人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

724 転移装置使用の交渉

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「カズさんと一緒のパーティーとして登録されてますので、部外者ではないと思います」

 このままでは魔道列車で移動する事になり、もしブーロキアの仲間がギルド本部を監視していたら、三人の向かう先が分かってしまい危険。
 話を聞いているだけだったサイネリアが、カズには無理な依頼を受けてもらったり、個人としては高価な宝飾品を貰っているので、なんとかヤドリギサブ・ギルドマスターを説得しようする。

「パーティーといっても、実質活動してたのは、消えてしまったカズという冒険者ではないのか」

 ヤドリギの言う通り、パーティーとして依頼を受けても、殆どカズ一人で依頼を達成していた。

「カズさんには魔道列車の素材を国に求められた時に、無理を頼んでダンジョンに入って多くの素材を集めてもらいました。国の事業に必要な素材は!殆どをギルドに納めてもらいました。そので、国のお偉い方々からもされずに済んだと思うの

 専属上司のティピカにですら気に食わない事があっても、ここまで強く意見する事のないサイネリアだったが、勤めている冒険者ギルド本部の副社長サブ・ギルドマスターよりも、結構好き勝手にしているとはいえ、皇女のレオラの方が立場は上。
 ここまでハッキリ言えるのは、結構度胸が座ってる方だ。
 ただ今は頭に血が上ってるらしく、自分自身気付いてない。

「くくッ…あはははッ。サイネも言うじゃないか」

「そ、そんなに笑わないでください。わたしは…」

「わかっている。アタシが言うのもなんだが、カズはかなりの功績をしてきたんじゃないか? ヤドリギの耳にも入っているだろ」

 ダンジョンに現れた特殊な個体、住壁鉱食大百足じゅうへきこうしょくおおむかでの討伐。
 改良して強化凶暴かしたグラトニィ・ターマイトの群れの討伐。
 大峡谷沿いの街道に、頻繁に現れるようになったワイバーンの討伐。
 資源と潤沢のダンジョンでの素材採取。
 帝都南部に出現したヘルバイパーの討伐。
 第五皇女アイリスの個人的な依頼や、第六皇女レオラによる依頼仕事を含めると、ギルドで受けている依頼以上の功績がカズにはあると、ヤドリギも理解していた。
 報告書として記録に残っているだけではなく、討伐したモンスターの素材も実際にカズから買い取っているので、疑いようもない。

 話に上がったグラトニィ・ターマイトは、レオラが依頼仕事としてカズにやらせた事だが、ギルド上層部もその脅威は理解していた。
 SSランクのレオラに頼んだのも、その数と改良された特殊モンスターということもあってだった。
 それをまさかレオラではなく、旅をしてきた一介の冒険者に任せただけでも驚きなのに、数百のモンスターを一人で全滅させたと報告を受ければ誰でも耳を疑う。
 SSランクのレオラでも、群れを率いてる長と主力を倒したら、あとはギルドが討伐依頼を出しての殲滅戦だと、ギルドはそう考えていたが予想を覆された。

 そしてカズがグラトニィ・ターマイトの素材を持ち込んで調べた結果、その脅威が判明した。
 もし討伐が遅れて材木の街ヒッコリーに群れが着いていたら、被害は想像を絶する事になっていただろうと、レオラの選んだカズ冒険者の名を気に掛けるようになった。
 ヤドリギも頭の片隅にカズの名があり、してきた事を思い出す。
 
「カズという冒険者についての報告を思い返せば、確かに帝都に来てからの功績は大きいです。話に上がった危険度Aランクのライジングバードを、帝都上空に連れてきた問題もあったようですが」

「あれは確かに問題だったが、何もなかったんだ。それにテイムモンスターの登録をするには、実際に連れて来なければならないだろ」

「職員の誰かというか、レオラ様専属のサイネリアが帝都の外におもむき、人目や建物がない場所で確認すれば済むことです」

「そうかも知れないが、急だったんだ。大目に見てやってくれ」

「大量の素材を採取してきてくれたと報告があり、レオラ様の専属冒険者だと聞かされては、責める事はできません。しかも聞くところによると、第五皇女のアイリス様の専属にもなったとか」

「姉上にカズを紹介したのはアタシだ。そこで姉上の頼みを聞いてから、親しくなって騎士たちの訓練をした。それで姉上が気に入った。姉上の専属と言うのは、姉上が勝手に言い出した事だ(それを言うと、アタシも同じか)」

「では専属の冒険者ではないと?」

「だとは思うが、姉上はそう思ってないかも知れん」

「アイリス様に聞くことが増えました。皇女二人の専属冒険者が確定すると、冒険者のカズには色々と話を聞く必要が出てきます。生きていればですが」

「状況だけを見れば、カズが生きている可能性はほぼ無いだろう。だが、アタシもあの程度で死んだとは思えない。だから死亡と判断はしないでくれ」

「行方不明なのは間違いないのですから、帝国で死亡の確定を延ばせても半年までです」

「それで構わない。何度も言うが、くれぐれも三人の前で、カズが死んだとは言わないでくれ」

「レオラ様がこれほど優しい方だとは、少し驚きました。もっと…」

「多くを救うのには、少数を迷いなく切り捨てるとでも思っていたか」

「次期皇帝候補であらせられる方々は、辛い選択を瞬時に決定しなければならない場合もあることでしょう。冒険者として活動してきたレオラ様にも、辛い選択をしなければならない事もあったことでしょう。SSランクにまでになったのですから尚さらかと」

「確かに辛い選択をする場面は何度となくあったが、仲間を見捨ててまで名声をを得ようとはしない。そんな事をしようものなら、アタシがこうしていることはできないだろ」

「それもそうですね」

 もしガザニアがこの場にいたら、レオラを侮辱されたと思い、ヤドリギに斬り掛かっていただろう。
 傷心して気が弱くなっているレオラに対して、今回の事態を反省させる意味で強く発言したが、少し言い過ぎたかも知れないと、ヤドリギは背中に汗を掻き謝罪する。

「数々の失言申し訳ありません。ギルドで手に余る依頼を、レオラ様が引き受けてくださるのは感謝しています。ただこの一年は、以前より多くなっていたので、どうしたのかと考えてました」

「アタシは見つけた冒険者にやらせていると、サイネに言っていたはずだが?」

「わたしはちゃんと報告してます。報告書も書いているので、間違いないです」

 レオラのことなので大げさに書いているものだとヤドリギは思っていた。
 ティピカからも何も言ってこなかったもので、何時もの事だろうと。
 レオラ専属の受付であるサイネリアは、今はもうある程度慣れているだけで、実際は驚きもすれば呆れもする。
 サイネリアの報告書に目を通す直属上司のティピカは、レオラが関わっている事ならと慣れたものだった。

「それが今回レオラ様をかばって消失した、カズだったのですか」

「そうだ。おっと、話が脱線してしまった。それで転移装置を三人に使わせてもらうが」

「わかりました。今回は許可します。ただ帝都南部の箱町のギルドになら、一度で転移することはたぶん出来るでしょう」

「以前カズさんと箱町のギルドに、転移装置で行きました。ですので、一度の転移で着きました」
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