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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

622 追加で異空間収納バッグの作成

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 今回渡したポーチには、アイリスと常に一緒に居る侍女の魔力を記録する。
 魔力を記録する時に、少しアイリスの手に触れると、侍女がムスッとした。
 使用者制限を付けるのに必要だと説明してあったが、アイリスがふざけて「ぁ…」と声を出したのが原因。
 すぐに「うふふ、冗談ですよ。そんな顔しないであげて」と、アイリスが侍女を宥める。
 親しくなった人物がこのような戯れ事をして、カズがその周囲から反感を買うのがお決まりになっていた。
 このような事があると、その度に勘弁してほしいと、カズは毎回思っていた。

 カミーリアと共に買い物に行く日を決め、カズはアイリスの屋敷を出て、フジの待つ場所に戻った。
 アイリスはフジが来ているのを認識しているにも関わらず、空中散歩を要求してこなかったのは、異空間収納アイテムポケットを付与した物を要求してきたからだろうと思われた。

 フジに乗り帝都南部の林に戻り、少しだけレラに風属性の魔法を練習させて、夕方ビワを迎えに行く。
 川沿いの家に着くと、アレナリアは既に戻って来ていた。
 夕食を取りながら、互いに一日の出来事を話した。


 《 二日後 》


 約束した日となり、カミーリアが川沿いの家にやって来た。
 スカートは履いてないが、女性っぽい服装をしていた。
 耳にはカズが以前にプレゼントした、真珠のイヤリングが揺れていた。
 ただ買い物に行く事にはなっているが、デートをしてほしいと言われているわけではないので、買い物にはアレナリアとレラも一緒だ。
 カミーリアは少し残念そうな表情を浮かべたのを見て、アイリスに何か言われてから来たのだろうかと思えた。
 アイリスがどんな入れ知恵をしたか知らないが、カミーリアとの関係はハッキリ言ってあるので、アイリスが思い描くような事にはならない。

 四人は乗り合い馬車でデパートが隣接する通りに行き、アイテムポケットを付与する品物を見て回る。
 使用するのは付き添いの使用人や女性騎士が使うので、両手が空き大き過ぎないショルダーバッグタイプが好ましいとのことだった。
 色々と選んではカミーリアに見せた。
 好みの品物を見つけても、付与する時の魔力に対して、強度に欠けるとカズが判断したら諦めて別を探す。
 アイリスから聞いてきた感じのショルダーバッグでは、見た目が可愛らしい物が多く、アイテムポケットを付与出来たとしても、容量は要望よりもかなり少なくなってしまう。
 思っていたよりも時間が掛かり、午前中では一品しか買えてない。
 うまく付与でにない事を考えると、最低でも三品は必要なので、色々な店を見て回りあと二品を探す。

 二時間探して残り二品を決め、買い物を終わらせてカズ達は川沿いの家に戻る。
 三日後に買った品を持って行くと伝えて、カミーリアは別の乗り合い馬車でアイリスの屋敷へと帰って行った。

 夕食後カズは買った品々に、異空間収納アイテムポケットを慎重に付与する。
 前回は手軽な値段の品を選んで買ったが、今回の品はアイリスの希望でカミーリアが判断して買った。
 品物の代金もカミーリアが払ったので、慎重に付与しなければならない。
 破損して使えなくなるとは伝えてあるが、できることなら付与が失敗しても、品物は使える状態で渡したいと考えた。

 最初に選んだショルダーバッグは、種類も様々ある一般的な獣の革製品。
 レオラに渡したリュックと同じ様な素材なので、強度としては大丈夫だが、こちらの方が少し小さいので、比べると容量もこちらの方が少ないと思う。

 次に選んだショルダーバッグは、こちらは叩いて薄く伸ばし柔らかくした蛇のモンスターの革と、獣の革を二枚重ねにして作られた品物。
 全体的に丸みを帯びた形をしており、最初に選んだショルダーバッグよりは、可愛らしいデザインと言えるだろう。
 使用人や女性騎士が使用する分には十分だと思える。

 残るショルダーバッグは、布製で革を使った物に比べると軽くて柔らかく、花や小鳥などの刺繍ししゅうが入っており、アイリスが求める可愛らしい品物に一番近いが、前二品と比べ強度は流石に劣る。

 先ずは一般的な革製品のショルダーバッグに、ゆっくりと少しずつ魔力を込め異空間収納アイテムポケットを付与する。
 破損する事なく付与ができ、最大容量は約300キロで固定した。

 次に蛇のモンスターと獣の革を二種類使ったショルダーバッグに取り掛かる。
 こちらも破損する事なく成功した。
 モンスターの革を使ってるだけあって、最初に付与した革のショルダーバッグと同じくらいの大きさにも関わらず、容量はこちらの方が多い。
 最大容量は約480キロで固定した。

 最後は刺繍ししゅうが入った布製のショルダーバッグを手に取り魔力を込めていく。
 六割程度まで魔力を込めたところで、一部の糸がほつれたのを発見したので、魔力を込めるのを止めた。
 布製品では強度が足りず、考えていた通り革製品に比べて、収納する容量が少なくなってしまうので、付与するのを中止した。

 込めた魔力は自然と抜けるので、下手に抜こうとはせずそのままにした。
 無理に込めた魔力を抜こうとすれば、ショルダーバッグ自体が更に破損する可能性があったからだ。

 前回付与した時も鑑定しており、容量を確かめて実際に使用して、使い物にならなくなった物もあるので、今回は込めた八割までしか容量が使えないようにイメージして付与した。
 これならば、設定した最大容量まで収納しても、本体に影響はでない筈だ。
 あとは実際に使用して、鑑定した通りの容量で使えるか確認するだけ。
 この日はここまでにして、後片付けをして風呂に入り就寝した。


 翌日は革製品のショルダーバッグをアレナリアの預け、レラと共に家にある物を出し入れして使用してもらう。
 カズは革を二種類使って作られたショルダーバッグを持ってフジの所に行き、狩った獲物を限界まで収納して使用出来るかを確認する。
 その翌日は付与したショルダーバッグを入れ替えて、収納に問題ないかを確認する。
 どちらも問題なく使用出来ると確認が取れたので、付与しなかったショルダーバッグのほつれたところを、ビワに頼んで直してもらった。


 《 三日後 》


 ビワをレオラの屋敷に送って行くと「グラジオラスに剣の訓練を見させるからレラは置いていけ」と、レオラが言ったので任せる事にした。
 レラは嫌そうにしてたが、アスターとガザニアはまだ戻って来てないので、教えるのはグラジオラスだけだと聞き、それならいいかなと承諾したので、レラ専用のナイフを渡してきた。

 レオラの屋敷を後にして、カズはアレナリアと二人でアイリスの屋敷に向かう。
 久しぶりにアレナリアと二人だけになったので、あれこれと雑談しながらタクシー辻馬車に揺られて行く。

 アレナリアも何度となくアイリスに仕える女性騎士達に、魔力操作の指導をしに行っていたので、第五皇女の屋敷に訪問するのも、慣れたものになっていた。
 アイリスもレオラと同様に、午前中は執務室で書類に目を通し、来客あれば会って会談するなど、公務に明け暮れる。
 カズ達は友人として扱われているので、会うのはアイリスの公務が終わった後になっている。
 アレナリアが女性騎士達に魔力操作の指導に行った時は、アイリスに会ったりする事は特になく、指導が終われば帰宅していた。
 たまに様子を見に来る事はあったらしいが、邪魔にならないようにと、挨拶程度の会話しかしなかったと言う。

 アイリスの屋敷がある池の畔に近付いた所でタクシー辻馬車を降り、あとは歩いて向かう。
 昼ではまだ二時間以上はあるので、着いてもアイリスと会うまで待つ事になる。
 その間どうしようかと、アレナリアと相談している内に着いてしまった。
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