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五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
575 約束の宝飾品を探しに
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サイネリアの強きな態度と要求をするようになった発端が、レオラだという事をカズは知らない。
そしてレオラがギルド本部を訪れた翌日、カズはサイネリアの予定を聞きにギルド本部に。
依頼を出しに来る者、依頼を受けに来た冒険者、それらが少ない昼前の時間帯を選んで。
一階の受付に居なかったサイネリアを訪ねに来たと、受付の職員に声を掛けようとしたが、カズが言葉を発する前に「サイネリアなら向かわせますので、どうぞ個室でお待ち下さい」と言われ、顔パスで何時もの個室に。
急に来てサイネリアを呼び出し、また機嫌を損ねるのではないかと、カズは少し不安になる。
五分程で受付に居た女性職員と同じ半袖白シャツに、紺のベストとスカートに身を包んだ、女性職員の夏用制服姿のサイネリアが、カズの待つ個室にやって来た。
意外と地味な制服だなんて思いながら、部屋に入ってきたサイネリアの表情を見て機嫌を伺う。
「今日は、どのような用件でしょうか?」
サイネリアの声色からして、特に機嫌が悪いという事はないようだった。
「近々空いている日があるかな? 仕事が早上がりとかでも構わないんだけど。休みならその方が時間に余裕があって、ゆっくり選べると思…」
「あの、いきなりなんの話をしてるんです?」
「だから……あ!」
肝心の事を話さずに、先に空いている日時を聞いてしまったのに、カズは気が付いた。
「ごめん。約束していた真珠のネックレスを見に行く時間が取れるかと聞きたかったんだ。知り合いの宝石商には話を伝えてあるから、あとは行く日を連絡するだけなんだ」
「え? あの話って……本当に良いんですか?」
「俺のせいで休みを変えさせて、楽しみにしてた買い物をできなくしてしまったんだ。それに約束したから」
サイネリアは社交辞令的な事だと半信半疑だったので、宝石商の知り合いに連絡を取ってくれていた事に、顔には出さなかったが内心では喜んでいた。
だが、先日自分がカズに対して取った態度を考えると、申し訳なく思ってしまう。
だけどせっかくの好意だからと、表面上は平静を装い、カズの好意を受ける事にする。
「でしたら三日後ではどうです? まだこの前の休みを申請してないので、それで大丈夫でしたら連休になるので、翌日は家で休息出来ますし」
「サイネリアがそれで大丈夫なら、三日後に連れて行くよ。朝の混雑時が終わった九時半くらいに、中央駅の入口で待ち合わせでどうかな?」
「中央駅……? 構いませんが、遠くなんですか?」
「遠くではないよ。店があるのが隣駅の近くなんだ。だから馬車で行くよりは、列車で行こうかと」
「そうなんですか、わかりました。三日後に中央駅前で」
「ああ、よろしく」
サイネリアと出掛ける約束をしたカズはギルドを後にすると、その足でブロンディ宝石商会に向かった。
接客中だったコーラルを、店内の宝飾品や宝石を見て時間を潰す。
従業員に言伝ても良かったのだが、本人が居るのだから直接話すべきだろうと、接客が終わるのを待った。
Aランクの冒険者だからといって、やはり驕った態度はいけないと、サイネリアとの一件で改めて感じた。
自分がそのつもりでなくても、何時の間にか驕ってしまっていたのかも知れないと、カズは一人初心に返り反省。
二十分程して従業員から呼ばれ、コーラルの居る部屋に移動する。
真珠のネックレスを探してると話は伝わっていたので、頼み事はすんなりと進み、幾つかの商品を見せてもらった。
値段もピンからキリまで様々あるが、人気がありよく売れているのが、金貨ニ十枚位の中玉真珠のネックレスらしい。
大玉真珠になると倍以上になり、色によっても値段は違う、と。
今は黄色と青色の中玉が人気で、高騰しているのだと言う。
数日前には中央駅に隣接しているデパートで、帝都の宝石商が集まって即売会を実地したと聞き、カズの頭にサイネリアの顔が浮かんだ。
サイネリアが楽しみにしていた宝飾品は、真珠と言っていたので、コーラルが取り扱ってる商品だと思ったのは間違いではなかった。
これならばサイネリアの期待に答えられる可能性は大いにあると、カズは少し安心する。
三日後に真珠のネックレスを望んでいる女性を連れて来るとコーラルに伝え、カズは店を出た。
この日の午後は、フジと狩った残りのバレルボアを解体して終わった。
翌日はアレナリアがアイリスの騎士に魔力操作を教える日だというので、屋敷まで送っていき、カズはカミーリアと女性騎士数人と模擬戦やら訓練に付き合う。
その翌日はレラをフジの所に連れて行き遊ばせ、その夜サイネリアと約束した前日の夕食時に、レオラがアレナリアと酒を酌み交わしに川沿いの家を訪れた。
そこでサイネリアが横柄な態度を取る切っ掛けになったのは、レオラが言いだした事だと知った。
相変わらず知らない所で勝手に面倒な事をしてくれるレオラだとカズは文句を言う。
サイネリアの事で相談した際に、アレナリアとビワがサイネリアの肩を持ったのも、レオラがそうするように言ってあった事だと聞いた。
アレナリアとビワは気が進まなかったが、カズがレオラとギルド本部を訪れた事で、自分が特別で傲慢になっているかを確かめる為だったのだと聞いた。
あとはサイネリアとの距離を縮め、もっと気楽に接する切っ掛けになればと、レオラは自分に都合が良い言い方をした。
あの様な態度を取った半分はレオラが原因だと知り、少しだけサイネリアに対しての申し訳ないと感じていた思いが楽になった気がした。
◇◆◇◆◇
サイネリアと出掛ける約束をしてから三日後の朝、帝都のセントラル・ステーション前で待ち合わる。
冒険者ギルドの制服ではなく私服で、しかもちょっと薄化粧をして着飾っているサイネリアを見るのは新鮮だった。
駅で佇むサイネリアを端から見ると、とても付き合ってる人が居らず、独り身だとは思えなかった。
そこでつまらなそうにして居れば、若い男が遊びに行かないかと、声を掛けてきそうにも思えた。
ナンパされるのを隠れて見ていては、見付かった時に機嫌を損ねるので、直ぐ様サイネリアの元に行き、魔導列車に乗って隣駅に向かった。
もちろん列車の乗車料金はカズが支払う。
帝都中央なので駅の間隔は郊外よりも短く、魔導列車に乗って隣駅まで十分も掛からない。
朝の混雑時を避けたので、列車内は混み合う事はなく、椅子に座る事も出来た。
「先方には伝えてあるから、色々と試着して選ぶといいよ。ほら、見えてきた」
「あの店って……」
サイネリアの視線の先には、ブロンディ宝石商会と書かれた店が視界に入った。
「ここって帝都でも、パールを大手に扱ってる宝石店よ!」
「サイネリアが欲しがってた宝石が真珠で良かったよ。装備品の素材とかなら、ダンジョンを探索したりで集めて来れるけど、宝石類はどこにあるか知らないからね(探して鉱石を鑑定なりすれば分かるだろうけど、依頼でもなければ行かないからな)」
「ほ、本当に大丈夫?」
「ちゃんと今日来るって、約束をしてあるから大丈夫。さあ、入ろう」
サイネリアが宝飾品を買うのは、大抵デパートのセール品なので、大手の宝石商に直接来る機会なんてなかった。
初めて宝石商に入るサイネリアの顔を見ると、デパートに並ぶセール品の品々とは違う高価な宝飾品に表情が強張り、場違いだと感じて緊張しているのが分かる。
店内に入ると二人の客が二組と、三人の客を一組を従業員が相手しており、更に二人で来ている客が二組店内の宝飾品を見て待っている状況だった。
そしてレオラがギルド本部を訪れた翌日、カズはサイネリアの予定を聞きにギルド本部に。
依頼を出しに来る者、依頼を受けに来た冒険者、それらが少ない昼前の時間帯を選んで。
一階の受付に居なかったサイネリアを訪ねに来たと、受付の職員に声を掛けようとしたが、カズが言葉を発する前に「サイネリアなら向かわせますので、どうぞ個室でお待ち下さい」と言われ、顔パスで何時もの個室に。
急に来てサイネリアを呼び出し、また機嫌を損ねるのではないかと、カズは少し不安になる。
五分程で受付に居た女性職員と同じ半袖白シャツに、紺のベストとスカートに身を包んだ、女性職員の夏用制服姿のサイネリアが、カズの待つ個室にやって来た。
意外と地味な制服だなんて思いながら、部屋に入ってきたサイネリアの表情を見て機嫌を伺う。
「今日は、どのような用件でしょうか?」
サイネリアの声色からして、特に機嫌が悪いという事はないようだった。
「近々空いている日があるかな? 仕事が早上がりとかでも構わないんだけど。休みならその方が時間に余裕があって、ゆっくり選べると思…」
「あの、いきなりなんの話をしてるんです?」
「だから……あ!」
肝心の事を話さずに、先に空いている日時を聞いてしまったのに、カズは気が付いた。
「ごめん。約束していた真珠のネックレスを見に行く時間が取れるかと聞きたかったんだ。知り合いの宝石商には話を伝えてあるから、あとは行く日を連絡するだけなんだ」
「え? あの話って……本当に良いんですか?」
「俺のせいで休みを変えさせて、楽しみにしてた買い物をできなくしてしまったんだ。それに約束したから」
サイネリアは社交辞令的な事だと半信半疑だったので、宝石商の知り合いに連絡を取ってくれていた事に、顔には出さなかったが内心では喜んでいた。
だが、先日自分がカズに対して取った態度を考えると、申し訳なく思ってしまう。
だけどせっかくの好意だからと、表面上は平静を装い、カズの好意を受ける事にする。
「でしたら三日後ではどうです? まだこの前の休みを申請してないので、それで大丈夫でしたら連休になるので、翌日は家で休息出来ますし」
「サイネリアがそれで大丈夫なら、三日後に連れて行くよ。朝の混雑時が終わった九時半くらいに、中央駅の入口で待ち合わせでどうかな?」
「中央駅……? 構いませんが、遠くなんですか?」
「遠くではないよ。店があるのが隣駅の近くなんだ。だから馬車で行くよりは、列車で行こうかと」
「そうなんですか、わかりました。三日後に中央駅前で」
「ああ、よろしく」
サイネリアと出掛ける約束をしたカズはギルドを後にすると、その足でブロンディ宝石商会に向かった。
接客中だったコーラルを、店内の宝飾品や宝石を見て時間を潰す。
従業員に言伝ても良かったのだが、本人が居るのだから直接話すべきだろうと、接客が終わるのを待った。
Aランクの冒険者だからといって、やはり驕った態度はいけないと、サイネリアとの一件で改めて感じた。
自分がそのつもりでなくても、何時の間にか驕ってしまっていたのかも知れないと、カズは一人初心に返り反省。
二十分程して従業員から呼ばれ、コーラルの居る部屋に移動する。
真珠のネックレスを探してると話は伝わっていたので、頼み事はすんなりと進み、幾つかの商品を見せてもらった。
値段もピンからキリまで様々あるが、人気がありよく売れているのが、金貨ニ十枚位の中玉真珠のネックレスらしい。
大玉真珠になると倍以上になり、色によっても値段は違う、と。
今は黄色と青色の中玉が人気で、高騰しているのだと言う。
数日前には中央駅に隣接しているデパートで、帝都の宝石商が集まって即売会を実地したと聞き、カズの頭にサイネリアの顔が浮かんだ。
サイネリアが楽しみにしていた宝飾品は、真珠と言っていたので、コーラルが取り扱ってる商品だと思ったのは間違いではなかった。
これならばサイネリアの期待に答えられる可能性は大いにあると、カズは少し安心する。
三日後に真珠のネックレスを望んでいる女性を連れて来るとコーラルに伝え、カズは店を出た。
この日の午後は、フジと狩った残りのバレルボアを解体して終わった。
翌日はアレナリアがアイリスの騎士に魔力操作を教える日だというので、屋敷まで送っていき、カズはカミーリアと女性騎士数人と模擬戦やら訓練に付き合う。
その翌日はレラをフジの所に連れて行き遊ばせ、その夜サイネリアと約束した前日の夕食時に、レオラがアレナリアと酒を酌み交わしに川沿いの家を訪れた。
そこでサイネリアが横柄な態度を取る切っ掛けになったのは、レオラが言いだした事だと知った。
相変わらず知らない所で勝手に面倒な事をしてくれるレオラだとカズは文句を言う。
サイネリアの事で相談した際に、アレナリアとビワがサイネリアの肩を持ったのも、レオラがそうするように言ってあった事だと聞いた。
アレナリアとビワは気が進まなかったが、カズがレオラとギルド本部を訪れた事で、自分が特別で傲慢になっているかを確かめる為だったのだと聞いた。
あとはサイネリアとの距離を縮め、もっと気楽に接する切っ掛けになればと、レオラは自分に都合が良い言い方をした。
あの様な態度を取った半分はレオラが原因だと知り、少しだけサイネリアに対しての申し訳ないと感じていた思いが楽になった気がした。
◇◆◇◆◇
サイネリアと出掛ける約束をしてから三日後の朝、帝都のセントラル・ステーション前で待ち合わる。
冒険者ギルドの制服ではなく私服で、しかもちょっと薄化粧をして着飾っているサイネリアを見るのは新鮮だった。
駅で佇むサイネリアを端から見ると、とても付き合ってる人が居らず、独り身だとは思えなかった。
そこでつまらなそうにして居れば、若い男が遊びに行かないかと、声を掛けてきそうにも思えた。
ナンパされるのを隠れて見ていては、見付かった時に機嫌を損ねるので、直ぐ様サイネリアの元に行き、魔導列車に乗って隣駅に向かった。
もちろん列車の乗車料金はカズが支払う。
帝都中央なので駅の間隔は郊外よりも短く、魔導列車に乗って隣駅まで十分も掛からない。
朝の混雑時を避けたので、列車内は混み合う事はなく、椅子に座る事も出来た。
「先方には伝えてあるから、色々と試着して選ぶといいよ。ほら、見えてきた」
「あの店って……」
サイネリアの視線の先には、ブロンディ宝石商会と書かれた店が視界に入った。
「ここって帝都でも、パールを大手に扱ってる宝石店よ!」
「サイネリアが欲しがってた宝石が真珠で良かったよ。装備品の素材とかなら、ダンジョンを探索したりで集めて来れるけど、宝石類はどこにあるか知らないからね(探して鉱石を鑑定なりすれば分かるだろうけど、依頼でもなければ行かないからな)」
「ほ、本当に大丈夫?」
「ちゃんと今日来るって、約束をしてあるから大丈夫。さあ、入ろう」
サイネリアが宝飾品を買うのは、大抵デパートのセール品なので、大手の宝石商に直接来る機会なんてなかった。
初めて宝石商に入るサイネリアの顔を見ると、デパートに並ぶセール品の品々とは違う高価な宝飾品に表情が強張り、場違いだと感じて緊張しているのが分かる。
店内に入ると二人の客が二組と、三人の客を一組を従業員が相手しており、更に二人で来ている客が二組店内の宝飾品を見て待っている状況だった。
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