594 / 714
五章 テクサイス帝国編 3 帝都テクサイス
573 サイネリアの精神疲労
しおりを挟む
特別な給金が出て好きな日に休みを取れるなら、そこまで機嫌を悪くする事ないじゃないかとカズは思い、若干表情に出てしまう。
それをサイネリアに読み取られてしまう。
「明後日まで駅に隣接しているデパートで、宝飾品のセールをしてるんですよ。最終日にはなんとか行けると楽しみにしてたのに」
「なんか、申し訳ない」
「なかなか手を出せない物を、安く買えるかもしれなかったのに」
「知り合いの宝石商に頼んで、予算にあったのをさがしてもらおうか?」
「え!?」
「それはダメかな? 上司に何か言われたりする? サイネリアが嫌じゃなければだけど、お世話になってるからお礼として」
「宝石商の知り合いなんているんですか?」
「前に依頼でちょっとね」
「カズさんがどうしてもと言うのであれば」
あからさまに機嫌が良くなるサイネリアを見て、カズはほっとする。
ダイヤモンドにルビーやエメラルドなど様々な宝石が売られているが、今回宝飾品の目玉商品がパールで、サイネリアの目的はネックレスを手に入れる事だった、と。
最終日は交渉次第で安くなる可能性もあるので、それにかけていたらしい。
友人や同年代の同僚が結婚しているのに、仕事仕事で彼氏を見つける事も出来ずにと、何故か宝飾品の話から自分の婚期が遅れると愚痴に変わったていた。
仕事の不満や良い男性との出会いが無いなどと、二十分程喋り通したサイネリアはようやく我に返った。
「今回の仕事が終わったら、長めの休暇を取って、旅行でも行ってきたらどう? ほら、温泉なんていいんじゃない? 観光地だから出会いもあるかも知れないだろ」
「温泉ですか……仕事の疲れを癒やすには良いですね」
「今日のところは甘い物でも食べて、午後の仕事に活力をつけてよ」
カズは黒糖から作ったお菓子のカリントウ、それを入れた紙袋をサイネリアに渡した。
サイネリアは紙袋を開けて、カリントウを一つ取り出して口に。
「あ! 見た目に反して、思っていたよりも甘くておいしい」
甘いお菓子を食した事で、サイネリアの機嫌は更に良くなった。
「じゃか明後日の朝に来るよ。前回同様ギルドの転移装置を使って行けばいいんだろ」
「ええ、使用許可はしてあります。ただあちらに着いてから、目的地の林まで時間が掛かるのはしょうがないので、そこは覚悟してます」
「そうか、早い方がいいんだよな……わかった」
フジの住み家をもう一度確認してもらうため、サイネリアと約束をしたカズは、ギルドを後にするとフジの所に向かった。
出来上がってから数日が経った柵の状態確認と、二日後にサイネリアが視察に来る事をフジに伝え、たまにはと一緒に狩りに出掛けた。
フジの背に乗って上空から獲物を探し、百数十匹はいるだろうバレルボアの群れを発見する。
フジに合図を送り、急下降して狩りを開始する。
大型の肥え太った個体を狙いフジは脚の鉤爪で、カズはライトニングボルトを脳天に一撃入れて仕留める。
いくら数の多い群れだろうと、狩り過ぎてはいけないとフジに言い聞かせる。
最終的に二十六匹のバレルボアを狩り、カズが【アイテムボックス】に入れてフジの住み家に戻る。
フジが食べる分のニ匹を出して解体し、残りは傷まないようカズが一旦持ち帰る。
六匹を自分達の分と、レオラやアイリスの所にお裾分けとして持って行く事にして、サイネリアにも二、三日で食べ切れる分を視察の後、渡す事にした。
幸いにもコーラル・ブロンディが専門としてるパールを所望しているが、好みのネックレスが見付かるか分からないので、少しでも機嫌を取っておく。
Aランク冒険者の話し方として、レオラの様に話してるつもりのカズだが、最近サイネリアに押され気味だと感じていた。
翌日アレナリアがヒューケラの所に行くと言うので、真珠のネックレスについてコーラルと話がしたいと、伝えておいてもらう。
二日後の朝、約束の時間に冒険者ギルド本部へと行き、カズはサイネリアと共にギルドの転移装置を使用して、箱町の冒険者ギルドに移動した。
取り付ける看板は箱町のギルドに送ってあったので、それをカズが受け取り【アイテムボックス】に入れて持って行く。
馬では時間が掛かってしまうからと、カズがフジを念話で呼び、町から少し離れた場所で待っていてもらった。
カズに言われるまま町を出たサイネリアの視界に、大きな鳥のモンスターフジの姿が入ってきた。
「あの、もしかして」
「フジに乗って行こうと。その方が早く着くから」
「でしたら時間が掛かっても、わたしは馬で構いません」
「まあ、そう言わず。ゆっくり低空で飛んでもらうから。サイネリアも時間が掛かるからって言ってたでしょ」
引き攣った表情のサイネリアとフジの背に乗り、地上から数十メールの低空でゆっくりと飛んで、目的地の林へと向かう。
馬で一時間以上掛かるのを、本の十数分で到着する。
青褪めて疲れた表情のサイネリアを、フジが住む建物の隣に作ったログハウスで少し休憩させる。
二十分で回復したサイネリアが、黙って作られた柵と周囲の状況を見て回り、報告書を作るためにメモを取る。(サイネリアの機嫌は斜め)
四十五分が経過するとカズを呼び、看板を設置するようにと指示を出す。(怒鳴りしないが、怒っている様に感じる)
どの方角から来ても見えるよう柵に六ヶ所『これより中への無断侵入は禁止。勝手に侵入し死亡したとても、それは自己責任とする。冒険者ギルド本部』と書かれた看板を設置。
更に柵から50メール離れた林の中に杭を打ち『この先テイムモンスター住み家有り。危険なので、これ以上の接近をしないこと。冒険者ギルド本部』と書かれた注意書きの看板を、東西南北の四ヶ所に設置した。
一応、冒険者ギルド本部と書かれているが、説明の内容が読んだ者を少し怖がらせる書き方してあるように思えた。
「いくら大人しいからと言っても、危険度Aランクのモンスターが居るんです。これでも優しい書き方なんです。これ以上の書き方をすると『そんな危険なテイムモンスターを、テイマーと一緒に居させなないなんて』と、苦情がきます」
「すいません」
「それになんですか、あのログハウスは?」
「ここに泊まる時と休憩用に、柵が出来た後で作ったんだけど」
「これだけの木を伐採して柵作り、時間に余裕があったからとログハウスですか。わたしは早くても一ヶ月と言ったんです。それももっと狭い範囲で」
サイネリアが考えていたのは柵は、フジの住む建物を囲み、広くてもテニスコート二面分くらいだった。
だがカズが作った柵の内側は、サッカーコートの半分くらいの広さはある。
一ヶ月でその広さに柵を作り、更にはログハウスまで作ってしまっているのを目の当たりにしたサイネリアは、怒りを通り越して完全に呆れ顔をし、大きな溜め息を……。
そして報告書をどう書いて出そうかと、また頭を抱えてしまう。
そんなサイネリアを見て、カズもまたやらかしてしまったと……。
「あのう、帰りもフジに送ってもらうつもりでいるんですが」
「あーはいはい、わかってますよ。馬も無ければ、わたし一人で歩いて箱町まで戻るのは無理ですものね」
木漏れ日に照らされた二羽の小鳥を見付け、二羽が囀りあってるを見つめながらカズに返事を返す。
今のサイネリアは、精神的にものスゴく疲れていた。
「もしもし、サイネリアさん?」
「低空で飛べば怖くないと思ってるでしょうけど、列車なんか比べ物にならない速さで景色が流れていくの。またあれをしないと戻れないなんて……」
「でしたら、低空で飛ぶのは…」
「別に高いのは苦手ではないけど、それは建物の高層階や山に登った時で、自分の足が着いてる状態のこと。人が麦粒に見えるような高さの建物なんて、帝都にはないの」
サイネリアは考えるのを放棄したのか、言いたいことを頭の中で咀嚼せず言葉に出す。
それをサイネリアに読み取られてしまう。
「明後日まで駅に隣接しているデパートで、宝飾品のセールをしてるんですよ。最終日にはなんとか行けると楽しみにしてたのに」
「なんか、申し訳ない」
「なかなか手を出せない物を、安く買えるかもしれなかったのに」
「知り合いの宝石商に頼んで、予算にあったのをさがしてもらおうか?」
「え!?」
「それはダメかな? 上司に何か言われたりする? サイネリアが嫌じゃなければだけど、お世話になってるからお礼として」
「宝石商の知り合いなんているんですか?」
「前に依頼でちょっとね」
「カズさんがどうしてもと言うのであれば」
あからさまに機嫌が良くなるサイネリアを見て、カズはほっとする。
ダイヤモンドにルビーやエメラルドなど様々な宝石が売られているが、今回宝飾品の目玉商品がパールで、サイネリアの目的はネックレスを手に入れる事だった、と。
最終日は交渉次第で安くなる可能性もあるので、それにかけていたらしい。
友人や同年代の同僚が結婚しているのに、仕事仕事で彼氏を見つける事も出来ずにと、何故か宝飾品の話から自分の婚期が遅れると愚痴に変わったていた。
仕事の不満や良い男性との出会いが無いなどと、二十分程喋り通したサイネリアはようやく我に返った。
「今回の仕事が終わったら、長めの休暇を取って、旅行でも行ってきたらどう? ほら、温泉なんていいんじゃない? 観光地だから出会いもあるかも知れないだろ」
「温泉ですか……仕事の疲れを癒やすには良いですね」
「今日のところは甘い物でも食べて、午後の仕事に活力をつけてよ」
カズは黒糖から作ったお菓子のカリントウ、それを入れた紙袋をサイネリアに渡した。
サイネリアは紙袋を開けて、カリントウを一つ取り出して口に。
「あ! 見た目に反して、思っていたよりも甘くておいしい」
甘いお菓子を食した事で、サイネリアの機嫌は更に良くなった。
「じゃか明後日の朝に来るよ。前回同様ギルドの転移装置を使って行けばいいんだろ」
「ええ、使用許可はしてあります。ただあちらに着いてから、目的地の林まで時間が掛かるのはしょうがないので、そこは覚悟してます」
「そうか、早い方がいいんだよな……わかった」
フジの住み家をもう一度確認してもらうため、サイネリアと約束をしたカズは、ギルドを後にするとフジの所に向かった。
出来上がってから数日が経った柵の状態確認と、二日後にサイネリアが視察に来る事をフジに伝え、たまにはと一緒に狩りに出掛けた。
フジの背に乗って上空から獲物を探し、百数十匹はいるだろうバレルボアの群れを発見する。
フジに合図を送り、急下降して狩りを開始する。
大型の肥え太った個体を狙いフジは脚の鉤爪で、カズはライトニングボルトを脳天に一撃入れて仕留める。
いくら数の多い群れだろうと、狩り過ぎてはいけないとフジに言い聞かせる。
最終的に二十六匹のバレルボアを狩り、カズが【アイテムボックス】に入れてフジの住み家に戻る。
フジが食べる分のニ匹を出して解体し、残りは傷まないようカズが一旦持ち帰る。
六匹を自分達の分と、レオラやアイリスの所にお裾分けとして持って行く事にして、サイネリアにも二、三日で食べ切れる分を視察の後、渡す事にした。
幸いにもコーラル・ブロンディが専門としてるパールを所望しているが、好みのネックレスが見付かるか分からないので、少しでも機嫌を取っておく。
Aランク冒険者の話し方として、レオラの様に話してるつもりのカズだが、最近サイネリアに押され気味だと感じていた。
翌日アレナリアがヒューケラの所に行くと言うので、真珠のネックレスについてコーラルと話がしたいと、伝えておいてもらう。
二日後の朝、約束の時間に冒険者ギルド本部へと行き、カズはサイネリアと共にギルドの転移装置を使用して、箱町の冒険者ギルドに移動した。
取り付ける看板は箱町のギルドに送ってあったので、それをカズが受け取り【アイテムボックス】に入れて持って行く。
馬では時間が掛かってしまうからと、カズがフジを念話で呼び、町から少し離れた場所で待っていてもらった。
カズに言われるまま町を出たサイネリアの視界に、大きな鳥のモンスターフジの姿が入ってきた。
「あの、もしかして」
「フジに乗って行こうと。その方が早く着くから」
「でしたら時間が掛かっても、わたしは馬で構いません」
「まあ、そう言わず。ゆっくり低空で飛んでもらうから。サイネリアも時間が掛かるからって言ってたでしょ」
引き攣った表情のサイネリアとフジの背に乗り、地上から数十メールの低空でゆっくりと飛んで、目的地の林へと向かう。
馬で一時間以上掛かるのを、本の十数分で到着する。
青褪めて疲れた表情のサイネリアを、フジが住む建物の隣に作ったログハウスで少し休憩させる。
二十分で回復したサイネリアが、黙って作られた柵と周囲の状況を見て回り、報告書を作るためにメモを取る。(サイネリアの機嫌は斜め)
四十五分が経過するとカズを呼び、看板を設置するようにと指示を出す。(怒鳴りしないが、怒っている様に感じる)
どの方角から来ても見えるよう柵に六ヶ所『これより中への無断侵入は禁止。勝手に侵入し死亡したとても、それは自己責任とする。冒険者ギルド本部』と書かれた看板を設置。
更に柵から50メール離れた林の中に杭を打ち『この先テイムモンスター住み家有り。危険なので、これ以上の接近をしないこと。冒険者ギルド本部』と書かれた注意書きの看板を、東西南北の四ヶ所に設置した。
一応、冒険者ギルド本部と書かれているが、説明の内容が読んだ者を少し怖がらせる書き方してあるように思えた。
「いくら大人しいからと言っても、危険度Aランクのモンスターが居るんです。これでも優しい書き方なんです。これ以上の書き方をすると『そんな危険なテイムモンスターを、テイマーと一緒に居させなないなんて』と、苦情がきます」
「すいません」
「それになんですか、あのログハウスは?」
「ここに泊まる時と休憩用に、柵が出来た後で作ったんだけど」
「これだけの木を伐採して柵作り、時間に余裕があったからとログハウスですか。わたしは早くても一ヶ月と言ったんです。それももっと狭い範囲で」
サイネリアが考えていたのは柵は、フジの住む建物を囲み、広くてもテニスコート二面分くらいだった。
だがカズが作った柵の内側は、サッカーコートの半分くらいの広さはある。
一ヶ月でその広さに柵を作り、更にはログハウスまで作ってしまっているのを目の当たりにしたサイネリアは、怒りを通り越して完全に呆れ顔をし、大きな溜め息を……。
そして報告書をどう書いて出そうかと、また頭を抱えてしまう。
そんなサイネリアを見て、カズもまたやらかしてしまったと……。
「あのう、帰りもフジに送ってもらうつもりでいるんですが」
「あーはいはい、わかってますよ。馬も無ければ、わたし一人で歩いて箱町まで戻るのは無理ですものね」
木漏れ日に照らされた二羽の小鳥を見付け、二羽が囀りあってるを見つめながらカズに返事を返す。
今のサイネリアは、精神的にものスゴく疲れていた。
「もしもし、サイネリアさん?」
「低空で飛べば怖くないと思ってるでしょうけど、列車なんか比べ物にならない速さで景色が流れていくの。またあれをしないと戻れないなんて……」
「でしたら、低空で飛ぶのは…」
「別に高いのは苦手ではないけど、それは建物の高層階や山に登った時で、自分の足が着いてる状態のこと。人が麦粒に見えるような高さの建物なんて、帝都にはないの」
サイネリアは考えるのを放棄したのか、言いたいことを頭の中で咀嚼せず言葉に出す。
応援ありがとうございます!
0
お気に入りに追加
492
1 / 5
この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる