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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
590 図書館巡り 5 安易な一文
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カズが冒険者ギルドを後にすると、ギルド職員の間ではレオラ様専属の冒険者が、隠し部屋を探しに動いていると話題に上がっていた。
カズが宿屋に戻るとビワが作った夕食が出来ており、レラがお腹を空かせて待っていたので、手を洗い早速夕食にする。
「後片付けは俺がするから、ビワは休んでて」
「いいんですか?」
「手伝うって言っておきながら、ビワに任せてしまってるからね。これくらいは」
飲み物が入ったコップだけを残し、カズは使用した他の食器を洗った。
「さて、昼間の話の続きだけど」
「カズが図書館で、女の人のお尻をさわった話?」
「違うだろ。肩掛け鞄に入れてる古書が、他の人には白紙に見えるって話だ」
「そうだった、そうだった。あちしとビワが一緒にいるんだから、お尻なんてさわり放題だもんね」
「だからなんでそうなるんだよ!」
「あちしならいつでも良いよ。ほれほれ」
カズに向けて、お尻をふりふりするレラ。
ビワの位置からだと、レラがニヤついているが見え、悪ふざけをしているのだと分かる。
レラの顔が見えずとも、カズもそれは承知していた。
「はいはい。ありがたくな」
指を軽く弾いて、こちらに向けているレラのお尻に当てる。
「わきャ! プリプリのあちしのおしりに何すんのさ!」
「要望通りに、さわってやったまでだ」
「ビワが同じようにしても、こんな事しないっしょ!」
「ビワがお尻を振るする訳ないだろ」
と、口では言いつつ、かつての妄想癖が出てしまい、恥ずかしがりながら、ふわっふわの尻尾を揺らして、お尻を自分の方に向けて振るビワを思い浮かべてしまう。
「そう言いながら顔ゆるんでんじゃん。何を考えてんのさ」
「別に何も考えてない。もうこの話は終わり。この古書を見るんだろ(あぶないあぶない、顔に出てたか)」
脱線した話を本来の用件に戻し、カズは肩掛け鞄からアーティファクトの古書を取り出して、適当な所を開いてレラに見せる。
「なんも書いてない」
期待外れという表情をするレラ。
「司書も同じような反応をしてたぞ」
「ビワにも見えない?」
「だから同じだって」
「いいからビワにも見てもらってよ」
レラがしつこいので、今度はビワの方に向けて、ペラペラと数頁めくって見せた。
「どお、ビワ? なんか書いてある?」
「ええと……」
「気がすんだかレラ?」
「ホワイトフレイム? と書いてあります」
「な、だから……ホワイトフレイム!?」
カズはビワに向けていた古書をひっくり返して自分の方に向け、開いている頁の内容を確認する。
確かにそこには、火と光の両属性をもつ魔法ホワイトフレイムが書かれていた。
「読めるの?」
「浄化の作用と、闇属性に有効な白い炎。でしょうか?」
「……他には何かわかる?」
「どうでしょう。カズさんがめくった中で、そこだけか薄っすらと書かれてるのが見えて」
何でビワに見えたのだろうかと、カズはアーティファクトの古書をめくり確認する。
そこでカズは、南区の図書館でビワが見付けた何の変哲もないもない本に触れた時に、肩掛け鞄に入れていたアーティファクトの古書に僅かな変化があった事を思い出した。
その影響でビワに見えるようになったのだろうかと考えた。
現状ではそれしか思い当たる事がない。
「ん?」
以前まで何も書いてなかった頁に『大地の恵み記されし知識が、求めし場所へと導く』と、一文が表記されていた。
「何それ?」
「大地の恵み? ……作物のことでしょうか?」
「かな」
「この街に畑なんかあった? どこも本、本、カビ臭いだよ」
「カビ臭いってレラ…まあいい。古書には記されしだから、作物そのものじゃないと思う」
「作物に関係するものですと、やっぱり本ですよね。そうすると……西区の図書館でしょうか?」
「あそこは植物に関係する本が集まる場所だと聞いてたからね。俺もビワと同じ考えだ」
「ならこれは、西区の図書館に行けって事なの?」
「たぶんそうじゃないかな」
「安直だね」
珍しくレラが鋭く突っ込んでした。
「わかりやすくて、いいじゃないか(こういった謎解きはどうもなぁ……)」
「でも西の図書館を調べても、なんもなかったんでしょ。そんで他の図書館を調べに行ったんし」
「あの時は魔力を込めて、この古書に触れてなかったから、何も変化しなかったのかも知れないし、もしかしたら図書館を回る順番に関係があるのかも知れない」
「でもその本を見つけたのって、ビワなんでしょ」
「そうなんだよ。俺が気付いたならわかるんだが。う~ん……なんでだろう?」
「カズさんにもらった物を身に付けてたから、私が見つけられたんでしょうか?」
「どうだろう? 今までは何もなかったからね。今回たまたまってのも、変な感じだけど」
「でしたら取りあえず、明日もう一度西区の図書館に行ってみますか?」
「そうだね。ダメ元で行ってみよう。この古書が隠し部屋への案内となるかもって、レオラが言ってたし、少しでも可能性があるなら」
翌日もう一度西区の図書館に行く事にして、カズも早めに就寝する。
朝食と昼食用の弁当を、ビワの代わりに作らなければと考えて。
◇◆◇◆◇
目を覚ましてベッドから起き上がると、キッチンから微かな物音がしていた。
寝過ぎたかと窓に掛かるカーテンの隙間から外を見るが、まだ薄っすらと明るくなってきている時間だった。
静かに寝室の扉を開けると、ビワがキッチンで朝食と昼食用の弁当を作っているところだった。
「早起きだねビワ」
「あ、おはようございます。カズさん」
「おはよう」
「今日は早いんですね」
「ビワに任せてたから、朝ごはんと昼の弁当は、俺が作ろうと思ったんだよ」
「気にしないでください。料理を作るのは好きですし、それを食べて喜んでもらえるのは、とても嬉しいです」
「ありがとう。手伝うよ、ビワ」
「カズさんは朝食が出来るまで、座って待っていてください」
「でもそれは」
「皆の食事を作るのは、私が好きでやっているので」
「だったらせめて、後片付けくらいはやらせて」
「そうですか? でしたら後でお願いしますね」
カズは椅子に座り、朝食と昼食用の弁当をせっせと作るビワの後ろ姿を眺める。
昨日レラがふざけて言ってきた話を思い出し、ロングスカートの下からビワのふわふわの尻尾の先が見え、カズはそれに目が奪われる。
ビワが左右に動く度に尻尾が揺れ、カズの視線も左右に動く。
「どこ見てるんですか?」
静かにしているカズをチラリと見たビワは、その視線が自分のお尻を見ているように感じた。
「ッ! ついビワの尻尾に目が奪われて」
「そんなにじっと見ないでください(レラが昨日あんな話をするから)」
「ごめん(たまには触らせてくれないかな? ちょっと頼んで……やっぱ、やめとくか)」
「先にお弁当が出来ました。カズさんお願いします」
「預かるよ」
ビワから昼食用の弁当を受け取り【アイテムボックス】にしまい入れる。
外でも手軽に食べれるように、弁当は三種のサンドイッチ。
茹でた鶏の胸肉を手で裂いて、ドレッシングで和えた野菜と一緒に挟んだのと、お決まりのタマゴサンド。
あとはレラが好みの、甘酸っぱいジャムとハチミツのサンドイッチ。
「朝食はもう少し待ってください」
「ゆっくりでいいよ。レラも起き…あ! ごめん、俺、少し出てくる。遅くとも二十分くらいで戻るようにする。出来たら先に食べてて」
「? わかりました。ところで、どちらへ?」
「南区の図書館に行って、昨日の本をもう一度見てくる。この時間なら人も少ないだろうしね〈ゲート〉」
そう言うとカズは、転移先の出口を南区の図書館近くの路地に指定し、空間転移魔法を使った。
カズが宿屋に戻るとビワが作った夕食が出来ており、レラがお腹を空かせて待っていたので、手を洗い早速夕食にする。
「後片付けは俺がするから、ビワは休んでて」
「いいんですか?」
「手伝うって言っておきながら、ビワに任せてしまってるからね。これくらいは」
飲み物が入ったコップだけを残し、カズは使用した他の食器を洗った。
「さて、昼間の話の続きだけど」
「カズが図書館で、女の人のお尻をさわった話?」
「違うだろ。肩掛け鞄に入れてる古書が、他の人には白紙に見えるって話だ」
「そうだった、そうだった。あちしとビワが一緒にいるんだから、お尻なんてさわり放題だもんね」
「だからなんでそうなるんだよ!」
「あちしならいつでも良いよ。ほれほれ」
カズに向けて、お尻をふりふりするレラ。
ビワの位置からだと、レラがニヤついているが見え、悪ふざけをしているのだと分かる。
レラの顔が見えずとも、カズもそれは承知していた。
「はいはい。ありがたくな」
指を軽く弾いて、こちらに向けているレラのお尻に当てる。
「わきャ! プリプリのあちしのおしりに何すんのさ!」
「要望通りに、さわってやったまでだ」
「ビワが同じようにしても、こんな事しないっしょ!」
「ビワがお尻を振るする訳ないだろ」
と、口では言いつつ、かつての妄想癖が出てしまい、恥ずかしがりながら、ふわっふわの尻尾を揺らして、お尻を自分の方に向けて振るビワを思い浮かべてしまう。
「そう言いながら顔ゆるんでんじゃん。何を考えてんのさ」
「別に何も考えてない。もうこの話は終わり。この古書を見るんだろ(あぶないあぶない、顔に出てたか)」
脱線した話を本来の用件に戻し、カズは肩掛け鞄からアーティファクトの古書を取り出して、適当な所を開いてレラに見せる。
「なんも書いてない」
期待外れという表情をするレラ。
「司書も同じような反応をしてたぞ」
「ビワにも見えない?」
「だから同じだって」
「いいからビワにも見てもらってよ」
レラがしつこいので、今度はビワの方に向けて、ペラペラと数頁めくって見せた。
「どお、ビワ? なんか書いてある?」
「ええと……」
「気がすんだかレラ?」
「ホワイトフレイム? と書いてあります」
「な、だから……ホワイトフレイム!?」
カズはビワに向けていた古書をひっくり返して自分の方に向け、開いている頁の内容を確認する。
確かにそこには、火と光の両属性をもつ魔法ホワイトフレイムが書かれていた。
「読めるの?」
「浄化の作用と、闇属性に有効な白い炎。でしょうか?」
「……他には何かわかる?」
「どうでしょう。カズさんがめくった中で、そこだけか薄っすらと書かれてるのが見えて」
何でビワに見えたのだろうかと、カズはアーティファクトの古書をめくり確認する。
そこでカズは、南区の図書館でビワが見付けた何の変哲もないもない本に触れた時に、肩掛け鞄に入れていたアーティファクトの古書に僅かな変化があった事を思い出した。
その影響でビワに見えるようになったのだろうかと考えた。
現状ではそれしか思い当たる事がない。
「ん?」
以前まで何も書いてなかった頁に『大地の恵み記されし知識が、求めし場所へと導く』と、一文が表記されていた。
「何それ?」
「大地の恵み? ……作物のことでしょうか?」
「かな」
「この街に畑なんかあった? どこも本、本、カビ臭いだよ」
「カビ臭いってレラ…まあいい。古書には記されしだから、作物そのものじゃないと思う」
「作物に関係するものですと、やっぱり本ですよね。そうすると……西区の図書館でしょうか?」
「あそこは植物に関係する本が集まる場所だと聞いてたからね。俺もビワと同じ考えだ」
「ならこれは、西区の図書館に行けって事なの?」
「たぶんそうじゃないかな」
「安直だね」
珍しくレラが鋭く突っ込んでした。
「わかりやすくて、いいじゃないか(こういった謎解きはどうもなぁ……)」
「でも西の図書館を調べても、なんもなかったんでしょ。そんで他の図書館を調べに行ったんし」
「あの時は魔力を込めて、この古書に触れてなかったから、何も変化しなかったのかも知れないし、もしかしたら図書館を回る順番に関係があるのかも知れない」
「でもその本を見つけたのって、ビワなんでしょ」
「そうなんだよ。俺が気付いたならわかるんだが。う~ん……なんでだろう?」
「カズさんにもらった物を身に付けてたから、私が見つけられたんでしょうか?」
「どうだろう? 今までは何もなかったからね。今回たまたまってのも、変な感じだけど」
「でしたら取りあえず、明日もう一度西区の図書館に行ってみますか?」
「そうだね。ダメ元で行ってみよう。この古書が隠し部屋への案内となるかもって、レオラが言ってたし、少しでも可能性があるなら」
翌日もう一度西区の図書館に行く事にして、カズも早めに就寝する。
朝食と昼食用の弁当を、ビワの代わりに作らなければと考えて。
◇◆◇◆◇
目を覚ましてベッドから起き上がると、キッチンから微かな物音がしていた。
寝過ぎたかと窓に掛かるカーテンの隙間から外を見るが、まだ薄っすらと明るくなってきている時間だった。
静かに寝室の扉を開けると、ビワがキッチンで朝食と昼食用の弁当を作っているところだった。
「早起きだねビワ」
「あ、おはようございます。カズさん」
「おはよう」
「今日は早いんですね」
「ビワに任せてたから、朝ごはんと昼の弁当は、俺が作ろうと思ったんだよ」
「気にしないでください。料理を作るのは好きですし、それを食べて喜んでもらえるのは、とても嬉しいです」
「ありがとう。手伝うよ、ビワ」
「カズさんは朝食が出来るまで、座って待っていてください」
「でもそれは」
「皆の食事を作るのは、私が好きでやっているので」
「だったらせめて、後片付けくらいはやらせて」
「そうですか? でしたら後でお願いしますね」
カズは椅子に座り、朝食と昼食用の弁当をせっせと作るビワの後ろ姿を眺める。
昨日レラがふざけて言ってきた話を思い出し、ロングスカートの下からビワのふわふわの尻尾の先が見え、カズはそれに目が奪われる。
ビワが左右に動く度に尻尾が揺れ、カズの視線も左右に動く。
「どこ見てるんですか?」
静かにしているカズをチラリと見たビワは、その視線が自分のお尻を見ているように感じた。
「ッ! ついビワの尻尾に目が奪われて」
「そんなにじっと見ないでください(レラが昨日あんな話をするから)」
「ごめん(たまには触らせてくれないかな? ちょっと頼んで……やっぱ、やめとくか)」
「先にお弁当が出来ました。カズさんお願いします」
「預かるよ」
ビワから昼食用の弁当を受け取り【アイテムボックス】にしまい入れる。
外でも手軽に食べれるように、弁当は三種のサンドイッチ。
茹でた鶏の胸肉を手で裂いて、ドレッシングで和えた野菜と一緒に挟んだのと、お決まりのタマゴサンド。
あとはレラが好みの、甘酸っぱいジャムとハチミツのサンドイッチ。
「朝食はもう少し待ってください」
「ゆっくりでいいよ。レラも起き…あ! ごめん、俺、少し出てくる。遅くとも二十分くらいで戻るようにする。出来たら先に食べてて」
「? わかりました。ところで、どちらへ?」
「南区の図書館に行って、昨日の本をもう一度見てくる。この時間なら人も少ないだろうしね〈ゲート〉」
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