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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

619 異空間収納を付与した品物を所望

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 三人は狭い石階段を上がり、資料館地下の物置部屋に戻って来た。
 レオラの報告から国が調査に入るまで、早くても数日前は掛かるらしいので、石階段に塞ぐ床石と起動する水晶がある床石に、レオラがマーキングをして物置部屋を元の状態に戻した。
 資料館を出て正面階段脇の通用門を通り、カズとグラジオラスは外に出る。
 最後にレオラが資料館に入る扉と、通用門に鍵を掛けてから二人の所に来る。
 真夜中の静かな帝都中心部を、レオラの屋敷に向かって歩いて行く。

「カズが回収して木箱だが、状態保存する為の入れ物を用意する。明日の朝ビワを送りながら来てくれ。その時に受け取る」

「わかった。預かっとく」

 レオラとグラジオラスを屋敷まで送り、カズは川沿いの家に戻る。
 予定よりも早く切り上げた事で、夜明けまで二時間程ある。
 家に入る前に自身に〈クリーン〉を使用して、全身の汚れを取り除く。
 静かに階段を上がり、三階の部屋のベッドで眠りに付く。


 ◇◆◇◆◇


 地下の調査から戻った日の昼前に、レラに起こされてカズは目を覚ます。
 昼食後に四人でフジの所に行き、レラの魔力操作の練習を少しして、あとはフジと遊んだりして過ごし、夕方なると四人で帝都の川沿いの家に戻り、夕食を取り風呂に入り、それぞれの部屋で就寝する。
 半日だが、のどかな休日になった。

 
 ◇◆◇◆◇
 

 用事のないアレナリアには、この日もレラに魔力操作の練習を見てもらう。
 カズはレオラに呼ばれてるので、ビワと一緒にレオラの屋敷に向かった。
 屋敷に着くとビワはカーディナリスの所に行き、カズはグラジオラスの案内でレオラの執務室に。
 執務室の一階には、木材と魔鉱石などを使って作られた80センチ程の箱が置いてあった。
 カズが執務室に入ると、レオラが中二階から下りて来る。
 そして置いてあった箱の上部の凹みに指を指を掛けて、ピッタリと閉まっているふたを開ける。
 中は空っぽで何も入ってはない。

「回収してきた木箱を、羊皮紙ごど中に入れてくれ」

 カズは言われたまま【アイテムボックス】から木箱ごと羊皮紙を出して、木箱の中に入れた。
 レオラはすぐにふたを閉じて、一ヶ所色の違う場所に触れて魔力を流す。
 すると箱が完全に密閉されて開かなくなった。

「これでとりあえずは大丈夫だろう」

「なんですかこの箱は?」

「貴重品を運搬する時に使われる箱だ。魔力を流した人物しか開ける事ができない作りになってる」

「だとすると、これはレオラだけしか開けられないと」

「そういう事だ。もう一度とそこに触れて魔力を流せば開く。特殊な作りで簡単には壊れない。誰でも使える代物だ。アタシがアイテムボックスを使えれば、必要ないんだが」

「アイテムボックスは無理でも、似たような物なら作れるけど」

「作れる?」

「正確には付与だけど。ビワかアレナリアが使ってるバッグ見たことなかったか? レラが隠れるのに入ってたのじゃなくて」

「そういえば見たような気がするな」

「アイテムボックスほどじゃないが、うまく作ることが出来れば、荷馬車一台分くらいは余裕で入る。付与に失敗して、媒体となる物をダメにしてしまう事もあるがな」

「そんな便利な物があるなら、始めから言え!」

「気軽にぽんぽん作っていいような物じゃないだろ。俺がそんなの作れると知られたら、面倒になるんだ。レオラを信用したから言ったんだ」

「むむ…そうか。確かに誰でも手に入れられたら、使い方によっては危険だ。簡単に武器を大量に運搬出来てしまう。で、どれくらいで作れる?」

「付与するだけだから、時間はかからないが、ちゃんと使えるか確かめないとならないから数日は必要かな」

「街で売ってる物で構わない。適当に選んで作ってくれ。出来た物の中から選ぶとする」

「内密にしてくれよ。ギルドにも」

「わかっている。だが、アスターとガザニアが戻って来たら話すぞ。あとは、ばあと姉上にも話すかも知れん」

「まぁ、そのくらいなら(ガザニアはちょっと嫌だけど、レオラの騎士だから仕方ないか。アイリス様は……ま、いっか)」

 レオラから頼まれてた用事を済ませたカズは川沿いの家に戻り、アレナリアとレラを連れて、アイテムポケットを付与するバッグやリュックなどを探しに、昼食がてら橋を渡った商店街を見に行く。
 多量生産されている、ありふれた物を探して見て回るが、アレナリアとレラが楽しんでしまい、あまり見る事ができなかった。

 バッグとリュック合わせて五品買い、アレナリアとレラに付き合い商店街を見て回る。
 その後はビワを迎えに行き、四人でデパートに寄りここでも五品買う。
 付与するに必要な物を購入したら、夕食の買い物をしてから川沿いの家に戻った。
 何時もより少し遅い夕食を取り、三人が風呂に入り寝た後で、カズは購入したバッグやリュックなどに、アイテムポケットを付与していく。
 買った十品全てに付与して、成功したのは七品。
 三品は付与する際の魔力が多過ぎて、本体そのものが耐えきれずに破損してしまった。
 あとは実際に使用して、問題がなければレオラに持って行く事にした。


 アイテムポケットを付与した物の容量を調べるために、カズは翌日から毎日フジの所に行き、一緒に狩りへと出掛けた。
 フジの餌となる獣やモンスターを狩り、アイテムポケットを付与した物に入れていく。
 容量一杯まで異空間に収納する。
 問題なく使えるかを、五日掛けて調べた。
 付与に成功した七品の内二品が、容量の限界になったところで本体が裂けて使えなくなってしまった。
 本体の強度と付与した際の魔力が釣り合わなかったのだろう。
 本体が壊れた事で、異空間収納ができなくなり、最終的に五品が使用可能になった。
 翌日ビワを送りながら、レオラに会いに行った。

 午前中は何時も通り執務机に向かい、カーディナリスの見張りが付き書類仕事公務に精を出す。
 カズは中庭に面した部屋で、レオラの公務が終わるのを待つ。
 この日はレオラに会いに来る他の来客もなく、カズは隠し部屋から持って来た、妖狐種に関する複製本を読んで待つ。

 複製本を読み始めて小一時間すると、ビワが飲み物を持って来てくれた。
 レオラの公務が終わるのは、もう少し時間が掛かると教えに来てくれた。
 カズが待っているからと、カーディナリスがレオラに拍車を掛けてくれているらしい。
 レオラの公務が終わったら呼びに来ると言い、ビワは仕事に戻った。

 そしてそれから一時間程して、レオラの公務が一段落したと、ビワが呼びに来た。
 二人は慣れた足取り屋敷を歩き、レオラの執務室に移動する。
 レオラの屋敷には他にも使用人は居るが、屋敷の場所や時間帯から、カズが会う事は殆どない。
 執務室にレオラとカーディナリスとグラジオラスの三人だけ。
 特別講師として学園のある街に出掛けているアスターとガザニアは、まだ戻って来てはなかった。

 執務室に入ると一階にはグラジオラスが待機しており、カズが来たのが分かると、レオラとカーディナリスが中二階から下りて来た。
 椅子に座るように言われ、テーブルを挟んでレオラの向かい側の座る。
 仕事中のビワは、レオラの側に立つカーディナリスの隣に移り待機する。
 グラジオラスも少し離れた所に立って待機する。

「では、見せてもらおうか」

 カズは【アイテムボックス】から、アイテムポケットを付与した五品の入れ物を出す。
 小物入れポーチと手提げバッグが二品ずつと、あとはリュックが一品。
 20センチ程の小物入れポーチは、どちらも60キロくらいは収納出来る。
 手提げバッグは荷馬車一台くらいで約150キロ、リュックが一番多く500キロくらいは収納可能。
 小物入れポーチと革製のリュックはデパートで、手提げバッグは商店街で購入したのだと伝えた。
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