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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

654 双塔の街 と 第五迷宮について

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 双塔の街には他にダンジョンが存在しており、出現するモンスターのレベルが低い初級向けの二十階層ダンジョンと、平均レベル40のCランク以下向けの、五十階層の中級ダンジョンがある。
 これまでと同様であれば、第五迷宮フィフス・ラビリンスの最終到達地に君臨するボス・モンスターを倒すと、数日中に内部が崩壊して、新たな迷宮を作り出す。
 前回は第四迷宮フォース・ラビリンスのボス・モンスターを倒した十三日後に、現在の第五迷宮フィフス・ラビリンスになったのだと。
 その際に初級と中級の両ダンジョンが五日で消滅し、別の場所に同じ階層のダンジョンが出現すると、資料に記載されていた。

 双塔の街は冒険者だけではなく、商人も多く店を構えており、観光客も訪れる。
 帝都中心部に負けず劣らずの活気に満ちている。
 ただし荒くれ者や、ならず者といった者達も居るので、注意が必要とのことだ。
 衛兵も常駐しているが、それだけでは全てを取り締まるのは難しく、冒険者ギルドが大きく協力をしているので、双塔の街では結構な権限があるのだと。

 数年前まではギルド職員に賄賂を渡し、見逃してもらったなんて事もあったが、今は多分絶対ではないがない筈だと、サイネリアは自信なさげ言う。
 そして、ふと何もない空間を見上げながら語った。
 実際に何年か前に汚職事件があり、それをレオラが身分を隠して調査し、関わった者を力ずつで捕らえ解決したのだと。
 当時の事を思い出しながら、今度は疲れたような表情をサイネリアしていた。
 それがあってからは、レオラは双塔の街に殆んど行ってないらしい。
 
 以前にもレオラが冒険者として多く活動していた時の事を語った時も、やはりサイネリアは同じ様な表情をしていたなぁと、カズは苦笑いをしながら話を聞いた。
 遠い目をしたままのサイネリアを、こちらに引き戻すために話題を変える。
 
「ボス・モンスターでもない場所に、他とは違う不釣り合いな大きさのモンスターが現れたとかって聞いたことない?」

「大きなモンスターですか? 詳しくはわかりませんが、十階層ごと待ち受けるモンスターが居ると聞いた事があります。そのことでは?」

「十階層ごとに? 中ボス的なモンスターがいるのか」

「ちゅうボス?」

「気にしないで、こっちのことだから。たぶんそれじゃない」

「それですと、わたしでは、わかりかねます。双塔の街のギルドで聞いた方がよろしいか」

「そうするよ、ありがとう」

「迷宮で手に入れた素材は、双塔の街のギルドで買い取りをしていますので、そちらでお願いします。街にある商店でも素材によっては引き取っているので、買い取り額を安く見積もられないよう気をつけてください」

「わかった」

 双塔の街と第五迷宮フィフス・ラビリンスの情報を聞き終えたカズは、乗り合い馬車で川沿いの家に向かう。
 馬車に揺られながら、双塔の街に行く日時を考える。

 翌日はアレナリアと共に第五皇女アイリスの屋敷に行くので、双塔の街に向かうのは、その翌日になる。
 まだ訪れたことのない街なので、空間転移魔法ゲートを使って行くことはできない。
 フジに乗って行けば速いが、冒険者や商人が多いので大騒ぎになってしまう。
 周囲がどうなっているのか不明なので、近くまでともできない。
 なので行きは魔導列車に乗って行くことになる。

 移動に半日使い、着いてから宿探しと冒険者ギルドでの情報収集をして、早ければ翌日の朝から第五迷宮フィフス・ラビリンスに入る。
 確実にあるという情報がないので、今回探す期限を四日から六日と決める。
 見付からなかった場合は、帝都を出立した後に今度は四人行き、改めて探すかどうかを皆と相談して決めようと考えた。
 
 できるなら見つけ出して手に入れたいが、隠し部屋での情報は少し古く、サイネリアから教えてもらったが、これといって有益な情報はなかった。
 どうやって探したらいいものかと考えてる内に、乗り合い馬車は何時も乗り降りする場所に着いた。
 とりあえずは双塔の街に行き、冒険者ギルドで聞いてからだと、考えをそこで打ち切った。

 川沿いの家に着いたのは昼少し前。
 一階にアレナリアの姿がなかったので、まだ寝てるのだろうと、カズは昼食の用意をする。
 といっても、ビワが昼食分にもと作った今朝のスープを温める。
 あとはオムレツを二人分作り、焼き立てのパンを【アイテムボックス】から出す。
 昼食が出来たので、アレナリアを起こしに行こうかとしたところで、寝間着姿のアレナリアがキッチンにやって来た。

「お! 起きてきた。ちょうど昼の支度が出来たところだ」

「ふぁ~……少し寝すぎたわね。お腹空いた」

「じゃあ、食べるか」

 アレナリアが自分の席に座り、テーブルに置かれている皿の数が気になり、周囲を見てからリビングのソファーに目を向けた。

「あれ? レラは」

「ビワを送ってったら、レオラのところにアイリス様が来てて、暇ならローラ相手をしてほしいって頼まれて、ついて行った」

「よく一人で行ったわね」

「明日ローラに、魔力操作を教えに行くって言ったからかな」

「じゃあレラは泊まりなのね」

「ああ。あと俺は、明後日から双塔の街に行ってくる」

「それってレラの?」

「情報不足で、あるかどうかはわからないんだがな。向こうのギルドで聞いてみないと。とりあえず五日前後留守にする。その間頼むよ」

「そう。わかったわ」

 カズはアレナリアと昼食を取りながら、明日以降の予定を話す。
 緊急の場合は念話で連絡をと最後に付け加え、飲み物が入ったコップを残し、カズは食器を洗い片付ける。

「この後の予定は?」

「特に用事はないわね。本を読むくらいかしら」

「そうか(だったら…)」

「でも、少しは体を動かないと」

 コップに残ったイチゴのフルーツミルクを飲み干したアレナリアは、着替えるため二階の寝室に向かおうと席を立つ。
 キッチンからリビングを通り、階段に差し掛かるところで、カズは声を掛ける。

「アレナリア」

「ん? なぁ…に!」

 カズは振り返ろうとするアレナリアを引き寄せる。
 身長差からそのままでは顔の辺りになってしまうので、カズは少し屈んで腰から腕を回す。

「どどど、どーしたの!? 急に」

 カズはどぎまぎしているアレナリアの耳元で囁く。

「ずっと待たせてたからね。約束を果たそうと思って」
 
 カズの言っている意味を理解し、顔を赤くしたアレナリアが答える。

「こ、こんな明るい内から」

「嫌かい?」

「嫌じゃないけど……ちょっと恥ずかしい」

「じゃあ決まり。ビワを迎えに行く時間までは、アレナリアの望みを聞くよ」

 カズは言い終えると、アレナリアの耳の先を甘噛する。

「ちょ、ちょっとこんなところで……するなら部屋で」

「そうだな。連れて行くよ」

「ッ!」

 ひょいとアレナリアを横抱きお姫様抱っこして階段を上がり、アレナリアの寝室に入りベッドに座らせる。
 鼓動が早くなるのを感じ、先程よりも更に顔を赤らめたアレナリアは、カズにカーテンを閉めるよう頼む。
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