上 下
683 / 770
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

662 第五迷宮の探索 2 迷宮内での特殊な移動手段

しおりを挟む
 前日到達した九階層まで来たが、ここまで見掛けた冒険者は二組だけで、他の冒険者を見掛ける事はなかった。
 この事から先程の考えが現実見を帯びてきた。

 一度レベル10前後のスケルトンが三体現れ、威圧スキルで追っ払おうとしたが効果なかったので倒した。
 意志のないアンデット系には、恐怖を感じないから効果がないのだろうかと疑問が出来た。

 九階層から十階層に上がり探索すること二十数分、十階層に毎に居るという中ボス部屋を見付けた。
 警戒しつつ扉を開けて入るも、中ボスらしきモンスターはいなかった。
 先に入った冒険者が倒したのだろう。
 十階層毎に存在する中ボス的なモンスターは、一度倒されると新たに出現しないか、再度現れるまで時間が掛かるのかも知れない。
 次は二十階層に居るか確認してみる事にする。

 十階層の中ボス部屋の奥にある階段を上がり、十一階層すぐ近くの小部屋で見たことのない石柱を見付けた。
 小部屋に罠らしきものはなく、あるのは中央に1メートル程の石柱があるだけ。
 近付きよくよく観察すると『メモリー・ストーン10』と書かれていので《鑑定》を使用して石柱を調べてみる。


 メモリー・ストーンに魔力を流して記録しておくと、他の階層にあるメモリー・ストーンから瞬時に移動することが出来る。
 記録していないメモリー・ストーンには移動することができない。
 移動する際はメモリー・ストーンに触れて、移動するメモリー・ストーンを指定して魔力を流す。
 同時に移動出来るのは三人まで。
 最後に使用してから五日が過ぎると、メモリー・ストーンに記録した魔力が消えるので、移動するには再度魔力を記録する必要がある。


 鑑定したことで、他の階層にもメモリー・ストーンがあったのだとカズは知った。
 ここまで運良く上階層に上がる階段を見付けたことで、各階層を三割程しか探索してなかった。
 その事でメモリー・ストーンがある場所を見逃して来てしまったのだと、失敗の表情を浮かべる。
 今更後悔してもしょうがないと気持ちを切り替え、メモリー・ストーン10に触れて魔力を記録し、とりあえず四十層階を目指して迷宮を進む。

 十二階層から十五階層までで、四組の冒険者パーティーを見掛けた。
 その内三組は迷宮前で見掛けた冒険者だった。
 このことから迷宮に入ってすぐ、メモリー・ストーンを使って十階層に上がって来たから見掛けなかったのだと分かった。
 今回モンスターの素材を集めたり、宝箱等を探したりはしないので、他の冒険者と関わらないようにして、上層階に上がる階段を優先的に探して上って行く。

 二十階層で中ボス部屋を見付けたが、やはりそれらしきモンスターはいなかったので、そのまま通過した。
 中ボスが出現するのかは、ギルドで聞いてみないことに分からない。
 ただ戦闘で時間を取られないので、どちらかといえば出現しなくてもいいと、カズは考えた。
 二十一階層に上がってすぐの小部屋でメモリー・ストーン20を見付け、それに触れて魔力を流し記録する。
 あと一時間は探索してもいいと考えたが、とりあえず十一階層のメモリー・ストーン10に移動出来るか試してみる。
 メモリー・ストーン20に触れて魔力を流し「メモリー・ストーン10に移動」と声に出す。

 特に何も起きず、駄目かと思いメモリー・ストーン20から手を離そうとし瞬間に、小部屋の雰囲気が変わった。
 触れていたメモリー・ストーン20を確認すると、表示がメモリー・ストーン10になっていた。
 視界の端に映る【マップ】も確認すると、上って来たばかりの二十一階層ではなく、探索した十一階層が表示されていた。
 これでメモリー・ストーンは迷宮の階層を、転移で移動する装置だと確認が出来た。

 二十一階層に戻ろうとメモリー・ストーン10に触れて魔力を流し、今度は声に出さずメモリー・ストーン20に移動と念じた。
 二、三秒すると十一階層から二十一階層のメモリー・ストーンがある小部屋に移動した。
 これで声に出さずとも、メモリー・ストーンを起動出来る事が分かった。
 通って来た階層をくまなく探索しているわけではないので確かなことは分からないが、もしかしたら十階層毎にしかメモリー・ストーンがないのかも知れないと考え、探索を再開する。

 二十一階層をに探索していると、現れたのはレベル16からレベル20のゾンビ。
 十階層手前で現れたスケルトンと同様で、威圧のスキルを使うも効果はなかった。
 現れたゾンビの弱点は火だったので、遭遇したら〈ファイアーボール〉を使い倒して進む。
 この日は二十五階層に上がったところで終了し、宿に戻ることにする。
 歩いて二十一階層のメモリー・ストーンに戻っては時間が掛かり過ぎるので、昨夜インテリジェンス・ブックアーティファクトの古書で見付けたスキルを試すことにする。

 二十一階層の小部屋を思い浮かべ移動系スキル《ダンジョン・ムーヴ》使う。
 メモリー・ストーンを使用した時と似たような感じで、周囲の景色が変わり移動した。
 これでダンジョン・ムーヴを使えば、訪れた階層に移動出来る。
 流石にダンジョン・ムーヴで迷宮の出入口に移動するのは不味いので、迷宮を出る際はメモリー・ストーンを使う事にする。
 ただ一階層にあると思えるメモリー・ストーンには魔力を記録してないので、今回は三階層で見付けた何も無い部屋にダンジョン・ムーヴで移動し、そこから一階層まで下りて迷宮を出る。

 宿屋に戻り夜食を取りながら一日の行動を振り返る。
 今までムーヴという特殊な移動スキルを持つモンスターはいたが、今回使ったダンジョン・ムーヴはそれとは違った。
 メモリー・ストーンとダンジョン・ムーヴの効果は、カズが使う空間転移魔法ゲートのように場所を繋げるのではなく、自身がその場所に転移する瞬間移動テレポートと同じ様な効果。
 ただ難点として同じ階層や、階層を繋ぐ階段等に移動することはできない。

 予定では第五迷宮フィフス・ラビリンスでの探索はあと二日。
 見物の観光客がいることで、朝の入場に時間が掛かかってしまうという予想外の事があり、思っていたよりも潜るのに時間が掛かってしまった。
 そこで明日中にはとりあえずの目的である四十階層に行き着き、迷宮内で仮眠を取って『大きさへは憧れか欲望か』を所持しているモンスターを探す事にした。
 

 ◇◆◇◆◇


 予定よりも到達階層が低くなってしまっているので、第五迷宮フィフス・ラビリンス内で夜を越すことにし、まだ宿泊する予定だった宿屋を引き払った。
 観光客が来る前にと早くから双塔までやって来たが、既に二組の観光客と護衛に雇った冒険者が来ていた。
 その二組に続いて入ろうと思ったが、続々と見物の観光客がやって来てしまった。
 観光客に続き入ろうと、単独ソロの冒険者が後ろに並んだ途端に、観光客からあれこれと質問攻めにあっていた。
 あれでは下手をすれば、観光客がしつこく付いて来る可能性があると考え、前日同じく観光客が減るまで待つ事にした。
 だが何もせず待つのは流石に時間の無駄になるので、冒険者ギルドに置かれている情報誌を見て時間を潰す事にした。

 予想通りというかお決まりというか、朝の冒険者ギルドは多くの冒険者で混んでいる。
 受付にも依頼書が貼ってある掲示板にも用はないので、壁際を通って一階の休憩所に移動して、情報誌が置かれている書棚の前にいく。
 同じ様に情報誌に目を通し、情報収集をしている冒険者が数人居た。
 欲しいのは四十階層付近の情報なので、情報誌の表紙に書かれてる見出しから探す。
 四十二階層で大きなモンスターを見たと見出しに書かれた情報があった。
 前回休憩所には無かったので、発行された日を見ると前日に出たばかりの最新の情報誌。
 早速大きなモンスターに関する事が書かれたページを開き記事を読む。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔
ファンタジー
高校二年生最後の日。由樹空(ゆうきそら)は同じクラスの男子生徒と共に異世界へと召喚された。 全員の適正職業とスキルが鑑定され、空は「空気師」という職業と「空気清浄」というスキルがあると判明。 花粉症だった空は歓喜。 しかし召喚主やクラスメイトから笑いものにされ、彼はひとり森の中へ置いてけぼりに。 (アレルギー成分から)生き残るため、スキルを唱え続ける空。 モンスターに襲われ樹の上に逃げた彼を、美しい二人のエルフが救う。 命を救って貰ったお礼にと、森に漂う瘴気を浄化することになった空。 スキルを使い続けるうちにレベルはカンストし、そして新たに「空気操作」のスキルを得る。 *作者は賢くありません。作者は賢くありません。だいじなことなのでもう一度。作者は賢くありません。バカです。 *小説家になろう・カクヨムでも公開しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

転生受験生の教科書チート生活 ~その知識、学校で習いましたよ?~

hisa
ファンタジー
 受験生の少年が、大学受験前にいきなり異世界に転生してしまった。  自称天使に与えられたチートは、社会に出たら役に立たないことで定評のある、学校の教科書。  戦争で下級貴族に成り上がった脳筋親父の英才教育をくぐり抜けて、少年は知識チートで生きていけるのか?  教科書の力で、目指せ異世界成り上がり!! ※なろうとカクヨムにそれぞれ別のスピンオフがあるのでそちらもよろしく! ※第5章に突入しました。 ※小説家になろう96万PV突破! ※カクヨム68万PV突破! ※令和4年10月2日タイトルを『転生した受験生の異世界成り上がり 〜生まれは脳筋な下級貴族家ですが、教科書の知識だけで成り上がってやります〜』から変更しました

異世界召喚失敗から始まるぶらり旅〜自由気ままにしてたら大変なことになった〜

ei_sainome
ファンタジー
クラスメイト全員が異世界に召喚されてしまった! 謁見の間に通され、王様たちから我が国を救って欲しい云々言われるお約束が…始まらない。 教室内が光ったと思えば、気づけば地下に閉じ込められていて、そこには誰もいなかった。 勝手に召喚されたあげく、誰も事情を知らない。未知の世界で、自分たちの力だけでどうやって生きていけというのか。 元の世界に帰るための方法を探し求めて各地を放浪する旅に出るが、似たように見えて全く異なる生態や人の価値観と文化の差に苦悩する。 力を持っていても順応できるかは話が別だった。 クラスメイトたちにはそれぞれ抱える内面や事情もあり…新たな世界で心身共に表面化していく。 ※ご注意※ 初投稿、試作、マイペース進行となります。 作品名は今後改題する可能性があります。 世界観だけプロットがあり、話の方向性はその場で決まります。 旅に出るまで(序章)がすごく長いです。 他サイトでも同作を投稿しています。 更新頻度は1〜3日程度を目標にしています。

処理中です...