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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
667 第五迷宮の探索 7 戦闘介入
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ピンチの時に交渉するのは質が悪いかも知れないが、こちらも目的があって来てるので、言質を取れたからには文句を言われたとしても言い返すつもりだ。
別に見捨てたとしてもここは迷宮で、三人は冒険者なのだから、生きていなければ証人は誰も居ない。
誰にも文句は言われない。
それで目的が達成出来るのであれば、そちらの方が面倒事にならずに済む。
だがそれで目的の大きさは憧れか欲望かを手に入れたとして、レラにどんな顔をして渡せるだろうか。
今の自分になら容易く助けられる冒険者を、見捨てて手に入れたい目的の物を渡せる筈がない。
という事で、即座に行動に移す。
先に三人の冒険者を回復してやりたいところだが、元気になったからと、戦闘に復帰されたら邪魔になるので、先ずは手前で組み変わろうとしている赤いブロックフロッグを、魔力を込めた拳で殴り、次々と攻撃し粉砕していく。
ろくな装備もせずに、素手だけで積み重なった赤いブロックフロッグの壁を粉々にしていくカズを見て、三人の冒険者は目の前の光景に唖然とした。
あとは目的の大きさは憧れか欲望かを所持してると思われる一枚の壁を残すのみ。
「…お、おいあんた。そのブロフロだと思うが、そいつは異常に硬いぞ。オレの剣でも、かすり傷程度しかできないんだ。いくらなんでも、素手では無理だ!」
第五迷宮に現れる、通常の積み重なったブロックフロッグとは段違だと、我に返った男性冒険者のゴーヤがカズに忠告する。
「そうかいありがと。でもコイツが俺の目的なんでな(粉々にするわけにはいかないからな)」
ゴーヤの忠告に返答したカズは、動きを止めている赤い壁に向かって〈フリーズ〉を使用し、通路を塞ぐ程の一枚壁になっている赤いブロックフロッグを凍らせる。
一人で通路を塞ぐ程の壁を、氷結魔法で凍らせるには相当の魔力を使う。
数人で囲って数分浴びせる続けなければならない。
しかしカズがフリーズを使うと、三十秒と経たない内に赤いブロックの壁が氷壁へと変わる。
「とりあえずこれでいいだろ。さっきも言ったが、ケガとかしてないか? もちろんケガだけじゃなく、毒とかもだが」
「大丈夫。三人ともかすり傷程度だ。あんたには感謝する」
三人の代表なのだろうか、ゴーヤがカズに感謝すると共に、どういった存在なのを確かめようとしている。
助けに入ったとはいえ、少なからず警戒をしている様なので、カズは名乗ると三人の冒険者も簡単な自己紹介をした。
三人は〝光明の日差し〟というパーティー名で、個々のランクと共にパーティーランクもCだと言う。
パーティー名を聞き、常に明るく照される方へ向かって行こう、と名付けたのではないかと、カズは考えた。
一番年上ということで、パーティー〝光明の日差し〟のリーダーを務めているゴーヤが先ずお礼と挨拶をして、続いて一つ年下のカリフと紅一点のアプリコットが、カズに挨拶とお礼を言う。
アプリコットは、ゴーヤとカリフからはアプリと呼ばれている。
目的のために関わる事になったが、迷宮内で危険な目にあっていたのを助けただけで、それ以上親しくする必要はないとカズは考え、凍っている一体のモンスターの目を向ける。
早速氷漬けにした大きなブロックフロッグに近付き、何処に目的の大きさは憧れか欲望かがあるかを調べる。
外見からは見付けられそうにないので《鑑定》を試してみる。
縦横3メートル強の通路を、隙間なく広がり大きくなったブロックフロッグを上からじっと観察しているカズに、大して疲弊してない女性冒険者のアプリコットが、何をしているのか聞いてきた。
動けるのは先程まで低位回復魔法を使うか、泣き叫んでいることしかしてなかったアプリコットだけ。
ゴーヤとカリフは体力的にも精神的にも疲れ、座り込んでしまっている。
「この個体がこうなった原因があって、それを探してる」
「もしかしてカズさんは、このブロフロを調べる依頼を受けて来たんですか?」
「目的はそうかな。君達が先に接触してたから、横取りは悪いと思って確認を取った。正式な依頼を受けて来ているわけじゃないが、もし見つけ討伐したら報告してくれとギルドからは言われてる」
ただの興味本位なのかは分からないが、カズが何をするのかと後方から視線を外さず、アプリコットは黙ってじっと見てくる。
視線は気になるが、見ないでくれと言うのも何か変だと思い、邪魔をしないのなら別に良いかと、アプリコットの好きにさせた。
氷漬けのブロックフロッグの中央よりやや右下に魔核があり、その裏側にアイテムの反応があった。
カズ達が居る位置からすると魔核があるが 反対側から見ると魔核の手前にアイテムがある。
つまりにカズと“光明の日差し”が居る側からは、魔核が確認できるだけ。
反対側から見れば、目的の大きさは憧れか欲望かがあることが、鑑定や分析せずとも分かる。
所持している赤いブロックフロッグが、自身の魔核よりも価値が上として隠しているかは不明だが、実際に敵とみなしてる四人の居る方から遠ざける様にしていると、少なからず考えられた。
「さて、これは……」
カズが目の前で大きくなって凍っている赤いブロックフロッグを見て、どうしたものかと考え込み、その様な仕草を取る。
それを見ていたアプリコットが、何故倒してアイテムを回収してしまわないんだと、疑問に思っていた。
「その個体って、そんなに強いんですが?」
「ん、いや。なんで?」
「全然倒してしまおうとしないようなんで」
「この個体が所持している物を回収したいんだけど、それがある所が面倒でね。どうしたものかと」
「どこにあるんです? あ! ただの興味本位です。横取りしようとかは思ってないですよ」
「急所となるコアの後ろにあるんだ。勢いあまって傷つけてはね。それにコアを破壊したら、一緒に壊れたなんて事になったらさ」
「でしたら、どうするんですが?」
「……少しずつ削りながら取り出すしかないかな。壊れたら元も子もないないし(せっかく見つけたのに、壊れてでもしたら、レラにどう謝ればいいんだか。見つからなかったって、ウソはつきたくないからな)」
「でしたら、切り取ってしまったらどうです? ここまで凍っていれば、氷ごと切って、コアと一緒に回収してしまえば、いいと思おますよ」
「なるほど。それもそうだな。ありがと、アプリコットさん」
「アプリでいいですよ。助けてもらったんだし、ランクは聞いてないけど、カズさんの方が上でしょう」
「あーまぁそうかな。今回は一人で来てるもんで、ランクうんぬんは明かさないようにしてるんだ(こんな格好でAランクだとか、皇女の専属冒険者だとか知られたら面倒だからな。一度の出会いとして、軽い感じですましたい)」
アプリコットの背後で休んでいる二人は隠している様だが、助けてくれたからって気安く呼ぶなよ。
そのまま情報を引き出してくれ、といった雰囲気を出しているのが分かった。
なのでカズは、アイテムを所持するモンスターを討伐して、それを持ち帰りギルドに報告すると伝わるような感じで、アプリコット質問に答えながら、ゴーヤとカリフの警戒心を解こうとした。
「さて、どうやって取り出すかなぁ……」
別に見捨てたとしてもここは迷宮で、三人は冒険者なのだから、生きていなければ証人は誰も居ない。
誰にも文句は言われない。
それで目的が達成出来るのであれば、そちらの方が面倒事にならずに済む。
だがそれで目的の大きさは憧れか欲望かを手に入れたとして、レラにどんな顔をして渡せるだろうか。
今の自分になら容易く助けられる冒険者を、見捨てて手に入れたい目的の物を渡せる筈がない。
という事で、即座に行動に移す。
先に三人の冒険者を回復してやりたいところだが、元気になったからと、戦闘に復帰されたら邪魔になるので、先ずは手前で組み変わろうとしている赤いブロックフロッグを、魔力を込めた拳で殴り、次々と攻撃し粉砕していく。
ろくな装備もせずに、素手だけで積み重なった赤いブロックフロッグの壁を粉々にしていくカズを見て、三人の冒険者は目の前の光景に唖然とした。
あとは目的の大きさは憧れか欲望かを所持してると思われる一枚の壁を残すのみ。
「…お、おいあんた。そのブロフロだと思うが、そいつは異常に硬いぞ。オレの剣でも、かすり傷程度しかできないんだ。いくらなんでも、素手では無理だ!」
第五迷宮に現れる、通常の積み重なったブロックフロッグとは段違だと、我に返った男性冒険者のゴーヤがカズに忠告する。
「そうかいありがと。でもコイツが俺の目的なんでな(粉々にするわけにはいかないからな)」
ゴーヤの忠告に返答したカズは、動きを止めている赤い壁に向かって〈フリーズ〉を使用し、通路を塞ぐ程の一枚壁になっている赤いブロックフロッグを凍らせる。
一人で通路を塞ぐ程の壁を、氷結魔法で凍らせるには相当の魔力を使う。
数人で囲って数分浴びせる続けなければならない。
しかしカズがフリーズを使うと、三十秒と経たない内に赤いブロックの壁が氷壁へと変わる。
「とりあえずこれでいいだろ。さっきも言ったが、ケガとかしてないか? もちろんケガだけじゃなく、毒とかもだが」
「大丈夫。三人ともかすり傷程度だ。あんたには感謝する」
三人の代表なのだろうか、ゴーヤがカズに感謝すると共に、どういった存在なのを確かめようとしている。
助けに入ったとはいえ、少なからず警戒をしている様なので、カズは名乗ると三人の冒険者も簡単な自己紹介をした。
三人は〝光明の日差し〟というパーティー名で、個々のランクと共にパーティーランクもCだと言う。
パーティー名を聞き、常に明るく照される方へ向かって行こう、と名付けたのではないかと、カズは考えた。
一番年上ということで、パーティー〝光明の日差し〟のリーダーを務めているゴーヤが先ずお礼と挨拶をして、続いて一つ年下のカリフと紅一点のアプリコットが、カズに挨拶とお礼を言う。
アプリコットは、ゴーヤとカリフからはアプリと呼ばれている。
目的のために関わる事になったが、迷宮内で危険な目にあっていたのを助けただけで、それ以上親しくする必要はないとカズは考え、凍っている一体のモンスターの目を向ける。
早速氷漬けにした大きなブロックフロッグに近付き、何処に目的の大きさは憧れか欲望かがあるかを調べる。
外見からは見付けられそうにないので《鑑定》を試してみる。
縦横3メートル強の通路を、隙間なく広がり大きくなったブロックフロッグを上からじっと観察しているカズに、大して疲弊してない女性冒険者のアプリコットが、何をしているのか聞いてきた。
動けるのは先程まで低位回復魔法を使うか、泣き叫んでいることしかしてなかったアプリコットだけ。
ゴーヤとカリフは体力的にも精神的にも疲れ、座り込んでしまっている。
「この個体がこうなった原因があって、それを探してる」
「もしかしてカズさんは、このブロフロを調べる依頼を受けて来たんですか?」
「目的はそうかな。君達が先に接触してたから、横取りは悪いと思って確認を取った。正式な依頼を受けて来ているわけじゃないが、もし見つけ討伐したら報告してくれとギルドからは言われてる」
ただの興味本位なのかは分からないが、カズが何をするのかと後方から視線を外さず、アプリコットは黙ってじっと見てくる。
視線は気になるが、見ないでくれと言うのも何か変だと思い、邪魔をしないのなら別に良いかと、アプリコットの好きにさせた。
氷漬けのブロックフロッグの中央よりやや右下に魔核があり、その裏側にアイテムの反応があった。
カズ達が居る位置からすると魔核があるが 反対側から見ると魔核の手前にアイテムがある。
つまりにカズと“光明の日差し”が居る側からは、魔核が確認できるだけ。
反対側から見れば、目的の大きさは憧れか欲望かがあることが、鑑定や分析せずとも分かる。
所持している赤いブロックフロッグが、自身の魔核よりも価値が上として隠しているかは不明だが、実際に敵とみなしてる四人の居る方から遠ざける様にしていると、少なからず考えられた。
「さて、これは……」
カズが目の前で大きくなって凍っている赤いブロックフロッグを見て、どうしたものかと考え込み、その様な仕草を取る。
それを見ていたアプリコットが、何故倒してアイテムを回収してしまわないんだと、疑問に思っていた。
「その個体って、そんなに強いんですが?」
「ん、いや。なんで?」
「全然倒してしまおうとしないようなんで」
「この個体が所持している物を回収したいんだけど、それがある所が面倒でね。どうしたものかと」
「どこにあるんです? あ! ただの興味本位です。横取りしようとかは思ってないですよ」
「急所となるコアの後ろにあるんだ。勢いあまって傷つけてはね。それにコアを破壊したら、一緒に壊れたなんて事になったらさ」
「でしたら、どうするんですが?」
「……少しずつ削りながら取り出すしかないかな。壊れたら元も子もないないし(せっかく見つけたのに、壊れてでもしたら、レラにどう謝ればいいんだか。見つからなかったって、ウソはつきたくないからな)」
「でしたら、切り取ってしまったらどうです? ここまで凍っていれば、氷ごと切って、コアと一緒に回収してしまえば、いいと思おますよ」
「なるほど。それもそうだな。ありがと、アプリコットさん」
「アプリでいいですよ。助けてもらったんだし、ランクは聞いてないけど、カズさんの方が上でしょう」
「あーまぁそうかな。今回は一人で来てるもんで、ランクうんぬんは明かさないようにしてるんだ(こんな格好でAランクだとか、皇女の専属冒険者だとか知られたら面倒だからな。一度の出会いとして、軽い感じですましたい)」
アプリコットの背後で休んでいる二人は隠している様だが、助けてくれたからって気安く呼ぶなよ。
そのまま情報を引き出してくれ、といった雰囲気を出しているのが分かった。
なのでカズは、アイテムを所持するモンスターを討伐して、それを持ち帰りギルドに報告すると伝わるような感じで、アプリコット質問に答えながら、ゴーヤとカリフの警戒心を解こうとした。
「さて、どうやって取り出すかなぁ……」
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