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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

693 料理の作り溜め

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 裏庭の地面に並んでいるレンガの一部分を外し、邪魔にならないよう端に並べて積んで置く。
 そして土属性魔法の〈アースウォール〉と〈ストーンウォール〉を使用して、風避けと鍋置きを作り火を起こす。
 用意したバレルボアのバラ肉とモモ肉の半分を、生姜とネギと一緒に鍋で茹でていき、出てきた灰汁は取って捨てる。
 残り半分のバラ肉とモモ肉を金属のボウルに入れ、タレを加えたら重力魔法グラヴィティを使い漬け込み時間を短縮。
 漬け込んでる間に、古くなった深い鍋を《加工》スキルで形を変えて底を抜き、中に炭火を入れてタレの染み込んだバラ肉とモモ肉を針金に刺し、落ちないように鍋の縁に引っ掛けて吊るし、蓋をしてじっくりと焼いていく。
 レオラが来た時出すように、多く作っておく事にした。
 アイテムボックスに入れておけば傷む事はないので、作り過ぎで困るという問題ない。

 ビワの手伝いはアレナリアと、レラがプリン作りだからと動き出したので、今のところカズの手伝いはいらない。
 裏庭で茹でている肉と、じっくりと焼いている肉が出来上がるまでの約三時間を、ぼ~っとしてるのも時間が勿体ないので、何か作ることにした。
 肉にキャベツと白菜にニラっぽい香草あったので、餃子を作ることに決めた。
 未だにこの世界に来て米を見てないので、白米が欲しくなる料理を作らないようにしていたが、麦シュワなる酒があるなら、作っても良いんじゃないかと思うようになったので作る事を決めた。
 裏庭の鍋は時々様子を見る程度で大丈夫だろうと、家に入り出来ている料理を【アイテムボックス】に入れてからリビングに移動する。

 リビングのテーブルに食材と道具を出し、肉を細かくして叩き挽き肉を作り、キャベツと白菜をこまみじん切りにして、余分な水分をしぼる。
 キャベツの方にはニラっぽい香草を入れて味付けをし、二種類の餡を先に作る。
 次に小麦粉に水を加えてこねこねし、細長く伸ばして切って丸めて潰し、回転させながら円柱状の棒を前後に転がして、円になるように薄く伸ばして皮を作る。
 多少の楕円や厚さや、大きさの違いは御愛嬌。
 皮が出来上がったところで、裏庭に出て煮込んでいる肉と、焼いている肉の様子を見る。
 吹き溢れも焦げもせず問題はなかったが、どちらもまだまだ時間が掛かるので、リビングに戻り餡を皮で包んでいくことにする。

「カズは何を作ってるの。ちっこいパン?」

 裏庭からリビング戻ると、レラが何を作っているのか気になるらしく、餡と小さく薄く伸ばした小麦の生地を見ていた。

「餃子だよ」

「ぎょざ?」

「ギョーザ。この小麦粉で作った薄い皮に、こっちの肉と野菜を混ぜて味付けした具を、こうやって中に入れて包む」

 実際にレラの前で、一つ餃子を包んで見せた。

「このまま食べるの? なんかにネチョっとして不味そう」

「このままは食べたりはしないよ。これを焼くんだ。茹でたり揚げたりするのもあるけど、俺は焼きが好きかな(魚醤はあるけど、醤油はまだ見つけてないんだよなぁ)」

 カズは説明をしながら、皮に餡を包んでいると、アレナリアが見にきて「私もやってみていい」と、カズに教えてもらいながら餡を包んでいく。
 用意した半分を包んだところで、手の空いたビワが見にきた。

「ビワもやる? 結構難しいよ」

 難しいと言うアレナリアが包んだ餃子は、餡が多く入れ過ぎて皮からはみ出ていたりと歪な物が多い。
 ビワは見様見真似で餡を皮で包み、五個も包めばコツを掴み、誰よりも均等に上手くひだを作り包んでいた。
 最終的に二種類合わせて百個以上が出来た。
 三割は形が崩れていたり中身がはみ出ていたりと、見た目がちょっと残念な物もある。

「試しに何個か焼いて食べてみるか?」

「いいね。食べよ食べよ」

「だったら私のにして」

 アレナリアは自分が包んだのをと言ってきた。
 形が崩れたり中身がはみ出ているのを、他のと一緒にしておきたくないようだ。

「でしたら少し後にしませんか」

「あと少し? ああ、もう少しでお昼か。じゃあそうしよう。二人ともそれでいいか」

「早く食べてみたいけどいいよ。外で作ってるのは食べれないの?」

「あれは昼飯には少し間に合わないかな」

「そうなんだ」

 レラはちょっと残念そうな表情をする。

「そんな顔するな。焼いてる方で、よさそうなのがあったら出してやるから」

「いいの? やったー!」

 レラはけろりと表情を変え、蒸しているプリンの様子をビワと見にいった。
 カズは包み終えた生の餃子を【アイテムボックス】に入れて使った道具を洗い、裏庭に出て茹でている肉と、焼いている肉の具合いを見る。
 茹でている肉は灰汁が出なくなったが、中まで柔らかくなるのは昼食の時間くらいになるだろうから、煮込むためのタレを作っておく。
 焼いている肉は小さい物なら、もう少しといったところだったので、昼食に出してやる事にした。

 茹でていた肉を取り出し、鍋を洗って少量の水と作ったタレと薄切りした生姜を少し加え、そこに茹でて柔らかくなった肉を入れて、落し蓋をして弱火で煮込む。
 じっくり炭火で吊るし焼きしている肉から、小さいのを取り出したところで、アレナリアが昼食だと呼びに来た。
 家に入りキッチンで形の崩れた餃子を焼き、吊るし焼きしたバレルボアの肉を5ミリ程度の厚さに切り、皿に盛ってテーブルに出す。
 餃子の餡にはしっかりと下味をつけたが、一応タレを用意した。
 酢にすり潰した胡椒を加えたのを、お好みでつけるように、と。
 
「表面パリッとして、中の野菜と肉からジュワ~っと、これ美味しいよ。カズ」

「これはあれね。シュワッとしたお酒が飲みたくなるわね」

「いいね! それ」

「お昼からお酒なんてダメです。まだプリン作りも途中なのに」

「そうだぞ(飲みたい気持ちはわかる)」

 餃子を食べたアレナリアの感想にレラが同意する。
 内心でカズもそう思ったが、流石にまだ昼ということもありビワが却下したので、カズはそれに同意した。
 レラは不満そうな顔をするも、プリンと言われてはビワの言うことを素直に聞くしかなかった。
 アレナリアは今酒を飲み特製プリンの量が減るか、酒を飲まずに特製プリンが当初予定した通りの量になるかを考え、後者を取った。
 主に主食のパンはをどうするかと話し合い、以前カズがデパートで買ってきた全粒粉を使ったパンが良いという事になった。
 そこで夕食に合わせて焼き上がるパンを買いに。
 残りのプリンを作り終えたら、四人でデパートに行こうという事になった。
 流石に買い占める事は出来ないので、十日分が買えればいいと。

 昼食を終えてカズが何時も通り食器を片付けようとした時に「私がやるわ」とアレナリアが代わってくれた。
 お言葉に甘えて食器の片付けをアレナリアに任せ、カズは裏庭で煮込んでいる肉と、焼いている肉の様子を見にいく。
 ビワはレラと特製プリン作りの続きをする。

 裏庭に出たカズは、鍋の落し蓋を外して煮込み具合を確認。
 良い感じだったので、蓋をして火から下ろし冷ます。
 焼いている方も良さそうだったので、取り出して【アイテムボックス】に入れた。
 あとは火を消して、炭は金属製のバケツに水を入れ、その中に浸けておく。
 灰を片付けてから、土属性魔法で作った鍋置きと風避けを《解除》し、外して端に並べて置いたレンガを元の場所に戻して終了。
 鍋底を触れるくらいまで冷めたら、鍋を持って家に入り、邪魔にならない隅に置いた。

「終わったんですか。ここ使います?」

 中身の入ってる鍋を持って来たカズに、コンロを使うかとビワが聞いてきた。

「味をしみ込ませたいだけだから。冷めてからアイテムボックスに入れるよ」

「そうですか。こちらは、あと二時間くらいかかりそうです。大丈夫ですか?」

「夕方に焼き上げるパンを買いに行くから、全然大丈夫だよ。何か手伝おうか」

「レラとアレナリアさんが手伝ってくれてるので大丈夫です」

 カズは三人の邪魔にならないように、リビングのソファーに座り終わるのを待つ。
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