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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

665 第五迷宮の探索 5 メモリー・ストーンのある階層

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 サブ・ギルドマスターのバナショウからの承諾も取れ、これで四十二階層に現れる変わったモンスターが急に出現しなくなったと、騒がれる心配はなくなったとカズは安心した。

「有益な情報が入ったので、こちらも助かりました。あ、そうだ。十一階に上がる前に中ボスが出なかったんですが、一度倒されると、もう出現しないんですか?」

「中ボス? 十階毎にいるモンスターの事なら、一日一体しか出現しない。倒すと珍しい素材を落とす事があるんだ。そいつだけを狙って迷宮に入る冒険者も少なくはない」

「そうなんですか。あと迷宮にあるメモリー・ストーンは、全ての階はないんですか?」

「報告にある限りでは、一階と十階毎に出現するモンスターの次の階、つまり十一階や二十一階に上がった所の小部屋にあるはずだ。あと今の迷宮で確認されてるのは、二十五階と二十六階の間と、五十五階と五十六階の間にモンスターが出現しないセーフティー・エリアにある。知らなかったか?」

「メモリー・ストーンは十一階で見つけ、そこで初めて知りました。セーフティー・エリアの事は、まだそこまで行ってないので、知りませんでした」

「今回の迷宮でも、モンスターが階層移動すると報告されてない。もしセーフティー・エリアでモンスターに襲われると報告があったら、完全攻略は前回以上の難易度になるだろ」

 前日二十五階層に着いた所で終了して戻ってしまったカズは、二十五階と二十六階の間にセーフティー・エリアあり、しかもそこにメモリー・ストーンがあるなんてと、表面上平静を装っていても内心では落胆していた。
 このままでは表情に出てしまうと、サブ・ギルドマスターのバナショウに情報のお礼を言って、冒険者ギルドを出て第五迷宮フィフス・ラビリンスに向かう。
 プルーンに見付かると、時間が取られると思い、気付かれないようにギルドを出た。

 あと三時間もすれば正午になってしまうので、一階層のメモリー・ストーンから二十一階層のメモリー・ストーン20に飛んで、ダンジョン・ムーヴで二十五階層に移動して、急いで四十二階層を目指す。
 一応、二十六階層の手前のセーフティー・エリアのメモリー・ストーン25・5に触れ、魔力を流して記録する。
 出現するモンスターとの戦闘をできるだけ避けて、昼を過ぎた頃には三十一階層のメモリー・ストーン30がある小部屋に着いた。
 そこで遅めの昼食を取り小休止。

 たまに見掛ける冒険者と、徘徊するアンデット系のモンスターを避け、三十五階層に到達する。
 目的の巨大化するブロックフロッグを倒す際に、大きさは憧れか欲望かアイテムを破壊しては元も子もない。
 そこでこの階層で発見した茶色のブロックフロッグを、試しに打撃と斬撃と各属性の魔法で攻撃して効き目の程を探る。
 打撃は威力を調整すれば、破壊することはなさそう。
 刃物を使っての斬撃は峰打ちならありだが、それだと拳での打撃の方が加減が出来るので、斬撃は却下。
 魔法は狙い所と属性によっては加減し過ぎて逃げられる可能性があるので、使うとしたら凍らせて氷に閉じ込めて拘束するのが最適だと考えた。

 第五迷宮フィフス・ラビリンス内でモンスターを倒すと、少しして消滅する。
 そして所持している物や素材となる物がその場所に残る。
 ブロックフロッグを倒すと、微小の魔素マナが含まれた鉱石が採取できることがある。
 一体倒して採取できる鉱石が小石一つ程度なので、拾わずにそのまま放置する冒険者が多い。

 茶色のブロックフロッグで対処法を試し終えると、急いで四十二階層を目指して移動する。
 威圧で逃げないようなモンスターは倒していき、上層階に向かうのを優先しているので、小部屋で宝箱を見付けても無視した。
 冒険者の遺品を見付けた場合は回収して、冒険者ギルドに届けるつもりでいたが、三十八階層に到達した時点で、そういった物を見付ける事はなかった。
 選ぶ通路によっては落ちていたかも知れないが、遺品を探す依頼を受けて来ているわけではないので、各階層をくまなく探索することはしない。

 何時も夕食を取る時間頃には、なんとか四十一階層のメモリー・ストーン40がある小部屋たどり着いた。
 三十九階層と四十階層に上がる階段を見付けるまで、他の冒険者を見かける事はなかったので、メモリー・ストーンを使わない限り、すぐここに誰かが来る事はない。
 とりあえず休憩を取り夕食にする。
 アイテムボックスに入れてあるビワの手作りの料理を食べながら、ここまでの事を振り返る。

 三十五階層で少し時間を使い、茶色のブロックフロッグを十三体倒した後は、レベル29のブロンズ・ゴーレムを四体と、レベル31のジャイアント・スカルを二体を倒した。
 ブロンズ・ゴーレムからは拳大のブロンズのインゴット二個を回収したが、ジャイアント・スカルからは何も手に入らなかった。
 倒したので一応回収はしたが、無いならそれはそれで構わなかった。
 素材を採取する目的で、来ているわけではない。

 十階層以下に出現するモンスターはレベル10以下で、稀にレベル14。
 十一階層から二十階層に出現するモンスターは、レベル9からレベル15以下で、稀にレベル19。
 二十一階層から三十階層に出現するモンスターは、レベル14からレベル24で、稀にレベル28。
 三十一階層から四十階層に出現するモンスターは、レベル20からレベル32で、稀にレベル37。
 カズの前には稀なモンスターは現れることはなかった。

 メモリー・ストーンで一階層に戻り外に出て宿屋に泊まっても、明朝また観光客の迷宮見学で入場が遅くなってしまうのは確実なので、予定通り迷宮内で一夜を過ごす事にする。
 四十二階層に上がる階段を今日中に見付け、四十一階層でバリア・フィールドを張るなりして仮眠を取るか、このまま四十一階層のメモリー・ストーン40がある小部屋で、疲れが取れるまで休息を取るかを考える。

 夕食を済ませると疲れを感じていたので、そのままメモリー・ストーン40がある小部屋で休憩を取る事にした。
 自身の周り1メートルくらいに〈バリア・フィールド〉張り、壁により掛かりながら眠りにつく。


 ◇◆◇◆◇


 眠りについてから四時間程で目を覚した。
 今日中に見付けられなければ、次に来れるのは早くても帝都を出発して、東に向かい帝国を出る前。
 双塔の街の冒険者ギルドの、サブ・ギルドマスターのバナショウから情報を貰ったので、出来れぱ今日中に目当のモンスターを見付け、目的のアイテムを手に入れたい。
 迷宮内は何も変わらないが、迷宮の外はまだ深夜。
 残り時間を考えると、この時間帯から行動を開始する必要があるので、急いで四十二階層に上がる階段を探す。

 四十一階層を探索して、四十二階層上がる階段を見付ければ、あとは目当のアイテムを所持しているモンスターを探すだけ。
 予想以上に時間が掛かり、四十一階層を一時間近く探索して、四十二階層に上がる階段を見付ける事が出来た。
 運が良いのか四十一階層の小部屋から、モンスターに遭遇することはなかった。
 ただ次の階層からは、モンスターとの遭遇が好ましい。
 狙いは『大きさは憧れか欲望か』を所持しているブロックフロッグを見付けて討伐し、アイテムを損傷させることなく入手すること。
 残された時間は日暮れ前とし、約十五時間と決めて四十二階層に上がる。

 聞いていた通り四十二階層の壁は、赤レンガのようなブロックが積み重なり出来ていた。
 ブロックフロッグは擬態している筈なので《魔力探知》と《気配探知》と使い、更に【マップ】の範囲を拡大して、一体たりとも見過ごさないように注意深く探し回る。
 進行方向左の壁に沿って、通路が左の曲がって入ればそちらに進み、部屋があれば罠に注意して中を確認して入り調べ、時間を掛けて探索をする。
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