人生初めての旅先が異世界でした!? ~ 元の世界へ帰る方法探して異世界めぐり、家に帰るまでが旅行です。~(仮)

葵セナ

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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

631 ギルド本部への顔出し と 三つの依頼

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 三人の状態を見たカズは、買って来たハチミツたっぷりのフルーツタルトは翌日に回す事にした。

「先にビワを部屋まで連れてくが、二人は大丈夫か?」

「平気。少し外で涼んでから部屋に寝るわ」

「あちしも大丈夫び」

 アレナリアは裏庭に涼みに出て、レラはリビングのソファーに移る。
 カズはビワの手を取り、階段を上がり二階の寝室に連れて行く。

「片付けは俺がやっておくから」

「ありがとう。カズさん」

「あの調子なら、アレナリアとレラも明日起きるのは遅いだろうから、たまにはビワも、早起きしないで寝てるといい」

「は…い……」

 返事をしたビワは、すやすやと寝てしまった。
 ビワに布団を掛けて寝室を出て、一階に戻り夕食の後片付けをする。
 残った料理はふたのある容器に移し替えて【アイテムボックス】に入れた。
 酒の入っていたビンは水洗いして一ヶ所に集め、使った食器を洗って拭いたら棚に戻す。
 一通り片付けを終えて、裏庭に出たアレナリアの様子を見に行くと、長椅子の上で横になり寝てしまっていた。
 起きそうにないので、抱き抱えてアレナリアの寝室に連れて行きベッドに寝かせる。
 レラもソファーで寝ていたので、アレナリアの次に連れて行こうとしたら目を覚ました。

「起きたのなら自分でベッドに行けるな」

「アレナリアとビワは?」

「二人とも寝たよ。レラも結構飲んでたろ。二日酔いにならないように、水飲んで寝ろよ」

「……」

 レラは黙ったままソファーから動こうとしない。
 寝てしまったのかと、カズは正面に回って確かめるが、寝てはいなかった。
 どうしたのかと考え、話が途中だったなと思い出し、レラの隣に座る。

「そういえばレラは、夕飯の前に一時間くらい寝てたっけな」

「うん」

「話の続きをするか? アレナリアは寝てるから、邪魔は入らないだろ」

「うん」

「それで、アーティファクトが欲しいとか言ったが、どういったのなんだ? 大きさとか形とか」

「どんなのかは知らない。ただ、この国にあるって」

「知らないが、帝国にある? 余計にわからなくなる。どこで知ったんだ? レオラに聞いたのか?」

「隠し部屋のに聞いたの」

「ああ、知性ある本インテリジェンス・ブックにか。そういえば、何か聞いてたんだっけ。あの時は秘密とか言ってたが、話してくれるのか?」

「……」

「そうか。別に無理にとは言わない。明日その隠し部屋に行くから、正確な場所がわかるなら、もう一度聞いてみたらどうだ」

「そうする」

「ならその時一緒に俺が居て聞いてていいか、決めておいてくれ。話せないのか話したくないのかはわからないが、どんなアーティファクトかわからないと、探しようがないからな(ビワは知ってるはずだが、こうしてレラが話してきたんだから、こっそり聞くのはやめておこう)」

「…うん、わかった。あちし寝るよ」

「ああ」

 せっかくカズと二人で話せる時間が取れたレラだったが、結局肝心な効果については教えてこなかった。
 二度大事な話を遮られ、話す気分ではなくなってしまったのだろうか?
 カズは気になり、その事をソファーで考えていたら、何時の間にか寝てしまった。


 ◇◆◇◆◇


 この日最初に目を覚ましたのは、昨夜最後に寝たカズ。
 流石に酔って寝てしまう程に酒を飲んでは、流石のビワも何時も通り早起きはしてこない。(カズが早起きしなくていいと言ったのもあるだろうが)
 翌日休みなのを忘れて、昼近くに起きて「寝過ぎちゃった!」なんて慌てるビワの姿を、そんな事はないだろうが、ちょっと見てみたいとカズは思ってしまった。

 だが冒険者ギルド本部というか、サイネリアに頼み事があるかどうかを聞きに顔を出し行くので、ビワが起きて来るまで待つことはしない。
 カズにはこれから先、いつでも見れるからという余裕からだ。
 今日もフジの所で小屋の改装をする予定があるので、三人が寝てる間に冒険者ギルドへの顔出しという約束を果たしに向かう。

 帝都の冒険者ギルド本部といえども、低ランク向けの依頼はある。
 大抵は一日か数時間程度で終わるような簡単な依頼が多いが、危険を伴うBランク以上の依頼も地方の冒険者ギルドから回って来る事も少なくはない。
 冒険者ギルド本部に在籍する冒険者に直接依頼する事もあるが、受ける者は少ない。
 受けられなかった高ランク向けの依頼は、依頼を出された冒険者ギルド以外の地方冒険者ギルドに、冒険者ギルド本部から連絡をして、受けられる冒険者を探して報酬の上乗せで受けてもらう事が多い。
 だがどうしても見付からない事もあり、そういった依頼は長い間手付かずのまま放置せれるのが大概だ。

 それがカズが来た事で、そういった高ランクの塩漬け依頼が、月に数件片付けられている。
 その事から頼み事を無下にする事はないだろうとカズ自身も分かっており、サイネリアだけではなくギルド本部の上層部もその事は理解しており、多少無理な事でも頼めば通るようになっていた。
 それに表向きはレオラ帝国第六皇女専属の冒険者となっているので、他の高ランク冒険者と同等に扱う事は出来ない特別な存在になっていた。
 当のカズ本人は、そんな事になってるなど気付いてはない。
 全ては帝国第六皇女レオラがあっての事だろうと。

 依頼を探してるわけではないので、何時も来るのは空いてる昼前くらい。
 今日は予定があるので、朝から来ている。
 地方の冒険者ギルドに比べ混み合ってはないが、それでも報酬の良い依頼を探して受けようと、Bランク以下の冒険者が十数組来ていた。
 Aランク以上の冒険者は、指名依頼を受ける事が殆どなので、受けている依頼でもなければ、朝から来るような事はない。

 受付で後輩に仕事を教えながら働くサイネリアの手が空くまで、カズは壁際に立って周囲を観察しながら暫く待つ。
 十分、二十分と時間が過ぎ、三十分が経とうとしたところで、サイネリアが受付を離れてカズの所にやって来た。

「朝から来られるなんて珍しくですね。ここでなくても、いつもの個室で待っていてもらっても、よろしかったんですよ」

「久しぶりに朝から来たんで、ちょっと他の冒険者を見ておきたかったんだ。それと昼頃から用事があるんで、今日はこの時間に来たんだ。受付の方はいいの?」

「少し空きましたので、あとは後輩に任せます。サポートしてくれる同僚もいますので大丈夫です。ではいつもの個室に行っていてください。わたしもすぐに向かいます」

「わかった」

 カズは階段を上がり、依頼などの話をする時に使う個室に移動した。
 五分程で何やら書類を挟んだファイルを持って、サイネリアが個室に入って来た。
 受けて欲しいと、依頼が書かれた紙をファイルから出して机の上に並べた。

 一つ目は大峡谷沿いの街フォース・キャニオンから北に続く道に、ワイバーンが多数出現するようになり、通行が制限されて物資の運搬が困難になったので、その討伐。
 少数の群れを率いるリーダーが対立して、縄張り争いをしているのが原因だと考えられている。

 二つ目は素材の大量調達。
 場所は以前にカズが行った、資源と潤沢のダンジョン。
 魔力を多く含んだ鉱石と、モンスターから取れる魔石が欲しいとの事で、五階層に潜って多くの魔核コアを回収してきて欲しいのだと。

 三つ目は北西部の高原での植物調査と対処。
 街からかなり離れている場所のために、受ける冒険者がずっといなく、現状危険がないからと長い間放置されていたが、ここに来て被害者が出てしまったから、ここギルド本部に依頼が回って来た。
 そこで突然変異した植物がモンスター化したのか、ただ植物が何かしらの影響で急成長しただけなのか調べて、急ぎ対処しなければならなくなった。

「カズさんには、この三つの依頼を受けてもらいたいのです」

「俺もダンジョンで食材を採取したかったから、素材の調達は受けよう。ワイバーンの方も近くだから構わない」

「ありがとうございます。もう一つの依頼もお願いします」

「北西部の高原か。行ったことないからなぁ。被害者が出たって書いてあるけど、何があったの?」

「ちょっと待ってください」

 サイネリは持って来たファイルから、北西部高原についての資料を抜き出す。
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