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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

621 レオラの代理にお礼の品を

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 これ以上話していたら、墓穴を掘って根掘り葉掘り聞かれかねないと、カズは話題を変える事にする。

「それよりも、レオラ様からギルドに来るように言われたけど、俺に何か依頼でもあるの?」

「地下空間の調査を、カズさんにもやってもらおうと考えてます。レオラ様には気が進まないとうかがいましたが」

「さして危険もないようなら、他の冒険者に依頼した方が経験になっていいでしょ」

「レオラ様にも言われました。カズさんばかりに頼んでは、他の冒険者が育たないと。未知だからこそ、若い冒険者が率先して行かなければならないと」

「それでいいんじゃないか(よく言ったレオラ)」

「なので三人から五人ほどのCランクパーティーを、二組か三組で構成して依頼を受けてもらってます。現在ではまだ、地下空間への入口を見つけたと報告はないようです」

「気長に待てばいいでしょ。俺の出番はないよ」

「それは今のところです。あまりにも行き詰まるようであれば、カズさんにも参加してもらいます。実際に地下空間への出入口を見つけてるんですから」

「俺じゃなくてレオラ様がね」

「レオラ様に動いてもらう訳にはいきません。他の冒険者が萎縮してしまいます。なので一緒に行かれたカズさんが適任なんです。ちなみに一緒に行かれた騎士の方は、冒険者ではないのでお願いはできません」

「探してる冒険者達が、行き詰まらないのを祈っておくよ」

「とりあえず、お伝えしました」

「頭の片隅にでも置いておくよ。他に用事はある?」

「ない事もないのですが、情報不足で未確認なので、まだ依頼を出すまでには」

「そう」

「直接依頼を出す事もあるので、これからは五日に一度はギルドに顔を出してください。ずっと来なかったので、どうしたのかと心配しました」

「ほら、サイネリアにパールのネックレスあれをあげてから、なんか来づらくて」

「仕事とプライベートはちゃんと分けます。でないと後輩に対して恥ずかしいです。カズさんは冒険者らしく、ちゃんとギルドに顔を出してください」

「わかった」

 近況報告と地下空間捜索の状況を聞き、カズはギルドを出て川沿いの家に戻る。
 乗り合い馬車に乗って戻り家に着くと、アレナリアとレラは昼食を食べ終え、リビングのソファーで寛いでいた。
 午前中はカズに言われた通り、レラに魔力操作を教えていたとアレナリアは言う。
 翌日レオラに言われてアイリスに会いに行くと伝えたところ、アレナリアはブロンディ宝石商会代表のコーラルから、一緒に行ってくれるようにと、依頼を受けたらしい。

 コーラルが宝石の取り引きをしに行くのに、娘のヒューケラを連れて行くので、付き添い兼護衛を頼んできたと。
 一日だけとの事だったので、カズ達には相談する事もないだろうと、その依頼を承諾した。
 移動は帝都内だけなので危険はないだろうと判断して、アレナリアは二つ返事で受けたと言う。

 カズは一人で少し遅めの昼食を取り、午後はレラとアレナリアを連れてフジの所に行き、レラ専用ナイフを使った魔力維持と、風属性の魔法を使う練習をした。
 魔力維持はカズが教え、風属性の魔法はアレナリアと二人で。
 あまり長いとレラのやる気がなくなるので、魔力維持の練習を一時間して十五分休憩を取り、一時間風属性の魔法の練習をして、その後はビワを迎えに行く時間まで、フジと遊ぶなり好きにさせた。
 カズは少し前から休憩用に作ったあった小屋を、広く頑丈にしようと作り直していたで、それをコツコツと進めた。


 ◇◆◇◆◇


 朝食を済ませると、アレナリアとビワが先に家を出た。
 ビワをレオラの屋敷に送り届け、アレナリアは中央駅から魔導列車に乗り、ブロンディ宝石商会に向かった。
 カズとレラは午前中フジの所に行き、昼食を済ませてから第五皇女アイリスの屋敷へ、フジに乗り飛んで行った。
 また空中散歩をしたいとレオラから聞いていたので、後日呼ばれて二度手間になるよりはと考え、フジを連れて行く事にした。

 アイリスの屋敷裏にある池の上空を何度か旋回し、それで来た事を知らせてから、敷地内の離れた場所に降下した。
 十分もしない内にカミーリアが迎えに来た。
 フジには遠くへ行かないように伝え、カズとレラはアイリスの屋敷へと向かった。
 屋敷に着くとカミーリアの案内で、アイリスの執務室に移動した。
 部屋にはアイリスの他に、侍女と女性騎士が一人居た。
 カミーリアは女性騎士と共に扉の近くで待機し、カズとレラは接客用に用意されている椅子に座る。
 アイリスがテーブルを挟んで二人の向かい側に座ると、侍女がハーブティーを三人前に出す。
 先に言葉を発したのはアイリス。

「レオラちゃんから仕事を代わった事のお礼を、カズさんが持って来ると聞いてますよ」

「お気に召すかわかりませんが」

 カズは【アイテムボックス】からポーチを出すと女性騎士が近くに来る。 
 ポーチを女性騎士に渡すと危険はないかを確認する。
 問題ないと判断したら今度は侍女に渡し、それからアイリスの元に届く。
 カーディナリスのと同様で花の刺繍が入っているが、こちらの花は青色をしている。
 数種の色の違う青い糸を使い、陰影つけた凝った刺繍ししゅうになっている。

「使い方を教えていただけます」

 カズはポーチに付与されたアイテムポケットの効果と、使用者の魔力を記録出来る事を話した。
 使い方を聞き終わると、アイリスは手近に置いてあったブランケットを手に取り収納してみる。
 ポーチの口のブランケットをかざすと、ポーチに吸い込まれて消える。
 次にアイリスはポーチに手を入れて、吸い込まれて消えたブランケットを取り出す。

「これは便利ですね。レオラちゃんは、いくつ持ってます?」

「レオラ様にはリュックと手提げバッグを。カーディナリスさんは柄や色は違いますが、それと同じ大きさのポーチです」

「レオラちゃんの所は三つで、わたくしはこれ一つですか?」

「レオラ様は公務で帝都を離れる事もありますし、護衛のアスターさん達に持たせるつもりで」

「それはわかってますが、わたくしに仕えてくれる皆さんに、少しでも楽をさせてあげたいんです」

「気持ちはわかりますが」

「レオラちゃんは三つで、わたくしには一つだけですか? ねぇカズさん」

「一つはカーディナリスさんであって…」

 アイリスは両手を合わせて、笑顔でカズを真っ直ぐ見て「せめてもう一つお願い」と懇願してくる。
 アイリスの斜め後ろに居る侍女と、扉の近くで待機している女性騎士から『断るな』という感情がこもった鋭い視線がカズに突き刺さる。

「いいじゃんカズ。もう一つくらい作ってあげなよ。レオラっちは三つあげたんでしょ」

「気軽い言うなよレラ(俺は一つのつもりだったんだけど、レオラは二つ選んだんだ。しかもカーディナリスさんにもって)」

「だめですか?」

 レラの言葉を聞いたアイリスが、今度はわざとらしく悲しそうな表情をする。
 それとともに侍女と女性騎士から、カズへの視線が強くなり、カミーリアだけは苦笑いをしていた。
 断るのは難しそうだと、カズが折れて承諾する。

「わかりました。うまく作れるかわからないので、一つだけってことにしておいてください(レオラの所と同数を希望だろうが、付与に失敗するかも知れないからな)」

「ええ。ありがとう」

 アイリスは笑顔で感謝し、カズは心の中で溜め息をつく。
 異空間収納アイテムポケットを付与する希望の物を聞き、使える物が出来るまで数日掛かると伝えた。
 作ってもらう物は、出掛ける際に付き添いの使用人や騎士に使わせたいので、容量の多いものを希望してきた。
 そこで後日カミーリアを連れて、買いに行ってとの事だった。
 適当に選んで作っても、あとから別の物がいいと言われても面倒なので、カズは承諾した。
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