上 下
714 / 771
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

693 料理の作り溜め

しおりを挟む
 裏庭の地面に並んでいるレンガの一部分を外し、邪魔にならないよう端に並べて積んで置く。
 そして土属性魔法の〈アースウォール〉と〈ストーンウォール〉を使用して、風避けと鍋置きを作り火を起こす。
 用意したバレルボアのバラ肉とモモ肉の半分を、生姜とネギと一緒に鍋で茹でていき、出てきた灰汁は取って捨てる。
 残り半分のバラ肉とモモ肉を金属のボウルに入れ、タレを加えたら重力魔法グラヴィティを使い漬け込み時間を短縮。
 漬け込んでる間に、古くなった深い鍋を《加工》スキルで形を変えて底を抜き、中に炭火を入れてタレの染み込んだバラ肉とモモ肉を針金に刺し、落ちないように鍋の縁に引っ掛けて吊るし、蓋をしてじっくりと焼いていく。
 レオラが来た時出すように、多く作っておく事にした。
 アイテムボックスに入れておけば傷む事はないので、作り過ぎで困るという問題ない。

 ビワの手伝いはアレナリアと、レラがプリン作りだからと動き出したので、今のところカズの手伝いはいらない。
 裏庭で茹でている肉と、じっくりと焼いている肉が出来上がるまでの約三時間を、ぼ~っとしてるのも時間が勿体ないので、何か作ることにした。
 肉にキャベツと白菜にニラっぽい香草あったので、餃子を作ることに決めた。
 未だにこの世界に来て米を見てないので、白米が欲しくなる料理を作らないようにしていたが、麦シュワなる酒があるなら、作っても良いんじゃないかと思うようになったので作る事を決めた。
 裏庭の鍋は時々様子を見る程度で大丈夫だろうと、家に入り出来ている料理を【アイテムボックス】に入れてからリビングに移動する。

 リビングのテーブルに食材と道具を出し、肉を細かくして叩き挽き肉を作り、キャベツと白菜をこまみじん切りにして、余分な水分をしぼる。
 キャベツの方にはニラっぽい香草を入れて味付けをし、二種類の餡を先に作る。
 次に小麦粉に水を加えてこねこねし、細長く伸ばして切って丸めて潰し、回転させながら円柱状の棒を前後に転がして、円になるように薄く伸ばして皮を作る。
 多少の楕円や厚さや、大きさの違いは御愛嬌。
 皮が出来上がったところで、裏庭に出て煮込んでいる肉と、焼いている肉の様子を見る。
 吹き溢れも焦げもせず問題はなかったが、どちらもまだまだ時間が掛かるので、リビングに戻り餡を皮で包んでいくことにする。

「カズは何を作ってるの。ちっこいパン?」

 裏庭からリビング戻ると、レラが何を作っているのか気になるらしく、餡と小さく薄く伸ばした小麦の生地を見ていた。

「餃子だよ」

「ぎょざ?」

「ギョーザ。この小麦粉で作った薄い皮に、こっちの肉と野菜を混ぜて味付けした具を、こうやって中に入れて包む」

 実際にレラの前で、一つ餃子を包んで見せた。

「このまま食べるの? なんかにネチョっとして不味そう」

「このままは食べたりはしないよ。これを焼くんだ。茹でたり揚げたりするのもあるけど、俺は焼きが好きかな(魚醤はあるけど、醤油はまだ見つけてないんだよなぁ)」

 カズは説明をしながら、皮に餡を包んでいると、アレナリアが見にきて「私もやってみていい」と、カズに教えてもらいながら餡を包んでいく。
 用意した半分を包んだところで、手の空いたビワが見にきた。

「ビワもやる? 結構難しいよ」

 難しいと言うアレナリアが包んだ餃子は、餡が多く入れ過ぎて皮からはみ出ていたりと歪な物が多い。
 ビワは見様見真似で餡を皮で包み、五個も包めばコツを掴み、誰よりも均等に上手くひだを作り包んでいた。
 最終的に二種類合わせて百個以上が出来た。
 三割は形が崩れていたり中身がはみ出ていたりと、見た目がちょっと残念な物もある。

「試しに何個か焼いて食べてみるか?」

「いいね。食べよ食べよ」

「だったら私のにして」

 アレナリアは自分が包んだのをと言ってきた。
 形が崩れたり中身がはみ出ているのを、他のと一緒にしておきたくないようだ。

「でしたら少し後にしませんか」

「あと少し? ああ、もう少しでお昼か。じゃあそうしよう。二人ともそれでいいか」

「早く食べてみたいけどいいよ。外で作ってるのは食べれないの?」

「あれは昼飯には少し間に合わないかな」

「そうなんだ」

 レラはちょっと残念そうな表情をする。

「そんな顔するな。焼いてる方で、よさそうなのがあったら出してやるから」

「いいの? やったー!」

 レラはけろりと表情を変え、蒸しているプリンの様子をビワと見にいった。
 カズは包み終えた生の餃子を【アイテムボックス】に入れて使った道具を洗い、裏庭に出て茹でている肉と、焼いている肉の具合いを見る。
 茹でている肉は灰汁が出なくなったが、中まで柔らかくなるのは昼食の時間くらいになるだろうから、煮込むためのタレを作っておく。
 焼いている肉は小さい物なら、もう少しといったところだったので、昼食に出してやる事にした。

 茹でていた肉を取り出し、鍋を洗って少量の水と作ったタレと薄切りした生姜を少し加え、そこに茹でて柔らかくなった肉を入れて、落し蓋をして弱火で煮込む。
 じっくり炭火で吊るし焼きしている肉から、小さいのを取り出したところで、アレナリアが昼食だと呼びに来た。
 家に入りキッチンで形の崩れた餃子を焼き、吊るし焼きしたバレルボアの肉を5ミリ程度の厚さに切り、皿に盛ってテーブルに出す。
 餃子の餡にはしっかりと下味をつけたが、一応タレを用意した。
 酢にすり潰した胡椒を加えたのを、お好みでつけるように、と。
 
「表面パリッとして、中の野菜と肉からジュワ~っと、これ美味しいよ。カズ」

「これはあれね。シュワッとしたお酒が飲みたくなるわね」

「いいね! それ」

「お昼からお酒なんてダメです。まだプリン作りも途中なのに」

「そうだぞ(飲みたい気持ちはわかる)」

 餃子を食べたアレナリアの感想にレラが同意する。
 内心でカズもそう思ったが、流石にまだ昼ということもありビワが却下したので、カズはそれに同意した。
 レラは不満そうな顔をするも、プリンと言われてはビワの言うことを素直に聞くしかなかった。
 アレナリアは今酒を飲み特製プリンの量が減るか、酒を飲まずに特製プリンが当初予定した通りの量になるかを考え、後者を取った。
 主に主食のパンはをどうするかと話し合い、以前カズがデパートで買ってきた全粒粉を使ったパンが良いという事になった。
 そこで夕食に合わせて焼き上がるパンを買いに。
 残りのプリンを作り終えたら、四人でデパートに行こうという事になった。
 流石に買い占める事は出来ないので、十日分が買えればいいと。

 昼食を終えてカズが何時も通り食器を片付けようとした時に「私がやるわ」とアレナリアが代わってくれた。
 お言葉に甘えて食器の片付けをアレナリアに任せ、カズは裏庭で煮込んでいる肉と、焼いている肉の様子を見にいく。
 ビワはレラと特製プリン作りの続きをする。

 裏庭に出たカズは、鍋の落し蓋を外して煮込み具合を確認。
 良い感じだったので、蓋をして火から下ろし冷ます。
 焼いている方も良さそうだったので、取り出して【アイテムボックス】に入れた。
 あとは火を消して、炭は金属製のバケツに水を入れ、その中に浸けておく。
 灰を片付けてから、土属性魔法で作った鍋置きと風避けを《解除》し、外して端に並べて置いたレンガを元の場所に戻して終了。
 鍋底を触れるくらいまで冷めたら、鍋を持って家に入り、邪魔にならない隅に置いた。

「終わったんですか。ここ使います?」

 中身の入ってる鍋を持って来たカズに、コンロを使うかとビワが聞いてきた。

「味をしみ込ませたいだけだから。冷めてからアイテムボックスに入れるよ」

「そうですか。こちらは、あと二時間くらいかかりそうです。大丈夫ですか?」

「夕方に焼き上げるパンを買いに行くから、全然大丈夫だよ。何か手伝おうか」

「レラとアレナリアさんが手伝ってくれてるので大丈夫です」

 カズは三人の邪魔にならないように、リビングのソファーに座り終わるのを待つ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】彼女以外、みんな思い出す。

❄️冬は つとめて
ファンタジー
R15をつける事にしました。 幼い頃からの婚約者、この国の第二王子に婚約破棄を告げられ。あらぬ冤罪を突きつけられたリフィル。この場所に誰も助けてくれるものはいない。

最遅で最強のレベルアップ~経験値1000分の1の大器晩成型探索者は勤続10年目10度目のレベルアップで覚醒しました!~

ある中管理職
ファンタジー
 勤続10年目10度目のレベルアップ。  人よりも貰える経験値が極端に少なく、年に1回程度しかレベルアップしない32歳の主人公宮下要は10年掛かりようやくレベル10に到達した。  すると、ハズレスキル【大器晩成】が覚醒。  なんと1回のレベルアップのステータス上昇が通常の1000倍に。  チートスキル【ステータス上昇1000】を得た宮下はこれをきっかけに、今まで出会う事すら想像してこなかったモンスターを討伐。  探索者としての知名度や地位を一気に上げ、勤めていた店は討伐したレアモンスターの肉と素材の販売で大繁盛。  万年Fランクの【永遠の新米おじさん】と言われた宮下の成り上がり劇が今幕を開ける。

【完結】転生7年!ぼっち脱出して王宮ライフ満喫してたら王国の動乱に巻き込まれた少女戦記 〜愛でたいアイカは救国の姫になる

三矢さくら
ファンタジー
【完結しました】異世界からの召喚に応じて6歳児に転生したアイカは、護ってくれる結界に逆に閉じ込められた結果、山奥でサバイバル生活を始める。 こんなはずじゃなかった! 異世界の山奥で過ごすこと7年。ようやく結界が解けて、山を下りたアイカは王都ヴィアナで【天衣無縫の無頼姫】の異名をとる第3王女リティアと出会う。 珍しい物好きの王女に気に入られたアイカは、なんと侍女に取り立てられて王宮に! やっと始まった異世界生活は、美男美女ぞろいの王宮生活! 右を見ても左を見ても「愛でたい」美人に美少女! 美男子に美少年ばかり! アイカとリティア、まだまだ幼い侍女と王女が数奇な運命をたどる異世界王宮ファンタジー戦記。

『収納』は異世界最強です 正直すまんかったと思ってる

農民
ファンタジー
「ようこそおいでくださいました。勇者さま」 そんな言葉から始まった異世界召喚。 呼び出された他の勇者は複数の<スキル>を持っているはずなのに俺は収納スキル一つだけ!? そんなふざけた事になったうえ俺たちを呼び出した国はなんだか色々とヤバそう! このままじゃ俺は殺されてしまう。そうなる前にこの国から逃げ出さないといけない。 勇者なら全員が使える収納スキルのみしか使うことのできない勇者の出来損ないと呼ばれた男が収納スキルで無双して世界を旅する物語(予定 私のメンタルは金魚掬いのポイと同じ脆さなので感想を送っていただける際は語調が強くないと嬉しく思います。 ただそれでも初心者故、度々間違えることがあるとは思いますので感想にて教えていただけるとありがたいです。 他にも今後の進展や投稿済みの箇所でこうしたほうがいいと思われた方がいらっしゃったら感想にて待ってます。 なお、書籍化に伴い内容の齟齬がありますがご了承ください。

異世界転移は分解で作成チート

キセル
ファンタジー
 黒金 陽太は高校の帰り道の途中で通り魔に刺され死んでしまう。だが、神様に手違いで死んだことを伝えられ、元の世界に帰れない代わりに異世界に転生することになった。  そこで、スキルを使って分解して作成(創造?)チートになってなんやかんやする物語。  ※処女作です。作者は初心者です。ガラスよりも、豆腐よりも、濡れたティッシュよりも、凄い弱いメンタルです。下手でも微笑ましく見ていてください。あと、いいねとかコメントとかください(′・ω・`)。  1~2週間に2~3回くらいの投稿ペースで上げていますが、一応、不定期更新としておきます。  よろしければお気に入り登録お願いします。  あ、小説用のTwitter垢作りました。  @W_Cherry_RAITOというやつです。よろしければフォローお願いします。  ………それと、表紙を書いてくれる人を募集しています。  ノベルバ、小説家になろうに続き、こちらにも投稿し始めました!

クラス転移したけど、皆さん勘違いしてません?

青いウーパーと山椒魚
ファンタジー
加藤あいは高校2年生。 最近ネット小説にハマりまくっているごく普通の高校生である。 普通に過ごしていたら異世界転移に巻き込まれた? しかも弱いからと森に捨てられた。 いやちょっとまてよ? 皆さん勘違いしてません? これはあいの不思議な日常を書いた物語である。 本編完結しました! 相変わらず話ごちゃごちゃしていると思いますが、楽しんでいただけると嬉しいです! 1話は1000字くらいなのでササッと読めるはず…

ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔
ファンタジー
高校二年生最後の日。由樹空(ゆうきそら)は同じクラスの男子生徒と共に異世界へと召喚された。 全員の適正職業とスキルが鑑定され、空は「空気師」という職業と「空気清浄」というスキルがあると判明。 花粉症だった空は歓喜。 しかし召喚主やクラスメイトから笑いものにされ、彼はひとり森の中へ置いてけぼりに。 (アレルギー成分から)生き残るため、スキルを唱え続ける空。 モンスターに襲われ樹の上に逃げた彼を、美しい二人のエルフが救う。 命を救って貰ったお礼にと、森に漂う瘴気を浄化することになった空。 スキルを使い続けるうちにレベルはカンストし、そして新たに「空気操作」のスキルを得る。 *作者は賢くありません。作者は賢くありません。だいじなことなのでもう一度。作者は賢くありません。バカです。 *小説家になろう・カクヨムでも公開しております。

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

処理中です...