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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
634 危うい冒険者達への助力
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フジを降下させて三人の冒険者を囲む昆虫型植物系モンスターのナナフシ・プラント五体に〈マルチプル・ロックオン〉で狙い、倒さない程度の威力の〈エアーショット〉を放ち、フジに指示して再び上昇する。
ダメージを受けたナナフシ・プラントは擬態のスキルが解けて、三人の冒険者にも分かるよう姿を現した。
五体のナナフシ・プラントはレベル18からレベル26と、三人のCランク冒険者なら倒せないレベルではない。
冷静に対処すれば、問題なく倒せる筈だ。
ただこの短い間の行動を見ていると、気配感知や魔力探知は苦手だと感じた。
カズもトレントと戦った事があり、確かに擬態のスキルは厄介だったと思い出した。
レベル的に倒せるモンスターだとしても、スキルや魔法一つ呆気なく殺られてしまう事もある。
例えモンスターのスキルを知っていたとしても、実際に対峙するまでは、どうなるか分からない。
結局は実戦経験がものをいう。
倒してしまった方が早くて楽だが、今回はそれを理解させる為に、カズはあえて倒さずナナフシ・プラントの姿を露わにさせる手段を取った。
サイネリアに頼まれた事もあったが、このようにしたのは単なる気まぐれだと、カズ自身この時はそう思っていた。
姿を捉える事の出来たナナフシ・プラントを三人の冒険者が倒すと、発生していた霧が緑色に変わり急激に膨れ上がり、三人の冒険者を包む。
緑色の霧の中では十数センチ先も見る事ができない。
五体のナナフシ・プラントを倒すために離れていた三人の冒険者は、互いの正確な位置が把握できず分断させられた。
声を頼りに集まろうとするが、緑色の霧を発生させたモンスターの接近に警戒する事に意識を集中させ、中々仲間と合流できないでいた。
上空から見ていたカズも、急激に膨れ上がった緑色の霧で、三人の冒険者を見失う。
すぐに【マップ】を確認して、三人の冒険者とモンスターの位置を特定する。
次に緑色の霧を《分析》して調べる。
その結果緑色の霧は、呼吸が苦しくなる軽度な毒だと判明した。
効果が分かるとフジに指示して急降下させ、大きく羽ばたかせた翼の風で一気に緑色の霧を吹き飛ばす。
姿を現した三人の冒険者は膝をつき、苦しそうに息を荒くしていた。
カズはフジに指示をしてから飛び下り、三人の冒険者を一ヶ所に集め、軽度な毒になら効果ある〈キュア〉を使用。
緑色の毒霧を吹き飛ばされたにも関わらず、続けて放出しているマッシュ・トレントという名の植物系モンスターを、フジが文字通り鷲掴みをし、ブチブチと絡んでいる枝や蔓を引き千切り地上から引き離して、上空へと引っ張り上げて行く。
地上から300メートル程の上空で、フジは掴んでいたマッシュ・トレントを離し、即座に距離を取る。
落下を始めたマッシュ・トレントに、カズは威力を調整した〈ファイアーストーム〉を上空に放つ。
炎の渦がマッシュ・トレントを包み込む。
細い蔓とキノコは瞬時に燃え尽き、太い所も地上に落下する前に炭になる。
緑色の霧ならぬ、周囲に飛んでいた胞子も炎の渦に引き込まれ、完全に燃え尽きた。
時間にして一分程で炎の渦は消え、マッシュ・トレントが灰や炭となって落ちて来る。
呼吸が正常に戻りつつある三人の冒険者は、目の前の光景に唖然として言葉が出なかった。
それどころか急に現れて自分達を助けてくれたカズに、三人の冒険者は警戒の色を隠せなかった。
ここまでするつもりはなかったカズは気不味く、できればフジに乗って去りたいと思っていた。
しかしそれでは、後々サイネリアから文句を言われるのは明らかだったので、そんな事はしない。
なのでカズは警戒を解くため簡単な自己紹介をして、帝都のギルド本部から高原の調査に来た事を伝えた。
若干の警戒はあったが、敵ではないと認識してくれた。
三人の冒険者から話を聞くと、やはりカズが頼まれた塩漬けになっていた依頼を受けて来たようだった。
高原調査の重複依頼と、ギルドからの追加報酬を依頼書で見て、六日掛けて来たんだと。
Cランクの男二人と女一人の三人パーティーで、これがパーティーランクCに上がって最初の依頼なのだと。
遠いだけで簡単な依頼だと思っていたらしい。
植物系のモンスターが居る可能性があると聞いていたのを忘れ、ただの高原調査だと思い足を踏み入れ、油断した結果がこうなった。
説教とまではいかないが、助けに入らなければ、今の戦いで死んでいたという事を理解さた。
先頭で戦っていた男の冒険者が、一緒に手伝ってくれないのかと言ってきた。
このまま手伝っては、三人に支払われる報酬は半減し、死ぬ可能性が高かった事から評価は低くなるとカズは伝えた。
報酬が半減すると聞いた三人は、高原の調査は自分達でだけでやると言ってきた。
モンスターの反応はもうなくなったので、あとは任せても大丈夫だろうと、カズは高原調査の依頼を三人の冒険者に託してフジを呼び寄せた。
毒霧の効果でフジの存在に気付いてなかった三人の冒険者は、カズが呼んだフジを見て青ざめた。
今まで自分達が戦っていたモンスターとは比べ物にならないと瞬時に理解した。
三人の冒険者は、ここで初めて危険度Aランクのモンスターを目の当たりにし、それを難なく従わせるカズを、今になって怖くなった。
三人の冒険者はフジのモンスターランクが分からずとも、ただただ恐ろしいとは感じた。
カズはフジが降下して来ると、フジの背に乗り大峡谷へと飛び立つ。
倒したモンスターの素材等は、先に依頼を受けて来たのだから好きにして良いと言って。
大峡谷に向かいながら、カズはオリーブ王国でパーティーを組んだ三人の新人冒険者を思い出した。
高原に来ていた三人組の冒険者パーティーを、鍛えるように手を貸したのは、オリーブ王国で組んだ新人冒険者と重ねていたのかも知れない。
そしてカズとフジが飛び去ってから約三十分、三人の冒険者はまだ腰が抜けて、その場から動く事はできなかった。
だが何とか冷静さを取り戻し、周囲の状況に目を向ける事が出来るようになった。
自分達が倒したナナフシ・プラントの残骸はそのまま残っていたので、回収して素材として売る事は可能だった。
ただマッシュ・トレントの方はほぼ燃え尽き、素材として回収は不可能だった。
だが辛うじて魔核だけは傷が入ってるものの、回収は出来そうだった。
おぼろげではあるが、自分達に高原調査依頼を任せる代わりに、モンスターの素材は好きにして良いと言われたんだと、三人の冒険者は互いに顔を見合わせ、聞き違いでなかったと相槌を打ち、炭となったマッシュ・トレントから魔石を回収した。
三人の冒険者は休息を取りつつ、より良いを素材選んで回収し、最初に依頼を出した一番近い村へと、一旦休息するため一日掛けて戻った。
高原調査の依頼を受けて来た三人のCランク冒険者は二日村で休息を取り、今度は慎重に高原へと調査の続きに戻る。
死への恐怖を感じた高原に再び戻った三人の冒険者は、ビクビクしながらも数日を掛けて高原を調べ終え、所属する街の冒険者ギルドへと戻り報告する。
回収したマッシュ・トレントのコアを買い取りに出した時点で、ギルド職員からおかしいと感付かれるのは明らかだったので、三人の冒険者は見聞きした出来事を全て報告した。
この時既にカズは依頼を全て終えて報告を済ませていたので、帝都の冒険者ギルド本部から北西部の高原に現れたモンスターの情報等が、三人組の冒険者パーティーが所属するギルドに入っていた。
《 時はカズが高原を離れてから少し後 》
高原に依頼で訪れていた三人の冒険者が死地の危険を脱して、一旦の休息を得るために高原を離れて近くの村に向かって移動していた。
その頃、フジに乗り高原を飛び立ったカズは、ワイバーンが縄張りを争いをしていると聞いた大峡谷沿い付近に来ていた。
高原でマッシュ・トレントを地上から引き離しただけのフジは、不満の声を上げていた。
何時もの狩りではなく、討伐をするとカズから聞いていたので、弱すぎる相手に肩透かしをくらって物足りない、と。
これはワイバーンを討伐する際は、フジに任せた方がいいかと、カズは考えた。
ダメージを受けたナナフシ・プラントは擬態のスキルが解けて、三人の冒険者にも分かるよう姿を現した。
五体のナナフシ・プラントはレベル18からレベル26と、三人のCランク冒険者なら倒せないレベルではない。
冷静に対処すれば、問題なく倒せる筈だ。
ただこの短い間の行動を見ていると、気配感知や魔力探知は苦手だと感じた。
カズもトレントと戦った事があり、確かに擬態のスキルは厄介だったと思い出した。
レベル的に倒せるモンスターだとしても、スキルや魔法一つ呆気なく殺られてしまう事もある。
例えモンスターのスキルを知っていたとしても、実際に対峙するまでは、どうなるか分からない。
結局は実戦経験がものをいう。
倒してしまった方が早くて楽だが、今回はそれを理解させる為に、カズはあえて倒さずナナフシ・プラントの姿を露わにさせる手段を取った。
サイネリアに頼まれた事もあったが、このようにしたのは単なる気まぐれだと、カズ自身この時はそう思っていた。
姿を捉える事の出来たナナフシ・プラントを三人の冒険者が倒すと、発生していた霧が緑色に変わり急激に膨れ上がり、三人の冒険者を包む。
緑色の霧の中では十数センチ先も見る事ができない。
五体のナナフシ・プラントを倒すために離れていた三人の冒険者は、互いの正確な位置が把握できず分断させられた。
声を頼りに集まろうとするが、緑色の霧を発生させたモンスターの接近に警戒する事に意識を集中させ、中々仲間と合流できないでいた。
上空から見ていたカズも、急激に膨れ上がった緑色の霧で、三人の冒険者を見失う。
すぐに【マップ】を確認して、三人の冒険者とモンスターの位置を特定する。
次に緑色の霧を《分析》して調べる。
その結果緑色の霧は、呼吸が苦しくなる軽度な毒だと判明した。
効果が分かるとフジに指示して急降下させ、大きく羽ばたかせた翼の風で一気に緑色の霧を吹き飛ばす。
姿を現した三人の冒険者は膝をつき、苦しそうに息を荒くしていた。
カズはフジに指示をしてから飛び下り、三人の冒険者を一ヶ所に集め、軽度な毒になら効果ある〈キュア〉を使用。
緑色の毒霧を吹き飛ばされたにも関わらず、続けて放出しているマッシュ・トレントという名の植物系モンスターを、フジが文字通り鷲掴みをし、ブチブチと絡んでいる枝や蔓を引き千切り地上から引き離して、上空へと引っ張り上げて行く。
地上から300メートル程の上空で、フジは掴んでいたマッシュ・トレントを離し、即座に距離を取る。
落下を始めたマッシュ・トレントに、カズは威力を調整した〈ファイアーストーム〉を上空に放つ。
炎の渦がマッシュ・トレントを包み込む。
細い蔓とキノコは瞬時に燃え尽き、太い所も地上に落下する前に炭になる。
緑色の霧ならぬ、周囲に飛んでいた胞子も炎の渦に引き込まれ、完全に燃え尽きた。
時間にして一分程で炎の渦は消え、マッシュ・トレントが灰や炭となって落ちて来る。
呼吸が正常に戻りつつある三人の冒険者は、目の前の光景に唖然として言葉が出なかった。
それどころか急に現れて自分達を助けてくれたカズに、三人の冒険者は警戒の色を隠せなかった。
ここまでするつもりはなかったカズは気不味く、できればフジに乗って去りたいと思っていた。
しかしそれでは、後々サイネリアから文句を言われるのは明らかだったので、そんな事はしない。
なのでカズは警戒を解くため簡単な自己紹介をして、帝都のギルド本部から高原の調査に来た事を伝えた。
若干の警戒はあったが、敵ではないと認識してくれた。
三人の冒険者から話を聞くと、やはりカズが頼まれた塩漬けになっていた依頼を受けて来たようだった。
高原調査の重複依頼と、ギルドからの追加報酬を依頼書で見て、六日掛けて来たんだと。
Cランクの男二人と女一人の三人パーティーで、これがパーティーランクCに上がって最初の依頼なのだと。
遠いだけで簡単な依頼だと思っていたらしい。
植物系のモンスターが居る可能性があると聞いていたのを忘れ、ただの高原調査だと思い足を踏み入れ、油断した結果がこうなった。
説教とまではいかないが、助けに入らなければ、今の戦いで死んでいたという事を理解さた。
先頭で戦っていた男の冒険者が、一緒に手伝ってくれないのかと言ってきた。
このまま手伝っては、三人に支払われる報酬は半減し、死ぬ可能性が高かった事から評価は低くなるとカズは伝えた。
報酬が半減すると聞いた三人は、高原の調査は自分達でだけでやると言ってきた。
モンスターの反応はもうなくなったので、あとは任せても大丈夫だろうと、カズは高原調査の依頼を三人の冒険者に託してフジを呼び寄せた。
毒霧の効果でフジの存在に気付いてなかった三人の冒険者は、カズが呼んだフジを見て青ざめた。
今まで自分達が戦っていたモンスターとは比べ物にならないと瞬時に理解した。
三人の冒険者は、ここで初めて危険度Aランクのモンスターを目の当たりにし、それを難なく従わせるカズを、今になって怖くなった。
三人の冒険者はフジのモンスターランクが分からずとも、ただただ恐ろしいとは感じた。
カズはフジが降下して来ると、フジの背に乗り大峡谷へと飛び立つ。
倒したモンスターの素材等は、先に依頼を受けて来たのだから好きにして良いと言って。
大峡谷に向かいながら、カズはオリーブ王国でパーティーを組んだ三人の新人冒険者を思い出した。
高原に来ていた三人組の冒険者パーティーを、鍛えるように手を貸したのは、オリーブ王国で組んだ新人冒険者と重ねていたのかも知れない。
そしてカズとフジが飛び去ってから約三十分、三人の冒険者はまだ腰が抜けて、その場から動く事はできなかった。
だが何とか冷静さを取り戻し、周囲の状況に目を向ける事が出来るようになった。
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ただマッシュ・トレントの方はほぼ燃え尽き、素材として回収は不可能だった。
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この時既にカズは依頼を全て終えて報告を済ませていたので、帝都の冒険者ギルド本部から北西部の高原に現れたモンスターの情報等が、三人組の冒険者パーティーが所属するギルドに入っていた。
《 時はカズが高原を離れてから少し後 》
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高原でマッシュ・トレントを地上から引き離しただけのフジは、不満の声を上げていた。
何時もの狩りではなく、討伐をするとカズから聞いていたので、弱すぎる相手に肩透かしをくらって物足りない、と。
これはワイバーンを討伐する際は、フジに任せた方がいいかと、カズは考えた。
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