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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

606 半月振りの四人ての食事 と 口喧嘩

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 アレナリアの言葉で三人の手が一瞬止まり、それと同時に場の空気が重くなる。
 どうしたのだろうと、アレナリアが疑問に思う。

「結論から言うと、隠し部屋に入る事は出来た。方法が少し面倒だったけど、ビワとレラのおかげで」

「色々な本も見れましたし、私は結構楽しかったですよ」

「カズだけじゃ見つけられなかったもんね。あちしはスゴいんだ! えっへん」

 カズの言葉を聞き、ビワが優しく感想を述べ、レラが自慢気に話した事で、場の空気が戻り和む。

「楽しい? カズだけじゃ見つけられなかった?」

 隠し部屋を見付ける手掛かりさえも不明だとされているのに、それをビワが楽しかった言い、カズだけでは無理だったと聞き、アレナリアの頭は疑問で一杯。

「何がどうなってるの? 初めから話して。私だけ仲間外れじゃない!」

「実際アレナリアはいないんだから、しょうがないじゃん」

「レラ、そういう言い方しないの」

「残りも少いし、先に食べてしまおう。話はそれからでいいだろ」

「そ、そうね。食べないと片付かないわね」

 話で手がちょくちょく止まり、流石に食べるのがゆっくり過ぎたと、四人は黙って残りの料理を平らげる。
 カズが後片付けをしようとして、使った食器を集めようとすると「私がするので、リビングそちらで、アレナリアさんと話していてください」とビワに言われた。
 お言葉に甘えて、カズとアレナリアは温かいハーブティーが入ったカップを持って、リビングに移動してソファーに座る。
 食後の特製プリンは、お腹が一杯だから明日すると、レラはフルーツミルクが入ったコップを持ちソファーに移動する。

 カズはハーブティーを一口飲み、本の街の図書館で見付けたタイトルの無い本探しと、謎解きについてアレナリアに話した。

「タイトルの無い本を見つけたのは、確かにビワとレラだけど、謎解きはほぼカズがしたのなら、どっこいどっこいじゃない」

 アレナリアは自慢気に話していレラに突っ込みを入れる。
 確かに謎解きは丸っ切りだったレラなので、そこは言い返せい、なんてことはない。

「アレナリアはやってないから、わからないんだよ! 簡単なようでムズいんだもんね~だ!」

「私が一緒に行ってれば、レラみたいに謎解きを間違るような事なんてなかったわ」

「にゃにをぉ!」

「なによ!」

 アレナリアとレラは顔が密着するほど近付いて睨み合う。

「なんでケンカになるんだよ」

 カズは二人の後ろ襟を掴み引き離す。

「ほら、二人とも座る。俺は風呂の用意をしてくるから。話の続きは、風呂の後だ」

「カズさん、お風呂なら私が」

 食器の後片付けを終えたビワがリビングに来て、風呂の用意は自分すると言う。

「ビワだって疲れてるでしょ。水と火の魔法で、すぐにお湯を張ってくるから、入る用意しておいて。今日は一人でゆっくり浸かって、疲れをとるいい。アレナリアとレラは、ビワが出たら二人で入って仲直りすること」

 カズは風呂場に移動し、浴槽に水属性の魔法で水を張り、水に手を入れて火属性の魔法で水を適温まで温める。
 ビワに入るように言うと、黙りのアレナリアとレラの頭を冷やさせようと、カズはリビングの二人をそのままにして、換気するために開けた窓を閉めに階段を上がる。
 どうせ何時もの事だから、すぐに仲直りするだろうと、ガスは三階のレオラが使う部屋の窓を閉めて出る。
 隣の部屋の窓を閉め、リビングに戻る前に与えられた知識を確認しようと、アーティファクトの古書を【アイテムボックス】から出して椅子に座った。
 

 少し目を通すだけのつもりが、気付けば三十分以上経ってた。 
 アーティファクトの古書を【アイテムボックス】に入れて、一階のリビングに下りる。
 リビングにはアレナリアとレラの姿はなく、ビワがキッチンで朝食の仕込みをしていた。

「二人は仲直りした?」

「お風呂に入る前は、まだ。でもアレナリアさんが声をかけて、レラと一緒に入ったので、出てくる頃には」

「そう」

「カズさんのアイテムボックスに、作ったプリンを入れておいてもらますか? 食べるにしても数が多いので」

「そうだね。全部で二十六個だっけか?」

「レラが一つ食べたので二十五個です」

「なら朝食後に食べる分の三個を残して、あとは入れておこうか」

「三個? 四個では?」

「俺はいいよ。もうプリンを作る食材はないからね。今回作ったのは、三人で食べればいい。食材はまた今度取りに行ってくるから」

 そういうとカズはキッチンに移動し、冷蔵庫から特製プリンを出して【アイテムボックス】に入れた。
 特製プリンの甘い匂いとは別に、とても良い香りがした。
 ビワが仕込みをしているコンソメスープかと思いきや、そうではなく、とても良い香りはビワ本人だった。

「どうしました?」

 ビワの後ろで立ち止まっていたカズに、ビワが不思議そうに尋ねる。

「あ、ごめん。ビワからいつもと違う、とても良い香りがしたもんで」

「以前に花の香りがする石けんを、カーディナリスさんから頂いたんです。今日はそれを使ってみたんですよ」

「もう少し近くで嗅いでもいい?」

「え…あの…はい。どうぞ」

 カズはビワの後頭部辺りに顔を近付け、すぅ~っと鼻からゆっくりと息を吸い込み堪能する。
 匂いを嗅がれて耳を赤くするビワを見たカズは少し興奮し、このまま抱きしめてしまいたくなった。
 ぐずぐずな告白だったが、それをビワが受け入れてくれた事により、こういった行動が考えだけではなく、表に出す様になってきていた。
 抱きしめようと、そっと腕を回そうとした時「も…もういいですか? そろそろ仕込み続きをしいので……」と、ビワの恥ずかしがる声でカズは我に返る。

「ご、ごめん。ありがとう(いかんいかん。こんなところをアレナリアに見られては、また勢い任せの告白をする事になる)」

 カズはソファーに座り気を落ち着かせ、アレナリアとレラが風呂から上がるのを待つ。
 濡れた髪をタオルでまとめ、寝間着を着たアレナリアと、下着姿のレラが小さなタオルを体に巻き風呂から出て来た。
 ほぼ同時に出て来た様子から、どうやら仲直りしたらしい。
 レラは「あちぃ~」とソファーに座り、アレナリアはカズの隣に座り「大丈夫?」と、声を掛けてきた。
 カズは「藪から棒に、なんだ?」と、アレナリアに聞き返す。

「レラから聞いたの。カズの目的がついえたって」

「元の世界に戻る方法の事か。まあ無くはないらしいが、代償というか対価が大きすぎてな」

「いつも通りにしてるけど、辛いんでしょ。私の胸で泣いていいわよ」

 アレナリアはソファーから立ち上がってカズの正面に立ち、私の胸に飛び込んで来てと、両手を広げて行動で現す。

「ある程度は覚悟してたから大丈夫だ。その気持ちだけでいい。ただこの先の事を色々と、一人で考える時間がほしいかな」

「そう。カズの心境も考えず、レラと口喧嘩なんかしてごめんなさい」

「アレナリアに話す前で知らなかったんだ。気にするな」

「本当に大丈夫? 泣くのなら、私の胸はいつでも空いてるからね。好きなだけ顔を埋めていいわよ」

「埋められる胸ないじゃん」

「なんですって! レラ!」

「だって本当のことだも~ん」

 仲直りしたはずの二人が、また言い争いを始めそうになる。

「ハァ……そうやってからかうなら、レラにはプリンをもうやらないぞ」

「それはダメー!」

「ぷぷッ。自業自得ね」

「まったく。俺をいたわるならケンカしないでくれ。とりあえずレラは、そんな格好してないで寝間着を着ろ」

「あたしの下着姿見たい?」

 レラは巻いているタオルを緩め、チラリと足を出して太ももを見せる。

「風邪引くそ! はよ着ろ(アレナリアに当てられて、色気づいたのか?)」

「は~い」

 レラは寝間着を着て、カズは隠し部屋での出来事をアレナリアに話す。
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