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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

652 改装作業 と 読書な日々

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 ◇◆◇◆◇


 朝食を済ませると、それぞれ支度を整え、ビワとアレナリアは先に出掛けた。
 ビワをレオラの屋敷に送り届けた後、アレナリアはその足で中央駅ターミナル・ステーションから魔導列車に乗り、隣駅近くに店を構えるブロンディ宝石商会のヒューケラの所に顔を出しに行った。
 カズは小屋の改装をやり掛けているのを、できるだけ進めようと、朝からレラを連れて、帝都南部の林にあるフジの住み家に空間転移魔法ゲートで来ていた。
 
 目的のアイテムが手に入った時の事を考え、魔力操作や魔力を維持させる時間を長くさせる訓練をさせようかとも思ったが、昨日思い詰めていた様だったので、レラにはフジと一緒に狩りに行くなり、遊ぶなり今日は好きにさせた。
 魔力に関する訓練なら、アイリスに仕える女性騎士とセイレーン人魚族のローラに教える時に、一緒にする事になっているので、無理にさせなくてもいいだろうとカズは考えた。

 日が高くなってきたところで、お腹が空いたとレラがやって来た。
 時間を見ると昼を随分と回っていたので、フジと一緒に昼食にした。
 午後になり静かだと思えば、レラはフジの柔らかい羽毛部分で横になり、一緒になって昼寝をしていた。
 フジの住み家を隠すようにしてあった板を外し、壁材として使う。
 トンカントンカンと、カズは改装作業に精を出す。
 外装はほぼ終わり、あとは内装作業に取り掛かる。
 台所兼居間と寝室は家具などを配置すればいいが、シャワー室とトイレの排水はなんとかしなければならない。
 必要な物を買いに行かないとならないので、この日の作業は終了にした。
 後日魔力の訓練で必要になるだろうと、余った時間紙と接着糊を使って紙風船を作った。
 手持ちの材料が無くなり、時刻を確認すると丁度いい時間だったので、レラと共にビワの迎えに向かう。

 今朝はアレナリアが送って行ったので、レオラに複製本を渡す事ができなかった。
 会えれば後日時間を取ってもらい、会えなければ誰かに言伝を頼む事にしようかと考えた。
 先ずは空間転移魔法ゲートで帝都の川沿いの家に戻る。
 そして乗り合い馬車で、レオラの屋敷方面へと向かう。

 ビワを迎えに行くとグラジオラスに会ったのでレオラへの伝言を頼み、乗り合い馬車で来た道を戻り川沿いの家に戻って来る。
 アレナリアは戻ってはなかった。
 この時間にいなければ、夕食はブロンディ親子と一緒に済ませて来る筈だと、ビワから聞いた。
 どうやら今朝送ってもらった時に、アレナリアから言われたようだ。
 今夜も本の続きを読みたいとビワは言ったので、シャワーで済ませるか? と聞いたが、仕事に出ていたので湯に浸かりたいと言うので、カズは浴槽に湯を溜める。
 カズも今日は改装作業で汗をかいたので、ビワがシャワーだけでいいと言ったら、後から浴槽に湯を張り浸かるつもりでいた。

「洗い物はしておくから、先に入ってきなよ。レラも」

「いつも私達が先でいいんですか? カズさんも疲れてるでしょ?」

「いいから。俺が最後なら、出た後で風呂場にクリーンをかければ、掃除の手間がはぶけるでしょ」

「一緒に入ればいいじゃん。ビワだってもうカズの裸見てるんだし、あちしはオリーブの家にいる時から、カズとは何度も一緒入ってたから気にしないよ」

 ビワは一緒に入る事に否定もしなければ肯定もしない、のが今までだった。

「い…一緒に入ります……?」

「え、あ……」

 食器をキッチンの流し場に運んでいるカズは、もじもじとしながら言うビワに、どう返答していいものかと言葉が詰まる。

「ほ、ほら。先に洗い物を済ませたいから、また今度にするよ」

「そう…ですか」

 カズのひよった返答に、ビワはちょっと残念そうだった。
 レラは「はぁ~」と息を吐き、これは自分が積極的にいかなければ、ビワとの二度目三度目は、まだまだ先になってしまうと内心奮起する。
 アレナリアが本性を現せば、毎夜毎夜カズの寝込みを襲うに違いないと確信していた。
 自分が相手をできない分は、アレナリアよりもビワに積極的にカズの相手をして、早く子供を作ってほしいと考えていた。
 妊娠と避妊についてアレナリアとビワから話があった時に、レラも聞いていた筈だが、カズが一人の女性として受け止めてくれた事で、そんな話があった事を忘れてしまったのだろう。
 実際にその時のレラでは、カズとの間に子供を作るのは流石に無理だったので、聞いていたとしても、ちゃんと話の内容までは覚えていないのかも知れない。

 バスタオルと着替えを持ち、二人は風呂場に移動した。
 カズは何故断ってしまったんだ、と少し後悔しながら、夕食で使った食器を洗い、乾いた布巾で水気を取り、食器棚に片付けていく。
 もうビワとは一線を越えて、夫婦になったのだから、何も遠慮する事はない。
 分かってはいるが、内心でアレナリアとの事を済ませなければと、引っ掛かってる部分があった。
 それにレラの事も加わっきたので、冷静に判断しているつもりでも、一夫多妻という状況に、まだ全然慣れてなかった。
 四人で一緒に暮らしている状況は、オリーブ王国を出立してから何も変わってないのだから、焦らず時間を掛けて幸せになっていけばいいと、カズは自分に言い聞かせた。
 ただ入籍や結婚式について、二人から何も言ってこないので、この世界ではどうなんだろうと考えないこともなかった。
 どちらにしても、帝都に永住すると決めているわけでもなく、それにもうすぐ東に向けて旅に出る。
 アレナリアとビワはそれを理解してるから言ってこないんだろうか? と、カズは考えた。

 ビワとレラが風呂から出てくる少し前に、アレナリアが帰宅する。
 疲れているだろうと、カズはアレナリアに先に風呂に入ってくるといいと言い、自分は何時ものように最後に入り、風呂場に〈クリーン〉を使用してから出る。
 続きを早く読みたいらしく、アレナリアは頭にタオルを巻きつけて、しっかし髪を乾かす前に、いそいそと自分の寝室に上がっていった。
 この日もそれぞれ読書してから就寝する。


 ◇◆◇◆◇


 昨夜遅くまで複製本を読んでいたらしく、最後に起きてきたのはレラではなくアレナリア。
 水属性の魔力適性が高ければ水を使っての、火属性の魔力適性が高ければ火を、同様に土属性なら土や石を、風属性なら空気を使った魔力操作の訓練方法が載っていたので、ローラに教えるには最適だと読み耽っていたようだ。
 レラと共に仲がよくなったアレナリアは、ローラの為に色々と考えていたらしい。

 教えるのは冒険者や騎士などではなく、一般人と然程からわらない相手。
 今まで自発的に多くの魔力を使うような事はなかったので、冒険者などと同じ様な教え方ではうまくいかないだろうとアレナリアは考え、アイリスにローラの魔力操作を頼まれてから、別の方法を模索していた。
 隠し部屋で魔法に関する本が置かれている書棚で、色々と目を通していたら、その本を見付けたとアレナリアは言う。

「自分のためだけじゃなかったのか(禁書とか聞いてたからな)」

「最初はそうだったんだけど、たまたま目についたもんでね。とりあえずこの方法があってるか、一度試してもらおうと思うの。だから明日、ローラを訪ねてアイリス様の屋敷に行くから、カズも一緒に来て。何人かの騎士との約束もあるし」

「ああ、飛翔魔法フライのことか。わかった(ちょうど紙風船も作ったし、使えるな)」

「じゃあお願いね。私は、ふぁ~…お昼頃まで少し寝るわ」

 そう言うとアレナリアは、フルーツミルクだけで朝食済ませ、二階の寝室に戻っていった。

 アレナリアが二度寝してしまったので、カズはレラを連れて、ビワをレオラの屋敷に送って行く。
 ついでに冒険者ギルド本部に寄って、双塔の街と第五迷宮フィフス・ラビリンスについて情報収集しようと思った。
 サイネリアにも顔を出してくれと言われているので、丁度いいとも考えた。
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