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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
611 勉学の在り方
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真面目に取り組むレラを見たビワは「がんばってるようですし、夕食はレラの好物を作りましょうか」と、カズに話して、カズは「いいんじゃないかな」と返す。
レオラもカーディナリスと何やら話をしてる。
中庭に面してる窓と扉は開いているが、大きな音や声がしてるわけではない。
聞き耳を立ててるつもりはないが、否が応でも同じ部屋に居るので、カズとビワには自然と話し声が聞こえてしまう。
中庭に居る五人には聞こえてはいない。
レオラとカーディナリスも特に隠そうと小声で話してる訳ではなので、カズとビワは耳を塞いだりなんて不自然な行動はしない。
「やはり臨時講師をさせるなら、アスターが向いているか」
「そうですね。グラジオラスさんは口下手で話すのが苦手ですし、ガザニアさんは少しましになられましたが、気にいらない方がいると言葉で威圧する傾向があるので、講師にはまだ。消去法でアスターさんが適任かと思います」
「アタシも同意見だ。教え方についてはどう見る?」
カーディナリスは守護騎士三人を、更に細かくじっくり観察する。
「的確に苦手なところを指摘するアスターさんは、素晴らしいと思います。本人の意見を聞いて、どうすれば良くなるかを一緒に考えるグラジオラスさんは、教えられる方として好感が持てるかと思われます」
カーディナリスは先程の評価からガザニアは向かないと除外したので、アスターとグラジオラスの適正がどうあるかしか答えなかった。
「うむ。個人に教えるとしたら、グラジオラスの方が良いか。しかし臨時講師は多数を相手にする。となると、やはり現在では、アスターが適任か」
「話の途中ですみません。少しいいですか?」
「なんだカズ?」
二人の会話の中で気になる事があり、カズは尋ねてみることにした。
「臨時講師ってなんです? この辺りに学校でもあるんですか?」
「あるぞ。貴族が通う大きな学園が他の街に」
「他の街ですか(あるんだ。学校が)」
「騎士を目指す貴族の講師として、皇族に仕える騎士が、臨時講師として行く事があるんだ。前回がアイリスのとこから二人。今回はアタシの番なんだ」
「へぇ~そんな事を。貴族以外の人の学校は?」
「十人前後が学ぶ場所が、各街に数ヶ所から数十ヶ所ある。大抵の者は家の仕事を継ぐのに、読み書きや計算を子供のうちに出来るようにする為に通っている。それなりに金が掛かるから、通うのは裕福な者達が多い。かと言って、全てがそうではない」
レオラの話からすると、どうやら貴族が通う学園は、国が作った教育機関だと言う。
だが一般庶民が通う場所は、一部の皇族や貴族の支援で作られた学習塾のような場所らしい。
月謝が30,000GLする所もあれば、1,000GLの所もあるらしい。
月謝が高い所は、教える者が学園出身の貴族だったり、貴族に仕えて教えを請うた者だと。
安い所は皇族の支援で作られた、もしくは街の大きな商会をしている者が、自らの所で教えているのだと。
この場合は、将来自分の商会で働かせる為の投資として、考えてる者が多いらしい。
大きな商会なら従業員も多くなる。
知識が乏しい者を雇うなら、格安で子供に勉学を教え、学力の高い子供をそのまま就職させれば、商会としては安泰。
貧しい家の子供としても、学力をつけることができ、認められれば大きな商会の仕事にも就けるので、互いに利点はある。
ただし欠点として、偏った知識になってしまうので、少し仕事が探し辛くなる。
だが読み書きと計算が出来るようになっていれば、困る事にならないので、子供を通わせる親は多いのだと。
「国が学校を作り、庶民の子供を通わせたりしないんですか? 小さい頃から少しずつ学べは、大人になる頃には色々な仕事につくことができて、国としても生産量が増えていいと思いますが」
「ほう、カズはそう考えるか」
「いえ、俺のというか……(余計なことだったか)」
このまま政治的な話しになっては面倒だと、カズは話題の方向を変える。
「なんとなく言ってみただけです。あ、レオラ様は通われたんですか? その貴族の学園に(俺は教師や周りの連中と縒りが合わなくて、行かなく……思い出したくもないや)」
「アタシか? あれだ…まあいいじゃないか」
自分の学歴を話したくないのか、答えようとしない。
そこで隣のカーディナリスが口を開く。
「姫様は一日でお辞めになりました。それで私しが教える事に」
「一日で?」
「入学の際に個人の素質を見る目的で、自分が得意とする試験を受けるのですが、姫様はそれで騎士見習いの講師と模擬戦する事を選び、圧勝してしまいまして、止めに入った方々を物足りないと言って、次々と……。その結果を見て、学園の方から断られたと聞いてます」
「それはまた……(子供の頃から問題を起こしてたのか)」
「アタシには合わなかっただけだ。それに通わなかったからこそ、ばあが専属として付き、今こうしているわけだ。昔の事は忘れた」
よくこれで皇女になったものだと、カズは今更ながら不思議に思った。
皇女になったレオラにしても、選んだ帝国にしても。
レラが訓練を始めてから、もうすぐ二時間が経つ。
流石に集中力が切れて、疲れた表情を見せてきたので、この日の訓練はこれまでにして、少し休憩をしてレラの魔力が回復するのを待ち、カズ達はレオラの屋敷を後にする。
ビワは明日からメイドの仕事に行くと言うので、この後は息抜きにとデパートに行って、色々と見て回り買い物をして、川沿いの家にタクシーで戻る。
今日の夕食は作り置きしてあるものでとカズは提案したが、残っているコンソメスープが無駄になってしまうと、ビワが。
昨夜言っていた通り、ビワは残っているコンソメスープでポトフを作り、デパートで買った出来立てのパンをカズが【アイテムボックス】から出して夕食にした。
ビワだって疲れてるだろうに、夕食を作ってくれて、本当にビワには頭が下がる思いだった。
アレナリアとレラも感謝の気持ちはあれど、それぞれ思うところは違っている。
このまま家事をビワに任せっきりでは、第一夫人の座が、と、アレナリアは思い。
毎日美味しいごはん作ってくれるビワには、ずっと元気でいてもらはないとね、と、感謝はすれど、レラのぐうたらな考えは変らない。
二人の考えをカズが知れば、呆れられて「飯抜き」と言われかねないので、表面上は感謝の気持ちだけを言葉で表していた。
どんなに隠していても、口喧嘩をするとその勢いで喋り、結局二人の考えがカズに知られて怒られる羽目になるのは、毎回の事。
翌日よりビワはレオラの屋敷で仕事に行く。
仕事内容は変わらず、カーディナリスの手伝いを主に。
ブロンディ宝石商会のヒューケラの所にアレナリアが行く時は、ビワはカズが送る。
そうでない時は、ほぼアレナリアがビワを送る。
当然周囲の警戒は怠らずに。
午前中カズはレラを連れて、空間転移魔法でフジの所に行き、一緒に旅へ出る時のために、村や街での行動を教えていた。
ライジングホークという大型の鳥型モンスターであるマイヒメと、その子供のフジとカズは当然考え方が違う。
大きく育ってはいても、フジはまだ生まれて数年の子供、一緒に行動するのだから、他人を無闇に傷付けてはいけないと。
そこで肝心なのは、フジが強いということを教えなければならなかった。
例えば大型犬がじゃれてるつもりでも、相手によっては襲ってきてると思われる。
それがフジの場合なら、命の危険だと討伐対象になりかねない。
言葉が通じればなんとかなるだろうが、フジと話が出来るのはカズと、カズが付与した装備品や装飾品を持っているアレナリアとレラとビワだけ。
なので敵対行動を取られない為の躾くらいは必要となる。
カズは帝都を出るまでに、なんとか覚えさせるつもりでいた。
レオラもカーディナリスと何やら話をしてる。
中庭に面してる窓と扉は開いているが、大きな音や声がしてるわけではない。
聞き耳を立ててるつもりはないが、否が応でも同じ部屋に居るので、カズとビワには自然と話し声が聞こえてしまう。
中庭に居る五人には聞こえてはいない。
レオラとカーディナリスも特に隠そうと小声で話してる訳ではなので、カズとビワは耳を塞いだりなんて不自然な行動はしない。
「やはり臨時講師をさせるなら、アスターが向いているか」
「そうですね。グラジオラスさんは口下手で話すのが苦手ですし、ガザニアさんは少しましになられましたが、気にいらない方がいると言葉で威圧する傾向があるので、講師にはまだ。消去法でアスターさんが適任かと思います」
「アタシも同意見だ。教え方についてはどう見る?」
カーディナリスは守護騎士三人を、更に細かくじっくり観察する。
「的確に苦手なところを指摘するアスターさんは、素晴らしいと思います。本人の意見を聞いて、どうすれば良くなるかを一緒に考えるグラジオラスさんは、教えられる方として好感が持てるかと思われます」
カーディナリスは先程の評価からガザニアは向かないと除外したので、アスターとグラジオラスの適正がどうあるかしか答えなかった。
「うむ。個人に教えるとしたら、グラジオラスの方が良いか。しかし臨時講師は多数を相手にする。となると、やはり現在では、アスターが適任か」
「話の途中ですみません。少しいいですか?」
「なんだカズ?」
二人の会話の中で気になる事があり、カズは尋ねてみることにした。
「臨時講師ってなんです? この辺りに学校でもあるんですか?」
「あるぞ。貴族が通う大きな学園が他の街に」
「他の街ですか(あるんだ。学校が)」
「騎士を目指す貴族の講師として、皇族に仕える騎士が、臨時講師として行く事があるんだ。前回がアイリスのとこから二人。今回はアタシの番なんだ」
「へぇ~そんな事を。貴族以外の人の学校は?」
「十人前後が学ぶ場所が、各街に数ヶ所から数十ヶ所ある。大抵の者は家の仕事を継ぐのに、読み書きや計算を子供のうちに出来るようにする為に通っている。それなりに金が掛かるから、通うのは裕福な者達が多い。かと言って、全てがそうではない」
レオラの話からすると、どうやら貴族が通う学園は、国が作った教育機関だと言う。
だが一般庶民が通う場所は、一部の皇族や貴族の支援で作られた学習塾のような場所らしい。
月謝が30,000GLする所もあれば、1,000GLの所もあるらしい。
月謝が高い所は、教える者が学園出身の貴族だったり、貴族に仕えて教えを請うた者だと。
安い所は皇族の支援で作られた、もしくは街の大きな商会をしている者が、自らの所で教えているのだと。
この場合は、将来自分の商会で働かせる為の投資として、考えてる者が多いらしい。
大きな商会なら従業員も多くなる。
知識が乏しい者を雇うなら、格安で子供に勉学を教え、学力の高い子供をそのまま就職させれば、商会としては安泰。
貧しい家の子供としても、学力をつけることができ、認められれば大きな商会の仕事にも就けるので、互いに利点はある。
ただし欠点として、偏った知識になってしまうので、少し仕事が探し辛くなる。
だが読み書きと計算が出来るようになっていれば、困る事にならないので、子供を通わせる親は多いのだと。
「国が学校を作り、庶民の子供を通わせたりしないんですか? 小さい頃から少しずつ学べは、大人になる頃には色々な仕事につくことができて、国としても生産量が増えていいと思いますが」
「ほう、カズはそう考えるか」
「いえ、俺のというか……(余計なことだったか)」
このまま政治的な話しになっては面倒だと、カズは話題の方向を変える。
「なんとなく言ってみただけです。あ、レオラ様は通われたんですか? その貴族の学園に(俺は教師や周りの連中と縒りが合わなくて、行かなく……思い出したくもないや)」
「アタシか? あれだ…まあいいじゃないか」
自分の学歴を話したくないのか、答えようとしない。
そこで隣のカーディナリスが口を開く。
「姫様は一日でお辞めになりました。それで私しが教える事に」
「一日で?」
「入学の際に個人の素質を見る目的で、自分が得意とする試験を受けるのですが、姫様はそれで騎士見習いの講師と模擬戦する事を選び、圧勝してしまいまして、止めに入った方々を物足りないと言って、次々と……。その結果を見て、学園の方から断られたと聞いてます」
「それはまた……(子供の頃から問題を起こしてたのか)」
「アタシには合わなかっただけだ。それに通わなかったからこそ、ばあが専属として付き、今こうしているわけだ。昔の事は忘れた」
よくこれで皇女になったものだと、カズは今更ながら不思議に思った。
皇女になったレオラにしても、選んだ帝国にしても。
レラが訓練を始めてから、もうすぐ二時間が経つ。
流石に集中力が切れて、疲れた表情を見せてきたので、この日の訓練はこれまでにして、少し休憩をしてレラの魔力が回復するのを待ち、カズ達はレオラの屋敷を後にする。
ビワは明日からメイドの仕事に行くと言うので、この後は息抜きにとデパートに行って、色々と見て回り買い物をして、川沿いの家にタクシーで戻る。
今日の夕食は作り置きしてあるものでとカズは提案したが、残っているコンソメスープが無駄になってしまうと、ビワが。
昨夜言っていた通り、ビワは残っているコンソメスープでポトフを作り、デパートで買った出来立てのパンをカズが【アイテムボックス】から出して夕食にした。
ビワだって疲れてるだろうに、夕食を作ってくれて、本当にビワには頭が下がる思いだった。
アレナリアとレラも感謝の気持ちはあれど、それぞれ思うところは違っている。
このまま家事をビワに任せっきりでは、第一夫人の座が、と、アレナリアは思い。
毎日美味しいごはん作ってくれるビワには、ずっと元気でいてもらはないとね、と、感謝はすれど、レラのぐうたらな考えは変らない。
二人の考えをカズが知れば、呆れられて「飯抜き」と言われかねないので、表面上は感謝の気持ちだけを言葉で表していた。
どんなに隠していても、口喧嘩をするとその勢いで喋り、結局二人の考えがカズに知られて怒られる羽目になるのは、毎回の事。
翌日よりビワはレオラの屋敷で仕事に行く。
仕事内容は変わらず、カーディナリスの手伝いを主に。
ブロンディ宝石商会のヒューケラの所にアレナリアが行く時は、ビワはカズが送る。
そうでない時は、ほぼアレナリアがビワを送る。
当然周囲の警戒は怠らずに。
午前中カズはレラを連れて、空間転移魔法でフジの所に行き、一緒に旅へ出る時のために、村や街での行動を教えていた。
ライジングホークという大型の鳥型モンスターであるマイヒメと、その子供のフジとカズは当然考え方が違う。
大きく育ってはいても、フジはまだ生まれて数年の子供、一緒に行動するのだから、他人を無闇に傷付けてはいけないと。
そこで肝心なのは、フジが強いということを教えなければならなかった。
例えば大型犬がじゃれてるつもりでも、相手によっては襲ってきてると思われる。
それがフジの場合なら、命の危険だと討伐対象になりかねない。
言葉が通じればなんとかなるだろうが、フジと話が出来るのはカズと、カズが付与した装備品や装飾品を持っているアレナリアとレラとビワだけ。
なので敵対行動を取られない為の躾くらいは必要となる。
カズは帝都を出るまでに、なんとか覚えさせるつもりでいた。
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