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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス

586 図書館巡り 1 中央と西区

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 カズは以前にレラが隠れるのに使っていた肩掛け鞄を用意すると、それを見たレラが尋ねる。

「あちしそれに入って行くの?」

「いや、これには俺が持ってる本を入れてくんだ」

 そう言うとカズは【アイテムボックス】から、アーティファクトの古書を出して肩掛け鞄に入れた。

「なんでわざわざ、そうやって持ってくの?」

「レオラ曰く、この本が隠し部屋を見つけるのに役に立つ。かも知れないって言われたんだ。だからこうやって、アイテムボックスから出して持ち歩く事にしたんだ」

「そのカズがたまに見てた古い本が……? ふ~ん」

「一応、スゴい本らしいんだそ(レラの疑問もわかるが)」

 レラは全く信じてないという表情をしているのを見て、言ったカズ自身も半信半疑だったので、特に突っ込むようなことはしない。

「この情報をくれたのはレオラだからな。一応言われた通りにやってみるさ」

「カズがよければ、それでいいんじゃないの」

「そう言わないでレラ。長くお世話をしてるカーディナリスさんから直接聞いてる私にはわかるわ。レオラ様は優しいのよ」

「ふ~ん。ビワが言うならそうなんだ。あちしはどっちでも良いけどね。だたガザニアっちは、なんかムカッとする」

「それはナイフの使い方を習ってる時の話だろ」

「だって言われたようにしてるに、全然違うって言うんだもん!」

「わかった、わかった。次はガザニア以外に教えてもらえばいい」

「そうする」

「それじゃあ用意も出来たし、行こうか」

 本日の行動を決めたところで、三人は宿屋を出て街の中央図書館に向かう。

 本の街というだけあって、多くの人が図書館に来ている。
 中央図書館は地下二階、地上五階建てになっており、街にある図書館載中でも一番利用者が多い。
 一階は様々な種類の新書が並べられており、新しい紙とインクの匂いがしていた。

 受付のある一階には、利用者向けの説明として、新書の置き場所についての説明が書かれていた。
 一ヶ月程経つと分類されて、それぞれの階に移される。
 地下は書庫になっており、一般の利用者な入れない。
 隠し部屋を探すにしても、図書館内三人で歩き回っていては、他の利用者の邪魔になってしまう。
 なので基本調べるのはカズがするとして、ビワとレラは興味のある本を見て、気になった事を後で話してもらう事にした。

 折角来たのならと、ビワは裁縫と料理の本が見たいと三階に。
 レラは特に今読みたい本がないからと、ビワに付いていった。
 カズは五階まで上がり、隠し部屋を探しつつ各階を一回りしてから下の階の降りると同時に、帝国の各街の成り立ちが書かれた本がないかと探す。
 五階から四階へと見て回り、ビワとレラの居る三階に下りて来るも、隠し部屋がありそうな空間や、その様な雰囲気はない。
 壁に書かれた図書館内の案内図を見て、各街に関する本は二階にあると書かれていたので、そこで少し読書して小休止しようと思った。

 ビワとレラを見付けると、壁際に並べて置かれた椅子に座り、ビワは裁縫の本を、その横ではレラが料理の絵が多く掲載されている本を見て「これ作って」「これおいしそうだよ」と、自分の欲望を言葉に出してビワに要求していた。
 実にレラらしいとは思ったが、少し声が大きいので、一言いいに二人の所へ。

 カズは声の音量の事でレラに注意をすると、三階を一回りして二人に声を掛け、一人で二階に下りる。
 カズが見よう思った本があったが、街の名物料理や見どころが書かれてある、謂わる旅行本的な本だったので、ちょっとガックリした。

 約二時間を掛けて中央図書館を見て回るも、隠し部屋がありそうな建物でもなく、肩掛け鞄に入れているインテリジェンス・ブックアーティファクトの古書にも特に変わった事はなかった。
 ビワには切りのいいところで読み終えてもらい、中央図書館を出て、次は街の西区にある図書館に向かう。
 各図書館を定時に回る乗り合い馬車があるが、少し前に行ってしまったので、待つよりはと辻馬車タクシーを見付けて、それに乗って向かう事にした。
 乗り合い馬車に比べ少し高くなるが、帝都よりは一割程安かった。

 あとで分かった事だが、中央図書館にある本は平均で二年、長くても三年程しか置かないらしい。
 本の街に以外で作られた本も集まるとの事で、本を入れ替えるのをこれ以上遅くすると、図書館に置けなくなるのだと。
 そして中央図書館から出された本は、街が管理する他の図書館に運ばれて、そこで数年利用者がいるか調べると、同じ様に他の図書館行きか、処分するかを定められる。

 珍しい例では保管代を払い、寄贈という名目で預けられた本も少なからずあるらしい。
 そういった本は書庫に仕舞われて、要望がなければ見る事ができないのだと。
 または図書館で処分されるのを個人が引き取り、他の街の図書館に寄贈される事もあると。
 街の片隅にあるほこりとカビ臭い図書館は、数十年と読まれ擦り切れた本や、後に再販された事で古くなった初期の本が行き着く場所で、街が管理をしている図書館ではないらしく、少々気になる情報だった。

 辻馬車タクシーで街の西区にある図書館に着き中の入ると、中央図書館と構造はほぼ同じようだった。
 蔵書してあるのは、西区で製造された本が多い。
 西区は主に植物に関係する本を製造しており、木々や草花の他に、野菜や果物なんかの本が置いてある。
 本が街の各所から集まる中央図書館とは違うので、二年や三年で処分されたりする事はない。
 平均で十年は置かれ、長いものだと十五年前の本も置かれているらしい。

 先程の中央図書館の時と同様、ビワとレラには軽く館内を見てもらい、あとは好きな本を読んで待っていてもらう。
 植物の本が多いということで、農作の街ウエスト・ファアームの野菜や果物が書かれている本や、花の街スプリング・リースで栽培されている植物についての本もあった。
 カズは最上階まで上がり、そこから一階までおかしな所がないかを調べながら下りたが、やはり中央図書館の時と同じく、隠し部屋がありそうな作りでははいので、そういった空間は見当たらなかった。

 地下の書庫に入り調べることはできないので、一通り見終えるたらビワとレラの所に行き、西区の図書館を後にして少し遅い昼食を取る。
 試しに近くの食堂に入り、無難なメニューを選んだ。
 パンとサラダとコーンスープと肉野菜炒めを注文した。
 サラダはしんなりとして、食べられはするが新鮮とはいえない。
 コーンスープは味が薄く、肉野菜炒めは逆に塩味が濃くて、焦げた野菜がちらほら入っていた。
 パンは少し硬かったが、手で千切ればレラでも問題なく食べられた。

 やはり本の街に居る間は、宿屋で食事作り食べる決めた。
 昼食を外で食べる事も考えて、お弁当を作る。
 これにはレラも同意したが、ビワの負担が増えてしまうので、交代でカズも作る事にした。
 少し遅めの昼食を済ませると、乗り合い馬車が来る時間だったので、それに乗り北区の図書館に向かう。
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