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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
674 名目上は指導
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翌日模擬戦をする冒険者は〝光明の日差し〟と同じCランクが召集されている。
Dランクも中には居るが、今日召集された冒険者と違い、問題を起こす粗暴な冒険者が多いので〝光明の日差し〟には実力的にも危険と判断し、依頼はこの日の訓練だけとなっていた。
カズは明日も〝光明の日差し〟が模擬戦をするのだと勘違いをしていた。
というよりも、サブ・ギルドマスターのバナショウの話だと〝光明の日差し〟も粗暴な冒険者の相手をするような言い方だった筈だ。
まさか今回の依頼はレオラの入れ知恵か? と、つい考えてしまったが、そんな事はないだろうと考えを否定した。
だが今回だけは、あながち間違えではないのだが、カズは何時もの思い違いだとした。
先に飲食店兼宿屋に戻っていたカリフは、夕食時にゴーヤとアプリコットから十日間の禁酒だと言われた。
パーティーとして受けた依頼を、二日酔いだからと二人に任せてしまったのだから。
カリフは全く反論できなかった。
カズは席を外して一人で夕食を取り、そのまま部屋に戻って【アイテムボックス】から氷の塊を出す。
氷を溶かして赤いブロックフロッグのコアと、大きさは憧れか欲望かを取り出す。
大きさは憧れか欲望かを〈クリーン〉を使い汚れを取り去り、再度《鑑定》して使い方を調べてからコアと共に【アイテムボックス】にしまい就寝。
◇◆◇◆◇
翌朝狭い二人部屋を出て一階に下り、飲食店で最後の食事を済ませ、駅に寄って魔導列車の時間を確認してから訓練場に向かう。
〝光明の日差し〟と会えば別れの挨拶くらいはしようと思ったが、まだ寝ているのか、一階の飲食店で会うことはなかった。
前日訓練場に入る際の説明で、今日開始する時間を聞いていたので、少し早めに着くように歩を進めた。
同じ方向に歩いている目つきの悪いの冒険者が数名いたが、途中で脇道に逸れていったので、今日召集を受けた冒険者じゃなかったんだとほっとする。
なんでこの依頼を受けてしまったんだと、今更だが後悔した。
〝光明の日差し〟の名が出されたので受けたが、実際粗暴な冒険者を相手に模擬戦をするのが自分だけなのか、ちゃんと内容を確認するべきだったと、再度後悔する。
足取り重く訓練場に着くと、ギルド職員の一人に案内されて、職員が仕事をする事務室に連れて行かれ、今日の依頼内容についての説明を受ける。
名目上は指導という立場になっているので、負わせるとしてもかすり傷程度まで。
今回職員はサブ・ギルドマスターから言われているので、冒険者が暴れたとして手出しはできない。(それは流石にダメだろうと思ったが、カズは口には出さない)
一回目の午前は八人で、二回目の午後は十二人が召集されている。
全員が召集に応じるとは限らないので、半分が来れば良い方。
人数の振り分け理由は、顔を合わせただけで揉め事を起こす冒険者を、かち合わないようにした。
召集された冒険者達は、カズがBランクに上がったばかりの冒険者だと伝えてあるので、何を言われようと窘める程度にして、くれぐれもやり過ぎないようと。
召集された冒険者達は、レオラの専属冒険者が双塔の街来ているのは知っているが、それがカズだとはしらない。
名目上の指導を開始する時間となり、ギルド職員と共に訓練場内に移動する。
そこには防具を身に付けた冒険者が四人と、冒険者を訓練場内に通したギルド職員が一人居た。
先に今回の内容について説明を受けたらしく、やって来たカズを見て鼻で笑った。
午前は人数が少ないという事で、カズと一緒に来たギルド職員は事務室に戻っていった。
待っても残りの四人は来ないだろうと、名目上は指導という模擬戦を始める。
四人は顔見知りのようで、カズを見てはゲラゲラと笑いながら何やら話していた。
カズが訓練場内に用意されている木剣を持ち模擬戦を始める。
先ずはDランク二人が刃の潰した訓練用の大剣持ち、一人ずつカズを攻撃する。
大振りで無駄の多い動きで、受けるまでもなく、半歩動くだけで避けることが出来る。
容易く何度も避けるカズに苛立ち、二人で左右から攻撃を仕掛けてくる。
たがやはり無駄な動きが多く、大振りの剣がカズを当たることはない。
指導ということなので、二人の腕を木剣で軽く打ち、刃の潰した訓練用の大剣を落とさせる。
先程まで鼻で笑っていた二人のCランク冒険者が、先の二人と代わり刃を潰した訓練用の細長い剣と長槍を手に攻撃を仕掛ける。
Dランク二人に比べれば動きはマシだが、カズが格下で自分達がBランク以上はあると驕っているのだろう。
くだらない指導を一撃で終わらせると、その表情から考えてる内容が見て取れる。
カズは細長い剣と長槍を後方に避けるのではなく、一歩前に出て間合いを詰める。
長槍を持つ冒険者から付かず離れずの距離を保つことで、思う様に攻撃させない。
細長い剣を持つ冒険者は、不規則に動く長槍が邪魔で、カズに攻撃をすることができない。
長槍を持つ冒険者は武器を捨てて、素手で殴りかかる。
カズはその腕を取り、足を掛けて一回転させて地面に転ばす。
その隙をついて細長い剣を持つ冒険者が、背後からカズに攻撃を仕掛ける。
細長い剣を大きく振り上げた冒険者の首元に、今まで地面に転がっていた長槍の柄先が突き付けられる。
気付けず一歩踏み出せば、喉が潰されていたかも知れなかった。
Cランク二人が動きを止めたので、カズは突き付けている長槍を引き地面に突き立てた。
黙ってカズを見る四人に「今度は全員で来るか?」と、まだやる気があるかと挑発してみた。
しかしこの四人はカズには敵わないと完全に戦意を失い、訓練場の端で監視しているギルド職員に「模擬戦はもう無意味だろ。この後おれたちは何をしたらいいんだ?」と、冒険者ギルドからの話を大人しく聞く気になった。
予想以上の物分かりの良さに、ギルド職員は一瞬返答が遅れた。
午前の指導という名目の模擬戦を一時間から二時間と設定していたが、三十分程で終わってしまった。
ギルド職員が四人の冒険者に近付き、双塔の街で活動するための注意を話し、約束を取り付けたので、冒険者ギルドとしての目的は達成した。
午前の指導という名目の模擬戦が終了し、カズは召集に応じた四人の冒険者に、気付いた欠点を教え助言をしてから解散した。
その後昼食をギルド職員と一緒に取り、隠してる事の説明を求めた。
カズはバナショウから、召集された粗暴な冒険者達に恐怖心を教えてやれと言われた。
だが実際訓練場に来てみると、ギルド職員からは怪我を負わせないようにと。
その辺りを詳しく聞くと、召集した粗暴な冒険者を多少傷付ける事くらいなら全然構わない。
が、本来の目的は双塔の街で活動するのなら、他者に迷惑をかけずに活動する事を約束させるためであると聞かされた。
ギルド職員が怪我についての説明を最初にしたのは、カズが帝国の守護者の称号を持つ、SSランクのレオラ専属冒険者だと知っていたから。
かつてレオラがした事を知っているので、選ばれたカズが同じならと考えていた。
粗暴な冒険者といえど再起不能にされては困ると考えての発言だった。
サブ・ギルドマスターが恐怖心を教えてやれと言ったのは、今になって冗談だったのではと思った。
が、冗談を言ったようにも思えない顔付だったので、午後の模擬戦はどうしたものかと悩む。
名目上指導という午前の模擬戦と同じ様に、午後もできるだけ攻撃を回避する事に優先しようかと考え、時間になるまで脳内シュミレーションをすることにした。
Dランクも中には居るが、今日召集された冒険者と違い、問題を起こす粗暴な冒険者が多いので〝光明の日差し〟には実力的にも危険と判断し、依頼はこの日の訓練だけとなっていた。
カズは明日も〝光明の日差し〟が模擬戦をするのだと勘違いをしていた。
というよりも、サブ・ギルドマスターのバナショウの話だと〝光明の日差し〟も粗暴な冒険者の相手をするような言い方だった筈だ。
まさか今回の依頼はレオラの入れ知恵か? と、つい考えてしまったが、そんな事はないだろうと考えを否定した。
だが今回だけは、あながち間違えではないのだが、カズは何時もの思い違いだとした。
先に飲食店兼宿屋に戻っていたカリフは、夕食時にゴーヤとアプリコットから十日間の禁酒だと言われた。
パーティーとして受けた依頼を、二日酔いだからと二人に任せてしまったのだから。
カリフは全く反論できなかった。
カズは席を外して一人で夕食を取り、そのまま部屋に戻って【アイテムボックス】から氷の塊を出す。
氷を溶かして赤いブロックフロッグのコアと、大きさは憧れか欲望かを取り出す。
大きさは憧れか欲望かを〈クリーン〉を使い汚れを取り去り、再度《鑑定》して使い方を調べてからコアと共に【アイテムボックス】にしまい就寝。
◇◆◇◆◇
翌朝狭い二人部屋を出て一階に下り、飲食店で最後の食事を済ませ、駅に寄って魔導列車の時間を確認してから訓練場に向かう。
〝光明の日差し〟と会えば別れの挨拶くらいはしようと思ったが、まだ寝ているのか、一階の飲食店で会うことはなかった。
前日訓練場に入る際の説明で、今日開始する時間を聞いていたので、少し早めに着くように歩を進めた。
同じ方向に歩いている目つきの悪いの冒険者が数名いたが、途中で脇道に逸れていったので、今日召集を受けた冒険者じゃなかったんだとほっとする。
なんでこの依頼を受けてしまったんだと、今更だが後悔した。
〝光明の日差し〟の名が出されたので受けたが、実際粗暴な冒険者を相手に模擬戦をするのが自分だけなのか、ちゃんと内容を確認するべきだったと、再度後悔する。
足取り重く訓練場に着くと、ギルド職員の一人に案内されて、職員が仕事をする事務室に連れて行かれ、今日の依頼内容についての説明を受ける。
名目上は指導という立場になっているので、負わせるとしてもかすり傷程度まで。
今回職員はサブ・ギルドマスターから言われているので、冒険者が暴れたとして手出しはできない。(それは流石にダメだろうと思ったが、カズは口には出さない)
一回目の午前は八人で、二回目の午後は十二人が召集されている。
全員が召集に応じるとは限らないので、半分が来れば良い方。
人数の振り分け理由は、顔を合わせただけで揉め事を起こす冒険者を、かち合わないようにした。
召集された冒険者達は、カズがBランクに上がったばかりの冒険者だと伝えてあるので、何を言われようと窘める程度にして、くれぐれもやり過ぎないようと。
召集された冒険者達は、レオラの専属冒険者が双塔の街来ているのは知っているが、それがカズだとはしらない。
名目上の指導を開始する時間となり、ギルド職員と共に訓練場内に移動する。
そこには防具を身に付けた冒険者が四人と、冒険者を訓練場内に通したギルド職員が一人居た。
先に今回の内容について説明を受けたらしく、やって来たカズを見て鼻で笑った。
午前は人数が少ないという事で、カズと一緒に来たギルド職員は事務室に戻っていった。
待っても残りの四人は来ないだろうと、名目上は指導という模擬戦を始める。
四人は顔見知りのようで、カズを見てはゲラゲラと笑いながら何やら話していた。
カズが訓練場内に用意されている木剣を持ち模擬戦を始める。
先ずはDランク二人が刃の潰した訓練用の大剣持ち、一人ずつカズを攻撃する。
大振りで無駄の多い動きで、受けるまでもなく、半歩動くだけで避けることが出来る。
容易く何度も避けるカズに苛立ち、二人で左右から攻撃を仕掛けてくる。
たがやはり無駄な動きが多く、大振りの剣がカズを当たることはない。
指導ということなので、二人の腕を木剣で軽く打ち、刃の潰した訓練用の大剣を落とさせる。
先程まで鼻で笑っていた二人のCランク冒険者が、先の二人と代わり刃を潰した訓練用の細長い剣と長槍を手に攻撃を仕掛ける。
Dランク二人に比べれば動きはマシだが、カズが格下で自分達がBランク以上はあると驕っているのだろう。
くだらない指導を一撃で終わらせると、その表情から考えてる内容が見て取れる。
カズは細長い剣と長槍を後方に避けるのではなく、一歩前に出て間合いを詰める。
長槍を持つ冒険者から付かず離れずの距離を保つことで、思う様に攻撃させない。
細長い剣を持つ冒険者は、不規則に動く長槍が邪魔で、カズに攻撃をすることができない。
長槍を持つ冒険者は武器を捨てて、素手で殴りかかる。
カズはその腕を取り、足を掛けて一回転させて地面に転ばす。
その隙をついて細長い剣を持つ冒険者が、背後からカズに攻撃を仕掛ける。
細長い剣を大きく振り上げた冒険者の首元に、今まで地面に転がっていた長槍の柄先が突き付けられる。
気付けず一歩踏み出せば、喉が潰されていたかも知れなかった。
Cランク二人が動きを止めたので、カズは突き付けている長槍を引き地面に突き立てた。
黙ってカズを見る四人に「今度は全員で来るか?」と、まだやる気があるかと挑発してみた。
しかしこの四人はカズには敵わないと完全に戦意を失い、訓練場の端で監視しているギルド職員に「模擬戦はもう無意味だろ。この後おれたちは何をしたらいいんだ?」と、冒険者ギルドからの話を大人しく聞く気になった。
予想以上の物分かりの良さに、ギルド職員は一瞬返答が遅れた。
午前の指導という名目の模擬戦を一時間から二時間と設定していたが、三十分程で終わってしまった。
ギルド職員が四人の冒険者に近付き、双塔の街で活動するための注意を話し、約束を取り付けたので、冒険者ギルドとしての目的は達成した。
午前の指導という名目の模擬戦が終了し、カズは召集に応じた四人の冒険者に、気付いた欠点を教え助言をしてから解散した。
その後昼食をギルド職員と一緒に取り、隠してる事の説明を求めた。
カズはバナショウから、召集された粗暴な冒険者達に恐怖心を教えてやれと言われた。
だが実際訓練場に来てみると、ギルド職員からは怪我を負わせないようにと。
その辺りを詳しく聞くと、召集した粗暴な冒険者を多少傷付ける事くらいなら全然構わない。
が、本来の目的は双塔の街で活動するのなら、他者に迷惑をかけずに活動する事を約束させるためであると聞かされた。
ギルド職員が怪我についての説明を最初にしたのは、カズが帝国の守護者の称号を持つ、SSランクのレオラ専属冒険者だと知っていたから。
かつてレオラがした事を知っているので、選ばれたカズが同じならと考えていた。
粗暴な冒険者といえど再起不能にされては困ると考えての発言だった。
サブ・ギルドマスターが恐怖心を教えてやれと言ったのは、今になって冗談だったのではと思った。
が、冗談を言ったようにも思えない顔付だったので、午後の模擬戦はどうしたものかと悩む。
名目上指導という午前の模擬戦と同じ様に、午後もできるだけ攻撃を回避する事に優先しようかと考え、時間になるまで脳内シュミレーションをすることにした。
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