人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

711 狙われるレオラ と アイリスの危険な囮作戦 5 誤った数

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 カズは作り出した土壁を解除して、血肉が散乱している光景を見て、顔を歪めて込み上げてきそうになる吐き気を抑える。
 舞い上がった土埃つちぼこりが収まるまで待っていれば、ほぼ隠れて散々な現状を目にする事はなかったろうが、風属性魔法で吹き飛ばしてしまったので、アイリスどころかカミーリアとネモフィラにも見せるにはキツい状態。
 そこにレオラが戻って来る。

「姉上達は無事だった。防壁を張ったなら先に言っておけ」

「念の為にと思ってな。ここまでの事になるとは思わなかった。しかしこの爆発はなんなんだ?」

「何を使ったからわからん。最初の爆発でカズがアタシを強引に引き寄せてくれなければ危なかった。しかし、よく気づいた」

「レオラが拾おうとした金属片は、手榴弾ていう爆弾の部品で、俺が元居た世界の武器だ。リボルバーを見ていたもんで、気づけたんだ。しかしなんでこんな者まで、この世界にあるんだ?」

「ダンジョンから出現した物を入手したか、どこかの倉庫で使い方が分からず、長年放置されていたのを盗み出した。どちらにしても、使い方を知っていた事になる」

 冒険者ギルドや帝国の宝物庫にも、使い方が不明の遺物アーティファクトがあり、その中に魔力を使わず殺傷力が高い武器があるかも知れないとレオラは考える。
 更に盗み出された事を考えると、用途が不明な物は封印すると同様の処置をとった方が良いと、皇帝に進言した方が良いとも。

「今はアイリス様が一緒だから、早くここを離れた方がいい」

「そうだな。だがその前に、証拠になりそうな物を回収して行く。後処理は衛兵とギルド職員に任せよう」

「だとすると、あのリボルバーか?」

「さっきも言っていたが、リボルバーとはあの武器の名か?」

「詳しくは知らないが、あれも俺の元いた世界の武器、銃だ。弾は六発装填のだろう。同系統の武器の中では高威力だったと思う。召喚された者が使っていたらしいと言っていたが、勇者になった者達が持っていたとは思えない。レオラが宝物庫にあると言った物は、迷い人が持っていた物か?」

「国の重要機密だ。さっきは口を滑らせた」

「それもそうか」

 レオラは血肉が散乱した中から、破損した回転式拳銃リボルバーと、手榴弾の一部を回収した。
 カズは分かる限り、砕けた仮面を拾い集める。
 結局仮面を着けた三人と、死者なのに動き話していた御者が誰だったかは、現状では不明のまま。

「証拠品はレオラが持って行った方がいいだろ。使ってない手提げ袋があったから、入れておいた。レオラの証拠品それも、これに入れて持っていけばいい」

 アイテムボックス内で肥やしになっていた手提げ袋を出し、拾い集めた仮面の破片を入れる。

「そうしよう」

 集めた仮面の欠片を入れた手提げ袋をカズが広げて持ち、レオラは回収した回転式拳銃リボルバーと手榴弾の一部を入れる。
 土埃つちぼこりと証拠品を回収した際に、手や衣服に付いた血をカズが〈クリーン〉で取り除き、証拠品の入った手提げ袋をレオラに渡した。
 その後カズ自身も、同じ要領で汚れを取り除いた。

「アタシは少し周囲を見てくる。何か見落としがあるかも知れない。カズは馬車に戻り、姉上を帰宅させる準備をしておいてくれ。身の安全のために、カズが張った結界から出ないように言ってある」

「わかった。アイリス様を安心させるため、手短にな」

「すぐ終わらせる」

 レオラは爆発で飛び散った残骸を一通り見て回り、起きた事を思い返して状況を再確認する。
 カズは半壊した馬車に戻り、防壁魔法バリア・フィールドを維持したまま、アイリス達を馬車から降ろす。
 と言っても、半壊して傾いた馬車から、手を添えて降ろす役目は、第五皇女の守護騎士であるネモフィラ。
 カズは視界の端に表示されているマップに注意を払いながら、《魔力感知》と《気配感知》で周囲への警戒を続ける。

 半壊した馬車から降りるアイリスに、血肉が散乱した場所を見せないようにと、先に降りたカミーリアに伝え、その体格で現状となった場所を遮らせる。
 ネモフィラがアイリスの手を取りながら半壊した馬車から降りると、三人で少し離れた場所に移動して待機する。
 カズはアイリス達の周りに張った防壁魔法バリア・フィールドを更に強固にして、レオラが来るのを待つ。

「カズ師匠。馬車は壊れて、馬もいなくなってしまいましたが、どうやってお屋敷まで?」

「奴ら三人が乗って来た馬が、せめて一頭でも近くに……(三人? いや違う。四人だった! あと一人はどこだ!?)」

「どうしたの? カズ」

 話の途中で急に黙ったので、カミーリアが何か心配事でもあるのかと聞いた。
 カズはそれに答える事なく、視界の端に表示されている【マップ】に目を移すと、表示に変化が起き、その異変に気付く。

 一人悲惨な現状になった場所を見て回っているレオラは、今回の事について考えに耽っていた。
 回収出来たのは破損した仮面と、国の宝物庫にある筈の回転式拳銃リボルバーの二つ。
 これを調べれば、少なからず黒幕に繋がる者が分かるだろうとレオラは考えた。

「アタシに恨みのある奴なら、直接仕掛けてこい! 関係ない者を操り襲わせ、自らの手を汚さないゲスめ」

 悲惨な現状となった場所を見る度に、レオラは怒りが沸々と込み上げて来て、言葉に出ていた。

「そんな事はしない」

 急にレオラの直ぐ側で、男の低い声がした。

「!?」

 今まで誰もいなかった場所に、無数の文字や模様が書かれた外套マントを全身に纏った者がそこに現れた。
 姿を現した瞬間、カズの【マップ】にも敵対する赤い表示が現れた。
 カズが咄嗟に視線をレオラに向けると、現れた者がレオラに何かを突き立てようとしていた。

「貴様はこの手で」

「ッ!」

 咄嗟の事で回避しようとレオラは身を捻り、突き刺そうと伸ばした手を払おうとする。
 しかし現れた者も相当の手練れ、突き刺さす場所を腹部から、払おうとした手に変える。
 レオラはこれを右手で受ける覚悟し、一撃で現れた男の気を失わせるようと、左手に力を込める。
 現れた男も勘付いたが引こうとせず、それどころか笑みを浮かべていた。
 それにレオラは気付いてない。
 現れた男が突き刺そうとした物が、レオラの右手に刺さったと思った瞬間、レオラではなく一緒に居たカズの左腕に刺さった。

「─ジ。ゔッ!」

 カズが視線をレオラに移した直後、現れた者が誰か? 何をしようとしているか? などと考えるよりも先に、レオラをどうやって急に現れた刺客者から距離を取らすか。
 初見でよく使う瞬撃の雷撃魔法ライトニングボルトを放とうかと一瞬頭に浮かんだが、近過ぎてレオラにも当たる可能性があった。
 例え雷撃魔法ライトニングボルトが直撃したとしても、刺客者がそこで動きを止めるかは不明。

 そこでカズは〈パラライズ〉を使い、麻痺させようとするも効果なく、続けて〈スリープ〉を使い眠気で意識を奪おうとするも同じ。
 生け捕りを諦めて〈デス・スペル〉を放つも、刺客者が即死する事はなかった。
 ならばとカズが思い付いたのは、対象を刺客者からレオラに変え、最短で回避させる方法。
 二つの場所を入れ替える魔法〈チェンジ〉を使う。
 ここまでの思考と行動での経過は、二秒も経ってない。
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