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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
599 図書館巡り 14 隠された空間 と 呼び寄せたもの
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空間転移魔法を使うと同時に現れた十二芒星を通ってきた三人は、小さな燭台の蝋燭に灯された火が照らす薄暗い空間に出た。
「レラちょっと痛い。強くつかみすぎよ」
ガッチリとビワの腕を掴むレラに、ビワは力を弱めるように言う。
だがそういうビワも、カズの手を強く握ってしまっているのに気付いてない。
怯える二人を安心させる為に、カズは〈ライト〉を使い、光の玉を作り出して周囲を明るく照らす。
「うわッ!」
「……スゴい」
「これが隠された部屋……とんでもないな」
ライトで出した小さな光の玉では、部屋全体を明るく照らすには程間遠く、50メートル以上はあるだろう天井は辛うじて見えるだけ。
三人が更に驚いたのは、その本の多さ。
天井まである巨大な書棚には、本がぎっしりと隙間なく並べられ、それが部屋の壁一面に並んでいる。
見えているだけでも、一万冊はあると思える。
それが部屋全体と考えると、数百万冊は最低でもあるだろう。
今まで巡って来た図書館とは、比べ物にならない広さと本の数量。
部屋の雰囲気からは、カズが以前使っていた隔離された秘密部屋と、同じ様な空間だと感じとれた。
無数の本に囲まれているが、カビ臭さや埃っぽさはない。
窓や扉も見当たらないで、空気の流れもない。
だからといって、息苦しいという事は不思議とない。
ただ物音一つしない静かな部屋は、とても不気味に感じた。
念の為に周囲を警戒していると、近くの消えていた燭台の蝋燭に、突如として火が灯された。
「わッ! なになに、勝手に火がついた!」
ビワの腕を離れていたレラが、今度はカズの右腕にガッチリとしがみつく。
カズの左手を握っていたビワも、突然ついた蝋燭の火とレラの声に驚き、咄嗟にカズ左腕を掴み体を寄せる。
右腕にしがみつくレラは別に気にはならないが、左腕はそうじゃない。
カズの左腕にハッキリと、柔らかなビワの胸の感触と、早くなる鼓動が伝わってきている。
「大丈夫だから。落ち着こう」
カズの言葉は二人を落ち着かせると同時に、自分も落ち着けと言い聞かせる。
左腕に感じる柔らかな感触に興奮して、冷静さを失わないように。
三人を案内するかのように15メートル程先にある机の内の一台に向かって、燭台の蝋燭に順に次々と火が灯されていく。
「あそこに行くの? 大丈夫? ねえ大丈夫?」
「敵意も感じないし、罠らしい物もあるようには思えない。それにここまで来たんだ。誘ってるんだから行ってみよう。大丈夫、ビワ?」
「このままで…いいですか」
何時まででも喜んで! とは、流石にこの状況では言えない。
「いいよ。じゃあ行こう」
ビワは小さく「はい」返事をしてコクりと頷き、カズは蝋燭に照らされている机に向かう。
ビワを気遣い、狭い歩幅でゆっくりと歩く。
ライトで出だした小さな光の玉をもそれに連れて、三人の少し前を浮遊したまま移動する。
近付くとそれはレオラが使っているのに似た、執務机だと分かった。
五つある引き出しはピタリと閉められており、机の上には三本の羽根ペンと、開かれ書きかけたままの本が一冊置いてある。
三人が机の前まで来ると、一本の羽根ペンがふわりと浮かぶ。
「なになになに!! 勝手に動いてる! 動いてるよカズ!」
レラは目の前で起こった現象に驚愕して大声で叫び、両腕両足をカズの右腕絡ませて更に強くしがみつく。
その見た目から腕に付けるおもちゃの人形、または好みのイラストが書かれた抱き枕を使い寝ているようにも見える。
一方で一切声を出さなかったビワは、羽根ペンが動くと、ビクっとして尻尾の毛を逆立てると小刻みに震え、耳は垂れて掴んでいるカズの左腕を更に強く引き寄せる。
ビワの顔はカズの二の腕にピタリとくっつき、右目を隠して左目を薄く開け、こそっと見ている様な状態に。
カズの手首辺りは、ビワの胸に半分程埋まっている。
ビワとレラだけではなく、カズの鼓動も二人とは別の理由で早くなる。
そんな三人の状況関係なく、羽根ペンは開かれている本の上に移動し、ペン先からインクが滲み出ると、サラサラと文字を書き始め、カズがそれを声に出して読む。
「『ようこそ。我と同種のインテリジェンス・ブックを持つ者。汝の求める知識は隠された部屋にあることだろう。疑問に思う事があらば質問を受けよう』……聞いたらペンが答えてくれるのか?」
「一人でなに喋ってんの? 怖いんだけど」
「そう書いてあるんだ。二人には読め……るわけないか」
左右の二人に目を見ると、どちらも目を閉じて、カズの腕に顔をピタリとくっつていた。
「ここは噂の隠し部屋であってるのか?」
カズが質問をすると、羽根ペンがスラスラと動き『あっている』と書いて答える。
「どうしてペンと意思疎通が出来る?」
『汝が所有する本と同種。魔力でペンを操っている』
「そんな事が出来るのか! なら、俺の本に文字が浮かんだり、図書館で見た本が消えたのも」
『消えた本は我が魔力で作りだした物。あれは同種の本を所有する者を、ここに呼ぶための道標にすぎない。我が魔力で作った本を手にした事で、文字が浮かび上がり、汝が持つ本が、汝をここに連れて来ても良いと、我を受け入れた事で呼応した結果』
「この古書が俺を。ここに転移する時に現れた十二芒星は?」
『その者の属性や可能性によって星は変化する』
「一人でここに来て、何かを持っていったと聞いたんだけど、本を持ち帰ることは出来るのか?」
『可能。対価は訪れた者の知識。前回来た者に関しては、汝の影響で偶然空間に歪みができ、ここへ来たまで。即座に外へ放り出したが、手近な本を掴んだ際に破り取っていった。現在その本の断片は消失している。そしてその者のここでの記憶は、夢幻として曖昧になっているだろう』
「俺の影響で! 前に来た時となると……(レオラと再開した時か。それで俺がなにか関わってると思って、この街の隠し部屋の情報を話してきたのか。知らぬ内に関わってたみたいだけど)」
机に置かれてる知性ある本とやり取りを続けてる間に、ビワとレラは少し落ち着きを取り戻し、目を開けて机に目を向けまでになっていた。
「二人とも、もう大丈夫?」
「なんとか平気かも」
「わ…私も……」
「なら少し離れようか。これだと少し動きづらい」
二人は自分の状況を確認すると、レラはカズの右腕から離れて肩に移り座る。
服に折り目や皺が出来るくらい強くしがみつき、自分の胸を押し当てているのに気付いたビワは、顔を真っ赤にしてゆっくり掴んでいたカズの腕を離す。
「す…すみません」
「俺は嬉しい…もとい、全然大丈夫だから(気をつけてたのに、つい本音が)」
喜びの言葉を口走ってしまい、ビワがどう反応してくるかと思いきや、今度は優しく腕を組んで来た。
「こ…これなら、動きづらくないですよね」
先程までとはいかないが、カズの左腕にはビワの柔らかな胸の感触がある。
「あ、うん。それくらいなら(隠し部屋に来た目的を忘れそうだ)」
落ち着いたがまだ怖いらしく、ビワはカズから離れようとしない。
それはカズの肩に腰掛けるレラも同じだった。
「レラちょっと痛い。強くつかみすぎよ」
ガッチリとビワの腕を掴むレラに、ビワは力を弱めるように言う。
だがそういうビワも、カズの手を強く握ってしまっているのに気付いてない。
怯える二人を安心させる為に、カズは〈ライト〉を使い、光の玉を作り出して周囲を明るく照らす。
「うわッ!」
「……スゴい」
「これが隠された部屋……とんでもないな」
ライトで出した小さな光の玉では、部屋全体を明るく照らすには程間遠く、50メートル以上はあるだろう天井は辛うじて見えるだけ。
三人が更に驚いたのは、その本の多さ。
天井まである巨大な書棚には、本がぎっしりと隙間なく並べられ、それが部屋の壁一面に並んでいる。
見えているだけでも、一万冊はあると思える。
それが部屋全体と考えると、数百万冊は最低でもあるだろう。
今まで巡って来た図書館とは、比べ物にならない広さと本の数量。
部屋の雰囲気からは、カズが以前使っていた隔離された秘密部屋と、同じ様な空間だと感じとれた。
無数の本に囲まれているが、カビ臭さや埃っぽさはない。
窓や扉も見当たらないで、空気の流れもない。
だからといって、息苦しいという事は不思議とない。
ただ物音一つしない静かな部屋は、とても不気味に感じた。
念の為に周囲を警戒していると、近くの消えていた燭台の蝋燭に、突如として火が灯された。
「わッ! なになに、勝手に火がついた!」
ビワの腕を離れていたレラが、今度はカズの右腕にガッチリとしがみつく。
カズの左手を握っていたビワも、突然ついた蝋燭の火とレラの声に驚き、咄嗟にカズ左腕を掴み体を寄せる。
右腕にしがみつくレラは別に気にはならないが、左腕はそうじゃない。
カズの左腕にハッキリと、柔らかなビワの胸の感触と、早くなる鼓動が伝わってきている。
「大丈夫だから。落ち着こう」
カズの言葉は二人を落ち着かせると同時に、自分も落ち着けと言い聞かせる。
左腕に感じる柔らかな感触に興奮して、冷静さを失わないように。
三人を案内するかのように15メートル程先にある机の内の一台に向かって、燭台の蝋燭に順に次々と火が灯されていく。
「あそこに行くの? 大丈夫? ねえ大丈夫?」
「敵意も感じないし、罠らしい物もあるようには思えない。それにここまで来たんだ。誘ってるんだから行ってみよう。大丈夫、ビワ?」
「このままで…いいですか」
何時まででも喜んで! とは、流石にこの状況では言えない。
「いいよ。じゃあ行こう」
ビワは小さく「はい」返事をしてコクりと頷き、カズは蝋燭に照らされている机に向かう。
ビワを気遣い、狭い歩幅でゆっくりと歩く。
ライトで出だした小さな光の玉をもそれに連れて、三人の少し前を浮遊したまま移動する。
近付くとそれはレオラが使っているのに似た、執務机だと分かった。
五つある引き出しはピタリと閉められており、机の上には三本の羽根ペンと、開かれ書きかけたままの本が一冊置いてある。
三人が机の前まで来ると、一本の羽根ペンがふわりと浮かぶ。
「なになになに!! 勝手に動いてる! 動いてるよカズ!」
レラは目の前で起こった現象に驚愕して大声で叫び、両腕両足をカズの右腕絡ませて更に強くしがみつく。
その見た目から腕に付けるおもちゃの人形、または好みのイラストが書かれた抱き枕を使い寝ているようにも見える。
一方で一切声を出さなかったビワは、羽根ペンが動くと、ビクっとして尻尾の毛を逆立てると小刻みに震え、耳は垂れて掴んでいるカズの左腕を更に強く引き寄せる。
ビワの顔はカズの二の腕にピタリとくっつき、右目を隠して左目を薄く開け、こそっと見ている様な状態に。
カズの手首辺りは、ビワの胸に半分程埋まっている。
ビワとレラだけではなく、カズの鼓動も二人とは別の理由で早くなる。
そんな三人の状況関係なく、羽根ペンは開かれている本の上に移動し、ペン先からインクが滲み出ると、サラサラと文字を書き始め、カズがそれを声に出して読む。
「『ようこそ。我と同種のインテリジェンス・ブックを持つ者。汝の求める知識は隠された部屋にあることだろう。疑問に思う事があらば質問を受けよう』……聞いたらペンが答えてくれるのか?」
「一人でなに喋ってんの? 怖いんだけど」
「そう書いてあるんだ。二人には読め……るわけないか」
左右の二人に目を見ると、どちらも目を閉じて、カズの腕に顔をピタリとくっつていた。
「ここは噂の隠し部屋であってるのか?」
カズが質問をすると、羽根ペンがスラスラと動き『あっている』と書いて答える。
「どうしてペンと意思疎通が出来る?」
『汝が所有する本と同種。魔力でペンを操っている』
「そんな事が出来るのか! なら、俺の本に文字が浮かんだり、図書館で見た本が消えたのも」
『消えた本は我が魔力で作りだした物。あれは同種の本を所有する者を、ここに呼ぶための道標にすぎない。我が魔力で作った本を手にした事で、文字が浮かび上がり、汝が持つ本が、汝をここに連れて来ても良いと、我を受け入れた事で呼応した結果』
「この古書が俺を。ここに転移する時に現れた十二芒星は?」
『その者の属性や可能性によって星は変化する』
「一人でここに来て、何かを持っていったと聞いたんだけど、本を持ち帰ることは出来るのか?」
『可能。対価は訪れた者の知識。前回来た者に関しては、汝の影響で偶然空間に歪みができ、ここへ来たまで。即座に外へ放り出したが、手近な本を掴んだ際に破り取っていった。現在その本の断片は消失している。そしてその者のここでの記憶は、夢幻として曖昧になっているだろう』
「俺の影響で! 前に来た時となると……(レオラと再開した時か。それで俺がなにか関わってると思って、この街の隠し部屋の情報を話してきたのか。知らぬ内に関わってたみたいだけど)」
机に置かれてる知性ある本とやり取りを続けてる間に、ビワとレラは少し落ち着きを取り戻し、目を開けて机に目を向けまでになっていた。
「二人とも、もう大丈夫?」
「なんとか平気かも」
「わ…私も……」
「なら少し離れようか。これだと少し動きづらい」
二人は自分の状況を確認すると、レラはカズの右腕から離れて肩に移り座る。
服に折り目や皺が出来るくらい強くしがみつき、自分の胸を押し当てているのに気付いたビワは、顔を真っ赤にしてゆっくり掴んでいたカズの腕を離す。
「す…すみません」
「俺は嬉しい…もとい、全然大丈夫だから(気をつけてたのに、つい本音が)」
喜びの言葉を口走ってしまい、ビワがどう反応してくるかと思いきや、今度は優しく腕を組んで来た。
「こ…これなら、動きづらくないですよね」
先程までとはいかないが、カズの左腕にはビワの柔らかな胸の感触がある。
「あ、うん。それくらいなら(隠し部屋に来た目的を忘れそうだ)」
落ち着いたがまだ怖いらしく、ビワはカズから離れようとしない。
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