようと。

「ところで一緒に行動していたはずのカズ殿が見当たりませんが、今はアイリス様の所にいるんですか?」

 グラジオラスがカズの名を出すと、レオラの雰囲気がまた変わる。

「それについても、アスターとガザニアが戻って来たら話そう。グラジオラスはサイネの所に行き、パラガスの事と丸薬の事を話して調べてもらってくれ。詳しく聞きたいと言われたら、分かる限りの事を話してくれ」

「畏まりました」

 レオラとの話を終えると、グラジオラスは会議室を出た。
 サイネリアの所に向かおうと、通路を歩き出してすぐに気付く、調理場は何処にあるのか? と。
 戻ってレオラに聞けば早いが、知ってるつもりで出て来てしまったので、聞きの戻るのが少し恥ずかしくなってしまった。
 そこに職員の声が聞こえたのでそちらに行く。
 見付けた女性職員に調理場を聞き、足早に向かった。
 何処か気の抜けた様子で料理を作っているビワと、それを手伝うサイネリアを見付け、グラジオラスはレオラから頼まれた要件を伝える。
 レラは出来た料理を摘み食いして、味が何時もより劣っているのが不満だった。
 だけど理由は分かっているので、文句は言わない。
 そもそも当たり前のように摘み食いしてる時点で、文句を言う方がおかしい。
 カズがこの場に居たら『つまみ食いしたレラは、飯抜き!』だと、言われたことだろう。
 グラジオラスの話に出た丸薬が入った紙袋を受け取り、ビワに昼食の準備を任せて、サイネリアは調理場を急ぎ出た。


 レオラが会議室を出てサブ・ギルドマスターヤドリギの執務室に向かい、サイネリアが追い掛けた少し後、呼び出されたアスターとグラジオラスとガザニアがやって来た。

「レオラ様はどちらに?」

 会議室にレオラがいなかったので、アレナリアに何処にいるかをアスターが尋ねた。

「サブマスに話があるって、少し前に出て行ったわ」

「ならレオラ様が戻るまで、待つとしよう」

「待てガザニア。アレナリア殿が荷物を取りに戻るのを、護衛として付いて行くように言われているのを忘れたか」

「ビワやレラならまだしも、アレナリアだけを護衛するのに、三人も必要はないと思うが」

 あまり活動してないとはいえ、Bランクの冒険者を護衛する事はない筈だと、ガザニアは考えていることが言葉として出た。
 それはアスターとグラジオラスも思っていたが、何かしらの理由があるだろうとレオラの指示に従う。
 だが報告する事もあったのでグラジオラスが残り、アスターとガザニアがアレナリアの護衛として、川沿いの家まで付いて行く事になった。
 報告なら自分が残るとガザニアが言ったが、報告内容がパラガス・ノイアに関しての事なので、報告はグラジオラスの方が適任だろうとアスターが判断。
 それはガザニアも分かっていたが、アレナリアの護衛に付いて行くよりも、レオラ愛しい主人と二人になれる方が、と考えてのことだった。
 もう以前の自分じゃないので、ここで子供のように駄々をこねたりはしない。

 ビワから必要な物を書いた紙を受け取ると、アレナリアはアスターとガザニアと一緒に冒険者ギルド本部を出る。
 路上で客待ちをして停まっていたタクシー辻馬車に乗り、昼までには戻って来るつもりで出発した。

「今日明日には帝都を離れるんじゃなかったのか? なんでレオラ様とギルドにいるんだ?」

 昨日の事態をまだ知らないガザニアが、アレナリアにどうなっているのか? と、事情を聞く。

「ちょっとね。ギルドに戻れば、レオラ様が話してくれるわ」

「アレナリアは聞いてるのか?」

「……」

 事の次第を知っているアレナリアは、ガザニアの問に対しての返答に困った。
 知っていると言えば、ガザニアはしつこく聞いてきそう。
 レオラが左腕の肘から先を失ったと言えば、馬車を引き返させるか、飛び降りてギルド本部に戻って行くことだろう。
 かと言って襲って来た刺客者を捕えたと話したら、誰がどの様に? なんて聞いてきたら、それはそれで言葉を詰まらせてしまう。
 結果レオラの事もカズの事も、この場では話さない方がいいと、アレナリア考えた。
 カズがいなかった事で、問題でも起きたのではと、アスターは感付いていたが、ギルド本部に戻ればレオラ主人と会えるのだからと、ここは黙っていた。

「なにを黙ってる?」

 性格が少しは丸くなったガザニアだが、それはレオラの前だけではと思える様な態度。

「私が話して、あとでレオラ様に叱られてもよければ話すわよ」

「そ、それは困る」

 カズに酷い態度を取ってきたガザニアは、アレナリアに雑な扱いされたなんて報告されたら『今まで良く仕えてくれた。あとは待遇の良い所に努めれるが良い』と言われかねない。
 それだけは絶対にあってはならないと、ガザニアはこれ以降静かになり馬車に揺られる。

 一日前の同時刻、二人の皇女と護衛として同行した騎士二人。
 そして長年世話係をしてきたカーディナリスとビワの手料理を食べ、好みの酒を堪能しつつ楽しんでいたなぁと、川沿いの家に入り楽しかった昨日の光景をアレナリアは思い返し、胸にズキッと痛みが走る。
 料理の取り皿や粗相した酒は、ビワが染みや臭いが残らないようにと、後片付けを念入りに済ませていた。
 だが昨日の今日では、流石に臭いは残っている。
 思いに耽っている時間はないと我に返り、アレナリアは手早く必要な物を集め、アスターとガザニアに声を掛けて、川沿いの家を出て待たせてあるタクシー辻馬車に乗り冒険者ギルド本部に戻る。


 ビワが昼食を作り終え、鍋ごと料理を会議室に持って行っていいものかと悩んでるいるところに、グラジオラスから話を聞き、パラガス・ノイアが服用した丸薬の調査の手続きを終えたサイネリアが戻って来た。
 レオラの騎士三人分と、サイネリアの分も作っていたので、そこそこの量が出来上がっていた。
 レオラが所望するようなステーキと、野菜を多く入れた具沢山スープを、サイネリアが用意してくれたカートに乗せて、グラジオラスが手伝い、パンや取り皿などと一緒に会議室に運んで行く。

 会議室には出掛けていたアレナリアと、護衛として付いて行ったアスターとガザニアが戻って来ていた。
 グラジオラスがいなかった事で、レオラがこれまでにあった出来事をまだ話てない。
 ただレオラの左腕の異変を見たガザニアは、驚きのあまり硬直してい。
 アスターは生きていることを前提で、最悪の結果を考えていたので、ガザニアの様に慌てふためき、硬直するようなことはなかった。
 もちろん守護騎士として、レオラ主人をこの様な事にさせてしまったので、グラジオラスと同様に後悔をしていた。
 やはり自分達より強いレオラの痛ましい姿を見て、三人共かなりのショックを受けた。

 混乱しているガザニアの気持ちを落ち着かせるという理由で、皆でビワが作った昼食を取る。
 レオラが珍しく気を遣い明るくしようとするが、流石に会議室の雰囲気は重苦しいと感じる。
 ビワの料理の味はレラが感じた様に、美味しいが今ひとつ。
 重苦しい雰囲気のせいだろうと、誰も何も言わなかった。
しおりを挟む
感想 84

あなたにおすすめの小説

【完結】初級魔法しか使えない低ランク冒険者の少年は、今日も依頼を達成して家に帰る。

アノマロカリス
ファンタジー
少年テッドには、両親がいない。 両親は低ランク冒険者で、依頼の途中で魔物に殺されたのだ。 両親の少ない保険でやり繰りしていたが、もう金が尽きかけようとしていた。 テッドには、妹が3人いる。 両親から「妹達を頼む!」…と出掛ける前からいつも約束していた。 このままでは家族が離れ離れになると思ったテッドは、冒険者になって金を稼ぐ道を選んだ。 そんな少年テッドだが、パーティーには加入せずにソロ活動していた。 その理由は、パーティーに参加するとその日に家に帰れなくなるからだ。 両親は、小さいながらも持ち家を持っていてそこに住んでいる。 両親が生きている頃は、父親の部屋と母親の部屋、子供部屋には兄妹4人で暮らしていたが…   両親が死んでからは、父親の部屋はテッドが… 母親の部屋は、長女のリットが、子供部屋には、次女のルットと三女のロットになっている。 今日も依頼をこなして、家に帰るんだ! この少年テッドは…いや、この先は本編で語ろう。 お楽しみくださいね! HOTランキング20位になりました。 皆さん、有り難う御座います。

器用貧乏の底辺冒険者~俺だけ使える『ステータスボード』で最強になる!~

夢・風魔
ファンタジー
*タイトル少し変更しました。 全ての能力が平均的で、これと言って突出したところもない主人公。 適正職も見つからず、未だに見習いから職業を決められずにいる。 パーティーでは荷物持ち兼、交代要員。 全ての見習い職業の「初期スキル」を使えるがそれだけ。 ある日、新しく発見されたダンジョンにパーティーメンバーと潜るとモンスターハウスに遭遇してパーティー決壊の危機に。 パーティーリーダーの裏切りによって囮にされたロイドは、仲間たちにも見捨てられひとりダンジョン内を必死に逃げ惑う。 突然地面が陥没し、そこでロイドは『ステータスボード』を手に入れた。 ロイドのステータスはオール25。 彼にはユニークスキルが備わっていた。 ステータスが強制的に平均化される、ユニークスキルが……。 ステータスボードを手に入れてからロイドの人生は一変する。 LVUPで付与されるポイントを使ってステータスUP、スキル獲得。 不器用大富豪と蔑まれてきたロイドは、ひとりで前衛後衛支援の全てをこなす 最強の冒険者として称えられるようになる・・・かも? 【過度なざまぁはありませんが、結果的にはそうなる・・みたいな?】

無能な勇者はいらないと辺境へ追放されたのでチートアイテム【ミストルティン】を使って辺境をゆるりと開拓しようと思います

長尾 隆生
ファンタジー
仕事帰りに怪しげな占い師に『この先不幸に見舞われるが、これを持っていれば幸せになれる』と、小枝を500円で押し売りされた直後、異世界へ召喚されてしまうリュウジ。 しかし勇者として召喚されたのに、彼にはチート能力も何もないことが鑑定によって判明する。 途端に手のひらを返され『無能勇者』というレッテルを貼られずさんな扱いを受けた上に、一方的にリュウジは凶悪な魔物が住む地へ追放されてしまう。 しかしリュウジは知る。あの胡散臭い占い師に押し売りされた小枝が【ミストルティン】という様々なアイテムを吸収し、その力を自由自在に振るうことが可能で、更に経験を積めばレベルアップしてさらなる強力な能力を手に入れることが出来るチートアイテムだったことに。 「ミストルティン。アブソープション!」 『了解しましたマスター。レベルアップして新しいスキルを覚えました』 「やった! これでまた便利になるな」   これはワンコインで押し売りされた小枝を手に異世界へ突然召喚され無能とレッテルを貼られた男が幸せを掴む物語。 ~ワンコインで買った万能アイテムで幸せな人生を目指します~

【ヤベェ】異世界転移したった【助けてwww】

一樹
ファンタジー
色々あって、転移後追放されてしまった主人公。 追放後に、持ち物がチート化していることに気づく。 無事、元の世界と連絡をとる事に成功する。 そして、始まったのは、どこかで見た事のある、【あるある展開】のオンパレード! 異世界転移珍道中、掲示板実況始まり始まり。 【諸注意】 以前投稿した同名の短編の連載版になります。 連載は不定期。むしろ途中で止まる可能性、エタる可能性がとても高いです。 なんでも大丈夫な方向けです。 小説の形をしていないので、読む人を選びます。 以上の内容を踏まえた上で閲覧をお願いします。 disりに見えてしまう表現があります。 以上の点から気分を害されても責任は負えません。 閲覧は自己責任でお願いします。 小説家になろう、pixivでも投稿しています。

転生した体のスペックがチート

モカ・ナト
ファンタジー
とある高校生が不注意でトラックに轢かれ死んでしまう。 目覚めたら自称神様がいてどうやら異世界に転生させてくれるらしい このサイトでは10話まで投稿しています。 続きは小説投稿サイト「小説家になろう」で連載していますので、是非見に来てください!

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

異世界召喚されました……断る!

K1-M
ファンタジー
【第3巻 令和3年12月31日】 【第2巻 令和3年 8月25日】 【書籍化 令和3年 3月25日】 会社を辞めて絶賛無職中のおっさん。気が付いたら知らない空間に。空間の主、女神の説明によると、とある異世界の国の召喚魔法によりおっさんが喚ばれてしまったとの事。お約束通りチートをもらって若返ったおっさんの冒険が今始ま『断るっ!』 ※ステータスの毎回表記は序盤のみです。

異世界でチート能力貰えるそうなので、のんびり牧場生活(+α)でも楽しみます

ユーリ
ファンタジー
仕事帰り。毎日のように続く多忙ぶりにフラフラしていたら突然訪れる衝撃。 何が起こったのか分からないうちに意識を失くし、聞き覚えのない声に起こされた。 生命を司るという女神に、自分が死んだことを聞かされ、別の世界での過ごし方を聞かれ、それに答える そして気がつけば、広大な牧場を経営していた ※不定期更新。1話ずつ完成したら更新して行きます。 7/5誤字脱字確認中。気づいた箇所あればお知らせください。 5/11 お気に入り登録100人!ありがとうございます! 8/1 お気に入り登録200人!ありがとうございます!

処理中です...