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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
718 生存してる可能性
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微かにレオラの声で「全員を通していいぞ」と声が聞こえた。
何時もの豪快な声とは違い、扉を隔てた状態でも、声に覇気が無いと分かる。
秘書の女性が扉を開けると、ティピカに続いてネモフィラが入室し、次にアレナリアが入り、レラを抱えるビワがそれに続く。
「来たか。くつろいでるとこを、急に呼び出してすまなかった」
部屋に入って掛けてきたレオラの言葉にはやはり覇気が感じられず、その姿を見て目を疑った。
数時間前まで楽しく一緒に食事をして、酒を酌み交わしていたレオラの左腕に、血が染み込んだ包帯がぐるぐる巻きにされており、肘から先が無くなっていたのが目に入った。
ただ現状では、何故レオラがそんな姿になったのかは分からない。
「ど、どうしたの? 貴女がそんなに、カ…」
「カズさんは…カズさんはどこですか!」
アレナリアの言葉を遮り、部屋に姿のないカズの居場所を、ビワは滅多に発する事のない声量で問う。
ほんの一年弱だけだが、レオラの使用人として仕えてきたビワだったが、アイリスに仕えるネモフィラが焦って来た事とその態度に胸騒ぎがしていた。
冒険者ギルド本部に着き、レオラの居る部屋に通された事で、胸騒ぎが強くなった。
護衛として同行したカズの姿がなかった事と、何度もした胸騒ぎからくる悪い考えが、強く頭をよぎる。
「とりあえず座ってくれ。お前たちと別れた後の話をする」
うつ向いたレオラは、アレナリアとビワとレラに、向かい側の椅子に座るよう言う。
レオラのこの反応から、アレナリアも『まさか!』と、顔色が変わりだす。
同行していたネモフィラと、隔離された地下での事を見ていたサイネリアもテーブルを囲む椅子に座り、ティピカとヤドリギはレオラの近くに立ち話を聞く。
話の途中で同行していたネモフィラにも状況を聞くなどして、刺客者をギルド本部に連れて来るまでの話を、口を挟まずに二十数分耳を傾けた。
流石に皇女で帝国の守護者の称号を持つSSランクのレオラでも、アイリスを囮にして、危険に巻き込んだのは問題だと、サブ・ギルドマスターのヤドリギから注意を受けた。
アイリスが自ら望んだとしても、国やギルドに何の報告もなく行動してほしくなかったと。
幸い気分を悪くしただけだとネモフィラから聞き、レオラだけでアイリスは怪我を負ってないと聞き、ヤドリギは少しほっとした。
ギルドマスターが不在の間に、皇女二人が負傷したなんて事になったら、国中大騒ぎになる。
レオラの場合は多少の怪我くらいなら、冒険者で帝国の守護者である事から問題にはならなかったが、流石に片腕の半分を失うのは大事。
レオラ自身、今回は非常に不味かったと、反省の色を見せた。
「それよりカズはどうしたの? ギルドに来たんでしょ」
「アイりんが無事ならそっちはいいの。カズの事を教えてよ!」
刺客者を運んで来たカズの事を教えろと、アレナリアだけではなく、ついにレラも口を出してきた。
「カズさんはどこ行ったんです? 教えてくださいレオラ様」
ビワは手を握り合わせ、レオラを祈るようにして目を見る。
「これから話す事を、落ち着いて聞いてくれ。ヤドリギとティピカも、よく話を聞いていてくれ」
ネモフィラがアレナリア達を連れに行ってる間に、襲われた現場にギルド職員と衛兵を向かわせる手続きをしていたので、ヤドリギとティピカも隔離された地下室での出来事は、レオラが大怪我をした事しか知らない。
なので隔離された地下室には、まだ誰も調査に向かわせてない。
ヤドリギとティピカは静かに頷き応えると、レオラは場所に関しては口外しない事をアレナリア達に約束させ、ギルド本部に刺客者を運び入れてから、隔離された地下室での出来事を話し出す。
刺客者が無音の暗殺者の二つ名を持つブーロキアだと知り、ヤドリギとティピカは驚く。
そしてレオラが発した撲滅の因子に大きく反応したヤドリギは、耳を疑い何度も聞き返した。
手を口元に当てると何やら考えを巡らせ、アレナリアとビワとレラに一度視線を向けると、すぐに目を伏せた。
そしてブーロキアから黒く渦巻く空間が生まれ、レオラの左腕の肘から先と、庇ったカズを飲み込み消えた事実を話した。
「カズが…」
「カズさんが…」
「ねん…そうだ! 念話でカズがどこにいるか聞けば」
念話での連絡に気付いたレラが、すぐにカズに連絡を取ろうとするが、念話が繋がらない。
「あちしじゃダメッ。アレナリアお願い」
大きさは憧れか欲望か、を無理に使用した影響で、魔力が完全に回復してないからだとレラは考え、アレナリアに代わってもらう。
「『カズ、カズッ……返事して!』」
アレナリアがどんなに多くの魔力を使い、念話でカズを呼び続けても、返事は返って来なかった。
もしかしたら念話が使えなくたってるんじゃないかと、念話の相手を帝都南部の林に居るフジに繋げてみる。
「『アレナリアよ。聞こえるフジ』」
「『聞こえる。どうしたの?』」
フジと会話が出来た事で、念話が使用可能だと証明出来た。
ビワとレラに念話は使えると、アレナリアは身振り手振りで伝えた。
「『ちょっと前からカズの魔力を感じないんだけど、どうしてか知らない?』」
レラとアレナリアよりも先に、フジが念話でカズに呼びかけていたが、繋がらなかったと言う。
「『私達も聞いてないの。急なギルドの依頼で出かけたんだと思うわ(ウソついて、ごめんねフジ)』」
「『そうなんだ』」
「『また連絡するわ。くれぐれもフジは、帝都に来ないようにね』」
「『うん、わかった。ひとの多い所に勝手に行くとみんなが驚くし、カズに怒られちゃう』」
フジはカズと再会するまで、オリーブ王国からひとりで帝国までやって来て、再開した後でも離れた場所で住んでいたので、現状それ程心配してはない。
双塔の街の第五迷宮や、資源と潤沢のダンジョンにカズが入った時も、フジはカズの魔力を感じなかったので、また何処かのダンジョンにでも入っているのだろうと思っていた。
アレナリアにとっては都合が良かった。
カズの行方が不明と伝えた途端に、帝都に現れでもしたら、アレナリアに被害を出さず、フジも討伐対象にならないように止める事は難しい。
なので一先ずカズについては、分かり次第連絡するとだけ伝え、アレナリアはフジとの念話を切った。
「念話といっていましたが、長距離通信魔法かスキルですか?」
アレナリアの魔力が落ち着いたのを見計らい、ヤドリギが行っていた事について尋ねた。
「カズに使えるようにしてもらったの」
「それで相手はどなたですか?」
「帝都の南部の林に住まわせてる、カズのテイムモンスター」
「ライジングバードですか。テイムモンスターも、長距離通信の魔法かスキルが使えるですか? そちらの二人も使えるでよろしいですか?」
「使えます」
「アレナリアの前に使ったからわかるっしょ。あちしも使える」
目の前で見られていたのに、隠しても意味がない。
なのでビワとレラは、ヤドリギが言う長距離通信が使えると素直に答えた。
魔法かスキルか、どの様にしてるか等は答えない。
「それよりカズはどうなったの?」
「わからない。が、お前達がその念話を使えたという事は、カズはどこかけで生きているはずだ(アタシのように、五体満足かはわからないが)」
「そうですね。長距離通信をカズがあなた方に使えるようしたのなら、死んでしまっていたら使用できなくなるはずです。なので、とりあえずは生きているでしょう(魔道具等であれば、製作者や付与者が死んでも使えますが、今は言わない方がいいでしょう)」
何時もの豪快な声とは違い、扉を隔てた状態でも、声に覇気が無いと分かる。
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「来たか。くつろいでるとこを、急に呼び出してすまなかった」
部屋に入って掛けてきたレオラの言葉にはやはり覇気が感じられず、その姿を見て目を疑った。
数時間前まで楽しく一緒に食事をして、酒を酌み交わしていたレオラの左腕に、血が染み込んだ包帯がぐるぐる巻きにされており、肘から先が無くなっていたのが目に入った。
ただ現状では、何故レオラがそんな姿になったのかは分からない。
「ど、どうしたの? 貴女がそんなに、カ…」
「カズさんは…カズさんはどこですか!」
アレナリアの言葉を遮り、部屋に姿のないカズの居場所を、ビワは滅多に発する事のない声量で問う。
ほんの一年弱だけだが、レオラの使用人として仕えてきたビワだったが、アイリスに仕えるネモフィラが焦って来た事とその態度に胸騒ぎがしていた。
冒険者ギルド本部に着き、レオラの居る部屋に通された事で、胸騒ぎが強くなった。
護衛として同行したカズの姿がなかった事と、何度もした胸騒ぎからくる悪い考えが、強く頭をよぎる。
「とりあえず座ってくれ。お前たちと別れた後の話をする」
うつ向いたレオラは、アレナリアとビワとレラに、向かい側の椅子に座るよう言う。
レオラのこの反応から、アレナリアも『まさか!』と、顔色が変わりだす。
同行していたネモフィラと、隔離された地下での事を見ていたサイネリアもテーブルを囲む椅子に座り、ティピカとヤドリギはレオラの近くに立ち話を聞く。
話の途中で同行していたネモフィラにも状況を聞くなどして、刺客者をギルド本部に連れて来るまでの話を、口を挟まずに二十数分耳を傾けた。
流石に皇女で帝国の守護者の称号を持つSSランクのレオラでも、アイリスを囮にして、危険に巻き込んだのは問題だと、サブ・ギルドマスターのヤドリギから注意を受けた。
アイリスが自ら望んだとしても、国やギルドに何の報告もなく行動してほしくなかったと。
幸い気分を悪くしただけだとネモフィラから聞き、レオラだけでアイリスは怪我を負ってないと聞き、ヤドリギは少しほっとした。
ギルドマスターが不在の間に、皇女二人が負傷したなんて事になったら、国中大騒ぎになる。
レオラの場合は多少の怪我くらいなら、冒険者で帝国の守護者である事から問題にはならなかったが、流石に片腕の半分を失うのは大事。
レオラ自身、今回は非常に不味かったと、反省の色を見せた。
「それよりカズはどうしたの? ギルドに来たんでしょ」
「アイりんが無事ならそっちはいいの。カズの事を教えてよ!」
刺客者を運んで来たカズの事を教えろと、アレナリアだけではなく、ついにレラも口を出してきた。
「カズさんはどこ行ったんです? 教えてくださいレオラ様」
ビワは手を握り合わせ、レオラを祈るようにして目を見る。
「これから話す事を、落ち着いて聞いてくれ。ヤドリギとティピカも、よく話を聞いていてくれ」
ネモフィラがアレナリア達を連れに行ってる間に、襲われた現場にギルド職員と衛兵を向かわせる手続きをしていたので、ヤドリギとティピカも隔離された地下室での出来事は、レオラが大怪我をした事しか知らない。
なので隔離された地下室には、まだ誰も調査に向かわせてない。
ヤドリギとティピカは静かに頷き応えると、レオラは場所に関しては口外しない事をアレナリア達に約束させ、ギルド本部に刺客者を運び入れてから、隔離された地下室での出来事を話し出す。
刺客者が無音の暗殺者の二つ名を持つブーロキアだと知り、ヤドリギとティピカは驚く。
そしてレオラが発した撲滅の因子に大きく反応したヤドリギは、耳を疑い何度も聞き返した。
手を口元に当てると何やら考えを巡らせ、アレナリアとビワとレラに一度視線を向けると、すぐに目を伏せた。
そしてブーロキアから黒く渦巻く空間が生まれ、レオラの左腕の肘から先と、庇ったカズを飲み込み消えた事実を話した。
「カズが…」
「カズさんが…」
「ねん…そうだ! 念話でカズがどこにいるか聞けば」
念話での連絡に気付いたレラが、すぐにカズに連絡を取ろうとするが、念話が繋がらない。
「あちしじゃダメッ。アレナリアお願い」
大きさは憧れか欲望か、を無理に使用した影響で、魔力が完全に回復してないからだとレラは考え、アレナリアに代わってもらう。
「『カズ、カズッ……返事して!』」
アレナリアがどんなに多くの魔力を使い、念話でカズを呼び続けても、返事は返って来なかった。
もしかしたら念話が使えなくたってるんじゃないかと、念話の相手を帝都南部の林に居るフジに繋げてみる。
「『アレナリアよ。聞こえるフジ』」
「『聞こえる。どうしたの?』」
フジと会話が出来た事で、念話が使用可能だと証明出来た。
ビワとレラに念話は使えると、アレナリアは身振り手振りで伝えた。
「『ちょっと前からカズの魔力を感じないんだけど、どうしてか知らない?』」
レラとアレナリアよりも先に、フジが念話でカズに呼びかけていたが、繋がらなかったと言う。
「『私達も聞いてないの。急なギルドの依頼で出かけたんだと思うわ(ウソついて、ごめんねフジ)』」
「『そうなんだ』」
「『また連絡するわ。くれぐれもフジは、帝都に来ないようにね』」
「『うん、わかった。ひとの多い所に勝手に行くとみんなが驚くし、カズに怒られちゃう』」
フジはカズと再会するまで、オリーブ王国からひとりで帝国までやって来て、再開した後でも離れた場所で住んでいたので、現状それ程心配してはない。
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