上 下
639 / 770
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

618 地下空間の調査 4 下着の色 と 弱点

しおりを挟む
 レオラが正解かどうかを聞く前に、グラジオラスは胸の前で腕を組んで顔を赤らめ、カズに背を向ける。

「あれ?」

「よし! 壁の中を透視しろカズ」

「だからできないってのッ!」

「しかしグラジオラスの下着の色を当てただろ。違うのか?」

 レオラがグラジオラスに問うと「あ…赤です」と、一瞬カズを見てると顔をすぐに反らし答えた。

「たまたま偶然、本当に透視なんかできないから(なんでこうなるんだ!)」

 レオラのせいでグラジオラスに距離を置かれ、カズは少し離れて二人に付いて行く。
 水晶の破片が落ちていた場所を離れ、三人はまだ調べてない壁面の調査を続ける。
 レオラは流石に悪いと思い、グラジオラスと会話して和ませようとしていた。
 一時間程調査するも新たな発見はなく、話す内容も無くなってきたレオラは「そろそろ夕食めしにしよう」と二人に声を掛ける。

 カズは【アイテムボックス】から食べ物と飲み物を出して用意し、三人で夕食にするも雰囲気は芳しくなく、カズとグラジオラスは気不味いまま。
 モグモグとよく噛んで、カズはどうしたものかと考える。
 事の発端となったレオラには、この状況をなんとかして欲しいものだと、カズは視線を向ける。
 期待しても悪い方に転ぶ可能性があるのなら、自分から行動あるべきだと、カズは口の中のものを飲み込みグラジオラスに話し掛ける。

「グラジオラスさん、まだご機嫌ななめですか?」

「……」

「本当に俺は透視なんてできません。レオラ様の悪ふざけですから、機嫌直してもらえませんか」

「……」

「こんな場所に三人しかいないんですし、せめて地上に戻るまでは(無視……そんなに怒ってるの?)」

「カズもこう言ってるんだ。機嫌を直してやれグラジオラス」

 レオラあんたのせいだろうがと、カズは睨むように視線をレオラに向ける。
 レオラはカズから顔を反らし「この分だと深夜までかかるだろ」と、話題を変えてる。

「し…失礼しました。少し多く入れてしまい、飲み込むまで返事ができませんでした」

 グラジオラスは怒って口をきかなかったのではなく、ただ単に食べ物が口の中に入っていたので、話さなかっただけだった。

「自分も少し過敏に反応してしまいました。申し訳ありません。カズ殿がそのような事をするわけがありませのに」

「グラジオラスさんは悪くありません。レオラ様が変な事を言うのが悪いんです。レオラ様が…レオラ様が」

「続けて二度も言うか、二度も。だが認めよう。確かにアタシが変な事を言ったのが悪かった。ただカズがグラジオラスの下着の色を当てるのも悪いんだぞ」

「そんなの知りませんよ。たまたま言った色が当たったんですから」

「答えなければいいだろ」

「なッ! 本当に自分が悪いと思ってるんですか?」

「レオラ様もカズ殿も、もうよろしいではありませんか。自分はもう、なんとも思ってません」

 口論が白熱しそうだったので、グラジオラスが止めに入る。

「申し訳ありません。口が過ぎました(親しくなってるとはいえ、皇女レオラに対しての言葉遣いじゃなかった)」

「この程度別に構わないだろ。それにもうアタシ一人の時だけじゃなくて、グラジオラス達が居ても楽に話せばいい」

 皇女に仕えるカーディナリス使用人達や守護騎士が同席しても、レオラは敬語を使う必要はないと言う。
 それをカズがすると、大義名分だと言ってガザニアが斬り掛かって来ないともかぎらない。
 初めて会った頃に比べれば、マシになったようだが、少なからず未だに自分が嫌われているとカズは理解している。

「自分もレオラ様が言うので、それで構わないと思います」

「公式な場ではないんだ、いつものように話せばいい。ばあやグラジオラスにアスター、一応ガザニアにも話しているから知ってる事だ」 

「……わかった。なら今はそうさせてもらう。それと公式の場以外に、ガザニアの前でも」

「もう大丈夫だと思うが。グラジオラスはどう思う?」

「難しいところです。自分も大丈夫だと思いますが、レオラ様と親しく話してるのを考えると……」

「って事なんで、ガザニアの前では、今まで通りにする(大丈夫と言うが、根拠はないだろうに)」

「あまいいさ、好きにしろ。グラジオラスもカズが下着の色を当てたさっきの事で緊張がほぐれたようだ」

「そういえばここに来てから、ぎこちなかったな」

「どうもこの暗闇が苦手みたいだ。カズの出した光の玉これがあるから平然としてるが、持って来た小さな魔鉱石ライトだけだと、ずっとおどおどしていただろう」

「そうなの?」

「レオラ様の騎士としてお恥ずがしい」

 カズは思わぬ所でグラジオラスの弱点を知る事となった。

「部屋のような場所であれば、手持ちの魔鉱石ライトで十分全体を照らせるので平気なのですが、ここまで広いと暗闇から何が出て来そうで」

「あとはこのまま三人一緒に行動するから大丈夫でしょ(暗いのが怖いとか、以外な一面だったな)」

 夕食を終えてグラジオラスとの仲も良くなったので、残りの壁面調査を一気やってっしまう事にした。
 カズが出した光球で壁面を照らし、気になる所は叩いて音の違いはあるか、何かしらの変化があるかを調べていく。
 壁沿いに歩いては壁を叩き、三時間以上調査を続け、壁面の下部を調べ終えた。
 天井まで高く、流石に全体を短時間で調べるのは無理なので、調べたのは下から10メートルくらいの高さまで。
 それ以上高い所に何かあるとは思えなかったからだ。
 地上から下りて来た石階段のあった場所のように、建物が壁面に接していれば別だが。
 結局水晶の破片が落ちていた場所以外に気になる所はなく、他は何も発見できなかった。

 残るは地上から下りて来た石階段のある壁面のみ。
 ただし建物が密着して建てられているので、建物に入り屋上まで上がらないとならない。
 建物同士が近いとはいえ、高さが違う場所もあるので屋上を渡って隣の建物に移るのは少し難しい。
 面倒で時間が掛かってしまうが、屋上から移れない場所は一度下りて外に出てから、他の建物に移り上って調べる事にする。
 レオラとカズだけなら、屋上を飛び移って移動しただろうが、暗闇を苦手としているグラジオラスを一人で待機させてはおけなかった。


「確か向こう側の壁だけだったか。結局あの先には何があると思う?」

 最後の壁面調査さを終えた三人は、地上から下りて来た石階段の前まで戻って来て休憩中。

「アイテムなどの貴重品が入ってるのではないのでしょうか?」

「グラジオラスはそう考えるか。カズはなんだと思う?」

「ここがどういった目的で使われていたにもよるが、倉庫だとしたら食料だと思うが、どこから運び入れたのかが気になる」

「と、言うと」

「あの壁の先には、どこか他に繋がる通路があるんじゃないか? でないと、この狭い階段だけってのは変だろ」

「それはアタシも気になっていた。全ての建物を調べてはないが、この辺りの目ぼしい建物にギルドで使ってるような転移装置は見当たらなかった。それを考えると、やはりあの壁の先か」

「壊す以外に調べる方法はないんだ。あの水晶を直せるか、魔道具の専門家に見てもらうしかないだろ」

「仕方ない。あとは国に報告して、調査に入ってもらうしかないか」

元セテロンあの国から流れて来た連中とは、関係ないようだな」

「ここはだろ。他にもこのような場所はあるんだ」

「まさか後日、他も調べるとか言うのか」

「とりあえずは報告だ。調べるにしても、ここは場所が場所だけに、国が調査に入る事になるだろう。他は周辺環境にもよるが、ギルドに依頼として出される事もあるだろう。そうすればカズは確実に呼び出されるぞ」

「気が進まない。頼まれても断るかな」

「こうして地下の町を発見した一人なんだ。断るのは難しいだろ」

 レオラからの頼みは面倒事ばかりだと、カズは改めて思い、嫌な顔してレオラに見せる。
 そんな事を気にもせず「地上に戻るぞ」と、レオラを先頭になり石階段を上って行く。
 続いてグラジオラスがレオラの後を追い、カズは出した60センチ大の光球を消してから最後尾を行く。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

ゴミスキル『空気清浄』で異世界浄化の旅~捨てられたけど、とてもおいしいです(意味深)~

夢・風魔
ファンタジー
高校二年生最後の日。由樹空(ゆうきそら)は同じクラスの男子生徒と共に異世界へと召喚された。 全員の適正職業とスキルが鑑定され、空は「空気師」という職業と「空気清浄」というスキルがあると判明。 花粉症だった空は歓喜。 しかし召喚主やクラスメイトから笑いものにされ、彼はひとり森の中へ置いてけぼりに。 (アレルギー成分から)生き残るため、スキルを唱え続ける空。 モンスターに襲われ樹の上に逃げた彼を、美しい二人のエルフが救う。 命を救って貰ったお礼にと、森に漂う瘴気を浄化することになった空。 スキルを使い続けるうちにレベルはカンストし、そして新たに「空気操作」のスキルを得る。 *作者は賢くありません。作者は賢くありません。だいじなことなのでもう一度。作者は賢くありません。バカです。 *小説家になろう・カクヨムでも公開しております。

貴族に生まれたのに誘拐され1歳で死にかけた

佐藤醤油
ファンタジー
 貴族に生まれ、のんびりと赤ちゃん生活を満喫していたのに、気がついたら世界が変わっていた。  僕は、盗賊に誘拐され魔力を吸われながら生きる日々を過ごす。  魔力枯渇に陥ると死ぬ確率が高いにも関わらず年に1回は魔力枯渇になり死にかけている。  言葉が通じる様になって気がついたが、僕は他の人が持っていないステータスを見る力を持ち、さらに異世界と思われる世界の知識を覗ける力を持っている。  この力を使って、いつか脱出し母親の元へと戻ることを夢見て過ごす。  小さい体でチートな力は使えない中、どうにか生きる知恵を出し生活する。 ------------------------------------------------------------------  お知らせ   「転生者はめぐりあう」 始めました。 ------------------------------------------------------------------ 注意  作者の暇つぶし、気分転換中の自己満足で公開する作品です。  感想は受け付けていません。  誤字脱字、文面等気になる方はお気に入りを削除で対応してください。

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

逆ハーレムエンドは凡人には無理なので、主人公の座は喜んで、お渡しします

猿喰 森繁
ファンタジー
青柳千智は、神様が趣味で作った乙女ゲームの主人公として、無理やり転生させられてしまう。 元の生活に戻るには、逆ハーレムエンドを迎えなくてはいけないと言われる。 そして、何度もループを繰り返すうちに、ついに千智の心は完全に折れてしまい、廃人一歩手前までいってしまった。 そこで、神様は今までループのたびにリセットしていたレベルの経験値を渡し、最強状態にするが、もうすでに心が折れている千智は、やる気がなかった。

異世界キャンパー~無敵テントで気ままなキャンプ飯スローライフ?

夢・風魔
ファンタジー
仕事の疲れを癒すためにソロキャンを始めた神楽拓海。 気づけばキャンプグッズ一式と一緒に、見知らぬ森の中へ。 落ち着くためにキャンプ飯を作っていると、そこへ四人の老人が現れた。 彼らはこの世界の神。 キャンプ飯と、見知らぬ老人にも親切にするタクミを気に入った神々は、彼に加護を授ける。 ここに──伝説のドラゴンをもぶん殴れるテントを手に、伝説のドラゴンの牙すら通さない最強の肉体を得たキャンパーが誕生する。 「せっかく異世界に来たんなら、仕事のことも忘れて世界中をキャンプしまくろう!」

屋台飯! いらない子認定されたので、旅に出たいと思います。

彩世幻夜
ファンタジー
母が死にました。 父が連れてきた継母と異母弟に家を追い出されました。 わー、凄いテンプレ展開ですね! ふふふ、私はこの時を待っていた! いざ行かん、正義の旅へ! え? 魔王? 知りませんよ、私は勇者でも聖女でも賢者でもありませんから。 でも……美味しいは正義、ですよね? 2021/02/19 第一部完結 2021/02/21 第二部連載開始 2021/05/05 第二部完結

俺の召喚獣だけレベルアップする

摂政
ファンタジー
【第10章、始動!!】ダンジョンが現れた、現代社会のお話 主人公の冴島渉は、友人の誘いに乗って、冒険者登録を行った しかし、彼が神から与えられたのは、一生レベルアップしない召喚獣を用いて戦う【召喚士】という力だった それでも、渉は召喚獣を使って、見事、ダンジョンのボスを撃破する そして、彼が得たのは----召喚獣をレベルアップさせる能力だった この世界で唯一、召喚獣をレベルアップさせられる渉 神から与えられた制約で、人間とパーティーを組めない彼は、誰にも知られることがないまま、どんどん強くなっていく…… ※召喚獣や魔物などについて、『おーぷん2ちゃんねる:にゅー速VIP』にて『おーぷん民でまじめにファンタジー世界を作ろう』で作られた世界観……というか、モンスターを一部使用して書きました!! 内容を纏めたwikiもありますので、お暇な時に一読していただければ更に楽しめるかもしれません? https://www65.atwiki.jp/opfan/pages/1.html

(完結)醜くなった花嫁の末路「どうぞ、お笑いください。元旦那様」

音爽(ネソウ)
ファンタジー
容姿が気に入らないと白い結婚を強いられた妻。 本邸から追い出されはしなかったが、夫は離れに愛人を囲い顔さえ見せない。 しかし、3年と待たず離縁が決定する事態に。そして元夫の家は……。 *6月18日HOTランキング入りしました、ありがとうございます。

処理中です...