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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

688 三者の話し合い と 反省すべき点

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 村長とラプフの話を聞き、レオラは苦い顔をして、自信の考えを述べる。

「閉鎖的な村にはこういった事が起こりえると知っていたのに。これはアタシの落ち度だ。もっと頻繁に来て、村の皆から話を聞くべきだった」

「レオラ様は何も悪くありません」

「悪いのは村長であるわたしです」

 レオラが自身を責める言葉を口にすると、ラプフと村長はすぐにそれを否定する。

「村の代表だからといって、そう意気込むことはない。間違ったって構わない。さすがに、村人同士で殺し合うような事態が起きては困るが。迷ったら誰でもいい。話しやすい者の意見を聞け。今回の事でラプフと話しやすくなったのならそれでもいい。一人で悩むなよ」

「はい。心して。ありがとうございます。レオラ様」

 村長はもっと村人達に相談するべきだった、ラプフとも先に二人で話して、どういった事を若い村人に話した方が良いかを話し合うべきだったと、改めて反省した。
 確かに村長とラプフが最初から意見を交わしていれば、考えの違いをあの場で口論する事はなかった。
 結局は上手くいってるようでも、それぞれ考えや思いは違う、年齢を重ねればその認識も変わってくる。
 問題が起きないようにするには、相談して補ってくれる者が必要になるが、村人だけでは難しい。
 だからレオラは自ら足を運び、村人達から話を聞くようにしていた。
 ここ一年は忙しく、中々来ることがでになかった。

「そう思うなら、これからは誰かに相談しろ。頻繁には無理だが、アタシも時間を作り来るようにはする。村人全員が外との交流を持つのは難しいだろうが、街で暮らしているこの村出身の者達と会えるくらいにはしたいものだ。何年も掛かるだろうが、それは半人半蟲お前達種族が、表立って歩けるようになるためだ」

「気持ちを入れ替え、そのようになるための努力をします」

「わたしも協力出来るようにします」

 仲違いしていた村長とラプフは、レオラの前で互いに謝り仲直りをした。
 ただその表情は少し硬かった。
 話も済みピリついた空気が納まったところで、肉を焼く匂いがして来た。
 カズが渡したバレルボアの肉を使い、女性達が昼食を作っていた。
 レオラが昼食は皆で食べようと、村を回っている時に、手の空いている女性達に話していた。
 それが出来上がり、子供達がレオラを呼びにやって来た。

 子供達に引かれレオラは集会所に向かい、その後ろから村長が付いて行く。
 カズはラプフに話ができていなかったので、話をしてから少し遅れて二人で集会所に向かう。
 村長宅にラプフと残り、レラの事に関しての報告と、改めてコンルを紹介してくれた事への感謝。
 ラプフは何度も礼をされるような事はしてないと手を振るが、コンルと会った事でレラの故郷や両親の手掛かりが得られたのは間違いない事だ。

「わたしが言うのも変だけど、同族としてこれからもレラをよろしくお願い」

「もちろん。レラを嫁にしたからな」

「そうレラと……! 今なんて言ったの?」

 ラプフは目を見開き、驚きの表情を見せる。

「レラと結婚したんだ。先日決まったんで、式とかそういった事はしてないがな。あ、レラだけじゃなくて、一緒に来たアレナリアとビワも(そういえば、この世界の式のやり方とか知らないんだ)」

「人とエルフに獣人と妖精の一夫多妻……やっぱりあなた達変わってる。とても変わってる(なぜかしら、少しレラがうらやましく思う)」

「そりゃどーも。俺達が村に居る間は、黙っててくれ(レオラにはまだ言ってないからな)」

「ええ、わかったわ」

 ラプフが気持ちを落ち着かせるのを待ってから集会所に行き、集まった村人達と共に昼食を取る。
 カズが渡したバレルボアの肉を焼いた物と、村で栽培している根菜の煮物を、集まった村人達で味わう。
 決して豪華ではないが、素朴な家庭の味だった。
 その場で村長が中断していた買い出しの件を、数日後に行うと選ばれたのに若い村人達に伝えた。
 レオラと他の村人達の前で話したので、もう中断する事はない。
 選ばれた若い村人達は、街へ買い出しに行ける事になり喜んだ。

 若い村人が積極的に他の種族と関わっていこうとすれば、揉め事等の問題が増える事もあるだろう。
 だが、積極的に他種族との関わりを持とうとすれば、半人半蟲族が受け入れられるようになるのも、そう遠くない日かも知れない。

 村人達と話をするのが途中だったレオラは、昼食を済ませるとカズを連れて村を回る。
 若い村人が買い出しをする件で、村長とラプフが口論になった事から、レオラは一人一人時間を掛けて話をするようにした。
 レオラ一人では時間掛かってしまうので、カズも手伝う事になった。
 二時間を掛けて殆どの村人から話を聞き、何気ない内容の話題から不満を探り出し、次回来る時までに改善点を村長と話し合えるようにと考えた。
 そして村での用事を済ませ、レオラはカズと共に村を出て、最後に木の上に作られた監視小屋に居る村人と話をして森を出る。
 帝都に戻るにも来た時と同じく、カズのゲート空間転移魔法で移動するので、監視をしている村人が目視できない場所まで、シックス・タウン方面に向かい歩いて行く。

「村の若い連中が他の種族や街に興味を持つようになったのは、カズ達が村を訪れたからだと村の連中が言ってたぞ」

「そうなのか?」

「四人とも種族は違うのに仲が良く、村の連中にも優しくしてやったんだろ。それで村の外に興味を持つ村人が増えたんだろう」

「それだと村長とラプフのケンカは、俺達が村に行ったのが原因みたいじゃないか(そもそもこの村に行けと言ったのはレオラだろ)」

「そう言うな。遅かれ早かれ、こういった問題は起きる。今回は村人達が分裂する前に気付けて幸運だった」

「レオラじゃなくても、代わりに誰か来るようにするんだな。村人の反応からすると、ジャンジさんもシロナさんが最適だと思うけど」

「あの二人は店もあるから、ちょくちょくは難しいだろ。それに頼まなくても様子を見に来てくれている。子供達に渡す菓子を作って」

「他に来れるのは、アスターとグラジオラスとガザニアだけだろ。ガザニアはなしとして、アスターとグラジオラスはどうなんだ? 来た事あるんだろ」

「何度かアタシと一緒に来たが、やはりジャンジとシロナ前任者の二人と比べると打ち解けてはない」

「小さな村一つを管理して、村人を保護するのも大変だな」

「カズの転移魔法を使えるアイテムはないのか? あれば月一でアタシが直に来れて、この問題は解決するんだがなぁ」

 カズの肩に手を置き、空間転移魔法ゲートが使えるアイテムをあるなら、寄越せと言わんばかりのレオラ。

「残念ながら、そんなアイテムは持ってない。ギルドの転移装置と同じようなのを、レオラの屋敷に作ったらどうだ」

「アタシの屋敷と村を行き来するだけで、作れるような代物じゃない。この距離だぞ。最低でも白金貨何百枚は必要になる。中継点を数ヶ所設けてでもしたら、更に費用はかかる」

「白金貨何百枚(確か白金貨一枚が百万円くらいだから……最低数億円。高けぇ)」
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